102号室、202号室、302号室 (脚本)
〇風流な庭園
大家「はいはい、そういうワケです お願いしますね」
101号室 ハヤシ「こ、こっ・・・掃除? だけっすか?」
大家「ハイとりあえず今日は、そうなりますね」
101号室 ハヤシ「木、とか花とか、分かんないんすけど?」
大家「落ちてる枯れ葉なんかを拾って頂きまして 小綺麗にして下さる?」
101号室 ハヤシ「も、もう充分コギレイっつーか・・・ 何かしちゃったら弁償とかムリっすよ?」
大家「ああ大丈夫ですよ そんな高級な庭じゃありませんので」
大家「お嫌ですか?」
101号室 ハヤシ「い、いや、うっす、やります!」
大家「ああ先に朝ご飯にしましょうか それからお昼まで庭掃除、と」
101号室 ハヤシ「マジっすか、それマジだったんすか」
大家「大マジですよ、はい 三食付きのお手伝いサンとして、ね」
大家「なのでお昼の後はウチのメイドちゃんと 適当に掃除機でもかけといてもらえます?」
101号室 ハヤシ「め、メイドちゃんが居るんすか? ・・・うっす! 頑張ります!」
大家「むふふ、お願いしますね」
〇安アパートの台所
102号室 リュウザキ「・・・ワシは・・・」
102号室 リュウザキ「ワシは、ただ・・・焼きそばを作ろうと」
102号室 リュウザキ「・・・なんでじゃ・・・!」
「・・・なんでじゃ」
102号室 リュウザキ「アニキ・・・!」
102号室 リュウザキ「旨いぜってアニキが褒めてくれた フルコース・・・!」
102号室 リュウザキ「リュウのメシは世界一だって・・・ アニキが・・・!」
102号室 リュウザキ「なんで先に逝ってしまったんじゃー!」
102号室 リュウザキ「悔しいぜよアニキ! モグモグ ワシがムショに入った後に何があったんじゃ! モグモグ 便りが無いのは元気にシマ回してると思」
102号室 リュウザキ「ってのう! モグモグ 誰に殺られたんじゃ! モグモグ 絶対に! モグモグ 仇は取るぜよ! モグモグ 手がかりも! モグモ」
102号室 リュウザキ「グ 何も無えじゃけえ! モグモグ それでも! モグモグ 仇は! モグモグ 必ず! ゴクン・・・」
102号室 リュウザキ「・・・」
102号室 リュウザキ「・・・」
102号室 リュウザキ「アールグレイじゃワレェ!」
「まあ良い香りですこと」
102号室 リュウザキ「誰じゃあボケェ!」
「あらあらサスガですね 勘の良い御方で・・・退散」
「・・・にゃ」
102号室 リュウザキ「・・・なんじゃ・・・猫か・・・」
〇古い畳部屋
「・・・」
「・・・キミ、また置いて行かれましたか?」
202号室 ヤマノ「だれ?!」
「まあ、なんでしょうかね? 座敷童子みたいなモノだと思って下さいな」
202号室 ヤマノ「・・・ザシキワラシ? 何ソレへんなの」
「おや知りませんでしたか では・・・妖精でいかがでしょ?」
202号室 ヤマノ「うふふ、妖精は羽根が生えた女の子だよ そんなオジサンみたいな声じゃない」
「あらあらソレは失礼致しました いやでもまあまだそんな年では、むふふ」
202号室 ヤマノ「どこにいるの? オジサンだれ? 泥棒?」
「怪しい者ではありませんよ まあ良いではないですか、細かいコトは」
202号室 ヤマノ「うふふ、へんなの」
「変ですか、むふふ、変ですかね まあ変なコトはしませんからご安心を」
202号室 ヤマノ「うん」
「ところでキミ、良い感じのお子様なのに 外に遊びに出たりはしないのですか?」
「四月に越して来てから ずっとオウチで過ごしてらっしゃる」
「近くに公園がありますよ、寂れてますがね 妖精オジサンがご案内して差し上げましょ」
202号室 ヤマノ「・・・大丈夫、行かない」
「おやおや? そのココロは?」
202号室 ヤマノ「・・・外は危ないから出ちゃダメなんだ」
202号室 ヤマノ「絶対、二度と出さないって言われてる」
「・・・そうですか・・・うーん・・・」
「・・・では、こういうのはどうでしょ?」
「たまに遊びに来るヒマなオジサン妖精と お話して貰えます?」
202号室 ヤマノ「・・・いいよ!」
「ああ良かった、ではそうしましょうかね」
202号室 ヤマノ「ねえ、妖精オジサン? オジサン妖精なの? 泥棒? 変質者?」
「何でもお好みで呼んで下さいまし 泥棒と変質者ではありません、絶対に」
