【前編】キラキラ侍と天狗様(脚本)
〇学校の部室
──文芸部・部室──
ぶちょー「締切も近いっていうのに、 まだ書き始めていないの?」
るる「だって、主人公の名前が決まらない・・・」
るる「せっかく付けた名前も、 ぶちょーに却下されるし・・・」
ぶちょー「だって、主役の王子様の名前が 『オカノシタ=オニャサス』なんて、」
ぶちょー「いくらなんでも、 ネットミームが過ぎるでしょ」
るる「えー・・・」
るる「名前を付けるの、苦手なのに・・・」
るる「ぶちょーは、キャラクターの名前は どうやって付けてるんですか?」
ぶちょー「私は、好きな物語作品の登場人物から 頂くことが多いかな」
ぶちょー「あと、好きな小説で使われている言葉を そのまま名前に宛てることもあるね」
るる「ふぇー!?」
ぶちょー「実は、私自身の名前が、 母の好きな和歌に因んでいるものでね」
ぶちょー「ウチは、姉も私も、 母が大好きな百人一首由来の名前なんだ」
るる「ふぇー、そーなんですね」
ぶちょー「だから、私も将来子供ができたら、 素敵な詩歌の言葉を付けてあげたいなって」
ぶちょー「物語のキャラ名も、 将来の名付けの練習だと思ってるから」
るる「んー、イイ話だけど、 自分の子供の名前はもう決めてるし・・・」
ぶちょー「えっ、もう決めてるの!?」
るる「はいっ!」
るる「男の子だったら、 「万札」と書いて「しぶさわ」」
るる「女の子なら、 「五千」と書いて「うめこ」 ですっ!」
ぶちょー「それは、キラキラが過ぎるネーム・・・」
ぶちょー「そんな名前、すぐにネットに晒されて 笑いものにされるって」
るる「えーっ、イイと思ったのに・・・」
るる「みんなに愛され大事にされる、 そんな子になってほしいって願いなのに」
ぶちょー「そりゃ、一万円札も五千円札も 愛されるし大事にされるけど・・・」
ぶちょー「それは、流石にやめておこうか」
ぶちょー「最近は、珍妙なキラキラネームは 下火になってきてるのだから」
???「それ以前に、風変りな読み方をする名前は 役所で受理してもらえなくなるわよ」
せんせー「今年の国会で、戸籍法の改正が決まり、 変わった読み方ができないようになったの」
ぶちょー「あっ、ニュースでもやってましたね!」
るる「じゃあ、「万札」で「しぶさわ」は 無理なんですね・・・」
せんせー「まぁ、まず不可能ね」
せんせー「ちなみに、国から出されたダメな例は」
せんせー「・「高」と書いて「ヒクシ」 ・「太郎」と書いて「ジロウ」 ・「太郎」と書いて「マイケル」」
せんせー「・・・というところね」
せんせー「あとは、役所に提出して アリかナシか判断されるって感じね」
ぶちょー「役所が判断するのでしたら、 自治体ごとに判断が変わったりしますか?」
ぶちょー「キラキラネームが一切存在しない街とか、 キラキラだらけの街だったりとか・・・」
せんせー「んー、それは起こりそうもないかな」
せんせー「この手のモノって、 建前上は「自治体の判断」なんだけど、」
せんせー「法律が成立するとすぐ、 担当省庁が自治体向けのルールブックを 大量に作成するから」
せんせー「「・・・施行規則」「・・・施行細則」 「・・・ガイドライン」みたいな名前でね」
せんせー「さらには、各自治体の担当者を呼び出して 実務に関する説明会を実施しているわね」
せんせー「だから、国の担当省庁の考えとは 大きく外れたことは起こらない見込みなの」
ぶちょー「へー、そういうふうになってるのですね」
ぶちょー「あっ、これが行われるのって、 「法律の公布」の期間にですか?」
るる「ほーりつのこーふ?」
ぶちょー「社会科で習ったでしょ!?」
せんせー「はい、大正解!」
せんせー「「法律が成立した後30日以内に公布」と 憲法や国会法で定められている あの「公布」ね」
せんせー「その「公布」って、いわゆる 国民へのお知らせ期間なんだけど、」
