第08話 アイドル!警察!強盗!(脚本)
〇超高層ビル
大日本銀行
午前 9:00
〇高層ビルのエントランス
三井 陽和(みつい ひより)「みっなさーん!」
三井 陽和(みつい ひより)「元気に預金してますかー!」
三井 陽和(みつい ひより)「みんなの預金額、みいぴょ気になる~~」
銀行の客「そんなの教えられないよ!」
見物客「みいぴょが教えてくれたら教えるー」
三井 陽和(みつい ひより)「えー、じゃあ教えちゃおっかな~~!」
三井 陽和(みつい ひより)「みいぴょの預金額は~~」
三井 陽和(みつい ひより)「に・・・」
マネージャー 黒宵「こら、言うんじゃない! (棒読み)」
マネージャー 十条「せやせや、黙っとかなあかんで」
マネージャー 十条「アイドルが預金額とか言うもんやない」
マネージャー 十条「残高230円ってバレたら夢壊れるやろ」
三井 陽和(みつい ひより)「何で言っちゃうの~~」
〇高層ビルのエントランス
プロデューサー「いいねえ、みいぴょちゃん!」
プロデューサー「横の二人もいい味でてるよ」
三井 陽和(みつい ひより)「ありがとうございます~~」
〇綺麗な会議室
白宵 覚(しらよい さとる)「マネージャー?」
三井 陽和(みつい ひより)「兼、現場のお手伝いね」
白宵 覚(しらよい さとる)「何をすればいい?」
白宵 覚(しらよい さとる)「芸能関係は全くの素人でな」
三井 陽和(みつい ひより)「平気よ」
三井 陽和(みつい ひより)「実務は本当のマネージャーに任せるから」
三井 陽和(みつい ひより)「現場で私とプチ漫才をしてくれればいいわ」
白宵 覚(しらよい さとる)「漫才・・・」
三井 陽和(みつい ひより)「台詞は構成作家が用意する」
三井 陽和(みつい ひより)「覚えて読めばいいだけよ」
白宵 覚(しらよい さとる)「いや、しかしな」
九条 醒夜(くじょう せいや)「心配せんでええて」
九条 醒夜(くじょう せいや)「どんだけスベっても僕が拾たるから」
白宵 覚(しらよい さとる)「スベる前提!?」
アルテミス「ひよりは大丈夫なの?」
三井 陽和(みつい ひより)「な、なんのこと」
アルテミス「ひより、苦手だよね」
アルテミス「素を知ってる人の前でアイドルやるの」
三井 陽和(みつい ひより)「アル! それ言わない約束!」
アルテミス「僕、前にイベント観に行ったんだ」
アルテミス「そしたらひより、顔を真っ赤にして」
三井 陽和(みつい ひより)「アールっ! やめなさい!」
アルテミス「だから大丈夫だよ、覚」
アルテミス「ひよりも緊張してるから」
三井 陽和(みつい ひより)「もーー!」
九条 醒夜(くじょう せいや)「恥じらうひよりん・・・三杯はいけるわ」
九条 醒夜(くじょう せいや)「なあ、覚!」
白宵 覚(しらよい さとる)「九条、ツッコミの腕は90度くらいか?」
九条 醒夜(くじょう せいや)「こらあかんわ」
九条 醒夜(くじょう せいや)「大丈夫や、変な練習せんでええて」
九条 醒夜(くじょう せいや)「覚にはボケしか回ってこんから」
白宵 覚(しらよい さとる)「なぜだ!?」
九条 醒夜(くじょう せいや)「そういうとこや」
九条 醒夜(くじょう せいや)「そんで、ひよりん。銀行は大丈夫なんか?」
九条 醒夜(くじょう せいや)「"明日行きます、一日頭取させて下さい"」
九条 醒夜(くじょう せいや)「なんぼなんでん、急すぎんか?」
三井 陽和(みつい ひより)「それは大丈夫。だって──」
〇空
銀行頭取 執務室
午前 10:15
小判 早馬(こばん そうま)「どういうことですか!」
〇教会の控室
小判 早馬(こばん そうま)「どうしてアイドルの一日頭取なんか!」
小判 早馬(こばん そうま)「銀行強盗が来るかも知れないんですよ!」
小判 早馬(こばん そうま)「聞けば、昨夜急遽決まったとか」
小判 早馬(こばん そうま)「危機感無さすぎです!」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「あたしもちょっと驚いたわ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「説明していただけますよね、頭取さん」
大日本銀行 頭取「・・・」
大日本銀行 頭取「皆さんには"推し"がいらっしゃいますか?」
小判 早馬(こばん そうま)「・・・は?」
大日本銀行 頭取「"推し"ですよ!」
大日本銀行 頭取「全てを捧げたい、そう思う"推し"が!」
小判 早馬(こばん そうま)「いや、『バーン!』じゃない!」
小判 早馬(こばん そうま)「何言ってるんですか!」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「コバンくん。ここはあたしが」
小判 早馬(こばん そうま)「すみません、警部。つい」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「頭取さん、ちょっといいかしら」
大日本銀行 頭取「軽率だったとは思います、しかし」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「一つ言わせてもらうわ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「その気持ち、痛いほどわかるわー!」
小判 早馬(こばん そうま)「ええっ!?」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「人生に潤いを与えてくれる"推し"」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「その為にはどんな犠牲も厭わない」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「素晴らしいわ!」
