エピソード3 アピール(脚本)
〇ファンタジーの教室
「あ、おいケビンだ・・・」
「おい、目を合わしちゃ駄目だ・・・」
ケビン(あれ以来避けられるようになってしまったな・・・)
ケビン(弁当は屋上で食べるか・・・)
〇高い屋上
ケビン「ふぅ、ここは落ち着くな」
ケビン「もぐもぐ、うまい」
ルイス「あ」
ケビン「お」
ルイス「悪い、邪魔したか?」
ケビン「そんなことはない」
ケビン「よかったら一緒に食べよう」
ルイス「いいのか」
〇空
ルイス「もぐもぐ」
ルイス「うまい」
ケビン「トマトをやろう」
ルイス「ちゃんと野菜も食べろよ」
ケビン「この間はすまなかった」
ルイス「え、急に!?」
ケビン「止めてくれてありがとう」
ケビン「助かった」
ルイス「いや、こっちこそ」
ルイス「あいつらにいろいろ言い返してくれて」
ルイス「少し嬉しかった」
ケビン「思ったことを言っただけだ」
ケビン「僕もあいつらの言い分には腹が立ったんでな」
ルイス「・・・」
ルイス「あいつらとは」
ルイス「同じ村の出身なんだ」
ルイス「昔からずっと馬鹿にしてきて」
ルイス「まぁ、魔法が使えないんじゃ」
ルイス「仕方ないよな」
ケビン「そんなことはない」
ケビン「もし僕が」
ケビン「僕が魔王だとしたら」
ケビン「あんたみたいな勇者に」
ケビン「倒して欲しいと思うだろう」
ルイス「え」
ルイス「倒せると思うか?」
ケビン「実際止めてくれたじゃないか」
ケビン「大事なのはハートさ」
ケビン「正直言うと」
ケビン「あんたの中にあるものに」
ケビン「僕は少しホッとした」
ルイス「?」
ケビン「僕がかつて憧れたものを」
ケビン「少し見た気がしたんだ」
ルイス「ん?」
ケビン「なんでもない」
〇草原の道
ケビン「次の授業までまだ時間があるな」
ケビン「なんだ?」
女子A「グレンく〜ん」
女子B「こっち見て〜」
グレン「わかったわかったから」
グレン「押さないでくれたまえ」
ケビン「なんだあいつは」
ケビン「やたらモテているな!?」
ルイス「あいつはグレン」
ルイス「あいつも俺と同じ村の出身で」
ルイス「幼い頃からずっと優秀」
ルイス「村の期待を背負ってこの学校に入った」
ルイス「今ではこの学校のエース候補と言われている」
ケビン「へぇ・・・」
ケビン「エースね・・・」
グレン「やぁやぁ君は」
グレン「残念なルイス君じゃないか」
グレン「村の落ちこぼれ君?」
ルイス「ムッ」
ケビン「いや、あんた」
ケビン「僕のダチを残念とか言うのやめてくれないか」
ルイス「いやいつダチになったんだよっ」
グレン「おや君は・・・」
グレン「ケビンとかいうやつじゃないか」
ケビン「どうも」
グレン「困るよ君」
グレン「ぼくより目立って貰っちゃ」
ケビン「いや僕が目立ってるのは」
ケビン「全然いい意味じゃないぞ」
グレン「同じ事だよ」
グレン「実力は認められてるって事だ」
グレン「この学校のエースはぼくだ」
グレン「それ以外は許されない」
ケビン「ほぅ、それは奇遇だな」
ケビン「訳あって僕も」
ケビン「この学校で1番いい成績を収めないといけないんだ」
グレン「なんだと・・・本気か?」
ケビン「ああ」
ルイス「・・・」
エリート「素晴らしい」
ケビン「エ、エリート・・・!!先生・・・」
ケビン(暇なのか・・・?)
