6.獣人族になった理由(脚本)
〇華やかな裏庭
イーダ「ど、どうしました?」
アドリアン「・・・・・・」
アドリアン(また戻ったのか?)
アドリアン(今までと日時が違う?)
アドリアン(いや、それより)
アドリアン「・・・・・・」
アドリアン(なんでこんなのを一瞬でも)
アドリアン(怖いと思ったんだろう?)
アドリアン(前回、物凄い登場と告白をされて、それで・・・)
アドリアン「・・・・・・」
イーダ「あははっ」
イーダ「さすがに表情だけじゃ分かりませんよぅ」
イーダ「なんでも言ってくださいな」
アドリアン「・・・うむ」
アドリアン「君は」
アドリアン「俺のことが好きだったのか?」
イーダ「なななな、なんですか突然 あ、あ、当たり前じゃないですか」
アドリアン「離婚したいと思ったことは?」
イーダ「生まれて初めての幸運を どうして手放すんです?」
アドリアン「それは、他に」
アドリアン「好きな男がいるから・・・」
イーダ「他に好きな・・・?」
イーダ「・・・」
イーダ「え、ええ!アドリアン様!」
イーダ「・・・男色家だったんです?」
アドリアン「俺にじゃない!君にだ!」
イーダ「私・・・?」
イーダ「アドリアン様?」
アドリアン (本当に)
アドリアン (離婚証書を置いたのは彼女だろうか・・・)
イーダ「でも元気そうで良かったです」
イーダ「急に叫びだすからどうしたのかと──あれ」
イーダ「なんか耳が赤いですよ?」
アドリアン (耳に息が、背中に体が!)
「離れっ わ、もっと赤くなった!」
アドリアン 「・・・」
イーダ「フギャッ!?」
アドリアン (落ち着け、鎮まれ)
彼女の心臓の音が背中から聞こえて
死ぬほどホッとした
「ア」
イーダ「アドリアン様は?」
アドリアン「ん?」
イーダ「アドリアン様は、いつ私を好きになってくれるんでしょうね」
イーダ「待てば、その日は来ますか?」
アドリアン「・・・・・・」
イーダ「なんて、あはは」
「失礼しましたー」
アドリアン「・・・・・・」
アドリアン「何も言えるわけないだろ」
この後、
いつものように彼女を修道院に返した
あそこが一番彼女にとって安全なんだ
〇黒
繰り返すたびに
別れを言い渡すのが
しんどくなってる
〇城の廊下
今度こそ絶対
終わらせてみせる
〇立派な洋館
〇密林の中
獣人リファ「お貴族様が何の用だ!」
アドリアン「俺を」
アドリアン「獣人族の仲間にしてほしい!」
獣人リファ「はあ?」
殺害日時は分かってる
犯人の近くにいれば止められる
獣人リファ「・・・・・・」
獣人リファ「そーんなに私が好きなら、 考えてやれないこともないけど?」
獣人リファ「たまにいるんだよなあ」
獣人リファ「私にプロポーズしてくる人間のファン」
獣人リファ「お前の体、なんか好みだし」
獣人リファ「いいよっ」
獣人リファ「・・・・・・」
獣人リファ「違うのか?」
アドリアン「お、俺は」
アドリアン「きっ、君と」
アドリアン「君と、その」
獣人リファ「聞こえないぞ。はっきり言え!」
アドリアン(こんな無垢な少女を巻き込むなんて・・・)
アドリアン(・・・仕方がない)
アドリアン「君と!」
アドリアン「君と一緒にいられるなら」
アドリアン「食われてもいい」
獣人リファ「う・・・」
獣人リファ「いい度胸だ。気に入ったぞ!」
アドリアン「お、おい」
獣人リファ「なんだ。嫌なのか?」
アドリアン「い、いや」
アドリアン(小さい。腕の中ですっぽりと)
