第二話 思惑だらけの結婚(脚本)
〇教会の中
ボヌール王国 国王「汝は神の加護のもと、婚姻を結び──」
ガブリエル騎士団長「アルル姫、さあこちらに」
アルル姫「ああ、ガブ様と私が 結ばれる日が来るなんて・・・」
アルル姫「その笑顔を 独り占めできる日が来るなんて・・・」
アルル姫(まさか、そんなこと──)
〇教会の中
アルル姫(──あるわけないわ ガブ様はもうこの世界にいないんだもの)
アルル姫(ああ、ガブ様・・・)
ヤコブ隊長「貴様──」
ヤコブ隊長「泣くほど嬉しいのか 私との結婚」
アルル姫「そんなわけ──」
ボヌール王国 国王「わしは嬉しいぞ、アルル あれほどした見合いはどれも うまくいかず、どうなることかと──」
「隊長が あのじゃじゃ馬が アルルが」
「結婚、だなんて・・・」
アルル姫(私はただ この人が味方になってくれれば 敵討ちもできるって思っただけ)
アルル姫(だから、婚約だって形だけって 思ってたのに・・・)
〇後宮の一室
アルル姫「ヤコブ・マーティン隊長! あなた、私と婚約しなさいっ!」
ヤコブ隊長「婚約だと? 何の意味がある」
アルル姫「私はガブ様──ガブリエル団長の 敵討ちがしたいの!」
アルル姫「でも私に魔物は見えない だからあなた、私に協力しなさい!」
ヤコブ隊長「つまり、貴様は私に火山の魔物を倒せと? 協力関係を結ぶに当たり 婚姻関係を築き、私の逃げ道を塞ごうと?」
アルル姫「え、ええ、そうよ!」
ヤコブ隊長「・・・なら 婚約よりももっと良い方法がある」
ヤコブ隊長「貴様、私と結婚しろ ・・・そうだな、明日にでも」
アルル姫「はぁ!?」
〇教会の中
アルル姫(それで本当に昨日の今日で・・・)
アルル姫(まさか、お父様が許可するなんて 思わないじゃない!)
ヤコブ隊長「ふっ 後悔しているのか」
ヤコブ隊長「婚姻関係を求めたのは 貴様の方だろう」
アルル姫「な・・・っ!」
ボヌール王国 国王「さあアルル、誓いのキスを──」
アルル姫「げっ」
ヤコブ隊長「『げっ』ではない ほら、さっさと済ますぞ」
アルル姫(うわーーーー!)
「隊長が あのじゃじゃ馬が アルルが」
「キスしたーーーーっ!」
ヤコブ隊長「たかがキスくらいで騒ぐな 客どもが」
アルル姫(そ、そうよね たかがキスだもの・・・)
ボヌール王国 国王「幸せになるのじゃぞ アルル」
アルル姫「・・・はい、お父様」
アルル姫(──身分の低い方との結婚を こんなに簡単に許してもらえた・・・)
アルル姫(私はやっぱり この国にはいらない子だったのね)
〇荒廃した市街地
アルル姫(幼少期)「うう・・・ぐすん」
「魔物は去ったが こりゃ復興が大変だわぃ」
アルル姫(幼少期)(魔物って何? 何でお家が無くなってるの?)
アルル姫(幼少期)(おばあはどこ? 私は一人ぼっち・・・?)
アルル姫(幼少期)「う、ぐす・・・」
「・・・見つけた」
「この子、一人かしら?」
「おそらくな 可愛らしい子だ 姫にふさわしいわい」
アルル姫(幼少期)(姫・・・?)
〇城の客室
アルル姫(幼少期)(素敵なドレス・・・)
王妃様「あなたはアルル 今日からボヌール王国の姫よ」
アルル姫(幼少期)「はい!」
王妃様「うっ! あぁ・・・」
従者「王妃様! どうなさいました!?」
王妃様「ごめんなさい ちょっと気分が悪くて・・・」
〇城の客室
王妃様「ふふ、可愛らしい 私の赤ちゃん・・・」
王妃様「ミルクの時間ね 行きましょう」
従者「これでは アルル姫はお役御免だな」
従者「ああ。王妃様が不妊だからと 養子にしたらしいが 一体何のために拾われてきたのか・・・」
アルル姫(幼少期)「そんな・・・」
〇教会の中
アルル姫(でも、姫になったからこそ 大切に育ててもらえた)
アルル姫(おかげでガブ様も 気兼ねなく応援できたし そこは感謝しなきゃね)
「おい、貴様」
ヤコブ隊長「いつまでそこに突っ立っている もう式は終わった」
ヤコブ隊長「行くぞ」
アルル姫「い、行くってどこへ?」
ヤコブ隊長「決まっているだろう、私には仕事がある いつまでもウダウダと この国にいるわけにはいかぬ」
ヤコブ隊長「それに貴様は 今日から私の妻だ」
アルル姫「ちょ、ちょっと待ってよ!」
「早く来い 指揮官がいなければ 騎士団も動けぬのだから」
アルル姫(もーーー!)