202号室 ヤマノ「ねえ、壁の中にいるの?」
「おやおや、ちょっと、まあ、そんなに」
202号室 ヤマノ「このへん?」
「ストーップ! そこではありません! いませんよ、いるワケ無いでしょう!」
202号室 ヤマノ「あ、ここ?」
「違いますって! 居りませんってば! 壁の中になど断じて!」
202号室 ヤマノ「へんなの!」
「にゃ」
202号室 ヤマノ「あれ? 猫がいるの?」
202号室 ヤマノ「どこどこー?」
「退散」
〇けばけばしい部屋
302号室 マツムラ「そう、今日とか明日とかお店来れる?」
302号室 マツムラ「・・・うん、うん・・・ああ・・・」
302号室 マツムラ「そっか・・・うん、分かったぴょん」
302号室 マツムラ「うん、またねー」
302号室 マツムラ「・・・全滅じゃん」
302号室 マツムラ「死ね、みんな死ね、ワタシ死ね 生きてても意味ないじゃん」
302号室 マツムラ「ワタシ虫、アリみたいな、いやアリに失礼 意味ないわ、ホントもうアレ」
302号室 マツムラ「アレだよね、あのアレみたいな なんだっけ、なんだったかなー?」
302号室 マツムラ「・・・」
302号室 マツムラ「なんだっけ?」
302号室 マツムラ「ボク、好きな物とかあったよね?」
302号室 マツムラ「なんか先月もライブに、いや違うわ、 あれ先週だっけ? 去年かも?」
302号室 マツムラ「オレは誰のライブに行ってたんだっけ? 違うか、映画かなアレは?」
302号室 マツムラ「アニメだった? いや人間の男の子が、んん? いやアニメの男の子が、んん?」
302号室 マツムラ「・・・」
302号室 マツムラ「なんだっけ?」
302号室 マツムラ「あ」
302号室 マツムラ「タイチさーん? 久しぶりじゃーん 元気だったー?」
302号室 マツムラ「・・・うん、ウフフ、うんうん」
302号室 マツムラ「え、ホントに? ヤダ嬉しいー」
302号室 マツムラ「うん、待ってるね」
302号室 マツムラ「アフターも空けとくー、うん、もちろん」
302号室 マツムラ「ウフフ、うん、じゃあねー」
302号室 マツムラ「・・・」
302号室 マツムラ「・・・」
302号室 マツムラ「なんだっけ?」
302号室 マツムラ「あ、準備しなきゃ」
「・・・」
302号室 マツムラ「えっと、アタシのバッグ・・・」
302号室 マツムラ「あれ? スマホどこ?」
302号室 マツムラ「いま喋っててポイッて、あれ? 誰と喋ってたんだっけ?」
302号室 マツムラ「えっと・・・なに探してたんだっけ?」
「・・・」
「・・・にゃ?」
302号室 マツムラ「え? 猫? あ、そうそう今日って猫耳の日じゃん」
302号室 マツムラ「・・・猫耳の日? なにそれ?」
「・・・にゃ?」
302号室 マツムラ「あ、仕事だ お店のイベントだっけ、うんうん」
302号室 マツムラ「・・・えー・・・っと・・・」
「・・・」
〇開けた景色の屋上
大家「・・・」
大家「・・・ふう」
大家「・・・うーん」
オネコ「にゃ」
大家「おいでませオネコさん」
大家「なんですか今日は 朝からずうっと私について回ってたでしょ」
オネコ「にゃーん?」
大家「私が壁にいれば天井に、 天井に入れば壁にいましたね?」
オネコ「にゃーに?」
大家「誤魔化してもバレてますよ まあ助かりましたけどねイロイロと」
大家「私が言うのもナンですが まったく悪趣味ですね、むふふ」
オネコ「にゃ」
大家「さてさて全く何から誰から何処から 手をつけましょ?」
大家「オネコさんならどうします?」
オネコ「にゃ」
大家「私としましてはもう幸福荘を病院にでも 改装した方が早いのではないかと」
大家「まあでも放っておけばおくほど 愉快なのがこのアパートメントですからね」
大家「今年度も有り難いコトに 顔触れが一新されてますし・・・」
大家「・・・そうね、歴代でドナタがお好き?」
大家「私は五年前に引っ越していった ハタノさんですね、覚えてます?」
大家「オネコさんも知っているでしょ」
オネコ「にゃ」
大家「あの人のお陰で幸福荘は 木っ端微塵にならずに済んだのですから」
大家「ちゃんと元気にしてらっしゃると 良いのですがね」
オネコ「ふにゃ」
大家「・・・」
大家「・・・ご飯、食べていきます?」
オネコ「にゃん」
大家「むふふ」