大日本銀行 頭取「わかって、くれますか」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「心の底から!」
小判 早馬(こばん そうま)「ちょっと待った!」
小判 早馬(こばん そうま)「あなたの銀行が狙われてるんですよ!」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「コバンくん、駄目よ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「"推し"は全てに優先されるわ」
小判 早馬(こばん そうま)「警部はちょっと黙ってて下さい!」
小判 早馬(こばん そうま)「今からでも遅くありません」
小判 早馬(こばん そうま)「アイドルのイベントは止めましょう」
大日本銀行 頭取「お断り致します」
大日本銀行 頭取「みいぴょに会えるなら死んでもいい」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「インソムニアに会いたい」
小判 早馬(こばん そうま)「だあーーーー!」
小判 早馬(こばん そうま)「構いませんよ、そっちがその気なら」
小判 早馬(こばん そうま)「我々は撤退します!」
小判 早馬(こばん そうま)「付き合いきれませんよ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「コバンくん、ちょっと」
小判 早馬(こばん そうま)「なんですか、警部!」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「落ち着きなさい」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「カウンター越しの強盗は成功率が低い」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「だから犯人は違う手口を使うはず」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「表は騒がしくなっても問題ないわ」
小判 早馬(こばん そうま)「しかし警部」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「大丈夫」
〇諜報機関
ここ一ヶ月の監視カメラは『見た』わ
お客の七割は固定客。顔も覚えたわ
〇教会の控室
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「不審人物を見つけるのは難しくない」
小判 早馬(こばん そうま)「だからって!」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「木を隠すなら森の中よ」
小判 早馬(こばん そうま)「確かに、アイドルのイベントがあれば」
小判 早馬(こばん そうま)「警備が手厚くても違和感はない」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「そういうこと。そして条件が同じなら?」
小判 早馬(こばん そうま)「我々が先に奴らを抑えられる」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「頭取には好きにさせましょ」
小判 早馬(こばん そうま)「警部がよろしければ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「部下は納得してくれたわ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「あなたはいつも通り業務をして頂戴」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「犯罪者はあたしたちに任せて」
大日本銀行 頭取「心強いです」
大日本銀行 頭取「では、私はそろそろいいですかな」
大日本銀行 頭取「一日頭取のサポートがありますので」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「ええ。コバンくん、お暇しましょう」
小判 早馬(こばん そうま)「了解しました」
〇施設の廊下
小判 早馬(こばん そうま)「すみません、取り乱してしまって」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「いいのよ、二人で賛同したら変だもの」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「本気で否定してくれて助かったわ」
小判 早馬(こばん そうま)「警部、それはどういう・・・」
小判 早馬(こばん そうま)(成功する銀行強盗の特徴──)
小判 早馬(こばん そうま)(”社員による協力”)
小判 早馬(こばん そうま)(頭取も警戒すべき、ということか)
〇高層ビルのエントランス
マネージャー 十条「はいはい、列乱したらあかんで」
マネージャー 十条「一日頭取さんのサインはこっちやで」
マネージャー 黒宵「みいぴょさん、俺にもサイン下さい!」
マネージャー 十条「はいはい、毎度──って」
マネージャー 十条「兄さんこれ、借金の契約書やないかい!」
三井 陽和(みつい ひより)「みいぴょ、保証人のサインは嫌~~!」
プロデューサー「はいここでテロップ」
気を付けよう! 気軽な署名は事故の元!
