デス・パレードは祈りと共に

はじめアキラ

エピソード23・業の中(脚本)

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〇実験ルーム
須藤蒼「えっと・・・」
須藤蒼「あ、あった!これで大体測れるかな?」
峯岸輪廻「よし、いいぞ。まず、三人の入っているカプセルの高さから計算、だな」
峯岸輪廻「全員が足がつく状態にしないといけない。満水からどれくらい水が減れば息ができるかどうか、だ」
峯岸輪廻「・・・入れられる水が冷たくないことを祈るばかりだな」
須藤蒼「確かに。風邪ひいちゃったら駄目だもんね・・・」
峯岸輪廻「・・・大体、こんなところか」
峯岸輪廻「まずA。少年の入っているカプセル。彼は小柄だから、水を300ミリ入れる程度で限界だと思う」
須藤蒼「つまり、彼の瓶には、700ミリ血を入れないといけないってこと、だね」
峯岸輪廻「そうだ。次、女性が入っているカプセルB。彼女の身長から考えるに、半分程度までしか水は入れられないだろうな」
須藤蒼「つまり、Bの瓶には500ミリ、血を注がないといけない、と」
峯岸輪廻「最後、おじいさんが入っているCのカプセル。こちらは六分目くらいのメモリまで入れないと厳しいだろうから・・・」
須藤蒼「血を400ミリ、かな?ということは・・・」
峯岸輪廻「700+500+400。1600ミリ。・・・これなら、多分俺達二人の血で足りるだろう」
須藤蒼「良かった、じゃあ僕は・・・」
峯岸輪廻「200ミリくらい血を抜いてくれないか?お前は余力を残しておいてくれ、念のため」
須藤蒼「ちょっ・・・輪廻さんの体重で1400ミリは結構危ないんじゃ」
峯岸輪廻「ダイジョウブダイジョウブ。これくらいなんとかなるって。じゃあ注射器を・・・」
女性「ちょっとお!勝手に話進めないでよ!!」
峯岸輪廻「なんですか、今度は・・・」
女性「何当たり前のように、あたし達が水に浸かる前提で話進めてるわけ?」
女性「あたし嫌なんですけど、水浸しになるの!溺れなくたって濡れるし、疲れるし、いいことなんもないじゃない!」
峯岸輪廻「は、はあ?」
女性「だいたい、この服いくらすると思ってんの?あんた達ガキの小遣いじゃ買えないくらいの値段するんだからね」
女性「駄目になったらどうしてくれんの!?ねえ、責任取って弁償してくれるわけ?」
女性「あたしは嫌よ、あたしのポットには水が一滴も落ちてこないようにしてくれなきゃ!」
須藤蒼「え、ええ・・・?」
老人「相変わらずお前は勝手なことばかり言いよって・・・!」
老人「じゃあ何か?自分が濡れないために、私らに犠牲になれとでも言うつもりか?」
老人「お前みたいな女に生きてる価値があるとは思えん!溺れて死んでしまえばいいわ!」
女性「な、なんですって!?」
老人「濡れるのが嫌なのは私も同じ!本当なら私が濡れないようにしてくれと言いたいところだ!!」
老人「水が冷たいかもしれないんだろうが。長時間水に浸かっていたら、窒息しなくても低体温症で死ぬかもしれん・・・!」
老人「だったら私のような年配者を労って、私が一番濡れないように工夫するのがお前たち元気な若者の仕事だろう!」
須藤蒼「え、えっと・・・」
女性「勝手なことばっか言わないでよ!あんたみたいなダッサいボロボロの服なんかいくら濡れても関係ないでしょ!?」
女性「ていうかあ、どうせあんたみたいな年寄り、長生きしないんだからさあ。ここでちょっと早く死んだってそんなに損しないじゃん!」
女性「あたしなんかまだ三十年しか生きてないんだから!あんたみたいな老いぼれのせいで酷い目に遭うのも死ぬのもごめんなんですけど!」
老人「お、老いぼれだと!?」
女性「何よ、本当のこと言っただけじゃない!!」
須藤蒼「・・・・・・っ」
須藤蒼「い、いい加減に・・・っ!」
男の子「いい加減にしろよ、あんた達!」
女性「!」
老人「!」
男の子「さっきから黙って聞いてれば・・・自分のことばっかり気にして!」
男の子「あんた達、忘れてない?あそこにいる兄ちゃんたちは・・・その気になれば俺達なんか見捨てて次に進めるんだぞ?」
男の子「俺達、あの人達と全然関係ないじゃん。赤の他人じゃん。命を賭ける価値なんて本来ないじゃん」
男の子「それなのに助けてくれようとしてんだぞ。あんたら、それに感謝する気持ちないのかよ!?」
女性「そ、それは・・・」
老人「うう・・・」
男の子「死にたくないし、嫌な思いしたくないし、風邪ひきたくないし、水が冷たかったら嫌だし。俺だってそうだから、気持ちはわかるよ」
男の子「けど、俺達、見捨てられても文句言えない立場だってのを忘れちゃ駄目だと思う」
男の子「自分が生き残るために・・・人に嫌なことを押し付けて平気でいるような奴を、助けたいってあんたらは思うのか?」
男の子「俺だったら、そんなやつ、きっと見捨てる。・・・助けたくない」
男の子「なあ。・・・こんな、こんなこと。小学生の俺に言われて、大人のあんた達、恥ずかしくないわけ・・・?」
女性「あ・・・」
老人「・・・・・・」
老人「・・・確かに、その通りだな、少年」
老人「・・・すまんかった。私としたことが、冷静さを欠いていた」
老人「生き残りたいのは、全員一緒、だな。怖い思いをしたくないのも」
女性「・・・そう、よね。・・・・・・ごめん。あたし・・・・・・その・・・・・・」
男の子「わかってくれたなら、いいよ。・・・そこの、お兄ちゃんたちさ」
男の子「本当にありがとう。俺たちのために、命を賭けてくれて」
男の子「ほんと、感謝してるから」
須藤蒼「・・・!」
峯岸輪廻「どうした?」
須藤蒼「あ、いや、その・・・。感謝されるって、嬉しいなって。それも、同年代の子に」
峯岸輪廻「ふふっ、良かったな」
峯岸輪廻「さあ、残り時間がない。注射器は準備できたな?」
須藤蒼「は、はい!」
峯岸輪廻「間違いないように、きっかり血を抜いて入れていくぞ」
峯岸輪廻「入れすぎ、抜きすぎには十分注意するんだ」
須藤蒼「はい、わかりました!」

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