其の弐(脚本)
〇御殿の廊下
ある日、城内で三馬鹿にからまれた。
市松こと。
福島左衛門尉正則
虎之助こと。
加藤主計頭清正
殿下の甥御ゆえ気を使って金吾殿こと。
金吾中納言小早川秀秋
秀秋「おい治部」
清正「こら治部」
正則「てめえ治部」
治部治部言いたいだけやん三人衆なので、こちらも心中三馬鹿扱いだ。
三成「なんだ?」
正則「何故太閤殿下と会うのに、おのれごときの了解が必要なのだ」
正則「ああ?治部よ」
三成「殿下は忙しい。要件なら私が承る」
三成「そして私も忙しいので手短にな」
清正「断る。その方が間に入れば、殿下との間に齟齬が生じるは先の唐陣で明らかとなった」
三成「齟齬とは如何に」
秀秋「我らが陣立てを消極的戦術などとは。讒言が過ぎるぞえ」
秀秋「あれは来るべき明との再戦に備え兵を温存しただけじゃ」
やたらガラの悪い奴が市松。
やたら慇懃な奴が虎。
やたら白粉がかった奴が金吾。
どれも政とは程遠い猪武者で、昨今の殿下の変貌について、ともに語るべき人物ではない。
よって三人まとめて追い払うこととした。
三成「笑止なり!」
三成「貴公らが朝鮮軍攻略に失敗したのは明白。それを私が大勝利と報告し講和に持ちこんだのだ。本来なら目通り所か蟄居である」
正則「何だと!」
続く我が「恥を知れ」の大喝と市松の乱暴狼藉がぶつかる直前
傍らにいた刎頸の友のとりなしによって、実に残念ながら事なきを得た。
「まあまあ、双方落ち着かれよ」
正則「おう、援護射撃か?受けて立つぞ!」
吉継「福島殿。加藤殿。そして金吾様」
吉継「お三方は豊臣の顔。来るべき明との交渉においても武士の顔を潰す様な真似は致しませぬ」
吉継「太閤殿下の心は常に皆様と共にありますぞ」
「そ・・・」
「そう?」
三馬鹿はそれ以上何も言えず、或いは何も吠えることができず己が館(ハウス)へと引っ込んだ。
友の名は大谷吉継。
大谷刑部少輔吉継
私と唯一対等に渡り合える知恵者だ。
〇風流な庭園
吉継「どうせ埒もない策を考えていたのだろう。福島殿に一発殴らせてな」
吉継「そういう小賢しさがお前から人を遠ざける所以なのだぞ」
三成「馬鹿を一匹、政から追い出すよい計略ではないか」
と反論しようとしたが、刑部とは他に大事な話があるので苦笑して切り上げ、盃を置き本題へと移った。
勿論殿下の話である。
吉継「それは政所様におでまし頂く他あるまいな」
〇城
確かに天下人ではなく一人の男の体調の話なら、妻の力を借りるのが一番だ。
太閤正室北政所
しかし現在疎遠になっている夫婦再交流を行う為には大きな壁があった。
太閤側室淀君
亡き偉大なる覇王の血脈にして殿下の側室にしてただ一人太閤の子を産んだ女性たるお茶々様だ。
私は壁、もといお茶々様に湯治をすすめ
淀君「~♪」
その隙に政所様にお出まし頂いた。
これで万事解決!
と、思いきや。
北政所「殿下!」
北政所「いえ、おまえ様は明の使者を斬るつもりですか?」
太閤「全く。久々に会うたと言うにはや小言か」
北政所「人たらしの秀吉ともあろうお方が、使者の一人や二人手なずけようともせず力任せに斬り捨てようとは何たる蛮行猪武者の所業」
北政所「ああ、情けなや情けなや!」
三成「ま、政所さま。もう少し冷静に・・・」
三成「殿下には殿下のお考えが・・・」
太閤「もうよい!下がれ寧々!」
といいつつ下がったのは殿下の方だった。
〇風流な庭園
吉継「ううむ。逆効果だったか」
吉継「すまんな治部。政所様のあのご気性をすっかり忘れておった」
三成「いや、さすがは刑部」
三成「いまや殿下にものを申せるは政所様だけ。それが功を相したぞ」
吉継「どういうことだ?」
三成「あの羽柴筑前守が戻って来たのだ」
〇屋敷の大広間
なんぴとをも魅了し、なんぴとをも手玉に取る戦国随一の利け者、秀吉様が。
続く
2話目も
読ませて頂きました❣️
出た、大谷さーん❣️
あら、ねね様
優しいですね❣️
明の使者、と言うよりは、
人一人の命を守ろうとなさっているんですもの。
ではまた❣️