大日本銀行 頭取「み、みいぴょさん!」
大日本銀行 頭取「視察のお時間です」
プロデューサー(撮れ高チャンス!?)
大日本銀行 頭取「あ、カメラの方はご遠慮下さい」
大日本銀行 頭取「個人情報が沢山ある場所を通りますので」
大日本銀行 頭取「みいぴょさんとお付きの方のみどうぞ」
三井 陽和(みつい ひより)「はーい! いま行きまーす!」
三井 陽和(みつい ひより)「みんな、また午後のイベントでねぇー!」
マネージャー 黒宵「視察か。エントランスを離れるのは痛いな」
マネージャー 十条「覚、ついていってくれへんか」
マネージャー 十条「僕、ここを見張っとくわ」
マネージャー 黒宵「わかった」
マネージャー 十条「さてと」
マネージャー 十条(バスローブのおっさんはおらんみたいやな)
マネージャー 十条(とはいえ)
マネージャー 十条(下手には動けへんな)
マネージャー 十条「・・・」
マネージャー 十条(癪やけど頼んどくか)
〇おしゃれな廊下
大日本銀行 頭取「こちらをご覧下さい」
大日本銀行 頭取「今は味気ないビルですが──」
大日本銀行 頭取「通路など、旧銀行の名残があります」
三井 陽和(みつい ひより)「歴史を感じる~~」
銀行の客「みいぴょ! 一日頭取頑張って!」
三井 陽和(みつい ひより)「ありがと~~!」
大日本銀行 頭取(可愛い・・・もう死んでもいい)
三井 陽和(みつい ひより)「頭取さん?」
大日本銀行 頭取「はっ、すみません!」
大日本銀行 頭取「次はこちらです」
三井 陽和(みつい ひより)「はーい!」
マネージャー 黒宵「・・・」
しかし、どうするんだ?
〇綺麗な会議室
白宵 覚(しらよい さとる)「撮影をしながら、客の心を読むなんて」
三井 陽和(みつい ひより)「できるわ」
三井 陽和(みつい ひより)「アイドル『みいぴょ』は完成されている」
三井 陽和(みつい ひより)「考えなくても出来るもの」
三井 陽和(みつい ひより)「全神経をスキャンに集中する」
白宵 覚(しらよい さとる)「だが、客は何百人といるんだぞ」
白宵 覚(しらよい さとる)「普通に考えても、そんな数──」
三井 陽和(みつい ひより)「やるのよ。出来る出来ないじゃない」
三井 陽和(みつい ひより)「もう10年よ」
〇ライブハウスのステージ
撮影中にあくびを噛み殺して
不眠症で重く怠い身体を引きずりながら
歌もダンスもやってきた
〇ライブハウスの控室
目のクマはコンシーラーで隠して
頭痛や吐き気は薬で誤魔化してきた
〇綺麗な会議室
三井 陽和(みつい ひより)「それでも──私は『アイドル』だから」
三井 陽和(みつい ひより)「頑張らなきゃって──」
三井 陽和(みつい ひより)「でも、もう限界」
三井 陽和(みつい ひより)「私は、ちゃんと心の底から笑いたいの」
三井 陽和(みつい ひより)「だから、不眠が治るならなんだってやる」
三井 陽和(みつい ひより)「何百人だって何千人の心だって──」
〇おしゃれな廊下
三井 陽和(みつい ひより)(見通してみせる!)
