武術の心得

夏目心 KOKORONATSUME

2 巡り合う二人(脚本)

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夏目心 KOKORONATSUME

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〇体育館の中
霧島唯斗「せい!せい!!」
神坂誠二「頑張ってますね、あの新入り」
霧原遊戯「そうだな。ボサッとしてたら、追い抜かれちゃうかも知れないな」
  霧島が剣道部に入ってから約一ヶ月。此処最近霧島の様子を見てたが、毎日鍛錬を怠る事無く部活に参加し、何時も人一倍
  練習に打ち込んでいた。
暗森敬一「皆お早う。調子はどうだ?」
神坂誠二「あ!お早う御座います!暗森先生!」
霧原遊戯「お早う御座います。調子は良好です」
暗森敬一「そうかそうか!それは何よりだな。今日は練習試合をやろうと思う。二人共準備してくれよ」
霧原遊戯「分かりました!それなら是非、神坂とやらせて頂けませんか?」
暗森敬一「意気込みが良いな霧原。分かった。やらせよう」
霧原遊戯「有難う御座います!」
霧島唯斗「お早う御座います!えっと・・・あんもり先生!」
暗森敬一「あはは、お早う・・・くらもりだよ。くらもり」
霧島唯斗「あ・・・御免なさい・・・ちゃんと覚えて無くて」
暗森敬一「大丈夫。内の生徒の殆どに間違われてたから・・・」
霧島唯斗「は、はぁ・・・」
霧島唯斗「あの、さっき練習試合やるって言ってましたよね!?」
暗森敬一「あぁ、やるぞ」
霧島唯斗「やっぱり!!俺にも是非やらせて下さい!!」
暗森敬一「元よりそのつもりだよ。最初は霧原と神坂にやって貰うから、霧島はその後でね」
霧島唯斗「有難う御座います!」
神坂誠二「あの霧島って奴、大丈夫かな・・・」
暗森敬一「どうしたんだい神坂?」
神坂誠二「いや、何と言うか・・・あいつ何処と無く無理してる気がするんですよ・・・何か焦ってると言うか・・・」
暗森敬一「成る程ね・・・君にはそう見えると?」
神坂誠二「はい。何と無くで、今はハッキリと断言出来ませんが・・・」
暗森敬一「分かった。何か有ったら直ぐに報告してくれ。相談させて貰うから」
神坂誠二「分かりました」
  霧島の状態に何処か思う所が出来たが、今はまだ何とも言えなかった。ともあれ俺達は練習試合の準備をして、
  霧原先輩と向かい合ってお辞儀をするのだった。
暗森敬一「今日は付き合って貰って申し訳有りませんでした」
女性教員「いえ、大丈夫です。剣道って三人で試合を判定するんですよね?」
暗森敬一「そうです。主審一人と副審二人で判定する物ですので、大丈夫そうですか?あいつ等かなり動きが早いので」
女性教員「大丈夫ですよ!研修の時に見させて貰ったので!」
暗森敬一「有難う御座います!霧島、君も一緒にやってくれないか?」
霧島唯斗「俺もですか?」
暗森敬一「あぁ、相手の動き方を見たりすれば、良い刺激に成ると思う」
霧島唯斗「・・・!是非やらせて下さい!」
  各々の準備が整い、いよいよ練習試合が始まる。
暗森敬一「二人共準備は良いな?」
霧原遊戯「大丈夫です」
神坂誠二「何時でも行けます」
暗森敬一「それでは、よーい・・・」
暗森敬一「初め!」
霧原遊戯「せい!」
神坂誠二「はぁ!!」
神坂誠二「くぅ!」
霧原遊戯「まだまだ!」
神坂誠二「あう!?」
暗森敬一「一本!!」
神坂誠二「・・・流石先輩です」
霧原遊戯「いや神坂。前にやった時より動きが良く成ったぜ」
神坂誠二「えへへ、素直に嬉しいです」
暗森敬一「良し、二戦目行くぞ」
霧原遊戯「はい!」
  その後、俺は霧原先輩から一本取る事に成功したが、その次で先輩に一本取られて負けてしまった。
暗森敬一「二人共良い腕してるな」
霧島唯斗「先生!あの二人の試合凄かった!副審やらせて貰ったけど、着いて行くのに精一杯で!」
暗森敬一「まぁ、最初に見てると難しいよな。さて、次は霧島の番だ。準備しなよ」
霧島唯斗「はい!」
暗森敬一「神坂!」
神坂誠二「はい、何でしょう」
暗森敬一「二戦連続で申し訳無いが、次は霧島と試合してくれないか?」
神坂誠二「あ!分かりました!」
暗森敬一「助かる。霧原、良いか?」
霧原遊戯「何でしょうか?」
暗森敬一「今度はあっちの先生と一緒に副審やって貰えるか?」
霧原遊戯「大丈夫ですよ」
暗森敬一「有難う。それじゃあ準備始めるぞ」
  暗森先生の指揮の元、俺は霧島とも試合する事と成った。試合の結果は俺の勝ちだったが、霧島は何処か焦ってる気持ちが、
  俺には感じ取れた。

