【後編】エミちゃんの推し活(脚本)
〇学校の部室
ぶちょー「で、戦国時代のキラキラ幼名は 伺ったのですが、」
ぶちょー「他の時代のことも気になります」
せんせー「だったら、 奈良時代のお話でもしようかしら」
せんせー「何と言っても、 あの「恵美押勝」は欠かせないしね」
ぶちょー「あっ、教科書にも載ってる人ですね!」
ぶちょー「確か、藤原仲麻呂の別名でしたよね?」
せんせー「そうそう、淳仁天皇が即位したときに、 藤原仲麻呂にプレゼントした名前ね」
せんせー「一説によれば、仲麻呂自身が その名前を欲しがったとも言われているわ」
せんせー「その当時、藤原仲麻呂のほうが 発言力が上だったようだから」
ぶちょー「天皇よりも発言力が上ですか?」
せんせー「そう、仲麻呂は、淳仁天皇の2代前の 聖武天皇の皇后様から気に入られて、 若くしてスピード出世した人なのよ」
ぶちょー「聖武天皇の皇后って、光明皇后ですか?」
せんせー「はい、大正解! 仲麻呂は光明皇后から見て甥にあたってね」
せんせー「光明皇后の実家である藤原一族のなかで 特に利発だった仲麻呂を可愛がったのよ」
せんせー「聖武天皇が退位して、娘の孝謙天皇が 即位してからも、出世ペースは止まらず」
せんせー「政治的なトップである太政大臣にまで 出世しているわ」
せんせー「ちなみに、孝謙天皇と仲麻呂は 従兄妹にあたり、関係も良好だったみたい」
ぶちょー「血縁にも能力にも恵まれて、 トップまで上り詰めたのですね」
せんせー「しかも、仲麻呂は即位前の淳仁天皇を 自宅に住まわせていたの」
せんせー「それで、即位前の若かりし淳仁天皇の 後見人的ポジションで、 関係もズブズブだったみたいね」
るる「淳仁天皇と仲麻呂は ズブズブする関係だったんですか・・・?」
ぶちょー「違うでしょ!」
せんせー「淳仁天皇がズブズブする女性は、 仲麻呂がちゃんと選んで紹介したみたいね」
るる「ふぇー」
ぶちょー「それで、「恵美押勝」って 何か意味が込められた名前なんですか?」
るる「恵美ちゃん? 女の子?」
るる「あっ、仲麻呂って「男の娘」だったとか」
せんせー「いやいや、この「恵美」は姓だから」
せんせー「意味合いとしては、見たまんま 「美しさに恵まれる」って感じね」
ぶちょー「・・・ナルシストな姓なんですね」
るる「オシカツは・・・推し活?」
ぶちょー「そんな訳ないから!」
せんせー「そうね・・・」
せんせー「「押し勝つ」という強さを称えた意味か、」
せんせー「皆の「押し」の仲麻呂様しか「勝たん」、」
せんせー「どちらかの意味だと思うわ」
ぶちょー「絶対に前者ですよね・・・」
るる「「恵美ちゃんの推し活」ってコト?」
ぶちょー「違うでしょ!?」
せんせー「ま、そんな感じで 上代日本での指折りのキラキラネームの 「恵美押勝」は」
せんせー「『続日本紀』という正式な歴史書に その名を刻んでいるのよ」
ぶちょー「あれっ、先生・・・」
ぶちょー「恵美押勝って、教科書には 「恵美押勝の乱」で出てきますよね」
ぶちょー「そんな偉い人が、 反乱を起こしてしまうのですか?」
せんせー「そうそう、淳仁天皇の先代である 孝謙上皇と対立しちゃってね」
ぶちょー「あれ、2人は従兄妹で 関係も良好だったのでは?」
せんせー「そうだったのだけどね・・・」
せんせー「道鏡が現れるまでは」
ぶちょー「道鏡っ!?」
ぶちょー「女帝様との身分違いの大恋愛ですよね!?」
せんせー「そうそう、道鏡と孝謙上皇が 抜き差しならない関係になっちゃうのよね」
せんせー「実際の2人の関係は 「抜き差し」していたと思うけど」
ぶちょー「せんせー!!」
せんせー「そんな道鏡を孝謙上皇が寵愛することで、 話は大きく変わってくるのよ」
ぶちょー「ええと、先生・・・」
ぶちょー「この2人の恋の始まりって・・・」
ぶちょー「確か、病に伏せていた孝謙上皇を 道鏡が献身的に看病したのが キッカケですよね?」
せんせー「そうそう、身も心も全てケアされたことで 孝謙上皇もメロメロになったみたい」
せんせー「一説によると、 道鏡の股間のアレが立派すぎて、 孝謙上皇も骨抜きにされたとか・・・」
ぶちょー「せんせー!!」
せんせー「まぁ、股間云々は後世の創作みたいだから」
せんせー「なにせ、孝謙上皇を看病してときの 道鏡は、60代になっていたから」
せんせー「いくら「モノ」が立派でも、 60代の元気さを想像すると・・・」
ぶちょー「想像しないでください!!」
るる「せんせー、つまり・・・」
るる「どーきょーっていう絶倫な老人が 孝謙上皇の愛人だったってコトですよね?」
ぶちょー「身も蓋もない表現しないで・・・」
せんせー「それで、「献身的な看病」の後、 孝謙上皇は露骨に道鏡を出世させるの」
せんせー「道鏡だけでなく、彼の一族もね」
せんせー「その様子にツッコミを入れたのが、 淳仁天皇と、藤原仲麻呂というか恵美押勝」
