雨呼びの巫女と日照りの神

桜木ゆず

紫苑の誓い(脚本)

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桜木ゆず

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〇中華料理店
サイタイ「ただい──」
サイタイ「・・・!!」
サイタイ「ど、どうしたの!」
アラタ「ゲホっ、ゴホっ・・・」
ユウラン「サイタイお姉さま!」
ユウラン「さっきコウヨウが来て・・・」
ユウラン「リンさんが! 連れて行かれてしまいました・・・!」
「!!」
紫苑「リンがっ!? どういうことだ!」
アラタ「ううっ・・・」
アラタ「コウヨウの手下の恨みを 買ってたみたいだった・・・」
葵「!!」
アラタ「でも僕のせいだ、 僕がここに連れて来なければ!」
紫苑「!! くそっ!リンっ!」
紫苑「頼む!無事でいてくれ!」
サイタイ「とにかく手当を!」
サイタイ「さぁ、こちらへ!」

〇屋敷の牢屋
リン「ううっ──」
リン「こ、ここは?」
リン「アラタさんっ!? ユウランちゃん!?」
リン「──は居ない。 ・・・良かった、捕まったのが私だけで」
リン「・・・」
リン「紫苑、葵・・・」
リン「紫苑・・・しおん・・・」
リン「・・・だめだ、 紫苑はここに残って、私の側から いなくなるかもしれないんだから──」
リン「・・・」
リン「コ、コウヨウ!」
リン「コウヨウ!! ここから出しなさい!」
コウヨウ「ふん、出してほしいか? 私に逆らうからこうなるのだ」
リン「あなたは間違っている! 誰かを蹂躙(じゅうりん)して従わせるのはおかしいわ!!」
コウヨウ「だまれ!小娘が!」
コウヨウ「ふん、そうだなぁ・・・ お前のような生意気な娘は 海の外に売り飛ばしてやろう」
リン「・・・!!」
コウヨウ「それまでせいぜいこの牢獄で 最後の静けさを喜ぶといい」
リン「・・・」
リン「ここから出なきゃ・・・」

〇中華風の通り
紫苑(くそっ!くそっ! リンっ!)
紫苑(俺が付いていなかったからだ!)
葵「コウヨウの屋敷はあっちらしい!」
紫苑「あぁ!」
葵(リンちゃん・・・ 必ず助けるからね!)

〇太子妃の御殿
紫苑「ここかっ!」
葵「リンちゃんはきっとこの中だね!」
柄の悪い男「!! テメぇ!!来やがったな!」
柄の悪い男「ここで血祭りにしてやる!」
紫苑「行けるか葵!?」
葵「あぁ、もういいよ!」
紫苑「そなたの姿を空蝉から移し身に戻す・・・」
紫苑「その姿を現せっ!」
葵「暴れてやる!」
柄の悪い男「お、鬼っ!?」
コウヨウの手下「びびるなっ! やることは同じだ!」
柄の悪い男「あ、あぁ!」
葵「今の僕は怒っているんだ・・・」
葵「手加減はできないよっ!」
葵「紫苑君はリンちゃんを!」
紫苑「分かった!頼んだぞ葵!」
葵「僕は君たちを許さないからねっ!」
葵(頼んだよ、紫苑君っ!)

〇屋敷の牢屋
リン「どうやって出よう・・・」
リン「・・・」
リン「氷の呪術で、 牢獄の扉を凍らせて割るとか・・・?」
リン「水の呪術以外はあまり得意じゃないけど、 やってみよう──」
リン「凍てつかせ、凍てつかせ・・・ 時の全てを止まらせし冷たき刃、 ここに在り」
リン「氷の大地よ、ここに再現す!」
リン「少しヒビが入った!」
リン「何度も続ければいつか壊れるハズ! よし、もう一回!」
リン「凍てつかせ、凍てつかせ・・・ 時の全てを止まらせし冷たき刃、 ここに在り」
リン「氷の大地よ、ここに再現す!」
リン「はぁ、はぁ・・・」
リン「さっきと、あまり変化がないっ・・・!」
リン「だ、大丈夫よ、リン! 続けるの!」
リン「やらなきゃ! 紫苑がいなくても・・・ 私は一人でも大丈夫なんだから!」
リン「凍てつかせ、凍てつかせ・・・ 時の全てを止まらせし冷たき刃、 ここに在り」
リン「氷の大地よ、ここに再現す!!!」
リン「はぁはぁ・・・」
リン「そんな・・・ 失敗しちゃった・・・」
リン「ここから出られない・・・?」
リン「いやだよ、しおん・・・あおい!」
リン「・・・し、しおんっ・・・」
リン「紫苑っ! 助けて・・・っ」
リン「紫苑っ!どこにも行かないでっ・・・ 私を一人にしないで・・・」
リン「・・・側にいてよ──」

