Ep.13 / THE ELUSIVE NIGHT WATCH #13(脚本)
〇オフィスビル前の道
自動運転車が、車道を走っていた。
あの車だ。撃てぇっ!
激しい銃声が響き、銃弾が自動運転車に吸い込まれていく。
自動運転車は横転し、近くのビルに突っ込む。
ズドーーンッ
ゼニス兵たちが駆け寄り、車内を確認する。
しかし車内に人影はない。
ゼニス兵「くそっ。また囮か!」
〇地下駐車場
〇車内
久常紫雲「うううっ。いてて」
久常紫雲「・・・うわぁ」
上半身のスーツを脱ぐと、腹部から胸にかけて、青痣が転々とついていた。
拳銃で撃たれた脇腹には、ドス黒い大痣が浮かんでいる。
・・・酷い状態だ。
根須戸智是「ごめん! ごめんね! 本当に・・・」
久常紫雲「・・・ちーちゃん、さっきからそればっか。 それよりどんな感じ?」
久常紫雲「死にそうに痛いけど・・・やっぱ死ぬ?」
根須戸智是「死ぬとか言わないでっ!」
久常紫雲「・・・ご、ごめん」
根須戸智是「ぐすっ。ううっ。 ・・・うん。だい、じょうぶ」
根須戸智是「打撲と内出血。あと肋骨にヒビ。 内臓は無事。軽傷よ」
僕は激痛に耐えながら、ドス黒い痣を見た。
久常紫雲「・・・軽傷」
根須戸智是「腎臓近かったから、血尿は出るかな」
僕は自分の股間を見た。
久常紫雲「・・・血尿」
根須戸智是「とりあえず、ベルトのパックから、M3注射打っておいて。痛みも引くから」
僕は、白いスティック状の無針注射器を取り出した。
側面に「Medical Micro Machine Injector」と刻まれている。
『M3 医療マイクロマシン注射器』
脇腹に当ててスイッチを押すと、かすれた音と共に、薬剤が注入される。
久常紫雲「あ。ほんとだ。痛みがすっと。 ・・・これ確か、滅茶苦茶高価いやつだよね」
根須戸智是「クレジット円換算で一本約500万」
久常紫雲「ごっ! 500万C/Yen(シーエン)!? 父さんの年収より高い・・・」
根須戸智是「お金でしゅーちゃんが助かるなら、500万C/Yenぽっち安いものよ」
久常紫雲「500万が、ぽっち? わぁお」
久常紫雲「よぉし。ちーちゃん、結婚しよう」
ちーちゃんは一瞬、呆気にとられた表情をして・・・笑った。
根須戸智是「なにその最低のプロポーズ!」
根須戸智是「・・・いいよ。一生養ってあげる」
久常紫雲「えっ。いやっ。え。マジで!?」
根須戸智是「・・・大マジ」
ちーちゃんがいきなり僕にキスをした。
けれど立体映像の唇は、僕の唇をすり抜ける。感触は、ない。
それでも、僕の思考を停止させるには十分だった。
久常紫雲「ちーちゃん・・・」
根須戸智是「本当のキスは、しばらくおあずけ。 だから、帰ろう」
根須戸智是「包囲網、まだ突破できてないし・・・動けそう?」
久常紫雲「うん。なんとか」
根須戸智是「いざとなったら迷わず投降して」
根須戸智是「しゅーちゃんには危険な情報を知らせてないから、命まではとられないはず」
久常紫雲「わかった。けど、絶対一緒に突破する。 そのつもりでいよう」
根須戸智是「うん・・・いくよ!」
〇繁華な通り
街のあちこちで火の手があがっている。
〇殺人現場
僕は路地裏を走っていた。
そのとき、近くで大爆発が起こった。
爆音と爆風で、空気がビリビリ震える。
ナイトウォッチ「なに!? 爆弾!?」
根須戸智是「検問に囮の車突っ込ませたの。 爆薬満載のね。これでこのルートは安全よ」
ナイトウォッチ「・・・まるで戦争だね」
根須戸智是「そうね。これは、私の戦争」
ナイトウォッチ「ならもう、僕の戦争かな」
根須戸智是「しゅーちゃん・・・」
ナイトウォッチ「僕らは一蓮托生・・・」
ナイトウォッチ「・・・!?」
僕はとっさに違和感を感じて立ち止まった。
路地の先に・・・ゼニス兵の姿がある。
その先頭には、世渡が立っていた。
ナイトウォッチ「待ち伏せ!?」
根須戸智是「あいつら電子機器の電源を切ってる! ごめん、探知できなかった!」
世渡刃「ビンゴ! 読み通りだ。殺せ!」
世渡のことばを合図にゼニス兵たちが一斉に銃を乱射し始める。
僕は地面に伏せて、やりすごす。
ナイトウォッチ「ちーちゃん! 煙幕!」
ベルトの一部が爆ぜて、煙幕が路地を白く染める。
世渡刃「逃がすか!」
世渡が刀を構え、煙幕に突進してくる。
僕は上空に向けて右腕を伸ばし、ワイヤーを射出する。
こいつでビルの上に逃げる作戦だ。
走りこんできた世渡は迷わず、伸びたワイヤーを切断した。
ナイトウォッチ「うそぉっ!?」
世渡刃「データとハッキングに頼りっきりじゃなぁ! 経験不足だ! 死ねぇ!」
世渡が拳銃を突きつける。
ナイトウォッチ「それはもう経験済み!」
とっさに左腕のワイヤーを射出。
拳銃を弾き飛ばす。
世渡は左腕のワイヤーも切断する。
まずい。もう上には逃げられない。
世渡刃「悪くない判断だ!」
ナイトウォッチ「そりゃどーも!」
僕は渾身の蹴りを放った。
世渡は間合いを取り、その脚めがけて斬りつける。
甲高い金属音を立てて、刃と脚が交差した。
ナイトウォッチ「うわぁあっ!?」
その瞬間、僕はバランスを崩して転倒した。
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