〇空
〇古い洋館
アルル姫「ここは?」
ヤコブ隊長「私の家だ」
〇西洋風の部屋
ヤコブ隊長「部屋はここを使え 私は仕事に戻る 不自由があったらこいつに言え」
フール副隊長「よろしくっす☆ プリンセス♪」
アルル姫「・・・思ったより狭いのね」
フール副隊長「ま、プリンセスにはそうっすよね」
アルル姫「でも、なんだか懐かしいわ」
フール副隊長「・・・?」
アルル姫「あ、そうだ! ちょっと手伝って欲しいことがあるのよ」
フール副隊長「何でもお手伝いしますよ〜?」
アルル姫「じゃあ・・・」
〇空
〇西洋風の部屋
ヤコブ隊長「どうした?」
フール副隊長「プ、プリンセスが・・・」
アルル姫「あ、隊長! ちょうど良かった! 邪魔な髪も切ったわ いつ出発できるのかしら?」
フール副隊長「プリンセスの美しい御髪が・・・」
ヤコブ隊長「出発?」
アルル姫「決まっているでしょ ガブ様の敵討ちよ!」
フール副隊長「プリンセスの綺麗な 長い髪がぁ・・・」
ヤコブ隊長「阿呆か 昨日の今日で行けるわけがないだろう」
ヤコブ隊長「そもそも私はガブリエルの敵討ちに行くと 約束した覚えはない」
アルル姫「なっ! 何のために私があなたと結婚したと──」
ヤコブ隊長「自ら望んで妻になったのは貴様の方だろう」
アルル姫「うっ・・・」
アルル姫「な、なら! こんな結婚破棄よ! 白紙白紙!」
ヤコブ隊長「貴様は一国のプリンセス それも国民の9割以上が ”見えぬ者”で構成された弱者の国──」
ヤコブ隊長「貴様らがぬくぬくと平和に暮らせるのは 貴様の国が我々ブレーヴ王国騎士団の 保護下にあるからだ」
ヤコブ隊長「そして今この騎士団を 取り仕切っているのは実質この私」
ヤコブ隊長「この結婚を白紙に戻したらどうなるか ──想像に容易いだろう」
アルル姫「じゃ、じゃあ何であなたは 私と結婚なんか・・・」
ヤコブ隊長「・・・貴様に興味がある」
アルル姫「興味・・・?」
ヤコブ隊長「貴様はしばらくここにいろ 大人しくしていたら貴様の目的も 叶えてやらんでもない」
アルル姫「ちょ、ちょっと!」
フール副隊長「何で切っちゃったんすか・・・」
〇空
〇戦線のテント
フール副隊長「お疲れ~っす!」
ヤコブ隊長「ヤツはどうした」
フール副隊長「やっと寝てくれましたよ 色々と駄々こねられましたけど」
ヤコブ隊長「そうか ご苦労だった」
フール副隊長「でもまさか結婚しちゃうなんて さすが隊長っすね☆」
ヤコブ隊長「は?」
フール副隊長「『目的のために手段は選ばない』」
ヤコブ隊長「ヤツの結婚を急いているのは 耳に入っていたからな」
ヤコブ隊長「しかしなぜそんなに 結婚に拘っていたのか・・・」
フール副隊長「プリンセスの秘密に関係があると?」
ヤコブ隊長「私はそう踏んでいる」
フール副隊長「何なんすかね プリンセスの力・・・」
フール副隊長「無自覚みたいですし 魔物は見えないみたいですし」
ヤコブ隊長「アイツに秘められた力──」
ヤコブ隊長「その解明まではそばに置くつもりだ もしかしたら『火山の魔物』の討伐にも 役に立つかもしれん」
フール副隊長「プリンセスには あんなとこ言ってましたけど 隊長も目的は同じっすもんね」
ヤコブ隊長「あそこが魔界の入口だということは 分かっているからな お前にはしばらくアイツの監視を頼む」
フール副隊長「りょーかいっす! 役得その2〜☆」
ヤコブ隊長「しかし一体 なんの力だというのだ」
ヤコブ隊長「近くにいても 口づけを交わしても 全く何の気配もしないとは・・・」
ヤコブ隊長「・・・解せぬ」
〇空
〇溶岩池のある洞窟
〇モヤモヤ
???「魔王様、娘が人間と結婚した模様です」
「結婚しただと? なぜ阻止せぬのだ!」
???「申し訳ございません まさかこんなに急に事態が動くとは 想像しておらず──」
「・・・ともかくアレを何としても 人間どもから取り返すのだ!」
???「──仰せのままに」
隊長あんな感じで実はこっそり好きだったりしないのかな。姫にすぐ貴様っていうの凄いですね。いくら国力に違いがあっても目上に貴様…。隊長のキャラが滲み出ます。いつかガブリエルとヤコブを天秤にかけるときがくる…楽しみです。
隊長の方と結婚ですか!たしかに、推しはあくまで推しだし…複雑な心境でしょうね🤣
隊長も悪い人じゃなさそうだし、今後の関係の進展が楽しみな組み合わせですね😊
第一話でアルル姫の重たすぎる推し愛と行動力を堪能した後の第二話、他の登場人物の思惑を打ち出されて、もう物語への興味が止まりません😂
流麗な文章とストーリーに一瞬で取り込まれて、物語世界にトリップした感覚になってしまいました✨