アドリアン(・・・ちゃんと成人の女だな)
アドリアン(それでもまるで)
アドリアン(罪を犯しているようだ)
〇アマゾンの森
〇森の中
アドリアン(修道院、ちゃんと聖女見張っててくれよ)
魔犬「女王様!お呼びですか?」
獣人リファ「ん、この雄の巣を作ってほしいんだ」
魔犬「雄に巣、ですか?」
獣人リファ「ああ、大丈夫。普通の人間の雄だからな」
獣人リファ「夜伽が終わっても死なないんだぞ」
魔犬「それは凄い。ですが・・・」
魔犬「雄のお肉なしで、 妊娠の時大丈夫ですか?」
獣人リファ「そこなんだよねえ」
〇アマゾンの森
〇森の中の小屋
獣人リファ「ご先祖様♪」
獣人リファ「私の初めての旦那紹介するぞ♪」
アドリアン「初めて、か」
アドリアン(入れ替える前提のセリフだな)
アドリアン「ミイラにしたのか」
獣人リファ「ああ、死んで新しく生まれ変わったんだ」
獣人リファ「これならまた一緒に暮らせるだろ?」
アドリアン「なるほど」
獣人リファ「そんなことより」
〇黒
アドリアン「いや、ちょっ・・・!」
リファ「照れるなってぇ」
(く、食われる・・・!)
「──────!──────!」
〇森の中
アドリアン(・・・生き残った)
獣人リファ「なーなー」
獣人リファ「お前、死んだらどうする?」
アドリアン「え」
獣人リファ「女神教信者って、 死んだら土に埋められるんだろ」
獣人リファ「焼きも乾かしもせずに」
アドリアン「ああ女神様の大いなる織物の糸になるからな」
アドリアン「『死んだまま』にこだわる」
アドリアン「燃やしたり傷つけることは嫌がる 年寄りは特に」
アドリアン(祖父があんな風になったのは、獣人族に体を荒らされる恐怖もあったんだよな)
獣人リファ「ふーん」
獣人リファ「アドリアンは、 あんまり気にしてないって感じだな?」
アドリアン「いや、別に俺は」
アドリアン「そこまで拘りがないだけのことだ」
獣人リファ「よし」
獣人リファ「死んだら、私に食べられるのと、ミイラになるのと、埋められるの──」
獣人リファ「どれがいいか、考えておくんだぞっ」
アドリアン「・・・・・・」
アドリアン「意外だな 俺に選択権があるのか?」
獣人リファ「なに言ってるんだ」
熊「命の数だけ神様がいるんですよ」
熊「獣人族は、 子供の時から皆そう教わるんです」
アドリアン「・・・」
〇山中の川
アドリアン「リファ」
アドリアン「聖女のことなんだが、どう思ってる?」
獣人リファ「聖女?」
獣人リファ「お前らが大事にしてる奴だろ?」
獣人リファ「なんか凄いんだってなあ」
獣人リファ「獣人族のことも守ってくれたらいいのにな」
魔犬「本当ですねっ」
魔犬「今年は果物が豊作だから、 たくさんもてなしますのに」
獣人リファ「そしたらご利益いっぱいくれるな」
アドリアン「・・・・・・」
〇アマゾンの森
〇アマゾンの森
〇教会
アドリアン「・・・・・・」
アドリアン「イーダ」
アドリアン「今回もこうなる気が、してたんだ」
アドリアン「あのおおらかな獣人族──」
アドリアン「彼らが犯人じゃないって」
アドリアン「一緒にいて、よく分かったよ・・・」
「くそ!」
アドリアン(俺はあの夜、イーダの死体のあった場所を 見張っていた)
アドリアン(ところが誰も現れなかった しかも発見場所はいつもと違っていた)
つまり
俺がいたから、捨てる場所を変えたんだ
アドリアン(獣人族に罪をなすりつけている誰かがいる!)
アドリアン(卑怯者は、誰だ・・・!)
つづく
〇黒