勇者にはほしい才能がある

東龍ほフク

8/A派かB派かで揉めているところに、新しく来る『Cな考え方』(脚本)

勇者にはほしい才能がある

東龍ほフク

今すぐ読む

勇者にはほしい才能がある
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇黒
  ※今からちょっとしたスチル出るお

〇原っぱ

〇荷馬車の中
ギン「‥‥‥」
  今日の定期馬車便は人多めで、賑やかであった。
ギン「‥‥‥‥」
ギン「大丈夫ですか? おじいさん」
爺さん(多趣味)「あぁ、すまんの」
ギン「馬車が揺れるのが悪いんすよ〜」
ギン「『こちとら、金払ってるんだから 微動だにさせるなやクソが!』っていう!」
爺さん(多趣味)「はは、無茶を言うでないぞ····」
ギン「‥‥‥‥」
???「手が止まってるぞ」
ギン「うまい言い回しが浮かばねぇんだよ‥‥‥」
ギン「これがあんま長引くことはないのになぁ‥‥‥」
???「ちょっと疲れが溜まったのだろうかね」
???「よろしい。 俺を使っての雑談の気分転換を許そう」
???「俺はお前の読んだ本なら、大体は話を 合わせられる」
ギン「え、偉そうに‥‥‥!」
ギン「‥‥‥そうだ」
ギン「お前に1つ、訊いてみたい事があった」
ギン「エルム・ナキュの 『セイリング・ベルズ』を知ってるか?」
???「あ〜‥‥‥」
???「読者の間で勃発した『ヒロイン戦争』の せいでオチを決められないまま 作家を引退した、あの繊細な‥‥‥」
ギン「そう、『繊細ウジウジ問答作家』な」

〇貴族の応接間
  エルム・ナキュの『セイリング・ベルズ』
  とは──
  ひょんな事から自分は王族だと発覚した
  孤児の物語である。
  孤児は真実を知ろうと、あの手この手で
  王宮に潜り込もうと奮闘する。
  ──話は程々に面白いのだが、この作品が
  話題作になる由縁は2つの事柄が
  あるからだった。
  ①この作品が未完のまま、作者が引退した
  ②そのせいで、孤児が最終的にどちらの
  ヒロインとくっつくのか、わからずじまい
  ──そう。おしとやかなノキースか、
  じゃじゃ馬なミーナか‥‥‥な
  ヒロイン戦争が未だに収まらないのである。

〇荷馬車の中
ギン「もし、エルム先生が引退しなかったら‥‥‥ 俺はミーナが選ばれて完結したと 思うんだよなぁ」
ギン「ミーナがいなかったら、ジーコは 城に入り込めさえしなかったからな‥‥‥」
  ※ジーコ ➡ 主人公の孤児
ギン「少し暴力的だけど、うじうじしたジーコには 丁度いいきっぷの良さでさぁ‥‥‥」
ギン「5章の『深夜のバルコニー』でのデレと ジーコの反応を見るに、正ヒロインはミーナだよな‥‥‥と」
ギン「お前も、俺の作品が好きなよう ならミーナ派だろ?」
???「‥‥‥‥‥すまん」
???「俺は‥‥‥‥‥ノキース派だ」
ギン「なん‥‥‥だと?」
???「作中、ジーコにとっての癒やしは ノキースしかいなかっただろう?」
???「労働で疲れている時に超絶マズい手料理を 持ってくるミーナには殺意しかわかん」
ギン「そりゃ、ミーナは王女だから 家事なんかした事ないせいだろ」
ギン「そんなコが、ジーコのために初めて 料理なんてもんをしたんだぞ?」
ギン「健気じゃねぇか‥‥‥!」
???「前々から料理くらいやっとけよ、としか」
???「ノキースなんか、事前に練習してちゃんと 『違和感なく食べられるレベル』のものを 作ってくれたんだからな」
???「『この私が作ったんだからね!』とか ゴミみたいなもん作ってきて偉そうに 怒鳴られても「知らんがな」としか」
ギン「‥‥‥‥でもぉ」
ギン「ノキースは、我が身かわいさに ジーコを1回裏切ってるぞ?」
ギン「そんな奴が正ヒロインなわけないじゃん?」
???「お前、どこ読み込んでいるんだ? ノキースがどんな思いでジーコを 裏切ったのかの部分を読んでないのか?」
???「──あぁ、すまん」
???「自分の事しか考えていないミーナ、及び ミーナ派の人種には そりゃあわからん繊細な苦悩だろうな」
ギン「てめぇこそ、ミーナがどうして あぁもしつこくジーコに絡んでいくかの 過去部分をお読みになられていない?」
???「過去に見ないフリをした結果、 死んだ友人の事だろ?」
???「その件と、あのいちいち押し付けがましい ムカつく態度は関係ないだろ」
???「ミーナが絡んでこないほうが、 ジーコ安心してたろ」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
ギン「ノキース派と一緒の空気吸いたくねぇわ!!!!」
???「俺も、ミーナ派とは見損なったわ ギン先生」
ギン「じゃあな!」
???「おい! 外は雨だぞ!」
???「お前はどうなってもいいけど、 荷物の中の原稿は濡らすなよ?!」
ギン「防水魔法をかけてるから大丈夫ですぅ〜〜」
???「‥‥‥なんだよ、防水魔法って」
  ※ミーナ派ノキース派の論議は割とよくある
  事だが、ここまで白熱する事は珍しい。
爺さん(多趣味)「‥‥‥‥」