〇御殿の廊下
紫苑「くそっ!どこだリンっ!」
「しお・・・・・・けて」
紫苑「・・・?」
「紫苑っ!」
紫苑「リンっ?どこだ?」
「紫苑っ!どこにも行かないでよっ・・・ 私を一人にしないで・・・」
紫苑「・・・っ!」
「・・・側にいてよ──」
紫苑「!! リン・・・」
紫苑「こっちか!」

〇屋敷の牢屋
リン「ううっ・・・ ひっく・・・」
リン「だめっ、弱気になっちゃダメ・・・」
リン「頑張るのよ、リン・・・」
リン「私、一人でやるの──」
「リンっ!」
リン「・・・!」
紫苑「リンっ!大丈夫かっ!」
リン「し、紫苑っ!」
リン「紫苑っ!」
紫苑「もう大丈夫だ、リンっ!」
紫苑「よく頑張ったな・・・」
紫苑「扉は・・・」
紫苑「鍵がかかっている・・・か」
紫苑「大丈夫だ 少し下がってろ、牢を壊す」
リン「うん──」
紫苑「我は怒りて、ここに裁きを下す!」
紫苑「天の怒りよ、ここに降れ!」
紫苑「リンっ!」
リン「紫苑っ!ごめんね、 ごめんなさい・・・」
リン「紫苑っ、私・・・」
紫苑「もう大丈夫だ、俺はここに居る」
紫苑「俺はずっとリンの側にいる──」
リン「うん──」
紫苑「だからもう、何も心配しなくていい」
紫苑「もう大丈夫だから、泣くな・・・」
紫苑「俺がずっと守ってやる・・・」
紫苑「ずっと・・・」

〇太子妃の御殿
葵「終りだ・・・」
コウヨウの手下「ぐっ・・・!がはっ」
葵「こんな奴等でも殺してしまえば リンちゃんが悲しむからね・・・」
葵「トドメは刺さないでおいてあげるよ」
葵「はぁ・・・はぁ・・・ さすがに疲れたね・・・」
葵「──!!」

〇太子妃の御殿
葵「雨だ・・・ リンちゃんの雨・・・」
葵「穏やかで優しい・・・」
葵「ふふっ、紫苑君がやったんだね」
リン「葵!」
リン「ごめんね、葵」
葵「全くだよ、 僕の主は心配ばかりかけるんだから」
紫苑「ありがとう、葵」
葵「紫苑君が僕にお礼を言うなんて、 なんかむず痒いね」
紫苑「な、なんだよそれ」
リン「ふふっ」
「・・・」
リン「二人とも、ありがとう」
「あぁ」

〇太子妃の御殿
コウヨウ「小娘!」
コウヨウ「許さんぞぉぉ!」
リン「コウヨウ・・・!!」
紫苑「お前がコウヨウだなっ!」
葵「リンちゃんを良くも・・・!」
コウヨウ「私に歯向かうなど、許されぬ!」
リン「・・・」
リン「可哀想な人・・・」
リン「あなたの蛮行はきっと、 天の神々が見ておいででしょう」
リン「あなたに天罰が下らんことを・・・」
コウヨウ「なんだとっ! こいつっ!」
コウヨウ「八つ裂きに──」
コウヨウ「!!」
コウヨウ「ぎゃあぁぁ!」
「・・・!!」
葵「・・・あっけない、最後だね」
リン「・・・」
リン「その魂が安らかに眠らんことを──」
リン「・・・」

〇後宮の一室
リン「すぅ・・・」
紫苑「・・・疲れて眠ったみたいだな」
葵「ふふっ、可愛い寝顔だね」
紫苑「じゃあ俺はサイタイさんの店に行って、 リンの無事を伝えてくるよ」
葵「分かった。 じゃあ僕がリンちゃんを見ておくよ」
紫苑「頼んだからな」
葵「ふふっ、あぁ」
葵「さて、紫苑君はどうするんだろうね」
葵「ま、心配しなくても、 紫苑君の決意はきっと──」

