1 新入り君と正義の味方(脚本)
〇電車の中
神坂誠二「・・・・・・」
狭間正義「ちょっとそこの君!!」
神坂誠二「・・・・・・」
神坂誠二「ん?」
妊産婦「はい、何でしょうか?」
狭間正義「君が座ってる席、優先席でしょ!?若いんだから立ちなさいよ!!」
妊産婦「ちょ!何言ってるんですか!?私妊娠してるんですよ!?」
狭間正義「若いクセにズベコベ言うな!此処はお年寄りの為の席なんだから、若いなら立ちなさい!」
妊産婦「わ、分かりました・・・」
狭間正義「そうだそれで良い!ささ!おばあちゃん!そこ空けさせたよ!」
おばあちゃん「ちょっとあんちゃん、あんな事して良かったのかい?」
狭間正義「遠慮する事は無い!此処はお年寄りの為の席なんだから!」
おばあちゃん「う〜ん・・・・・・」
神坂誠二「またあのおっさんか・・・最近良く見るな・・・」
俺は神坂誠二。今年で高校二年に成った学生で剣道部に所属して居る。最近噂に成ってる事だが、この街で正義感が人一倍強いと
噂のおっさんと運悪く同じ電車に乗ってしまっていた。
神坂誠二「ったくこんな人の多い場所でギャアギャア騒ぐなよ・・・折角うたた寝してたのに・・・」
さっきの光景を見て分かる通り、あのおっさんは自分の倫理観のみで行動しており、所構わず自分が見てそれが間違ってると
思ったら首を突っ込む人だ。あんなのに絡まれたら堪った物じゃ無いので、俺も気を付ける事にしていた。
〇大きな木のある校舎
神坂誠二「やっと着いた。早く荷物下ろして、朝練行かなきゃ・・・」
電車に揺られ、途中まで歩いて漸く学校に到着した俺は自分の教室に向かい、朝練の準備をするのだった。
〇体育館の中
神坂誠二「お早う御座います・・・あれ?」
暗森敬一「竹刀は常に両手で確り握って、振る時は肩から両腕、全部を使う形で振るんだ」
霧島唯斗「はい!」
神坂誠二「あれ?見慣れない顔だが、新入り君?」
霧原遊戯「神坂、お早う」
神坂誠二「霧原主将!お早う御座います!」
霧原遊戯「今日も朝から精が出るな」
神坂誠二「いえ、何時もの事ですので。主将、暗森先生と一緒に居る奴って・・・?」
霧原遊戯「あぁ!最近入部した一年の新入り君だよ。名前は霧島唯斗君って言ったかな。入部してから毎日鍛錬を頑張ってる」
神坂誠二「マジか・・・負けてられませんね!」
霧原遊戯「あぁ、お前等マジで頑張れよ。次のインターハイ終わったら、俺は引退だからな」
神坂誠二「そっか・・・分かってた事とは言え、寂しく成りますね。霧原先輩は進路決めてるんですか?」
霧原遊戯「俺か?前にも話したけど、俺は医者に成りたい。子供の頃からの夢だからさ」
神坂誠二「・・・主将、応援してますね!」
暗森敬一「二人共来てたか」
霧原遊戯「お早う御座います!暗森先生!」
暗森敬一「もうある程度人が揃ってるから練習始めるぞ。後で新入り君の紹介もするから、仲良くやってくれよ」
神坂誠二「はい!」
暗森敬一「それじゃ皆、全員並んで竹刀を構えて!」
その後、俺達は素振りやランニング、礼儀作法等の稽古をしてその日の朝練に取り組んだ。新入り君が自己紹介した後、
俺達は解散した。
〇教室
神坂誠二「あ〜終わった終わった・・・もう少し練習してたかったが・・・」
安西雫「お早う誠二。今日も朝練?」
神坂誠二「お早う雫。まぁそんな所」
安西雫「そっかそっか!精が出るわね!」
神坂誠二「おいおい、霧原先輩にも同じ事言われたぜ?」
安西雫「そうなんだ。今日も頑張ろうね」
神坂誠二「あぁ!」
高崎浩一「お前等席に着け。ホームルーム始めるぞ!」
先生の掛け声の元、俺達は席に座る。その後先生がこんな話を持ち出した。
高崎浩一「先ず最初にだが、最近街で変なおっさんが居てな。他人に対して煩く注意喚起をしてるって話をチラホラ聞いてる。そいつは」
高崎浩一「自分の中で間違ってると認識したら近寄って説教して来るから、見つけたら極力関わらない様にしてくれよな」
高崎浩一「最近じゃ学校や飲食店見たいな所でも説教をしてるらしいから、帰り道も気を付ける様に。以上だ。次の準備忘れるなよ」
安西雫「え!?態々そんな所にまで説教しに行く人が居るの!?てか何様よ!」
神坂誠二「あ〜、そう言えば今朝それっぽい人見掛けたわ・・・」
安西雫「え?マジで!?」
神坂誠二「どう言うつもりか知らないけどさ、電車の中で妊娠してた人を追い払っておばあちゃんに座らせてた。当の本人は」
神坂誠二「やってやったぜ!見たいな顔してた」
安西雫「何それ!?誠二、その人が座ってた所って優先席だった?」
神坂誠二「あぁ、間違い無い」
安西雫「信じられない・・・妊娠してるのに無理矢理立たせるとか何様よ!!」
神坂誠二「怒りたい気持ちは分かるけど、今は余計な事しない方が良い。そんな事したら自分が殺られるぜ」
