極悪非道の正統ヒロインですが清廉潔白な悪役令嬢と幸せになります~咲かせて魅せます、百合の華~

イトウアユム

第5話「売るのは楽しいお喋りと夢のひととき」(脚本)

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〇城の客室
権田原万里「じゃあさっそく舎弟が増えたところで、 課題を戻すぞ」
ヤス「へい」
リュウ「はいっ!」
リュウ「・・・って、課題ってなんですか?」
権田原万里「この家の将来の話だ。 御覧の通りシェンケル家は貧乏だ」
  私はリュウの質問を曖昧に返した。
  正直に「イベントフラグを回避するため」なんて答えたら説明するのも厄介だしな。
権田原万里「男爵って言っても名前ばかりの没落貴族」
権田原万里「資産はこのボロ屋敷だけ。 使用人も死にかけた婆と爺の2人きり」
ヤス「エミールが従軍したのも火の車の家計を助けるためでしたからね」
権田原万里「それだよ、 極めつけのあのごく潰しのニート兄貴」
  私はヤスの言葉に再び頭を抱えた。
権田原万里「アイツを鍛えて戦死を回避する・・・なんて事も考えたが、あの様子じゃ絶対無理だ」
権田原万里「なんで根本的なところから変えようと思う」
権田原万里「貧乏だから寄付が出来ず、エミールは従軍 した・・・だったら金があれば良い」
ヤス「確かに理に適う結論ですが・・・ でも、どんな方法で稼ぐんです?」
権田原万里「私達には前世のシノギのノウハウがある。 なんで・・・」
権田原万里「手っ取り早くキャバクラを経営するってのはどうだ?」
リュウ「キャバクラ? それはなんですか?」
ヤス「おまえ知らねえのか? キャバクラって言うのは女が酒で接待する場所だ」
リュウ「女が酒で接待? うーん・・・ 娼館みたいなもんですかねえ?」
ヤス「いや、体は売らねえ。売るのは楽しいお喋りと夢のひとときってところだ」
リュウ「酒飲んでおしゃべりだけ・・・ そんな水商売、聞いた事も無いっすね」
  ヤスの説明に納得出来ないような様子のリュウに私は考え込む。
権田原万里(キャバクラのような文化はこの世界に無いのか・・・)
権田原万里(でも私の読みが正しければ・・・)
ヤス「そりゃおまえは学園の衛兵だったから知らないだけだろうが」
ヤス「歓楽街に行けばそんな店、 ひとつやふたつ・・・」
リュウ「いや、無いっすね! アニキ、オレ断言しても良いです」
  リュウは自信満々に否定した。
リュウ「俺は元々城下の衛兵だったんすよ、 だから城下の事は良く知ってるんで」
権田原万里「城下の衛兵? そんな奴がなんで学園の警備なんてやってるんだ?」
リュウ「いやあ、歓楽街のボス達に気に入られて結構楽しく仕事はしてたんですけどね」
リュウ「でも、それを良く思わなかった上司に学園の警備に回されちゃったってワケです」
ヤス「公僕が反勢力と関わるのは良しとしねえって事か・・・どこの世界も同じだな」
  主要人物のプライベートな予定や、どこに行けばそのアイテムが手に入るかなど。
  ゲームではリュウは主要人物やイベントの詳細を教えてくれた。
  いわば情報面でのサポート的な役割のモブキャラだ。
権田原万里(・・・こいつがいれば、 欲しい情報を逐一手に入れる事が出来るな)
権田原万里「・・・ゲームのおまえは外面も良かったからな」
権田原万里「その情報網を評価されて重宝されていてもおかしくはないか」
リュウ「ふぇ? ゲームってなんすか?」
権田原万里「なあ、リュウ。もしそういう店をやりたいといったら・・・ この国ではどういう流儀で店を開くんだ?」
リュウ「そうっすね・・・ 商売を始めるなら国や法律よりも、 ぶっちゃけ裏社会の方が大事です」
リュウ「まずは商売を始めたい場所を縄張りとしている元締めに話を通します」
リュウ「で、いくらかの場所代と毎月納める上納金を決めて商売をしますね」
権田原万里「そうか。だったらその元締めとやらを紹介してくれ・・・」
権田原万里「歓楽街のボスに気に入られていたおまえなら簡単だろ?」

〇立派な洋館
  それから数日後。

〇豪華な部屋
  私はリュウに連れられ、
  とある屋敷の広間に通されていた。
  いかにもやり手と言った、気風の良さそうな老婦人が私をしげしげと眺めてキセルを吹かす。
マダム「――で、あんたが商売を始めたいって?」
権田原万里「はい。出来れば早急に」
マダム「ふぅん・・・で、あの街外れの娼館を借りて酒を提供する店を開業したいと」
権田原万里「ええ。あのお店で新しい事業を始めようと思っております」
  私が借りたいと申し出ているのは街外れにある最近潰れたと言う娼館だ。
  リュウは元締めと会う段取りだけではなく
  物件の目星も付けてくれた。

〇城の客室
リュウ「あの娼館、娼婦が客を刺す事件があって潰れちまったんですよ」
リュウ「で近々取り壊すなんて話も出てて」
リュウ「だから、 格安で借りれるんじゃないんですかねえ」

〇豪華な部屋
権田原万里「今までには無い形態の酒場です」
権田原万里「きっと話題になりますし、 歓楽街全体の活性化にも繋がると思います」
権田原万里「それに・・・」
権田原万里「私は事故物件でも気にしませんから。 その分、お安く貸して頂ければ幸いですわ」
権田原万里「新しい取引先が増え、そしていわくつきのお荷物物件がめでたく契約となる」
権田原万里「――そう言う意味でもマダムには良いお話だと思うのですがいかがでしょうか?」
  初対面の取引相手には丁寧に。
  笑みを絶やさず、下手に出る。
  それが私の商売のルールだ。
  しかし、マダムは私の提案を聞くとわざとらしく驚いた様に目をむいた。
マダム「あの屋敷がいわくつきのお荷物物件だって?」
マダム「いやいや、これからテコ入れして稼がせて貰うつもりだったんだよ」
リュウ「えっ? だってマダム、あの店は早く取り壊すか格安で貸したいって・・・」
マダム「そんな事言った覚えはないねえ」
マダム「それに刃傷沙汰は起きたが死人は出てない から事故物件じゃあないしね」
  私は直感で気付く。
  ・・・このババア、値段を吊り上げるために嘘を付いているな。
マダム「歓楽街の外れにあるって言う好立地を利用して、静かなレストランでも経営しようかと思っていたんだがねぇ」
マダム「・・・でもあんたは王子のお気に入りだって聞くしね、今後の事を考えて力を貸してやっても良いけどねぇ・・・」
  じっとりと意味ありげな視線を私に向けるマダム。
  なるほど、恩を着せて王族との繋がりを持とうとしてんのか・・・それならば。
  ドンッ!
  私はお行儀良く揃えていた足をテーブルの上に勢い良く乗せて腕を組んだ。
  私を下に見て、
  もったいぶるなら作戦を変えるまで。
  目には目を、歯には歯を。
  ――無礼には無礼を、ってな。
権田原万里「貸してやる、ね。随分と上から目線だなぁ ・・・この因業ババアは」

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