デス・パレードは祈りと共に

はじめアキラ

エピソード19・整の中(脚本)

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〇教会の控室
矢倉亮子「ゲームの進行状況はどうかしら?今回の参加者は、かなり優秀なようだけど・・・」
小野坂真里亞「現在、第三のゲームを終えて移動中です。・・・恐らく通路で休憩しているのかと」
小野坂真里亞「他の場所のカメラに映らないので、通路から移動していないのだと思われます」
小野坂真里亞「いかがなさいましょう、教祖様?次のフロアへの移動を促しますか?」
小野坂真里亞「アナウンスで強制すれば、それも可能かとは思われますが」
矢倉亮子「うーん、そうね・・・まあ、もう少しだけいいでしょう」
矢倉亮子「第三のゲームで何が起きたかは、あの子も把握してるでしょうし。流石に疲れていると思うから。もう少しだけ猶予をあげましょう」
矢倉亮子「・・・はあ。人手不足とはいえ、やっぱりアルバイトでは駄目ね。余計な情報をぺらぺらしゃべっちゃうなんて」
矢倉亮子「芦田ルミカと赤井鳳輔は、ちゃんと処分したのよね?」
小野坂真里亞「勿論です、教祖様。遺体を確認されますか?」
矢倉亮子「いえ、いいわ。惨殺死体をまじまじ見るほど悪趣味じゃないもの」
矢倉亮子「はあ。余計なことを喋らず、ただゲームに負けただけなら・・・もう少しマシな結果を用意してあげたのに」
矢倉亮子「もう少し高いお給料で釣らないと駄目なのかしらね、ああいう手合いは」
矢倉亮子「かといって、使い捨ての駒として、大事な教団の信者達を使うわけにはいかないし・・・」
小野坂真里亞「ええ、そうでしょうか?我々信者は、教祖様のご命令ならばいくらでも命など捨てますのに」
小野坂真里亞「アルバイトの者達よりよっぽど忠実に命令を遂行いたしますよ?あのような無様など、けして晒しませんのに」
矢倉亮子「ありがとう、小野坂さん。やはり、貴女は優秀な秘書ね」
矢倉亮子「その気持ちはとっても嬉しいわ。でも、きたるべき悪魔との闘いの時に備えて、これ以上貴重な人材を失うわけにはいかないのよ」
矢倉亮子「私でさえ、悪魔の正体や姿、どれほどの力を持つのか・・・そのすべてを図り切ることはできなかったわ」
矢倉亮子「ただ、これだけは分かる。いざって時に、あの子を・・・蒼をサポートできる人材が、一人でも多く必要だということ」
矢倉亮子「今回のゲームでどうにか救世主を見出すことができても、その人物一人では到底足らないわ」
矢倉亮子「何より・・・救世主は外部の人間。神様のお告げを無視するつもりはないけれど、やはり教えを理解していない人間は危険なものよ」
矢倉亮子「ようやく神子としての力に目覚めつつあるあの子に、余計なことを吹きこまないとは限らないわ」
矢倉亮子「傍で軌道修正できる大人は必要よ。その人数は、多ければ多いほどいい」
小野坂真里亞「なるほど、一理ありますね。申し訳ありません、浅慮でございました」
矢倉亮子「いいえ、いいのよ。貴女の忠誠心はよくわかっているから」
矢倉亮子「えっと、他のアルバイトの子達はどうしているのかしら?」
矢倉亮子「このまま成功すれば、第四の・・・最終ゲームの参加者以外、不要になりそうだけど」
小野坂真里亞「ひとまず待機させています。とはいえ、デモンストレーションのために数人“消費”しましたので、そこまで多く残ってはいませんし」
矢倉亮子「そうね。・・・ところで、小野坂さん。貴女に忌憚ない意見を伺いたいのだけれど」
小野坂真里亞「なんでしょう?教祖様」
矢倉亮子「今回の救世主候補・・・峯岸輪廻くん、だったかしら。彼は初めて、第三のゲームまでを生き残った」
矢倉亮子「蒼のサポートが慣れて来た結果とはいえ、優秀には違いない。ただ、救世主候補になったとはいえ、元は普通の高校生でしょう?」
矢倉亮子「最後のゲーム、突破できると思う?彼ならば、蒼の本物の救世主になりうるかしら?」
小野坂真里亞「それは・・・わかりかねます」
小野坂真里亞「ですが、見たところ・・・蒼様はかなり、峯岸輪廻に信頼を寄せている様子」
小野坂真里亞「救世主の領域に辿り着くことも、可能ではあるのかと」
矢倉亮子「・・・貴女がそういうなら、かなり見込みがありそうね」
矢倉亮子「ああ、楽しみだわ。奇跡の時が訪れるまで、きっともうすぐよ・・・!」
小野坂真里亞「はい、教祖様!」

