3 田舎の仲間達(脚本)
〇役所のオフィス
俺が左遷に成って古屋がこっちに異動してから一週間が経った。前に住んでた家の解約や引っ越し手続きに大分時間を使ったが、
どれも終わらせてやっと落ち着いた。その後は支社長の指示で事務作業を覚えて、後々営業にも行く事に成るだろう。
霧雨大和「良し、確認が終わったら次のデータだ・・・」
古屋霞「先輩、調子どうですか?」
霧雨大和「古屋か。こっちはまぁ順長かな」
古屋霞「そうですか。新しい環境ですし、余り無理しないで下さいね。後、これ渡します」
霧雨大和「おぉ、有難う。(流石に何かお返ししたく成ったな。)」
古屋霞「先輩の方、資料出来ました?良かったら私、一緒に持って行きますよ?」
霧雨大和「あぁ、頼む」
古屋霞「確かに受け取りました。じゃあ渡して来ます」
霧雨大和「次の休日、何かして上げたいな・・・」
古屋霞「副支社長、こちらが私が頼まれた物で、こっちが霧雨先輩の作った資料に成ります」
霧原奈津菜「そうか・・・少し待ってろ・・・」
霧原奈津菜「・・・良し、二人共良い感じだ」
古屋霞「有難う御座います!じゃあ、次行きますね!」
霧原奈津菜「あぁ待て古屋!ちょっと聞きたいんだが、前の所でもあんな感じだったのか?」
古屋霞「あんな感じって言いますと?」
霧原奈津菜「さっき霧雨に菓子を渡してただろ?何時もやってる事なのか?」
古屋霞「あ、もしかして怒ってます?」
霧原奈津菜「何、責める気は無い。お前等の様子をじっくり見させて貰ったが、何時も市販の菓子を渡してるのか?」
古屋霞「えっと・・・厳密に言えば、私は霧雨先輩にしかやってません。自分で作る事も有りますけど」
霧原奈津菜「そうか・・・なら差し入れをしたいなら飲み物はカフェインは避けて、ちょっとした嗜好品は手軽な栄養食にした方が良いな」
霧原奈津菜「霧雨の事を気に掛けたいなら、その辺りを考慮した方が良い。菓子を上げるのは勝手だが、後の食事に響くからタイミングは」
霧原奈津菜「考えた方が良い」
古屋霞「は、はぁ・・・副支社長、凄く考えてますね・・・」
霧原奈津菜「部下の健康管理は上官の仕事でも有る。本当に具合が悪く成ったら私や支社長を頼れ。これは命令だならな」
古屋霞「・・・!分かりました!」
霧原奈津菜「理解してくれたならそれ以上は言わない。それと、お前等に差し入れだ」
古屋霞「あ!良いんですか?」
霧原奈津菜「仕事のお供と言ったらこれだ。霧雨の分も有るからお前から渡してくれ。差し入れならこっちの方が絶対良い」
古屋霞「はい!有難う御座います!」
霧原奈津菜「ずっと気に成ってたが、あいつ等付き合って無いのか?」
舞園貴理子「皆、今戻ったわ!」
霧原奈津菜「お疲れ様です、支社長!調子はどうでしたか?」
舞園貴理子「良好よ!契約はまだ先に成らないと分からないけど」
冨永清「営業先の重役の人のお子さんと遊んで来ましたよ。仲良くしてたらお子さんだけで無く重役の方からも好印象貰えて!」
霧原奈津菜「何だか期待出来そうですね!」
霧雨大和「すみません、少し良いですか?」
舞園貴理子「どうしたの霧雨君?」
霧雨大和「営業しに行ってたんですよね?冨永さん、お子さんと遊んでたって聞いて気に成って・・・」
冨永清「あぁ!内では良くやってる事なんだ!」
霧雨大和「と言いますと?」
冨永清「この辺だとお子さん持ちだったり社内に有る預かり所で子供に会う機会が多いんだ。ちょっと寄り添って見たり、」
冨永清「仲良く成ったら一緒に遊んで、その上で自分達は信頼される見たいな事も有るから」
霧雨大和「は、はぁ・・・」
舞園貴理子「勿論それだけじゃ無いわ。私達の誰かが子供の相手をする事も有るけど、営業行く際に和菓子とかの手土産を渡す事も有るわ」
舞園貴理子「まぁ常識だけど。子供やその先で会う人と交流して少しずつ親交を深める。その過程で私達は相手の信頼を勝ち取ってるわ」