せんせー「それがキッカケで、 はっきり対立関係が生じてしまうのよ」
るる「親戚より愛人を大事にしたってコト?」
ぶちょー「・・せめて「恋愛感情を優先」って言って」
せんせー「その結果、対応を悩んだ仲麻呂が 軍事権を握っておこうと考えたのだけど」
せんせー「それがバレて「反乱を企てている」とされ 処罰されたってワケ」
せんせー「これが教科書に載っている 「恵美押勝の乱」ね」
るる「ふぇー!?」
せんせー「キラキラネームも、いつかは廃れる」
せんせー「そんな教訓も込められたお話よね」
ぶちょー「・・・違います」
るる「せんせー、その後の話って・・・」
るる「どーきょーが、股間をブンブン振るって 甘い汁を吸い続けたってことでいいですか」
ぶちょー「・・・もう少し、オブラートに」
せんせー「そうね、恵美押勝の乱のあとは、 淳仁天皇も廃位されてしまい、」
せんせー「孝謙上皇が、自らまた天皇になるの」
せんせー「称徳天皇、としてね」
ぶちょー「2回も天皇になるのって、 何て言いましたっけ・・・」
せんせー「「重祚」というから」
せんせー「これは、現在まで126代続く天皇の歴史で 2回しか起こっていないレアケースね」
せんせー「で、邪魔者がいなくなった称徳天皇は、 道鏡を太政大臣禅師に引き上げるの」
ぶちょー「太政大臣って、藤原仲麻呂も就いた 政治のトップの位ですよね」
せんせー「そう、政治のトップにしたうえで、 さらには「法王」という称号も授けるの」
せんせー「この「法王」って、 日本仏教界のトップを意味するものだから」
ぶちょー「・・・政治のトップに、仏教のトップ」
るる「なんだか、ホストに入れ込んだ挙句 手あたり次第に貢いでる女社長みたい・・」
せんせー「あながち間違っていないかもね」
せんせー「そして、称徳天皇の貢ぎ癖は止まらないの」
ぶちょー「もうプレゼントできるもの、無いですよね」
せんせー「もう1つ、あるじゃない」
せんせー「・・・天皇の位」
ぶちょー「・・・・・・・・・」
せんせー「ある日、宇佐八幡宮という神社で 神様のお告げがあった、との報告が来るの」
せんせー「そのお告げの内容は 「道鏡が天皇になればみんな幸せ」 っていうモノ」
せんせー「しかも、この報告をしてきたのは 道鏡の弟である弓削浄人なのよ」
ぶちょー「・・・自作自演ですよね」
せんせー「この報告を聞いた称徳天皇は 和気清麻呂という人を宇佐に派遣するの」
せんせー「ちゃんと「確認」してくるように、と」
るる「「確認」って、カギカッコが付いてるー」
ぶちょー「天皇からの圧が凄そう・・・」
せんせー「でも、宇佐から帰ってきた和気清麻呂が 天皇に報告した内容が、」
せんせー「「神様はこう言っていました。 『天皇家の人で皇位継承してねー』」って」
せんせー「そんな空気の読めない清麻呂には」
せんせー「流石の称徳天皇も激怒しちゃうのよ」
るる「せっかくのシナリオぶち壊しー!」
ぶちょー「天皇を怒らせてしまって 和気清麻呂は大丈夫だったのですか?」
せんせー「もちろん、大丈夫でないわよ」
せんせー「激怒した称徳天皇は 和気清麻呂を強制改名して流刑にしたの」
せんせー「和気清麻呂を、」
せんせー「別部穢麻呂(わけべのきたなまろ)って 名前にね」
せんせー「今の言葉にすると、 「タワケなヨゴレ」って感じね」
るる「うわー、悲惨・・・」
せんせー「これも一種のキラキラネームよね」
ぶちょー「・・・キラキラ感がゼロです」
せんせー「そんな和気清麻呂の対応で、 神武天皇より連なる皇位が 道鏡に乗っ取られることを防げたって話ね」
せんせー「以降、この天皇家の血脈は 現代までちゃんと続いているわよ」
るる「どーきょー、残念!」
せんせー「という訳で、」
せんせー「キラキラネームが歴史を動かした時代、 それが奈良時代」
せんせー「・・・ってお話でまとめてもイイ?」
ぶちょー「「恵美押勝」はともかく 「別部穢麻呂」はキラキラしてませんって」
るる「要するに・・・」
るる「股間が立派な愛人は最強、って話ですね」
ぶちょー「何でそーなるのよ!?」
ためになりますね~!!
もう『デスノート』の主人公みたいな名前は、現実には付けられないのですねww 「月(ライト)」なんて無理ありますもんね!
昔、日本史の先生がエロ坊主道鏡って言ってたの思い出します。懐かしいですね~😆 何故かほっこり・・・
今の政治家の中にも、正しいことをちゃんと言える人がいて欲しいですね。無理かな・・・
2話目も読ませて
頂きました❣️😘
ところで
和気清麻呂様の可哀想な無理クリな改名は
くだけた感じの現代語だと
おちりがき⭕️ない
になるんですよね‥
(ヒドス‥)😭
面白かったです!
上手く言葉にできないので前にコメントした方の言葉を借りますね。
上皇様の推し活〜道鏡との危険な恋の行方〜
の公開を心待ちにしております🥳🥳