女子A「エリート先生・・・」
女子B「エリート様〜」
グレン「先生!!」
ケビン「・・・」
ケビン(相変わらずすごい人気だな)
エリート「二人とも素晴らしい向上心だ!」
グレン「はい!先生!!」
エリート「なら直接対決といこうじゃないか」
グレン「え・・・?」
エリート「二人で手合わせをして」
エリート「どちらが上か決めるというのはどうだろう」
グレン「なっ」
ケビン「なるほど、いいですね」
ケビン「その勝負受けて立ちます」
グレン「ええっ正気か」
ケビン(アピールするいいチャンスになるはず)
エリート「いいかな?」
グレン「そ、それはちょっと・・・」
エリート「何か困る事でも?」
グレン「ゆ、勇者を目指す者どうし」
グレン「余計な争いは・・・」
エリート「勇者を目指す者どうしだからこそ」
エリート「切磋琢磨する事はいい事なんじゃないかな」
グレン「え、ええ、まぁ・・・」
エリート「なら決まりだね」
グレン「ええ・・・」
ケビン「?」
エリート「じゃあ日時は」
グレン「あ、あの!!」
グレン「も、もし本当に試合をやるなら」
グレン「観客は先生だけにしていただけませんか?」
グレン「ほ、ほら ぼくだけ黄色い歓声があるのは」
グレン「フェアじゃないし」
ケビン「僕はべつに」
ケビン「かまわないけどね・・・!!」
エリート「じゃあそうしよう」
グレン「はい・・・」
ケビン(ん、まてよ)
ケビン「ルイスもダメか?」
グレン「もちろんだ!」
ケビン「そうか・・・」
ケビン(大丈夫だろうか・・・)
ルイス「ケビン」
ルイス「頑張れよ」
ケビン「ん、あぁ」
ケビン「まかせろ」
エリート「では日時は明日のお昼で」
エリート「二人とも頑張ってね」
〇闘技場
エリート「ルールを説明しよう」
エリート「ポイントを2点先取した方の勝ちだよ♪」
エリート「では開始だ!」
ケビン「いくぞグレン!!」
グレン「!?」
ケビン「この勝負、絶対に勝つ!!」
ケビン(エリートにアピールする絶好のチャンスだからな)
ケビン「はっ」
グレン「!!」
グレン「ぐっ・・・」
エリート「いいね、ケビン君1ポイント!」
グレン「こ、こっちも負けるわけにはいかない!!」
グレン「はぁっ」
ケビン「うっ」
エリート「ナイスだ、グレン君1ポイント!」
ケビン「や、やるな!」
ケビン(あまり手加減はしていられないな)
ケビン「いくぞ!」
ケビン「ハァッ」
グレン「わ、わわわやめろっ」
ケビン「なぜ逃げる」
グレン「逃げてなどいないっ」
グレン「うわわやめろっ」
グレン「うわわわぁっ」
ケビン「!?」
エリート「・・・」
グレン「こわいこわいコワイよ・・・」
グレン「もう闘いたくない」
ケビン「え・・・」
ケビン「何を言ってるんだ・・・?」
ケビン「エースを目指しているんだろ」
グレン「そんなの知らないよぉぉ」
グレン「村のみんなが勝手に期待して」
グレン「それに応え続けなければと思っただけで・・・」
グレン「ボクは闘いたくない・・・」
ケビン「とは言っても」
ケビン「あんた強いじゃないか」
ケビン「そりゃ村の人達も期待するだろう」
グレン「怖くてムリ!!」
ケビン「あのなぁ」
ケビン「もし村に魔王やらなんやら攻めてきたらどうする?」
ケビン「理不尽ってのは突然降りかかってきたりするんだぞ」
ケビン「突然濡れ衣を着せられて」
ケビン「追いやられたりな」
エリート「・・・」
ケビン「そんな時強く正しい勇者がいたら」
ケビン「みんな安心するするだろう」
グレン「知るかっ」
グレン「こわいものはこわいんだ」
グレン「キミみたいな人が闘えばいいだろう」
ケビン「あのなぁ・・・」
ケビン「僕は」
ケビン「はぁ・・・」
ケビン「あんたはルイスと違って魔法が使えるのに」
グレン「好きで使えるわけじゃない」
グレン「ボクはのんびり本でも読んでいたいんだ」
エリート「勝負ありかな」
エリート「ケビン君合計5ポイント」
エリート「グレン君マイナス10ポイントだ」
グレン「そんなぁ」
ケビン「・・・」
グレン「な、なぁケビン」
グレン「このことは他の皆んなには・・・」
ケビン「ああ」
ケビン「言わないよ」
グレン「お、おぅ、ありがとう」
エリート「残念だがグレン君」
エリート「このことは君の村にも報告させてもらうよ」
グレン「え・・・!?」
エリート「君には期待していたけど」
エリート「正直ガッカリだ」
エリート「村の人達もそう思うだろう」
グレン「そ、そんな・・・」
ケビン「・・・」
グレン「ちくしょう・・・」
グレン「ぜんぶ魔族みたいな悪い奴らのせいだ」
グレン「あんな奴らがいなければ平和で」
グレン「誰も闘わずに済むのに」
エリート「・・・ま、そうだね」
ケビン「・・・・・・」
エリート「けど君が弱いのは君のせいだよ」
グレン「・・・ぐ、うぅ」
〇闘技場
ケビン「・・・先生」
ケビン「お聞きしたい事があります」
エリート「ん、何かな?」
エリート「君なら大歓迎だよ」
ケビン「大事な話なので」
ケビン「別の場所でもいいでしょうか?」
エリート「ああ、もちろんいいとも」
エリート「後で私の部屋にきたまえ」
ケビン「・・・・・・ありがとうございます」