安西雫「ま、まぁそうよね。あたし等がウダウダ言っても何にも成らないよね・・・」
何がともあれ、そう言うタイプに対して御託を並べても良い事は無いので、俺達はこれからの授業に打ち込むのだった。
〇散らかった職員室
その日の昼休み。
狭間正義「ちょっとちょっと!教員の方居る!?」
男性教員「え!?あの、何ですか一体!?」
女性教員「あの、貴方は一体・・・!?」
狭間正義「雑誌で見たよ!この学校、まだ虐め問題が解決して無いそうじゃないか!生徒を守るのが教師の仕事だろ!一体何やってるんだ!?」
男性教員「い、いや!行き成りそんな事言われましても!先ず貴方は何なんですか!?」
狭間正義「見て分かるだろ!俺は正義の味方だよ!この学校の虐めが無くならないのはあんた等教員がやる気無いからだろ!」
狭間正義「虐めの撲滅が出来ない教師なんて教師失格だ!やる気が無いなら今直ぐ辞めろ!」
女性教員「な、何を勝手な・・・!これ以上騒ぐなら警察呼びますよ!!」
狭間正義「そうだな!警察にお前等の事話してお前等全員逮捕して貰おう!虐めを無くせない教師は教師じゃ無い!見てろよ!」
狭間正義「これから教育委員会にお前等の事話して、お前等の事訴えてやるからな!それが嫌なら今直ぐ虐めを撲滅しろ!良いな!!」
男性教員「な、何だったんだ一体・・・」
女性教員「も、もしかして、最近噂に成ってる説教おじさんでは・・・」
男性教員「あの感じ・・・間違い無いですね」
高崎浩一「あの!先生方!今変な奴が職員室から出て来ましたが何事です!?」
男性教員「あぁ、高崎先生とあんりん先生。いやさっきですね・・・」
暗森敬一「す、すみません、僕の名前はくらもりです」
男性教員「あぁ!すみません!また間違えちゃって!」
暗森敬一「大丈夫です。良く有る事ですから」
暗森敬一「それはそうと、一体何が有ったんですか?」
女性教員「突然この学校の関係者では無い人が押し寄せて来て、行き成り虐め問題の解決がどうとか言って来て、やる気無いなら辞めろとか」
女性教員「教育委員会に訴えるとか言って来て・・・」
高崎浩一「な、何だそれ!?キチガイにも程が有るだろ!」
暗森敬一「それで、その人は?」
男性教員「何と言うか、一方的に言いたい事だけ言ってそのまま帰りました」
高崎浩一「ったく何て野郎だ。これじゃ警察に訴える事も出来ねぇ・・・」
暗森敬一「ま、まぁ皆さん、今は一旦落ち着きましょう。部外者が学校にズケズケと入って来たなら、今直ぐに対策を懸念しないと」
高崎浩一「・・・!暗森先生の言う通りですね。校長と教頭には俺から話を通して置きます。次の準備、急ぎましょう」
女性教員「そ、そうですね・・・」
突然職員室に訪問し、説教をしたのは最近噂に成ってる狭間正義だった。狭間の行動に目を疑った教員達はその日の事を
上に報告し、後に緊急会議を開く事と成った。
〇大きな木のある校舎
今日の放課後。
霧島唯斗「練習頑張って疲れたなぁ・・・何か飲み物でも買おうかな・・・」
日村正雄「あれ?霧島じゃん!」
霧島唯斗「お、お前等は!?」
阿久井俊夫「どっかで見た事有る顔だと思ったら、昔良くつるんだ霧島じゃ無いか!お前もこの学校に受けてたのか!」
霧島唯斗「そうだけど、お前等が一方的に絡んで来ただけじゃ無いか。もう放っといてくれないか?」
日村正雄「そんな固い事言うなよ!俺等仲良かったよな!丁度ちょっと金が無くてな!少し貸して欲しいんだよ!」
霧島唯斗「お、おい!お前等それで返してくれた事有ったか!?」
阿久井俊夫「あぁん!俺等友達だよな!?友達なら困ってる奴を助けて当たり前だよな!?」
霧島唯斗「・・・!今は手持ち無いんだ。折角高校生やってるなら、自分でバイトとか!」
日村正雄「ウダウダ抜かすなよ!お前は困ってる友達も助けられない薄情な奴だったのか!?それなら学校全体にお前の事言っても」
日村正雄「文句無いよな?」
霧島唯斗「・・・・・・!?」
阿久井俊夫「どうなんだ?出すのか?出さないのか?」
霧島唯斗「・・・わ、分かった・・・」
阿久井俊夫「何だよ湿気てんな・・・まぁこんだけ有れば良いか!」
日村正雄「やっぱ俺等は最高の友達だよな!有難よ霧島!金はその内したら返してやるから!」
霧島唯斗「・・・!!見てろよ・・・絶対見返してやるからな・・・!!」
まるで自分そのものですね・・・剣道で、中の人ではありますがよく名前を間違えられる。
今回は行き過ぎた正義の話ですね。
正義でも度が過ぎれば暴力でしかないと。
しかし虐めはある・・・
実際に自分も虐めに遭っていて、自分で身を護るために祖父が剣道七段の先生だったこともあり、剣道を始めましたからね・・・
ある意味これは霧原に共感できそうですね。