極悪非道の正統ヒロインですが清廉潔白な悪役令嬢と幸せになります~咲かせて魅せます、百合の華~

イトウアユム

第4話「犬を飼うなら忠犬より狂犬」(脚本)

極悪非道の正統ヒロインですが清廉潔白な悪役令嬢と幸せになります~咲かせて魅せます、百合の華~

イトウアユム

今すぐ読む

極悪非道の正統ヒロインですが清廉潔白な悪役令嬢と幸せになります~咲かせて魅せます、百合の華~
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇城の客室
ヤス「士官学校編は終盤に【聖槍グングニル】というイベントがあるんですよ」
権田原万里「聖槍グングニル・・・ 今度は北欧神話かよ」
権田原万里「人名はドイツ風、 街並みは中世ヨーロッパ風・・・」
権田原万里「大層な世界観で」
ヤス「実はマリアンネは聖槍グングニルをその身に秘めた巫女の末裔で、後半でそれが判明して隣国に誘拐されるんです」
ヤス「で、そのマリアンネを助けられるのは男しか得ることが出来ない【勇者】の称号を持つ対象キャラなんです」
権田原万里「男しか得る事が出来ない称号ねえ・・・」
権田原万里「どっかの団体からクレームが入るんじゃねえか?」
ヤス「そこは、ほら・・・ 乙女ゲームですからねぇ」
ヤス「そして助けられたマリアンネはそのキャラとのベストエンドを迎える」
権田原万里「ベストエンド?」
  なんだか嫌な予感がする。
ヤス「乙女ゲーのベストエンドって言ったらそりゃ相思相愛エンドですよ」
権田原万里「断る」
ヤス「即答っすね。でもそれが出来ないんですよ」
ヤス「【勇者】の称号を持った対象キャラに聖槍と共に身も心も捧げないと・・・」
ヤス「マリアンネは処刑されて死ぬんです」
権田原万里「はあ? なんだよ・・・その死にたくなければ純潔を捧げろ、みたいな展開は」
ヤス「家庭用ゲーム機に移植される前は18禁ゲームでしたからねぇ」
権田原万里「そういう問題じゃねえだろ」
ヤス「この聖槍イベントのフラグはいずれかの攻略キャラが【勇者】のスキルを持つと強制的に発生するイベントなんです」
  そう言うとヤスはウィンドウを立ち上げる。
ヤス「見てください、ここに攻略キャラのステータスが出てるんですが・・・」
権田原万里「遠隔でも主要キャラのステータスを確認出来るのか、どれどれ・・・」
ヤス「お嬢のプレイデータがそのまま反映されているんで、こいつらのステータス・親愛度ともにMAX状態っす」
権田原万里「完璧主義の自分が恨めしいぜ・・・」
  ん?
  エリーザの信愛度も確認出来るぞ・・・
  って信愛度はゼロ。
  まあ、あの様子だと頷けるが・・・
  少し残念だな。
ヤス「ここまで優秀なステータスはなかなか素人には出来ませんぜ」
ヤス「しかし、だからこそ問題なんです・・・」
ヤス「――ミハエル王子は既に【勇者】の称号を獲得しています」
権田原万里「――つまりは勇者の称号を持っている王子がいるので、回避不可な聖槍イベントのフラグは立っていると言いたいんだな」
ヤス「その通りです。 それにこのステータスの上昇具合なら他の2人の攻略対象キャラ・・・」
ヤス「司祭の息子の堅物先輩系 シモン・ヴェルナー」
ヤス「大貴族の末息子の生意気弟系 サーシャ・ジュリアス・クネフ」
ヤス「こいつらも【勇者】の称号を得るのは時間の問題でしょう」
ヤス「なので・・・このままお嬢が何か行動を起こさないと・・・」
権田原万里「――シナリオ通り、私は対象キャラの誰かと相思相愛のベストエンドになっちまう」
権田原万里「そういうことかヤス?」
ヤス「さようで・・・ 転生物によくある【強制力】ってヤツです」
ヤス「なんで、お嬢がこの世界で平穏に暮らしたいのであれば・・・」
ヤス「何かしら行動を起こして阻止しないといけません」
ヤス「・・・シナリオ通り攻略対象キャラと結ばれるって言うのも楽な生き方ではありますがね」
権田原万里「はっ! 気持ち悪い冗談言うなっての」
ヤス「お嬢ならそう言うと思いました」
権田原万里「気に食わねえな・・・」
権田原万里「あの3馬鹿に助けられて純潔を捧げるってのも気に食わねえし」
権田原万里「勇者の称号は男しか取得できないって言うのも気に食わない」
権田原万里「――そしてなによりも・・・ その【強制力】ってやつも」
  ギリ・・・と爪を噛む。
  私は何事も決めつけられるのが嫌いだ。
  女だから、若いから、
  極道だから、運命だから・・・
  元の世界ではそうやって決めつける奴らを全て排除してきた。
  だから、こっちでもそんなクソみたいな常識は元の世界と同じく対処させて貰うぜ。
  私の前に立ちはだかるものは全て、
  バッキバキに踏み砕いてやる。
権田原万里「よっし! ならまずは士官学校に行かなくても済むように金策を練るぞ」
ヤス「金策、ですか?」
権田原万里「元はと言えばマリアンネが士官学校に編入したのは、兄貴が死んで家督を継ぐためだろ?」
権田原万里「その兄貴が死んだのは軍隊に入ったため。 そんで兄貴が従軍するハメになったのは ・・・この家の金欠が原因だ」
権田原万里「だったら金を稼いで兄貴を死なせなきゃ良い」
権田原万里「そうすりゃ私が士官学校に行く事も、 戦争に参加する事も無くなるって寸法よ」
ヤス「フフ、地獄の沙汰も金次第とは言ったものの、異世界でも金次第とは」
ヤス「あっしはどこまでもお嬢にお供しますぜ」
権田原万里「じゃあさっそく・・・」
  トントン
  部屋のドアをノックする音と執事のしわがれた声が私とヤスの会話を中断した。
老執事「マリアンネお嬢様・・・ お客様がお見えになっております」

