デス・パレードは祈りと共に

はじめアキラ

エピソード16・恐の中(脚本)

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はじめアキラ

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〇黒背景
  僕は恐れていた。
  みんなが当たり前のように信じている宗教を、僕がおかしいと思っているということ。
  おばあちゃんのことを、家族として大事に思っていても、教祖として尊敬はしていないこと。
  そして、僕が神様の力なんて持っていないこと。それらがいつか、みんなにバレる日が来ることを。
  バレたら、僕は殺されるかもしれない。いや、殺されなくても、家を追い出されたら生きてはいけない。
  一日でも、一時間でも、一分でも一秒でも長く、その瞬間を先延ばしにしなければいけない。
  だから、九歳の誕生日のある日。
  みんなが僕の“能力”が目覚めない事に焦っていることを知って、願うべきではないことを願ってしまった。
  言うべきではないことを言ってしまった。
須藤蒼(そう、全ては僕が救われたかったから。・・・生き延びたかったから。そのためだけに)

〇祈祷場
老婆の影「困ったわねえ・・・もう、神子様も九歳のお誕生日なのに」
男の影「そうだな、そろそろ神様の力が使えるようになってもいいはず」
老婆の影「我々の信心が、足らないのがいけないのかしら・・・」
女の影「何か、特別な修行が必要なのではなくて?先代の手記か何かはないの?」
女の影「今の教祖様が力に目覚められたのはいつだったかしら?何か、同じことをすれば・・・」
須藤蒼「・・・・・・っ」
矢倉亮子「皆さん、静粛に!静粛に!」
矢倉亮子「確かに、蒼はまだ力に目覚める気配がないわ。でも、毎日きちんと身を清め、修行を続けている身です」
矢倉亮子「必ず、必ず!神は我らを引き上げてくださいます。悪魔への対抗策を授けてくださいます!」
矢倉亮子「こんなにも神を信じ、敬い続けてきた我らを、神がお見捨てになるはずがない・・・!」
矢倉亮子「だからそれまで、辛抱強く待つのです!奇跡が舞い降りる時を!」
女の影「教祖様、でも、ねえ?・・・本当に神子様が、神子様かどうか、実は疑う声も・・・」
矢倉亮子「・・・!な、何を言って・・・!!」
須藤蒼「お、おばあちゃん!皆さん!」
須藤蒼「僕・・・僕の話を、聞いて頂けませんか!?」
矢倉亮子「蒼・・・?」
  噂が流れていることも気づいていた。僕が、本当は神の子ではないのではないか、という噂。
  みんなを騙すために、悪魔に送り込まれた子なのではないか、という出鱈目な――噂。
  されど僕にとっては死活問題で。
  嘘でも、なんでも、僕は演じるしかなかったのだ。
  神様の子を。神様の声が、聞こえているフリを。
須藤蒼「お告げが・・・は、初めて、僕にもお告げがあったんです!神様の、お告げが!」
矢倉亮子「な、なんですって?それは本当なの、蒼!?」
男の影「素晴らしい!それは素晴らしいぞ!!」
須藤蒼「か、神様は・・・僕の力が目覚めるためには、いくつも必要なことがあると言いました」
須藤蒼「そ、それは・・・僕の導き手となる存在が必要だということです。 それは、教団の外から連れてこなければいけないと!」
矢倉亮子「きょ、教団の外から?」
須藤蒼「はい。その導き手・・・つまり、僕と一緒に世界を救ってくれる、救世主が必要なんだそうです」
須藤蒼「その救世主の助けがあれば、僕は悪魔に対抗できる力を手に入れることができる。そして、救世主と一緒に世界を救える、と」
須藤蒼「でも、まだ救世主は目覚めていない」
須藤蒼「自分が世界を救う存在だということを、何も知らない」
須藤蒼「ゆっくりと育て、目覚めてもらわないといけない。そのために、時間や手間を惜しんではならない、と」
矢倉亮子「救世主・・・」
須藤蒼「だ、だから、その・・・」
須藤蒼「おばあちゃん、その救世主を・・・探して貰えないかな?時間がかかってもいいから・・・」
矢倉亮子「・・・」
矢倉亮子「・・・わかったわ、蒼。神様が、そう言っているのね?だったら、私に逆らう理由などどこにもないわ」
矢倉亮子「必ず、貴方の導き手となるに相応しい救世主を探して見せる。期待していて頂戴!」
須藤蒼「あ、ありがとう、おばあちゃん・・・!」

〇黒背景
  僕は、この狭い牢獄から抜け出したかった。
  教団の、壊れた思想に染まっていない人と話がしたかった。
  そういう人に友達になってほしかった。
  そして、いつか、この場所からその人が連れ出してくれたならいいと。だから、とっさにあんなことを言ったのだ。
  それは同時に、時間稼ぎもかねてのことではある。
  救世主、とやらの性別や年齢は何もわからない。大人か子供かも定かではない。日本人ではない可能性さえあるだろう。
  そんな人物を、この世界から探し出すなんて無茶な仕事だ。きっと、おばあちゃんも困り果てるだろうと思っていた。
  その人が見つかるまでは、時間が稼げる。そして、そんな人がもし本当に来てくれるのならば・・・
  きっと、僕にとっての救世主にもなってくれるはず。僕はそんな期待をしてしまっていたのだ。
  どうして想像できるだろう?まさかおばあちゃんが、あんな恐ろしいことを思いつくだなんて。

〇古びた神社
須藤蒼「え・・・え?」
須藤蒼「お、おばあちゃん、今なんて・・・?」
矢倉亮子「素晴らしいアイデアが思い浮かんだのよ、蒼。真の救世主を見つけるための方法!」
矢倉亮子「強い精神力を持ち、清らかな心を持つ者達を私達が探し出し・・・選別するの」
矢倉亮子「その選別を、生き残った者を救世主と認め、貴方と共に悪魔と戦ってもらうというのはどうかしら?」
須藤蒼「生き残るって・・・まさか、命を賭けさせるって、こと?」
矢倉亮子「ええ、そうなるわ。でも大丈夫!真の救世主ならば、必ず生き残ってくれるはずよ!」
矢倉亮子「ああ、心を試す試練だもの、記憶は邪魔になるかも?救世主候補の記憶を消すのも試してみようかしら」
矢倉亮子「私達教団の技術があれば、それくらい簡単なことよ」
矢倉亮子「楽しみね、蒼!きっと、貴方に相応しい、最高の救世主が見つかるわ!」
須藤蒼「あ、あああ・・・そ、そんな・・・っ」

〇黒背景
  僕は何もわかっていなかった。
  本当の本当に、何一つわかっていなかったのだ。
  神様のためならば、何でも犠牲にできる集団が・・・どれほど残酷で、恐ろしいものであるのかということを。

次のエピソード:エピソード17・傷の中

コメント

  • これまでのストーリーが全て納得できる、本当に大事な回ですね!記憶の件も含めて、全て繋がったように感じられます。この設定と展開の凄さには驚きです!
    そして蒼くんボイスが変わらず魅力的で!感情の乗ったステキな演技ですね!

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