魔王様は平和に憧れている

みちみち

エピソード2 魔王、授業を受ける(脚本)

魔王様は平和に憧れている

みちみち

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〇ファンタジーの教室
ケビン(よし、いい成績を出す為に頑張るぞ)
ケビン(とりあえずここにいる奴ら全員ライバルだな)
ケビン(負けない・・・!!)
ケビン「ん、何だどうした?」
ルイス「俺に何か用か」
生徒A「用も何も」
生徒A「なんでおめーがここにいんのか聞いてんだよ!?」
ルイス「そんなの俺の勝手だろう」
生徒C「そりゃあ勝手だけどな」
生徒C「貴様がここにいる意味など何もないだろう」
生徒B「だってよぉ〜」
生徒B「お前よぉ〜」
生徒B「魔法一個も使えないんだからさぁ〜・・・」
生徒B「ギャハハはは──!!」
ルイス「くっ、それが何だ・・・!!」
ルイス「お前達には関係ないだろう・・・」
生徒A「関係ねーけどよー」
生徒A「助言してやってんだよぉ ニヤニヤ」
ルイス「ま、魔法はこれから・・・」
生徒B「どうやって覚えるんだよぉ!!」
生徒B「魔力がねぇ奴がよぉぉ!!」
ルイス「それは・・・」
生徒B「邪魔なんだよ お前みたいな奴がいるとよぉ!!」
生徒B「本気で勇者目指してる俺らの邪魔すんなよ、雑魚が!!」
ルイス「痛っ」
ルイス「お、俺だって本気で勇者を目指してる・・・」
生徒B「魔法が使えなくてどうやって勇者になるつもりなんだよ?」
ルイス「そ、それは・・・」
ケビン「おい」
生徒B「あ?なんだお前は?」
  !?
ケビン「さっきから聞いていたら大層不快だな」
ケビン「魔法と勇者になるのと何の関係があるんだ」
ケビン「少なくともこんな集団で寄ってたかって調子に乗ってる奴らよりは」
ケビン「こいつの方が見込みがあると思うぞ」
ルイス「え」
ケビン「知らんけどな」
ルイス「って、知らないのかよ!?」
ケビン「そもそもあんた達はなんで勇者になりたいんだ?」
ルイス「俺はもちろん 悪い奴を倒して」
ルイス「街や村の人々を守る為だ!!」
ケビン「・・・」
ケビン「・・・へぇ」
生徒B「いや、だからどうやって・・・」
ルイス「う、うるさいっ」
ルイス「お前達はどうなんだよ」
生徒B「そりゃ俺らは名誉の為に決まってんじゃねぇか」
生徒A「名誉や地位が手に入れば金持ちにもなれる」
生徒C「女にもモテるしな・・・」
ケビン「・・・呆れた・・・」
ケビン「あんたらの動機はそんなものか」
ケビン「そんなんで勇者を名乗れるワケないだろう!!」
ケビン「勇者なめんな!!」
エリート「いやそんな事はないよ」
ケビン「はっ! エリート!!・・・先生」
エリート「どんな生徒にも勇者を目指す資格はある」
エリート「動機がなんであれ そして」
エリート「もちろん魔法が使えなくても」
エリート「ね?ルイスくん」
ルイス「せ、先生・・・」
エリート「授業料払ってくれれば誰でも大歓迎さ!」
ルイス「え?」
ケビン(こんな人に長年憧れていたのか僕は・・・)
エリート「さぁさぁ授業を始めるよ! 早くしないとぼったくりになってしまう!」
エリート「みんな席について」

〇ファンタジーの教室
エリート「今日の授業にはこれを使う」
ケビン「花?」
ルイス「綺麗な花ですね」
エリート「そうだね じゃあ今から君達に」
エリート「この綺麗な花を枯らせてもらう」
ケビン「え?」
ルイス「枯らせる?」
ケビン「一体何の為に?」
エリート「演出の為だよ」
エリート「勇者は素晴らしいと思わせ」
エリート「人々を心酔させる為には 悪役が必要だと前に話したよね?」
エリート「その悪役の存在を植え付ける為には演出が必要」
エリート「その為の破壊行為 尊い犠牲」
ケビン「??」
エリート「とはいえ街を壊すまではやり過ぎだから」
エリート「街中の草花を枯らす」
エリート「案外これが精神的に効くんだよ」
エリート「もちろんそれを悪役がやった事にするんだ」
エリート「そして人々の不安を煽ったところで」
エリート「勇者が颯爽と現れる」
エリート「どうだい? なかなか良い演出だろう?」
ルイス「・・・」
エリート「今日はその魔法を覚えて貰うよ」