〇教室
  練習終わり。
神坂誠二「雫、只今」
安西雫「お帰り誠二!今日はどうだった?」
神坂誠二「今日は朝から練習試合したよ。先輩に負けて、後輩に勝った」
安西雫「やるじゃん!」
神坂誠二「そう言うそっちは?早く泳げる様に成ったか?」
安西雫「鍛えては居るけど、中々伸びないかな?それでも一番早いのあたしだけど」
神坂誠二「おいおい、それだけでも凄いじゃん。俺の方が負けてる」
安西雫「そんな事無いって!」
  雫は水泳部。俺は剣道の朝練を終わらせ、お互いに他愛の無い話で盛り上がっていた。
安西雫「有れから随分経つけど、その後新入り君はどんな感じ?」
神坂誠二「そうだな・・・荒削りとは言え実力が着いて来てるのは間違い無いんだけど、何処か引っ掛かるんだよな・・・」
安西雫「どう言う事?」
神坂誠二「何と言うか、何かを成し遂げたいって感じなんだよ。目標に向かって頑張るのは良いんだけど、何か心配でさ」
安西雫「成る程ね。何か有ったら部活の先輩として相談して上げないとね」
神坂誠二「あぁ、そのつもり」
安西雫「ねぇ、折角だから花壇の水やり行かない?ウジウジしてるなら何か気分転換した方が良いよ」
神坂誠二「・・・そりゃ良い考えだな。分かった、付き合うよ」
安西雫「決まりだね!じゃあ行こうか!」

〇体育館の裏
神坂誠二「取り合えず重い物は俺が何とかするから、雫はホースとかお願い」
安西雫「任せて!水運ぶの気を付けてね」
安西雫「誠二!今の音!?」
神坂誠二「近くからだ!行って見よう!」
日村正雄「何だよ今日もこれっぽっちか・・・」
阿久井俊夫「霧島!親の財布からパクって来いよ!」
霧島唯斗「そんな事・・・出来る訳無いだろ・・・」
阿久井俊夫「あぁん?口ごたえしようってのか?なら有り金全部寄越せや!!」
安西雫「貴方達!!こんな所で何してるの!?」
日村正雄「お、おい阿久井!こいつは拙い!!」
阿久井俊夫「チクられる前に逃げるぞ!!」
安西雫「ねぇ君大丈夫!?何が有ったの!?」
霧島唯斗「はぁ・・・はぁ・・・」
神坂誠二「お前霧島じゃ無いか!あいつ等に何された!?」
霧島唯斗「・・・はぁ・・・はぁ・・・」
神坂誠二「駄目だ錯乱してる。保健室に連れてかないと。雫、誰でも良いから先生呼んで来てくれるか?」
安西雫「分かった。なら急ぐわね」
神坂誠二「頼んだ。さぁ、行くぞ霧島」
安西雫「ん?」
安西雫「もしかして、さっきのあの子の?」