〇高層ビルのエントランス
〇おしゃれな受付
〇黒
待ち時間長いな。あー貯金少なっ。銀行印忘れたっ!トイレどこ?お母さーん。このアセットが今後きますよ。一枚二枚三枚・・・
利率、もう少し何とかならんかな。決算書、どこ行った?また来てるよ、あのお婆さん。退屈~お父さんまだかな。利息すくねぇ!
三井 陽和(みつい ひより)(どんな小さな声も逃さない)
三井 陽和(みつい ひより)(強盗犯は必ず見つけ出す!)
〇薄暗い廊下
午前 11:20
貸金庫 地下通路
大日本銀行 頭取「ここは貸金庫でしてな」
大日本銀行 頭取「貴重な宝石や有価証券が入っております」
大日本銀行 頭取「保有された資産は軽く国家予算を超えます」
三井 陽和(みつい ひより)「中身、気になっちゃう~~!」
大日本銀行 頭取「凄いでしょう!」
大日本銀行 頭取「ご紹介できて、私は幸せです!」
三井 陽和(みつい ひより)「・・・はあっ」
マネージャー 黒宵「大丈夫か」
三井 陽和(みつい ひより)「だい・・・じょうぶ」
銀行辞めてぇ。でも親に何て言えば。こいつら三時になったらあたしの仕事が終わるとでも思ってるの?クッキーの残りが引き出しに
三井 陽和(みつい ひより)「視覚情報がないと対象者がぶれるから」
三井 陽和(みつい ひより)「ビル全体に切り替えただけ」
マネージャー 黒宵「全体って。職員も全員か!」
マネージャー 黒宵(一体何千人になるんだ)
マネージャー 黒宵(そんな大量の人間の心を読み続けたら)
マネージャー 黒宵「お、おい! 大丈夫か」
マネージャー 黒宵「すごい汗だ。休んだ方がいい」
三井 陽和(みつい ひより)「でも私が・・・見つけないと」
マネージャー 黒宵「頭取さん!」
マネージャー 黒宵「そろそろお昼にしませんか?」
マネージャー 黒宵「うちのみいぴょ、お腹空いたみたいで」
大日本銀行 頭取「私としたことが!」
大日本銀行 頭取「みいぴょさんの空腹に気づけぬとは不覚」
大日本銀行 頭取「執務室にお弁当のご用意があります」
大日本銀行 頭取「三ツ星レストランからのお取り寄せで」
大日本銀行 頭取「きっと気に入って貰えるかと」
三井 陽和(みつい ひより)「た・・・楽しみ~~」
大日本銀行 頭取「参りましょう、ではこちらに」
三井 陽和(みつい ひより)「ごめんなさい」
マネージャー 黒宵「気にするな。ほら、行くぞ」
三井 陽和(みつい ひより)「うん・・・」
──これで俺達は大金持ちだ
三井 陽和(みつい ひより)「見つ・・・けた!」
〇地下駐車場
──もうこれで、悩まなくてすむ
──借金にも・・・不眠にも・・・
〇薄暗い廊下
三井 陽和(みつい ひより)「地下駐車場よ! 急がないと!」
マネージャー 黒宵「駐車場!?」
三井 陽和(みつい ひより)「奴らの狙いは現金輸送車なのよ!」
マネージャー 黒宵「この警備だぞ。逃げられるわけが」
三井 陽和(みつい ひより)「逃げられるわ、だって──」
〇トラックのシート
犯人は全員──
全員、大日本銀行の社員なの!
職員が犯人とは!一人ならまだしも三人全員が協力していたら持ち逃げに誰も気づかないですね。
追うインソムニアの活躍がどうなるか気になりますが、強奪犯達がこの後どうやって逃げる計画を立てているのかが、一番気になっています🤔
ビル一帯を覆うほどの円…ゼノ並の使い手(違)
警部が内部の協力者を疑ってますが、まさか全員…。
監視カメラの確認は無駄足でしたが、この展開は警部の予想の範囲にも思える。これはいよいよ顔合わせかな!?
本物の職員が犯人!😳
これは防げないですね!
警察サイドは犯人にどこまで迫っているのか……
次回緊迫の展開になりそうですね。