〇ヨーロッパの街並み

〇カウンター席
ギン((あーぁ、あっちぃい‥‥‥))
ギン((‥‥‥‥ちっ。  まさかあいつがノキース派だったとは‥‥))
ギン((にしても、衝動で縁を切ったのは  まずかったかもしれない‥‥‥))
ギン((‥‥‥‥‥))
ギン((地元から完っ全に離れた土地のごはん、  口に合わない‥‥‥))
ギン「(もぐもぐ‥‥‥)」

〇リサイクルショップ(看板文字無し)
ギン「あン?」

〇リサイクルショップの中
爺さん(多趣味)「いらっしゃあ‥‥‥」
ギン「へ〜。 馬車のよろけ爺さん、雑貨屋なんて やってたんですね」
爺さん(多趣味)「あぁ、お主‥‥‥」
爺さん(多趣味)「お友達とケンカして飛び出してった子じゃな‥‥‥!」
ギン「あんなん、別にダチじゃないっすよ」
爺さん(多趣味)「そうかぁ‥‥‥?」
爺さん(多趣味)「お友達は大事にしんしゃい‥‥‥?」
爺さん(多趣味)「ノキース派だミーナ派だ、くだらない‥‥‥」
ギン「は?! なんだと、にゃろうっ‥‥‥」
ギン「‥‥‥な、なんで、ですかねぇ。お爺さん」
爺さん(多趣味)((自分なりに年寄りを敬っては  いるんじゃのぉ‥‥‥))
爺さん(多趣味)「‥‥‥何、くだらんとは思わんか。 正解のわからない事で友達とケンカするのは」
ギン「爺さんも『セイリング・ベルズ』を ご存知のようだから訊きますけど‥‥‥」
ギン「爺さんは、ジーコは最終的にどっちと くっついて終わりだったと思ってるんです?」
爺さん(多趣味)「わしは‥‥‥どちらでもないと予想しておる」
ギン「んん? 他にめぼしい女性キャラいましたっけ?」
ギン「さすがに、給仕のナナはないでしょう?」
爺さん(多趣味)「わしはなぁ‥‥‥」
爺さん(多趣味)「ジーコはどちらを選ぶか迷った末に、 自殺する──と思っておるんじゃよ」
ギン「そ、そんなバカな‥‥‥」
ギン「‥‥‥いや、言われてみれば確かに‥‥。 その可能性もある気がしてきた‥‥‥!」
爺さん(多趣味)「エルム・ナキュの前作の後書きを覚えておるか?」
ギン「『主人公が悩み苦しんでいるところを 描写する度に、私は主人公を楽にさせて あげたくて殺したくなる』」
ギン「『ただ、それをやると編集に怒られるから 出来ないし、私だってそりゃあキャラを 殺したくはない(笑)』」
ギン「──ですよね?」
爺さん(多趣味)「当時の『ヒロイン論争』は、そりゃあ 凄まじかったからのぉ‥‥‥」
爺さん(多趣味)「エルム・ナキュはジーコを楽にさせて あげたくて、もしかしてどちらも選ばずに──」
爺さん(多趣味)「‥‥‥まぁ、これはわしの勝手な妄想じゃがな」
ギン「ミーナとノキース、どちらを選んでも 読者に文句を言われるような状況‥‥‥」
ギン「かと言って、ジーコを自殺させて楽にさせて あげたいが編集に怒られる‥‥‥」
ギン「追い詰められた繊細なエルム・ナキュは、 引退して未完にして逃げた‥‥‥」
ギン「あ、ありそうな流れだ‥‥‥」
爺さん(多趣味)「な? 正解などエルム・ナキュ本人以外には 誰にもわからないのだよ」
爺さん(多趣味)「そんな事でお友達とケンカするのは アホらしいこっちゃて」
爺さん(多趣味)「むしろ、あんな風に本について熱く語れる 友人がいる事を大事にしんしゃい」
ギン「‥‥‥考えておきます」
ギン「にしても、そんな発想‥‥‥爺さんも だいぶエルム・ナキュのファンですねぇ」
爺さん(多趣味)「わしはエルム・ナキュのサイン会にも 行ったことがあるレベルのファンだぞぃ?」
ギン「えっ‥‥‥ナキュ先生の現役時代を知ってる なんて‥‥いいな‥‥‥!」
ギン「美人でした? 儚げ美人?」
爺さん(多趣味)「エルム先生は男じゃぞ」
爺さん(多趣味)「だ、大丈夫か?!」
床に倒れたギン「お、男だったんですか‥‥‥?」
床に倒れたギン「あの文体で‥‥‥?」
爺さん(多趣味)「当時もその事でざわついたし、 そうなる気持ちはわかるがの‥‥‥」
爺さん(多趣味)「いやぁ! でも線の細いキレイな男性 だったから実質“女性”じゃよ! うん!」
床に突っ伏すギン「‥‥‥『繊細な女性』というイメージが、 申し訳ない事に一気に『ウジウジ細かい うっせぇ男』になってしまった‥‥‥」
爺さん(多趣味)「性差別、良くない」
ギン「‥‥‥そう、良くない‥‥‥」
ギン「良くないですけど、泣いてもいいだろって くらいには僕は‥‥‥割と思い入れあったので‥‥‥すんません」
ギン「‥‥‥‥‥」
ギン「もうどっちでもいいや!!! 作品が素晴らしい事に変わりはねぇえええ!!!!!」
爺さん(多趣味)((うるさいのぉ、コイツ‥‥‥))