せんせー「その裏では、省庁や役所の人たちが アレやコレや準備対応しているのよ」
ぶちょー「・・・思いもよらなかったです」
ぶちょー「ちなみに、今回の戸籍法の改正って、 施行はいつになるのですか?」
せんせー「今のところ、今年6月の公布から 「2年を超えない範囲」ってなってるわね」
せんせー「一般的な見方では、 来年中には施行する見込みのようね」
ぶちょー「施行まで1年前後の期間があるのですね」
せんせー「だったら、今から子作りに励めば、 「万札」や「五千」も間に合うかもね」
るる「あっ、ホントだー!」
せんせー「頑張ってみたら?」
るる「がんばります! 今すぐ子作りしまくります!」
ぶちょー「馬鹿なコト言わないっ!」
〇学校の部室
ぶちょー「キラキラした名前って、 ごく最近の流行りってイメージですよね」
せんせー「いえ、実のところ 昔からよくあるのよ」
せんせー「時代ごとにテイストが違ったりするけどね」
るる「キラキラネームのお侍さんとか いたのかなー?」
せんせー「そうね、戦国時代なら キラキラした幼名は結構多かったわよ」
るる「よーみょー?」
せんせー「元服、つまりオトナになるまで 使われていた名前のことね」
ぶちょー「たしか、徳川家康は「竹千代」ですよね?」
せんせー「そうそう、ソレのこと」
せんせー「たとえば、応仁の乱の東軍総大将の 細川勝元は、」
せんせー「息子に「聡明丸」って付けてるわよ」
せんせー「他には、蝦夷地松前藩の初代藩主の 松前慶広の幼名が、」
せんせー「「天才丸」だったりね」
ぶちょー「・・・親の期待が重そう」
せんせー「その一方で、あの織田信長さんだけど、」
せんせー「長男に「奇妙丸」って幼名を付けたり、」
せんせー「九男には、「人」と付けているわ」
ぶちょー「「人」って、あまりにもそのまま・・・」
るる「元服するまで「織田人」って名前!?」
せんせー「そう、信長さんって独特すぎる感性だから 名付けられた子供たちも大変よねー」
るる「あっ、せんせー!」
るる「信長って、モリランマルと爛れた関係の ソッチ系の人なのに・・・」
るる「女の人とも子作りしてたのですか?」
せんせー「いやいや、信長さんは 10人以上の妻と20人以上の子供を作った 立派な女好きさんだから」
るる「えー、知らなかった・・・」
せんせー「その当時の男性との関係って 一種の「嗜み」って感じだったの」
せんせー「ただ、信長についてだけど、」
せんせー「若かりし頃には、前田利家 晩年のお相手は、森蘭丸」
せんせー「といった、お気に入りの男子と 毎晩激しいプレイをしたと言われるけど」
せんせー「どちらも、否定的な見解もあるらしいの」
せんせー「特に、森蘭丸については、 後世の創作の可能性が高いみたい」
るる「えー、つまんない・・・」
ぶちょー「本能寺の変って、信長と森蘭丸が セットで描かれているイメージですけど」
せんせー「森蘭丸だけど、本能寺の変の当時 「小姓」というお側仕えだったことは 間違いないわ」
せんせー「とっても有能な秘書的存在だったから、 信長さんも相当気に入っていたようなの」
せんせー「で、江戸時代にその話を聞いた人が、 その「お気に入り」という部分に 腐のロマンを感じちゃったみたいね」
ぶちょー「腐のロマンって・・・」
せんせー「まあ、信長は真偽が定かではないけど、 武田信玄はガチの人だったみたいね」
せんせー「なにせ、家臣の男性に宛てたラブレターが 現代まで残されてるから」
ぶちょー「えっ・・・」
せんせー「しかも、その内容が・・・」
せんせー「『他の男子に言い寄ったのはホントだけど 一線は越えてないから、君が一番だよ』」
せんせー「・・・ってツッコミ要素満載で」
るる「戦国BL、しかも三角関係!」
ぶちょー「でも、武田信玄も、跡継ぎの勝頼など 子供が何人もいますよね」
せんせー「ええ、たしか10人くらいのはず」
るる「えー、信玄も両刀・・・」