〇保健室
霧島唯斗「あ・・・づ・・・!!」
保健の先生「ほらほらじっとしてて!直ぐ終わるから!」
霧島唯斗「痛たた!!」
神坂誠二「先生、どうですか?」
保健の先生「幸いそこまで酷い怪我はして無いわ。肝心なのは中身の方よ。虐めと成っては適切なカウンセリングが無いと」
神坂誠二「そうですよね・・・」
安西雫「誠二!先生方連れて来たよ!」
神坂誠二「あぁ!有難う!」
男性教員「神坂君、安西さん、知らせてくれて有難う。霧島君は?」
神坂誠二「あぁ、こちらです」
霧島唯斗「・・・・・・」
男性教員「霧島君!酷い有り様じゃ無いか!何が有ったか教えてくれるか!?」
霧島唯斗「はい、ありのまま話します・・・俺のクラスに、日村と阿久井って名前の生徒が居ますよね?」
男性教員「あぁ、居るな・・・もしかして、その二人に?」
霧島唯斗「はい、中学の時から俺が虐められてて、先生に話しても何もして貰えなくて・・・高校に入った時はあの二人も一緒だって聞いた」
霧島唯斗「時は驚きはしました。もう高校生だから関わる事無いと思ったけど相変わらずで・・・」
男性教員「そ、そうだったのか・・・何故もっと早く相談してくれなかったのだ?」
霧島唯斗「あいつ等教員でも手が出せない様な立ち位置だったから、今でもそれは変わらないんです」
男性教員「そ、そうなのか・・・」
暗森敬一「ちょっと待った霧島!もしかして君、自力で虐めを解決する為に剣道部に!?」
霧島唯斗「はい、自分が強く成れば、相手は何もして来なく成る。あいつ等が突っ掛かって来るなら返り討ちにすれば良い。そう思って」
霧島唯斗「剣道部に入ったんです」
暗森敬一「何て事を・・・だから何時も必死だったのか・・・」
霧島唯斗「だからお願いです暗森先生!俺にもっと技を教えて下さい!俺が強く成れば、あいつ等を見返せるんです!だから!」
暗森敬一「出来ない相談だ」
霧島唯斗「え!?どうして・・・」
暗森敬一「良く聞きなさい。空手や剣道等の武術は古来から有る伝統で、これらの力は人を活かしたり、守ったりする為の物なんだ」
暗森敬一「それを仕返しだの、弱い者虐めに使ったら、それは只の暴力だ。僕はそんなつもりで君達に剣道を教えてなんか無い!」
暗森敬一「何より、この手の力の使い方を間違えたら、元の生活に戻れなく成るかも知れないんだ。力を手にしたら、それ相応の責任が」
暗森敬一「問われる。実際やって見て分からなかったのか!?」
霧島唯斗「・・・・・・」
暗森敬一「兎に角、その日村と阿久井にはこれから厳重注意を言って来る。二度と虐めが出来ない様、対策を練るから、霧島、お前は」
暗森敬一「一度頭を冷やせ。彼等がどんな立ち位置か知らないが、虐められてる生徒を放って置く程、僕等は薄情じゃ無い。そこは」
暗森敬一「分かってくれ」
霧島唯斗「でも、それでもあいつ等が懲りなかったら・・・」
暗森敬一「僕達は大人だ。だから出来る事をやる。霧島、やられたらやり返す。そんな気持ちをまだ捨てられないなら、」
暗森敬一「君には剣道部を辞めて貰うよ。剣道は仕返しの道具じゃ無い。分かったか?」
霧島唯斗「・・・・・・!?」
暗森敬一「後は僕達に任せてくれ。そろそろ行くよ」
神坂誠二「霧島・・・お前そんなに自分を追い詰めてたのかよ・・・暗森先生の言う事も分かるし、責めて相談して欲しかったよ」
神坂誠二「俺等、仲間だろ?」
霧島唯斗「何が・・・何が仲間だよ・・・!!」
神坂誠二「お、おい!霧島!!」
安西雫「駄目だよ誠二。今のあの子には何言っても無駄よ」
神坂誠二「・・・!?マジか・・・俺って無力だな・・・」
安西雫「そんな風に自分を責めないで。これはあの子が自分で解決しないと行けないから」
神坂誠二「・・・すまねぇ、どうも俺も頭冷やさないと行けない見たいだ」
安西雫「そうよ!一人で抱え込まないで、皆でやれる事やりましょう」

〇体育館の中
  その日の放課後。
暗森敬一「良し!良い感じだ!次はランニングやるぞ!」
霧原遊戯「先生、質問良いですか?」
暗森敬一「ん?どうした霧原?」
霧原遊戯「今日、霧島の奴見当たらないんですが、何か有ったんですか?」
暗森敬一「あぁ、やっぱ気付いてたか。実はな・・・」
  暗森先生は事の顛末を霧原先輩に全て話した。
霧原遊戯「えぇ!?それ大問題じゃ無いですか!その後どうしたんです!?」
暗森敬一「虐めをしていた日村と阿久井には今日厳重注意をして来た。これで凝りてくれたら良いんだが、正直霧島に対しては」
暗森敬一「強く言い過ぎた感が否めない」
霧原遊戯「・・・確かに難しいですね・・・覚えた武術で仕返しなんてしたら・・・」
暗森敬一「そうなんだ。もしかしたら、僕の発言で立ち直れなく成るかも知れないし、今日来なかったのも、僕の所為だし」
暗森敬一「何より、剣道や何かしらの武術をそんな風に使って欲しく無かったんだ」
霧原遊戯「気持ちは分かります。けれど・・・」
暗森敬一「まぁ、今は落ち着こう。少し時間を置いたら、また僕から霧島に向き合って見るから」
霧原遊戯「分かりました。何か力に成れる事が有れば言って下さい!」
暗森敬一「あぁ、ともあれ、早く皆でランニングやろう。時間が勿体無い」
  あの後、霧島は今日の練習に来なかった。虐められてた事と剣道に対する考え方の違いに寄るショックで、今の霧島には
  手を出せなかった。俺も自分の無力さに苛立ちこそ有ったが、今は出来る事をやるしか無かった。