〇貴族の応接間
権田原万里「もう怪我は治ったのか」
  広間に通した私の来客とは、衛兵だった。
  ボコボコに殴った顔はすっかりと元通りになっていて、ソファに座る事も無く、土下座で私を出迎えた。
  ・・・この世界でも土下座は通用するんだな。
衛兵「はい・・・あの後、通りすがりの僧侶の方に治療魔法をかけて頂いて・・・」
ヤス「フン、運が良い野郎だ・・・」
ヤス「しかしよく顔が出せたな」
権田原万里「まあヤス。そうイキり立つなって、 話だけでも聞いてやろうぜ」
衛兵「ありがとうございます・・・ あの・・・マリアンネ様・・・」
  衛兵は額を床に擦り付ける。
衛兵「どうか・・・どうかマリアンネ様に俺を男にして欲しいんです!」
権田原万里「ヤス、鈍器持ってこい」
ヤス「へい。・・・ったく、未だにお嬢に汚え情欲を向けるなんてふてえ野郎だ」
衛兵「いや、違います! そういう意味じゃなくて!」
衛兵「いや、 そういう意味も憧れたりはしますが・・・」
衛兵「って! 違いますっ!」
  暖炉の上に飾られた戦斧を外そうとするヤスに衛兵は慌てて弁明する。
衛兵「俺、マリアンネ様のような筋の通った素晴らしい人間になりたいんです!」
「はぁ?」
衛兵「マジ、マリアンネ様の言う通り、俺はクソでした! あのまま殺されても当然でした!」
衛兵「なのにこんな俺に慈悲を与えてくださった! 痛みを持って罪深さを教えてくれた!」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:第5話「売るのは楽しいお喋りと夢のひととき」

成分キーワード

ページTOPへ