〇ファンタジーの教室
ケビン(街中の草花を枯らす?)
ケビン(それが本当に勇者のやる事なのか・・・)
生徒A「おぉ、お前やっぱスゲェな!!」
生徒A「一発で出来たじゃねぇか!!」
生徒B「当たり前だろ俺にかかればこんな事 朝飯前よ」
生徒C「さすがオレのダチ」
エリート「おーいいね! 素晴らしい!」
エリート「次は広範囲で出来るようになろう」
ケビン(ひどいな 花も頑張って咲いてるんだぞ)
ケビン(こんな事はしたくない)
ケビン(だがやらないと成績が・・・!!)
生徒B「おいお前」
ケビン「!」
生徒B「さっき偉そうな事をごちゃごちゃ言ってたくせに」
生徒B「全然出来てないじゃないか」
生徒B「ひょっとしてお前もぉ〜」
生徒B「魔法が使えないんじゃないかぁ〜い!? ギャハハ」
生徒A「あ〜 だからルイスの野郎を庇ったのか」
ケビン「いや、そういうわけではない」
生徒C「じゃあどういうわけだってんだよ やって見せろよ!」
ケビン「ぐ、それは・・・」
ケビン「は、花が・・・」
ケビン「かわいそうで出来ない!!」
生徒C「・・・え」
生徒A「プッ」
生徒A「なんだそれ 意味わかんねー」
生徒A「言い訳すんなよプププ」
ルイス「・・・」
生徒C「ん?なんかこいつ服に付けてるぞ」
ケビン「あ・・・ それは・・・マーガレットの」
ケビン「返せ!!」
生徒B「へ、返せだってよ」
生徒B「丁度いい これも俺様が枯らせてやる」
ケビン「!!」
生徒B「ヒヒヒどうだ! 俺の魔法はスゴいだろう!!」
エリート「・・・」
ケビン「貴様それが・・・」
ケビン「どれほどの愛情をかけて育てられたかわかっているのか・・・」
生徒B「ぷくくく知らないねぇ〜 興味もねぇわ」
  枯れた花を靴で踏みにじる音
ケビン「──」
ケビン「・・・貴様はもう許さない・・・・・・」
生徒B「・・・え」
  ケビンが頭を鷲掴みにした
「な、なにをする・・・!?」
ケビン「貴様にも花の気持ちを味あわせてやる・・・」
生徒B「え、なに!?」
生徒B「ぎっぎゃあああ!! や、やめろっ髪が髪があああ!!」
  髪の毛がハラハラと枯れたように落ちる
ケビン「・・・」
生徒B「や、やめろ もうっやめてくれ!!」
生徒B「っやめろおおお・・・!!」
生徒B「た、たすけ・・・!!」
ルイス「おいっ!!」
ルイス「もう止めろ!! やり過ぎだ!!」
ケビン「・・・」
ケビン「あ」
生徒B「・・・」
生徒B「う、うぅ」
生徒B「うぅぅ お、俺の髪が、髪がぁぁ」
ルイス「・・・」
ルイス「わかる・・・ お前の気持ちはわかるよ・・・」
ルイス「だけど ・・・やり過ぎだ」
ケビン「・・・」
ケビン「僕は」
ケビン「なんてことを・・・」
ルイス「お、落ち着いたか・・・?」
ケビン「ああ・・・ すまない」
  ブラボー
ケビン「・・・」
エリート「素晴らしい!!!! なんて魔力だ」
エリート「こんな素晴らしい魔力の持ち主はそうそう見たことがないよ!!」
エリート「素晴らしい勇者の素質だ!!」
ケビン「勇者・・・? これが?」
ケビン(違う こんなんじゃない)
ケビン(僕が憧れ続けた勇者はこんなんじゃ・・・)
エリート「すごいね君 期待しているよ」
エリート「確か名前は、ケビンくん?」
ケビン「・・・」
エリート「じゃあ今日の授業はここまで 各々復習しておくように」
生徒A「せ、先生こいつの髪はどうするんですか」
エリート「まーまた生えてくるっしょ」
生徒C「え・・・」
エリート「じゃあ解散!」

〇草原の道
  トボトボ
ケビン「ショックだ・・・」
ケビン「まさか自分があんなことを・・・」
ケビン「ルイスって奴が止めてくれなきゃ僕は・・・」

〇ファンタジーの教室
エリート「勇者の素質があるよ」

〇草原の道
ケビン(勇者の素質?)
ケビン(違う)
ケビン(僕はやっぱり)
ケビン(魔王だ)
ケビン(あれは魔王の力だ)
ケビン(魔力はボビンに取られてはいないから通常の魔王の力がある)
ケビン(ただ狂気に関してはボビンにほぼほぼ取られたはずだが)
ケビン(それでもあれだけ我を忘れてしまうのか)
ケビン(それともあれが僕の本性なのか・・・)
ケビン「こわい・・・」
ケビン「やっぱり僕は・・・」
  魔王様──

〇菜の花畑
マーガレット「おかえりなさい」
ケビン「マーガレット・・・」
ケビン「す、すまない その」
ケビン「君に貰った花を・・・」
マーガレット「?」
ケビン「な、無くしてしまって・・・」
マーガレット「・・・」
  しゅん
マーガレット「・・・・・・」
マーガレット「魔王様」
マーガレット「大丈夫ですよ」
マーガレット「愛情さえ失わなければ」
マーガレット「花はまた咲きます」
マーガレット「力強く、まっすぐに何度でも」
マーガレット「だから大丈夫」
  ぎゅっ
ケビン「・・・」
マーガレット「だから元気」
マーガレット「出してくださいね・・・」
  にこっ
ケビン「あ、ああ そうだな・・・」
ケビン(マーガレットの言う通りだ)
ケビン(自分を見失ってはいけない 本来の目的を思い出せケビン)
ケビン(先代の魔王の汚名を晴らし 魔族達の為に人々の誤解を解く)
ケビン(そして マーガレットの為に)
ケビン(もっと暮らしやすい、自由で 花が咲き乱れる土地に皆んなで引っ越すんだ)
ケビン(大丈夫 僕達はきっと)
ケビン(幸せに暮らせるはずさ)

次のエピソード:エピソード3 アピール

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