〇音楽室
教頭先生「結女先生、今よろしいですか？」
結女先生「は、はい・・・」
教頭先生「突然のことで恐縮ですが 先生にお願いしたいことがありまして・・」
教頭先生「ええと、今はお忙しいでしょうか？」
結女先生「え、ええ・・・ 色々と立て込んでいるところでして」
教頭先生「さっきまで大イビキかいて寝てた分際で」
結女先生「・・・えっ、何か？」
教頭先生「いえ、何でもありませんよ」
教頭先生「そんなお忙しい先生にしか お願いできないことがありまして」
結女先生「私にしか？」
教頭先生「はい、明後日の卒業式の件でして」

〇体育館の舞台
教頭先生「ご存じのとおり 今年から卒業式を撮影したものを DVDとして父兄等に販売するのですが」
結女先生「えっ、あっ、そうでしたね・・・」
教頭先生「そのリアクション、絶対に忘れていただろ」

〇音楽室
教頭先生「そこで、販売にあたっての法的確認を 行っていたところ、」
教頭先生「卒業生入場の時に使用する曲が 著作権的に有償になってしまうことが 明らかになったのです」
結女先生「あれっ、学校行事での音楽の使用は 無償になると思っていたのですが・・・」
教頭先生「はい、行事での音楽使用は問題ないですが」
教頭先生「録画・販売となると、著作権がある曲は 利用許諾契約が必要になってしまうのです」
結女先生「でしたら、著作権フリー音楽や 著作権切れの曲を使用されては？」
　　※ 日本の著作権法では
　　著作権保護期間は「著作者の死後70年」と
　　なっています
結女先生「例えば、「仰げば尊し」や「蛍の光」 「パッヘルベルのカノン」あたりを」
教頭先生「はい、それを踏まえて」
教頭先生「卒業証書授与を「パッヘルベルのカノン」 式辞を「ショパンの別れの曲」 卒業生退場を「蛍の光」」
教頭先生「・・・とすることが決まったのですが」
教頭先生「入場曲を「仰げば尊し」にしようとしたら」
教頭先生「一部の先生方から反対を受けまして」
結女先生「「仰げば尊し」は定番ソングですよね？」
教頭先生「ですが、一部の先生が思想的理由により 猛反対をして、譲る様子もない状況で」
結女先生「じゃあ、どうするのですか？」
教頭先生「そこで、先生の出番なのですよ」
教頭先生「先生は、音楽の才能に優れていて ピアノの腕前もご立派な方です」
教頭先生「そんな先生に、オリジナルのピアノ曲を 演奏していただければ、」
教頭先生「著作権や費用の問題や一部教師の反対など 全て解消されると気付いてしまいまして」
結女先生「えっ、私がオリジナル曲を!?」
結女先生「それは苦手にしておりますので できればご勘弁いただきたいのですが」
結女先生「他のできることなら何でもしますので」
教頭先生「アンタはピアノ以外は 何もできないだろーが！」
結女先生「ええと、何かおっしゃいましたか？」
教頭先生「いや、何でもありません」
教頭先生「苦手にされているかもしれませんが 現状の問題解決のためには」
教頭先生「先生のオリジナル曲の演奏が 一番の良策かと」
教頭先生「まず試しに、何か１曲 お聞かせ願いたいのですが」
結女先生「・・・はい、即興ですが」

〇黒背景
　　（結女先生演奏中）
教頭先生「ストーップ!!」

〇音楽室
結女先生「えっ、どうされましたか？」
教頭先生「結女先生、コレって、」
教頭先生「朝にラジオから流れる体操曲ですよね・・」
結女先生「いや、完全にオリジナルですよ」
教頭先生「いやいや、冒頭とメロディーラインが 多少違いましたが、曲が進むにつれて 完全に一致してましたよ」
結女先生「あらら、気付きませんでした」
教頭先生「先生もわかっているから 「背伸びの運動」のパートも弾いたのでは」
結女先生「そんなことは・・・」
教頭先生「では、本当に体操の音楽でないのか 確認したいので、」
教頭先生「先程の続きを聴かせていただけますか？」
結女先生「さっきの続きというと、 「腕と足の運動」からですね」
教頭先生「やっぱり、わかってるじゃねーか!!」
教頭先生「とりあえず、この曲では 卒業生が入場行進中に 手足をバタバタさせかねないので却下です」
教頭先生「父兄の皆様にもドン引きされかねませんし」
結女先生「・・・せっかく作ったのに」

〇黒背景
教頭先生「卒業式まであと２日」
教頭先生「今から、著作権フリーの曲を しらみ潰しに当たるべきか・・・」
教頭先生「それとも、この女を信じてみるべきか」
結女先生「教頭先生、「ラジオ体操第二」って リズムやテンポの変化が面白いですよね」