〇通学路
霧島唯斗「はぁ・・・結局俺、どうしたら良かったんだろう・・・」
  霧島は一人で先に帰っていた。元々復讐の為に剣道を始めたが、暗森先生との考え方が違った事で一人で迷走していたのだった。
霧島唯斗「ん?有れは・・・」
狭間正義「こら君!今何時だと思ってるんだ!この時間帯は子供は外に出ちゃいかん!」
子供「えぇ!?だって、まだ暗く成る時間じゃ無いし!」
狭間正義「もうとっくに夕方を知らせるアナウンスは成ってるんだ!まだ此処で遊ぶと言うなら、無理矢理にでも連れて帰るからな!」
狭間正義「さぁ!おじさんが連れてって上げるから、家が何処か教えなさい!」
子供「ひ、一人で帰れるから大丈夫だよ!!さよなら!!」
狭間正義「全く・・・最近の子供は時間も守れないのか・・・!?」
霧島唯斗「あの、一体何をしていたのです?」
狭間正義「ん?さっきの子供がこんな時間まで外を出歩いてたから帰る様に注意してたんだ」
霧島唯斗「あぁ、そうでしたか・・・」
狭間正義「ねぇ君、何か有ったのかい?」
霧島唯斗「え?」
狭間正義「顔を見れば分かるよ。さっきまで泣いてたのも、君に何か有った事も、話して見なさい。おじさんが全部聞いて上げるよ」
霧島唯斗「あ、はい。実は・・・」
  霧島はこれまでの出来事を正義に話した。すると、
狭間正義「そんな事が有ったのか!!やっぱりあの学校には虐めが有ったんだな!!俺が睨んだ通りだった!!」
霧島唯斗「だから俺、強く成って虐めて来た奴等を見返したいんです。それなのに先生に反対されて」
狭間正義「それはますます許せない話だな!良し!それならおじさんが力を貸そう!」
霧島唯斗「え!?」
狭間正義「霧島君!俺がさっき子供を怒ったのはおじさんが正義の味方だからだ!この世界を寄り良くする為には間違った奴を正さないと」
狭間正義「いけない!君は考えた事が有るか?ヒーローが悪を容赦無く倒す理由を!」
霧島唯斗「い、いえ・・・考えた事は無いです・・・」
狭間正義「答えは簡単だ!ヒーローに倒される悪は、倒されて当たり前な奴だからだ!」
霧島唯斗「・・・!?」
狭間正義「世の中には、どれだけ言っても聞かない奴は沢山居る!だから言葉では無く行動や実力で分からせる必要が有るんだ!」
狭間正義「剣道をやっているんだったね?それを正義の為に使って見ないか?」
霧島唯斗「・・・・・・」
狭間正義「大丈夫!悪い奴をやっつけるならおじさんも手伝う!虐めてた奴等を懲らしめて、一緒に正義の味方に成ろう!」
霧島唯斗「・・・・・・」
霧島唯斗「俺・・・あいつ等に復讐したい!あいつ等を見返したい!!」
狭間正義「よぉし!良く言ったぞ!おじさんと一緒に、この世界から悪を無くそう!」

次のエピソード:3 間違った正義

コメント

  • 霧島・・・剣道を暴力に使うのは・・・自分みたいに武道でマウントを取れるようにっするだけと思ったのですが・・・
    虐め問題って難しいものですね。
    被害者側で経験ありますからね・・・
    問題は行き過ぎた正義と繋がった事ですね・・・
    そもそも学校は話を聞こうとしていましたからね・・・身を護るのではなく暴力に任せるのは危険ですね

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