12 結城雁之助の心(脚本)
〇闇の要塞
ログインした俺達の眼の前に広がる光景はハデスの城だった。昼間にも関わらず空が暗く、長く居たら気がおかしく成りそうだった。
小泉彩花「ハデスの部屋は何度か見せて貰ったけど、改めて見せて貰うと凄いね」
久我誠一「あぁ、後は俺達の足でハデスの元に辿り着くだけだ」
小泉彩花「そうだね・・・行こう!」
眼の前の風景に圧倒されながらも、俺達は城の中へ入るのだった。
〇要塞の廊下
足早「う〜・・・」
デカグモ「しゃぁぁぁ・・・」
小泉彩花「流石に此処まで来ると雑魚敵も半端じゃ無いわね」
久我誠一「あぁ、油断せず行こう」
ロボット兵「・・・・・・」
久我誠一「今度はロボットか!」
小泉彩花「あたしに任せて!」
小泉彩花「誠一!今の内に!」
久我誠一「分かった!」
久我誠一「レナを倒してゲットしたクロスボウと新しい氷魔法が役に経ったな」
小泉彩花「えぇ、先を急ぎましょう!」
俺達は迫り来る雑魚敵を退けながらハデスの部屋を目指した。道中レベルも上がり、やっとの思いで部屋に辿り着くのだった。
〇魔王城の部屋
久我誠一「とうとう此処まで来たな」
小泉彩花「えぇ、自分達の足で此処に来るのは初めてね」
ハデス「勇者達よ、良くぞ此処まで辿り着いた」
久我誠一「ハデス!!」
ハデス「我の暗黒四天王を倒し、この場所に辿り着いた事は褒めてやろう。その上で、貴様達はどれだけの代償を支払ったのかな?」
小泉彩花「ハデスの目的は人類抹殺・・・それはあたし達が止めて見せるわ!」
ハデス「そうか・・・それをやる事がどう言う事か、お前達は本当に分かって居るのか?それで本当に英雄に成ったつもりか?」
久我誠一「何が言いたい?」
ハデス「我が直々に教えてやろう。お前達の視点で世界を救う事の意味をな!」
小泉彩花「鎌?」
ハデス「さぁ掛かって来るが良い!世界を救うと言う戯言に、心を支配されながらな!!」
小泉彩花「・・・・・・!!」
小泉彩花「くぅ!!」
ハデス「ほう、少しはやる様だな。ならば!」
久我誠一「くぅ・・・良く狙って・・・」
ハデス「くぅ、小癪な・・・!」
ハデス「一つ聞こう、何故お前達は戦う?その命が気に入らないからか?高みを目指したいからか?」
小泉彩花「皆と一生に笑って暮らしたいって言えば笑う?」
ハデス「笑うさ・・・それがどれだけ愚かな事かお前達には分からないからな・・・」
小泉彩花「そんなに言うなら分からせて欲しいわ!はぁぁ!!」
ハデス「おぉ!!あ、足がぁぁ・・・」
久我誠一「勝負有ったな。これで止めだ」
ハデス「我等を倒して世界を救う?笑わせるな!何故我等を倒す?我等を倒す意味が分かっているのか!?」
小泉彩花「貴方を倒せば、もう世界は脅かされない!」
ハデス「ふふ、ふはは、ふはははは、ふはははははは!!!」
久我誠一「何をそんなに笑って・・・」
ハデス「貴様等はつくづく我等を笑わしてくれる!世界を救う?この世界を汚染し、争い続ける為にか!?」
久我誠一「・・・・・・!?」
ハデス「まだ気付かぬと言うなら教えてやろう。お前達が守ろうとして居るのは自分だけの為の平和だ。我が何故ウイルスや核を」
ハデス「ハーキン達に使わせなかったか分かるか?そんな物を使えば自然の再生が出来なく成るからだ」
小泉彩花「・・・!?」
ハデス「太古の昔、この世界は緑の自然に溢れた素晴らしい場所だった。だがそこにお前達人類は生まれた。そして己の欲望のままに」