〇リサイクルショップの中
ショックから立ち直ったギン「‥‥‥‥」
ギン「なぁ、爺さん」
ギン「料理以外の家事・雑事をやらせていただく 代わりに、ここに2泊させていただけません?」
爺さん(多趣味)「ん? なんじゃ? 別に構わんが‥‥‥」
ギン「ついでに、爺さんと本の話もしたいっすねぇ!」
爺さん(多趣味)「ワシ、料理の腕前はゴミカスレベル じゃが大丈夫か‥‥‥?」

〇空

〇田舎の公園
???「‥‥‥」
???((‥‥‥やっべぇ‥‥‥))
  あいつを見失って丸2日経ってしまった‥‥‥。

次のエピソード:9/お前も今日から俺の作品の肥やし

コメント

  • そうか……エルム・ナキュは男か……(棒)。
    味にうるさいギンきゅんも出てきてウフフ……ってなってます👼

  • ヒロイン論争、身に覚えがありすぎて😂😂(過激派はマジで怖いっす)
    ま〜確かに爺さんの言う通りなんすよね。人の好みなんてそれぞれだし。

    作者の性別ってのもあるあるですかね。私も知り合いのフォロワーさんを長い間勘違いしておりました。
    白状すると、東龍さんも勘違いしておりました。
    😇m(_ _)m😇

  • 5の論争みたいだこれ!!と思ってたらやはり😂ちなみに私もヒーラーさん派です!(そしてフローラ派)好きなもので熱くなって喧嘩する2人が可愛い回〜🥳おじいさんがまさかのガチ勢で笑っちゃいましたww
    青い顔してギンさんウロウロ探してるヒーラーさん愛しい…
    冒頭の「疲れが溜まって」なヒーラーさんの会話、これもしやとんでもない展開🥀来るか!?とドキドキしてしまった🤤💕

コメントをもっと見る(4件)

ページTOPへ