霧雨大和「何だろう・・・前は商品の良さや効率とかを考えてたけど、そう言うのも大事なのかな・・・」
舞園貴理子「そこの所は論より証拠ね。近い内、私と一緒に営業行って貰うから、心構えだけはして置いて頂戴」
霧雨大和「分かりました!」
前の所でやってた事と変わらない所も有るけど、その場所ならではのやり方も有る。今まで同じ所で頑張ってたのが
当たり前だったが、何だかこれから新しい事をやるのが楽しみだった。
〇役所のオフィス
その日の終業時間。
舞園貴理子「皆、今日もお疲れ様!」
霧原奈津菜「お疲れ様です」
冨永清「支社長、いよいよですか?」
舞園貴理子「えぇ!例の屋台で新入り君達の歓迎会よ!」
古屋霞「え!?そんなの何時の間に!?」
舞園貴理子「えぇ、最近噂程度しか無かった屋台がこの辺りに来てるって話が有ってね。私も調べて行って見たら本当に来てたのよ」
舞園貴理子「店主さんに頼んで貸し切り予約させて貰って、今日皆で行く事にしてたのよ!」
霧雨大和「はぁ、ですが、何で言ってくれなかったんです?」
舞園貴理子「そりゃ驚かせたいからよ。偶にはサプライズしたい時だって有るでしょ?私もこの前屋台で食べて見たけど、味は私が保証するわ!」
古屋霞「そう聞くと行かない訳には行きませんね!先輩、行きましょう!」
霧雨大和「そうだな・・・皆さん、今日は宜しくお願いします!」
舞園貴理子「良し!それじゃ皆行くわよ!」
冨永清「おぉ!!」
先輩達からの計らいで俺達は屋台で歓迎会をやる事と成った。これからの事も有るだろうし、俺も何だか楽しみだった。
〇屋台
舞園貴理子「着いたわ。此処よ此処!」
古屋霞「支社長のお勧め、今から楽しみです!」
舞園貴理子「えぇ!期待してくれて良いわ!取り合えず行きましょう!」
舞園貴理子「店主さん!予約してた五人、今来ました!」
佐藤博之「よぅ!この前の支社長さん!待ってたぜ!!」
霧原奈津菜「支社長、この方が」
舞園貴理子「えぇ!最近この辺で屋台を出してる佐藤博之さんよ!」
霧原奈津菜「成る程、先日は私達の支社長がお世話に成った見たいで、有難う御座います」
佐藤博之「な〜に!こっちは仕事で料理やってる訳だから大した事ねぇよ!それはそうと、折角予約してくれたんだ。今日は楽しんでくれよ!」
舞園貴理子「是非そうさせて貰うわ!取り合えずビール五人分ね!」
霧雨大和「あぁ!支社長!ちょっと言い難いんですが!」
舞園貴理子「ん?どうしたの霧雨君」
霧雨大和「申し訳有りません。俺アルコールはどうしても駄目で・・・」
舞園貴理子「あら!それは意外ね!でも大丈夫よ!店主さん!ビール一人分減らすわ!」
佐藤博之「あいよ!坊主は飲み物何にするよ!」
霧雨大和「あ!そしたら烏龍茶お願いします!」
佐藤博之「承ったぜ!」
俺達は各々席に座り、飲み物や料理を注文して歓迎会を始めた。
舞園貴理子「それでは、新入り君達の出社を祝って、乾杯!!」
冨永清「ぷはー!やっぱ仕事終わりの一杯は最高ですね!!」
霧原奈津菜「おいおい、余り飲み過ぎると帰れなく成るぞ」
冨永清「副支社長も人の事言えないじゃ無いですか!!」
古屋霞「先輩、未だアルコール駄目なんですね」
霧雨大和「こればかりは流石にね・・・」
古屋霞「でもやっぱり健康第一ですよ!先輩が煙草吸った所見た事無いし!」
霧雨大和「まぁ、色々思う所が有るから・・・」
佐藤博之「何か上手くやってる感じだな」
舞園貴理子「まぁね。前は三人で頑張るのが当たり前だったけど、あの子達が来てくれてやり易く成って来てるわ」
佐藤博之「へぇ!そりゃ成長が楽しみだな!」
舞園貴理子「そう言うそちらさんも、お弟子さんが居たって言ってましたが、連絡取り合ってるんですか?」
佐藤博之「あぁ、この前連絡したぜ。最近物騒な事が有ったらしくてな。ゲームやった仲間が本気で自殺しかけたとか。技術が進化するのは」
佐藤博之「大事だが、使い方を間違えれば凶器にも成るからな」