ハデス「他の生態系を乱し、自分達の幸せだけを願い、行動し、自分達を拡大して行った。その代償に、この世界は汚れ切って」
ハデス「しまったのだ。それだけでは無い。自らの欲望に溺れ、同じ種族にも関わらず、奪い、壊し、争い、支配し、世界の全てを汚染」
ハデス「しているのだ」
小泉彩花「そ、それじゃあたし達がしてる事は・・・」
ハデス「そうだ。お前達の言う平和とは、世界を汚染し、無益な争いを続けさせると言う事だ」
久我誠一「そうか・・・だから皆あんなに荒れてしまったのか・・・」
ハデス「我の願いは人類を抹殺し、この世界を元の美しい世界に戻す事だ。暗黒四天王はそんな我の考えに賛同して着いて来てくれた」
ハデス「暗黒四天王を倒すと言う事は、自然の生態系を更に崩すと言う事だ」
久我誠一「・・・・・・」
ハデス「お前達人間が生まれた時点で、この世界は失敗したのだ。それともどうだ?我を倒して、まだ世界の破壊を繰り返すか?」
ハデス「この世界を我等に委ねるか?」
小泉彩花「ど、どうしよう誠一・・・こんなのって・・・・・・」
久我誠一「・・・・・・」
久我誠一「・・・・・・」
久我誠一「ハデス・・・いや、結城雁之助さん。貴方の気持ちは確かに伝わった。誰かが言ってたんだ。一つの物語を作ったその世界の人達は、」
久我誠一「作り手の心その物だって。今俺達の前に居るのは、結城雁之助さんの心が宿ったハデスなんだ。雁之助さん。これからの事は、」
久我誠一「俺達が責任を持ってやって行きます。貴方が突き付けた現実は死ぬ程重い。だから、皆で背負って行きます。そして、」
久我誠一「本当の意味で世界を救って見せます・・・」
久我誠一「だから、信じてくれとは言いません。俺達がやって見せます」
ハデス「・・・!!そうか・・・ならばやって見せろ・・・!貴様達にその力が有るのなら・・・その力で世界を救って見せろ!」
ハデス「そして本当の意味で、お前達人類が一つに成って見せるのだ!!!」
久我誠一「う、くぅ・・・!」
小泉彩花「誠一!?どうしたの!?」
久我誠一「ハデスは・・・いや、結城雁之助さんは・・・この世界の事が大好きで・・・皆に世界の事分かって貰いたかっただけ」
久我誠一「だったんだ・・・・・・!本当に倒さなきゃ行けなかったのは・・・ハデスでも、暗黒四天王でも無い・・・自分達の・・・」
久我誠一「そう言う弱い心だったんだ・・・!」
小泉彩花「誠一・・・」
久我誠一「結城雁之助さん・・・あんな事言っちゃったけど・・・俺出来るかどうか分からないけど・・・・・・貴方にもう、」
久我誠一「こんなに辛くて悲しい想い、させませんから・・・!!」
小泉彩花「誠一・・・」
セナ「おめでとう御座います!プレイヤー様のゲームクリアを確認しました!クリア後の特典について説明致します!クリア後は・・・」
結城雁之助の本心を知った俺達に、セナの言葉は届かなかった。俺達はデータをセーブしてログアウトし、俺の両親にゲームを
引き渡して、廃棄して貰った。このゲームは、結城雁之助が人類に対する警告として作成した物だと、俺達の心に深く刻まれた。
中盤辺りで予測はしていましたが、自分で手を下している分、罪悪感が凄い事になりますよね・・・
これから自分たちがどう環境問題に向き合っているを改めて実感し、努力していくと考えた人はいなかったのか?
大抵の人が精神を病んでいる状態でしたし・・・
後日談は二人は何を思うのか楽しみですね