〇後宮の一室
リン「・・・」
リン「うーん」
リン「紫苑? ・・・葵?」
紫苑「なんだ?」
葵「ここにいるよ」
リン「・・・」
リン「ふふっ」
紫苑「なんだよ・・・」
リン「ううん あぁ、戻って来たんだなぁって」
リン「二人の居る場所が、 私の帰る所なのかなって」
「・・・!!」
葵「体は何ともないかい?」
リン「うん、もう平気」
葵「人間の体は脆いからね、 リンちゃん、あまり無理しないで」
リン「ありがとう」
紫苑「・・・」
紫苑「ユウランさん達とアラタさんには リンの無事を伝えてある」
リン「そっか、心配かけちゃった」
紫苑「俺のせいだな・・・ 俺が騒ぎを起こして、 それにリンの側にいなかったせいだ」
葵「──」
リン「そんなことないよ」
リン「私がボーッとしてたのが悪いの」
紫苑「・・・」
リン「さぁ、この話はもうやめにしましょう?」
リン「それより、 水鏡はいつ出来上がるのかしら・・・?」
紫苑「それなら7日程で出来上がるってさ」
リン「そう?じゃあせっかくだし・・・ 室橋を観光しましょう!」

〇後宮の庭
リン「あっ! 見て見て!ここ素敵だね」
紫苑(ここはサイタイさんと来た場所──)
リン「綺麗だね・・・」
紫苑「・・・」
紫苑(木漏れ日がリンの頬を差して──)
紫苑(リンの瞳が光ってる・・・ あぁ、なんて綺麗なんだ)
葵「あぁ、本当に綺麗だね」
葵「ま、リンちゃんの方が綺麗だけどね」
リン「ふふっ、もう葵ったら──」
紫苑(俺も葵みたいに、 リンに素直に伝えられたらいいのにな)
紫苑「・・・」
紫苑(俺の本当の気持ちを伝えれば・・・ リンは何と言うだろうか)
紫苑(俺はこの関係を壊したくない。 それにリンには使命があるんだ)
紫苑(この気持ちは リンが使命を終えるその時まで、 俺の中に──)
リン「紫苑、どうしたの?」
葵「・・・」
葵「紫苑君に難しい顔は似合わないよ」
紫苑「おいおい、どういう意味だよ?」
リン「ふふっ、紫苑、行こ?」
紫苑「あぁ」
紫苑「・・・」
紫苑「──」

〇中華料理店
リン「こんにちは!」
「リンさん!」
ユウラン「ご無事で良かったです!」
リン「ありがとう 紫苑と葵に伝えてくれたユウランのおかげだよ」
ユウラン「いいえ、私は何もできませんでした・・・」
リン「ユウラン!気分転換にさ、外に行こうよ! 見せたいものがあるの!」
ユウラン「えっ?ええ・・・」
リン「紫苑、葵! ちょっと外に出てくるね」
葵「にゃあ!」
紫苑「あぁ、気をつけろよ」
サイタイ「紫苑様・・・」
紫苑「サイタイさん、この前の話ですが・・・」
紫苑「ごめんなさい 俺はここには居られません」
サイタイ「でしたら、旅を終えたらで構いません!」
サイタイ「ここに来て私の側に・・・」
紫苑「・・・」
紫苑「すみません。 俺はリンの隣に居たいんです」
サイタイ「・・・」
紫苑「リンにとって俺は兄のような存在で・・・ 俺もリンを守ってやりたいんです」
紫苑「だから俺はリンの側にいたい」
紫苑「すみません」
サイタイ「──」
サイタイ「ありがとうございます 本当のことを言って下さって」
サイタイ「叶うといいですね」
紫苑「えっ?」
サイタイ「ふふっ、お顔に書いてありますよ? リンさんのことが女性として好きだって──」
紫苑「・・・!!」
サイタイ「これで私も吹っ切れました。 どうかお元気で」
紫苑「・・・はい あなたもお元気で」
葵「・・・」

〇中華風の通り
ユウラン「うわー!すごい! 本当に雨が降った!」
リン「ふふっ、喜んでもらえて良かった」
ユウラン「素敵な景色をありがとう!」
リン「うん」
紫苑「リン、 そろそろアラタさんの所に寄ってみるか」
リン「そうね」
ユウラン「また来て下さいね!」
リン「ええ、またね」
リン「あれ?葵は?」
紫苑「ん?」
葵「ここだよ」
リン「葵!危ないから屋根から降りなさい!」
葵「はいはい、リンちゃんは心配性だなぁ」
葵「僕は鬼で猫なんだから大丈夫だよ」
リン「もう、葵ったら人の気も知らないで」
葵「僕は鬼だからね、 人の気なんて分からないのさ」
紫苑「おいおい、葵・・・」
リン「あはは・・・」
葵「リンちゃん」
リン「うん?」
葵「そういえば、きちんと伝えてなかったね」
葵「僕たちの元に無事に 戻って来てくれてありがとう」
紫苑「・・・」
リン「うん! ただいま──」
「おかえり──」

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