5 テキーラを求めて(脚本)
〇シックなバー
佐倉まどか「明奈先輩!只今戻りました・・・って・・・」
野島明奈「一体どう言う事ですか!?これ以上の取引が出来ないって・・・そちらで何か有ったんですか!?」
野島明奈「答える事が出来ない?納得出来ません!理由を説明して下さいって・・・」
野島明奈「くそ!何でこんな・・・!」
佐倉まどか「先輩!どうしたんですか!?」
野島明奈「あぁ、二人共帰ってたか。いやね、あたしのお得意の取引先が、突然取引を辞めるって言って来てね。ロクな説明も無しで」
野島明奈「このザマさ」
黒川誠也「はぁ、その取引先からは何を買ってたんです?」
野島明奈「テキーラよ。あそこのテキーラは此処いらでもマイナーな方でね。そこ等のスーパーでも中々見つからない奴で内の一番人気の酒でね」
野島明奈「それがどう言う訳か取引を中止させられてね。あれを求めるお客さんはかなり多いから困ってるんだよ」
佐倉まどか「先輩、そのテキーラの在庫は幾つ残ってますか?」
野島明奈「残念な事にボトル一本しか残って無いのよ。事前に予約入れてる人も居るし、このままじゃ・・・」
黒川誠也「なら、自力で探すしか無いですね。現物見せて貰えますか?俺が探して見ます」
野島明奈「やってくれると助かる。現物はこんな感じだよ」
黒川誠也「分かりました!行ける限りの酒屋を当たって見ます!」
佐倉まどか「誠也さん!私も協力します!」
黒川誠也「有難う!それじゃ先輩、行って来ます!」
野島明奈「お願いね。でも開店前には絶対戻って来て」
黒川誠也「分かりました!」
野島明奈「何処のどいつか知らないけど、あたし等の邪魔しようってなら只じゃ置かないからね!」
高島楓「・・・・・・」
〇繁華な通り
黒川誠也「くそ、此処も駄目だったか・・・」
佐倉まどか「誠也さん!そっちはどうですか?」
黒川誠也「こっちは駄目。まどかさんの方は?」
佐倉まどか「行ける所は行ったんですが・・・」
黒川誠也「そうか・・・此処まで来ると隣街を探す他無いかな・・・」
明奈先輩の欲しがっているテキーラを探して街を走り回る俺達。だが先輩の言う通りマイナーな商品の為、何処の店に行っても
中々見つからなかった。
佐倉まどか「誠也さん、今から車を出して此処まで往復すればかなり時間が掛かります」
黒川誠也「言いたい事は分かるよ。でも、此処で諦めたら店の信用も無くなっちゃうし、何より折角皆で立ち上げた店を、こんな事で・・・」
佐倉まどか「・・・そうですよね!少しでも可能性が有るなら・・・」
「うわぁぁぁぁん!!!」
佐倉まどか「誠也さん!今の声って!?」
黒川誠也「何だろう、行って見よう!」
突然近くから子供の悲鳴が聞こえたので、俺達は慌てて声の方へと向かった。
黒川誠也「確かこの辺だと思ったけど・・・」
佐倉まどか「誠也さん!あそこです!」
北島育人「パパ〜!!ママ〜!!」
佐倉まどか「誠也さん!あの子迷子見たいですよ!」
黒川誠也「そう見たいだね、あの子の話を聞いて見よう」
テキーラを探す事を優先したかったが、泣いてる子供を放って置く事も出来なかったので、俺達は子供に話し掛ける事にした。
黒川誠也「ねぇ君」
北島育人「え?どうしたの?おじさん」
黒川誠也「お、おじさんか・・・まぁ良いや。こんな所でどうしたの?」
北島育人「パパとママが居なく成って・・・探しても見つからないんだ」
佐倉まどか「そっか。一人で大変だったわね。良かったら、お姉さん達が探すの手伝おうか?」
北島育人「え?良いの!?」
黒川誠也「そのつもりで声掛けたんだけど、嫌だったかな?」
北島育人「おじさん達有難う!僕、北島育人って言うんだ!」
佐倉まどか「お名前を自分から言えるなんて偉いわね!私はまどかで、こっちのお兄さんは誠也さんよ」
北島育人「宜しく!おじさん!お姉さん!」
黒川誠也「うん、宜しく!(早くこの呼ばれ方慣れたいな。)」
成り行きで少年を保護する事と成った俺達。北島育人君のご両親が近くに居ないか聞き込みをしたが、
こっちも中々見つからなかった。
黒川誠也「参ったな・・・こっちも中々見つからない・・・」
北島育人「おじさん、大丈夫?」
佐倉まどか「誠也さん、子供の前で弱気に成ったら格好悪いですよ!」
黒川誠也「・・・っと、そうだよね!諦めるのはまだ早い・・・もう一頑張りしたら、一回休憩しよう!」
北島育人「うん!」
二人に心配させまいと気合を入れ直した俺。再度歩き出そうとした時だった。
北島母「育人!!」
北島育人「あ!ママ!」
北島母「育人!貴方何処行ってたのよ!凄く心配したんだから!!」
北島育人「うぅ!御免なさい・・・御免なさい・・・!!」
北島母「育人・・・もう絶対迷子に成らないでね・・・!!」
佐倉まどか「良かった!お母さん見つかった!」
黒川誠也「あらら、格好良い所見せられなかったな・・・」
北島母「あぁ、つかぬ事お伺いします。お二人が内の育人を?」
佐倉まどか「はい。大声で泣いてたのが聞こえて、私達が一時的に保護しました」
北島母「有難う御座います!何とお礼をしたら良いか!」
黒川誠也「この位大した事無いですよ。テキーラを探してたらたまたま見つけただけですので」
北島母「テキーラ?どんな感じですか?」
黒川誠也「あぁ、こんな感じの奴です」
北島母「あ!それ内の主人が作ってる奴!」
佐倉まどか「え!?本当ですか!?」
北島母「はい!まさかこれを探してる人が子供を見つけてくれるだなんて!あの、お礼にこのテキーラ、幾つかお渡ししましょうか?」
佐倉まどか「え!?宜しいのですか!?」
北島母「内の子供を守ってくれて有難うだけで済ましたら私が主人に怒られます!主人には私から話すので、是非お礼させて下さい!」
黒川誠也「・・・有難う御座います!」
その後、俺達は育人君のご両親にバーの話を持ち掛け、育人君の父親から子供を守ってくれたお礼に内と取引をしてくれる事と
成った。テキーラも無事に確保し、俺達は何とか持ち直す事が出来た。
〇事務所
その日の夜。
影山修「あのバーの売上は今日も上々。明奈ちゃんの取引先を脅したと言うのに何たる事だ・・・あの店が潰れればまどかちゃんは」
影山修「確実に戻って来る」
影山修「そうだ!まどかちゃん待っててね・・・必ず私が迎えに行くからね・・・!」
明奈先輩の取引先に何かを仕出かした犯人は前に居たカラオケ店の店長だった。目的はまどかさんを自分の店に連れ戻す事で、
俺達が走り回る羽目に成ったのはこの人の所為だった。
影山修「しかし、ネットの評判を見る限り悪評を広めても効果は薄い。何か次の手は無い物か・・・」
迷子の保護から何となく予想していましたが、やっぱり両親が酒を取り扱っていましたか。
良い事もしっかり帰ってくるものですね!
しかし、相手・・・また行動を起こそうとしていますしどうなるか?