るる「せんせー、男性一筋の戦国武将は いなかったのですか?」
ぶちょー「いないでしょ! 奥さんと跡継ぎの子供を作るのが 大事な時代って聞いてるから!」
せんせー「いやいや、 それが、ちゃんと存在したのよ!」
せんせー「しかも、室町幕府の 事実上の最高権力者という立場で」
ぶちょー「えーっ!?」
せんせー「まさに、さっき述べた 細川勝元の息子の「聡明丸」こと」
せんせー「室町幕府管領・細川政元のことだけどね」
せんせー「この人、気に入らない将軍を 失脚させられるほど 絶大なる権力を握っていたのだけど」
せんせー「奇人としても有名な人でね・・・」
ぶちょー「奇人・・・ですか?」
せんせー「具体的に言えば、放浪癖があったり、 修験道に異様に没頭したりね」
るる「しゅげんどー?」
せんせー「一言でいえば、天狗の法を習得する修業ね」
せんせー「マスターすれば、 空も飛べるようになったとか」
ぶちょー「空中浮遊!?」
るる「修行するぞ!修行するぞ!修行するぞ!」
ぶちょー「それ、ダメー!」
せんせー「で、その天狗の法の修業って、 女性と交わることも禁止されていたのよ」
せんせー「政元は、それを守って 生涯女性との肉体関係はなかったのだけど」
せんせー「男性との肉体関係は、 しっかり、ズッポリとね」
るる「政元さんって、BL天狗!?」
ぶちょー「BLと天狗をセットにしない!」
せんせー「その表現、イイわねー 小説のタイトルで使えそうな言い回しで」
せんせー「『最高権力者はマジカルBL天狗様!?』」
せんせー「・・・みたいな感じ?」
ぶちょー「ソレ、絶対に売れませんよ・・・」
ぶちょー「・・・ていうか、 この人って跡継ぎはどうしたのですか?」
ぶちょー「管領の家柄って、かなりの身分ですよね」
せんせー「あー、跡継ぎだけど、 あちこちから養子を貰っていたのよ」
ぶちょー「あっ、養子って手がありましたね」
せんせー「ただ、養子たちの跡継ぎ争いが 激しくなっちゃって・・・」
せんせー「政元も争いに巻き込まれて、 なんやかんやで暗殺されちゃったわ」
ぶちょー「うわー・・・」
せんせー「しかも、入浴中に お気に入りの男の子と一緒の時にね」
るる「さすが、BL天狗様!」
ぶちょー「そんな最高権力者、何かイヤです・・・」
ぶちょー「・・・ていうか、 元々はキラキラネームのお話なのに、」
ぶちょー「いつの間にか、戦国BL談義に!?」
せんせー「まぁ、いいじゃない」
せんせー「BL談義は、思春期女子には必須だし」
るる「必須科目ですねー!」
ぶちょー「んなワケ、ないでしょ!?」
ぶちょー「先生、歴史上のキラキラネームについて もう少し教えてもらえますか?」
そんなこんなで長くなりすぎたので
後編につづきます・・・
どうも❣️わからんでございます❣️
ましまる様は歴史に詳しいんですね❣️
確かに歴史上の人物の幼名って
変なの多いですね‥
豆ですが昔の人は1度子供を捨てる(注、捨てるフリです❗️)
と逆に丈夫に育つと言う不思議な信仰または風習のせいで
名前が捨丸とか拾丸‥😱〻キャー
まあ、お釈迦様の息子さんのラーフラ(障害)よりはマシですけどね🤣🤣🤣
あと、せんせーって菱沼さんに似てますね❤️
「その輝かしき御名は」は社会派の作品で、歴史上のキラキラネームについての雑談を楽しむ内容ですね。登場人物たちがキャラクターの名前について悩んだり、珍しい名前の話になったりしています。キラキラネームの流行りや改正される戸籍法についても触れられています。面白い話で、読んでいて楽しかったです。キャラクターたちの会話もカジュアルでリアルで、読者も思わず笑ってしまいました。この作品は現代の社会現象について考えさせられる一方で、軽いトーンで楽しませてくれるところが魅力です。
ましまるさんこんにちは!
蘭丸と信長、男色家だとは知ってましたがこれほど深く調べられていてとても面白いです!しかもラブレターの内容(笑)なんか言い訳っぽくて良いですね😂