舞園貴理子「有りましたねそんな事。作成者の方見つかって欲しかったんですが、自殺したんですよね」
佐藤博之「まぁ、世の中には色んな考えを持った奴が居るからな。俺見たいに愛情込めて料理したいって奴も居るし、ゲームを通して」
佐藤博之「何かを伝えようとする奴も居る。どんな結果を招いてもな。酷ぇ言い方だが、狡い奴に限って生き残り易いってのも有るからな」
舞園貴理子「何と言うか、上手く行きませんね」
佐藤博之「あぁ、結局最後に行き着くのは、自分に出来る事をやるしか無いって事だからな。上手く行く事の方が珍しいぜ」
冨永清「支社長!何辛気臭い顔してるんすか!もっと飲みましょうよ!」
舞園貴理子「ちょっと冨永君!出来上がっちゃってるわよ!」
霧原奈津菜「冨永君の言う通りですよ!今日位は楽しみましょうよ!」
舞園貴理子「あらあら、奈津菜まで・・・」
佐藤博之「確かに、こんな辛気臭い話しても出来る事なんざねぇな。支社長さんも楽しみなよ!」
舞園貴理子「そうさせて頂きます!」
古屋霞「先輩、ちゃんと食べてます?」
霧雨大和「あぁ、食ってるよ」
古屋霞「後でお腹減った見たいな事に成らないで下さいね。店主さん!焼き鳥追加お願いします!」
佐藤博之「あいよ!!」
霧雨大和「古屋も食い過ぎたら美人が台無しだぜ?」
古屋霞「大丈夫です。ダイエットは欠かしてませんから」
俺達五人は夜に成るまで盛り上がった。帰る際には冨永さんと副支社長が飲み過ぎて運ぶのが大変だったが、またこんな風に
皆で盛り上がれたらなと、そう思った。
〇オフィスのフロア
俺達が仕事をしていた同時刻の子会社。
部長「なぁ、まだ海道君は来ないのか?これで何回目だ?」
男性社員「えぇ、こちらからも電話掛けてるんですが、一行に繋がらなくて・・・」
部長「この前霧雨君を追い出してから、海道は遅刻ばかりで場合に寄っては来ない。こちらにも仕事が有ると言うのに・・・」
男性社員「部長、そもそも彼は何者なんですか?彼がまともに仕事した所、見た事無いんですが・・・」
部長「あぁ、彼は此処の親会社の海道社長の息子さんなのだよ」
男性社員「えぇ!彼が!?」
部長「一応記録は残して有るが、社長が彼に社会勉強をさせたいと言う事で此処に入れさせたんだ。社長の息子と言う事も有り」
部長「逆らえなくてな」
男性社員「えぇ・・・大丈夫なんですかそれ?」
部長「私にも分からんよ・・・」
部長「電話!?誰か・・・」
「あぁ、もしもし?部長ですか?」
部長「その声は、海道君か!今何をしているんだ!?」
「御免なさい、朝起きたら風邪引いちゃって・・・」
部長「そ、そうか・・・病院には行ったのかね?」
「はい、今救急車呼んで、もう直ぐ来る頃で・・・」
「皆盛り上がって行こうぜぇぇ!!!」
部長「な!?海道君!君は今何をして!?」
「あ、救急車来ました。それじゃあまた・・・」
部長「ま、待ちたまえ!!一体何を!!」
男性社員「部長、海道は一体何を・・・」
部長「盛り上がって行こうぜ・・・と・・・」
男性社員「はぁ!?あいつ何処で油売って・・・・・・あの部長、もしかして僕等・・・」
部長「あぁ、そのまさかかも知れん。霧雨君を左遷させた事、本当に正しかったのか・・・?」
〇ライブハウスのステージ
海道礼司「待ちに待った推しのライブ!仕事なんてやってる場合じゃ無い!!」
「載ってるか〜い?」
海道礼司「うぇぇぇい!!」
俺達が居なく成った後の海道は好き放題遊び呆けていた。異動した後に成っては俺達の知る事では無かった。
屋台と聞いた瞬間まさかとは思いましたが、やっぱり伝説の料理人、佐藤でしたか!
部長達も間違いに気づき始めていますし・・・
しっかり確認しなかった部長は身から出た錆ですが、他の部下の方々は完全に巻き添えですね
霧雨がどれだけ周りに被害を出さないように頑張っていたのか・・・
というか霧雨と霞が結構頑張っていたという証ですね・・・これ・・・