〇研究施設の廊下
須藤蒼「・・・」
峯岸輪廻「少しは、落ち着いたか?」
須藤蒼「はい。・・・すみません、恥ずかしいところ見せちゃって」
峯岸輪廻「気にするなって。・・・むしろ、よくここまで泣かずに頑張ってきたよ、お前は」
峯岸輪廻「まだアナウンスがかからないようだから、あと少しだけ話をさせてもらおうか」
峯岸輪廻「とりあえず、俺の記憶が消えているのは教団のせい・・・ってことであってるな?」
峯岸輪廻「お前の話によると、記憶を消された“救世主候補”とそうでなかった候補がいるようだが」
須藤蒼「その通り。おばあちゃんも、かなり試行錯誤してたっていうか」
須藤蒼「救世主となる人間に、記憶があった方がいいかどうか、試してたみたいで」
須藤蒼「僕は反対したんだけど・・・だって残酷すぎるし。いくら、心優しくて、精神力が強い人ばっかり選んでるからって・・・」
峯岸輪廻「俺は、記憶を消してもゲームを生き抜けるとみなされたわけか」
峯岸輪廻「しかし、何で俺は選ばれたんだ?記憶がないからわからないが・・・とりたてて身体能力が高いわけでもないし」
峯岸輪廻「お前が過去一緒に参加した人には、消防士の人とかいたみたいだけど。俺はそういうのじゃないだろ?」
峯岸輪廻「こう言っちゃなんだが、あんまり腕力や体力がある方でもないと思うし・・・」
須藤蒼「救世主候補の選定に、僕は関わってないから詳しいことはなんとも・・・」
須藤蒼「輪廻さんのプロフィールも簡単にしか知らないし」
峯岸輪廻「ということは、俺が普通の男子高校生だってこと以外にも何か知ってるのか?」
峯岸輪廻「それと、俺の記憶って戻す方法はあるのか?」
須藤蒼「輪廻さんについては・・・高校生で一人暮らしをしてるってことと・・・」
須藤蒼「離婚したお母さんに引き取られた弟さんに会いに行く途中だったってことしか」
須藤蒼「あと、正義感が強くて、子供や年下に優しい人らしいってこと、くらい?だからそれ以上のことは何も・・・」
須藤蒼「あ、でも記憶を取り戻す方法はあるから!それは心配しないで!」
峯岸輪廻「そうか、それは良かった!救世主候補として選ばれるには弱い理由だが・・・まあ、何かあったんだろうな、きっと」
峯岸輪廻「・・・さて、ここからが本題だ」
峯岸輪廻「俺達はここから生きて帰らなくちゃいけない。この宗教団体の思惑を打ち破って」
峯岸輪廻「同時に、騙されて捕まっている人が他にもいるなら助けたい」
峯岸輪廻「蒼、お前はこの施設について、どれくらいのことを知っている?俺達以外には何人いる?」
峯岸輪廻「それから、次のゲームについてもだ」
須藤蒼「うん、わかってる。それについても、知っている限りのことを話すよ」
須藤蒼「次の・・・最後のゲームが。恐らく一番過酷なものになるだろうから」

次のエピソード:エピソード20・明の中

コメント

  • 今迄のエピソードや様々な思惑が収束しつつあり、ストーリーもラストが近づいてきていることを感じてしまいます……そして、最後のゲームが一番過酷なものに!?
    芦田さん……悲しいです……

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