7 隼人の策略(脚本)
〇ヨーロッパの街並み
イベントムービーを見た後、俺達は翌日が休みと言う事も有り、街の外でレベル上げをしていて、漸く目標だった20に
到達した。
小泉彩花「さて、これでやっとストーリークエストに挑めるね!」
久我誠一「あぁ、買い物も済ませたし、気を入れて行くか!」
メニュー画面を開き、俺達はストーリークエストを開始した。
ロザミィ「あ!昨日の旅の方々!丁度良かった!」
小泉彩花「あ、ロザミィさん!」
ロザミィ「昨日の件ですが、住み込みで働く事が条件に成りますが宜しいですか?」
久我誠一「本当ですか!?是非やらせて頂きます!」
ロザミィ「そう言って頂けると有難いです。それでは、テイラー家に案内致します。どうぞこちらへ」
〇立派な洋館
久我誠一「此処が市長官邸か」
小泉彩花「思ったよりデカいかも・・・ちゃんとやってけるかな・・・」
ロザミィ「ご安心下さい。私を含めた従業員の者達が一から確り教えますので、肩に力を入れ過ぎないで下さいね」
久我誠一「それで、俺達は何をしたら良いんですか?」
ロザミィ「お二人に覚えて頂きたい業務は掃除に成ります。先ずは寝泊まりするお部屋に案内するので、付いて来て下さい」
小泉彩花「分かりました」
〇豪華なベッドルーム
ロザミィ「お二人には、こちらのお部屋を使用して頂きます」
小泉彩花「おぉ!寝心地良さそうなベッド!」
久我誠一「彩花、まだ寝るなよ?」
小泉彩花「分かってるって!」
俺達が使う予定の寝室に案内され、改めて業務の説明が始まる。
ロザミィ「一通り落ち着いたので業務の説明をさせて頂きます。宜しいですか?」
小泉彩花「はい、大丈夫です」
ロザミィ「分かりました。業務内容ですが・・・」
俺達に課せられた仕事は掃除。ゲームなのである程度簡略されてるので覚え易く、俺達は早速仕事に取り掛かるのだった。
〇洋館の廊下
久我誠一「さて、此処はこれで大丈夫か」
小泉彩花「思ったより楽ちんだね。現実でもこうだったら良かったのに」
久我誠一「それが出来たら苦労しないよ。丁度良い所で区切りが付いたら、俺も一回ログアウトして家の掃除やるよ」
小泉彩花「え〜・・・折角の休みなのに?誠一が居ないと攻略出来ないじゃん」
久我誠一「そう言うなよ。今日俺の家、親が帰り遅いから」
小泉彩花「その前向きさ、あたしにも分けて欲しいよ・・・って!」
小泉彩花「・・・・・・!?」
赤木隼人「あぁすみません!僕が余所見をしてたばっかりに打つかってしまって!」
小泉彩花「大丈夫ですって・・・貴方は!?」
赤木隼人「あれ?何処かでお会いしましたっけ?」
久我誠一「いえ、初対面です」
赤木隼人「そうでしたか・・・さっきはすみませんでした。仕事とは言え、余所見をするだなんて・・・」
久我誠一「いえ、こちらも気を付けます」
赤木隼人「そう言って頂けると有難いです。それでは・・・」
久我誠一「あの、待って下さい!貴方、市長秘書の方ですよね?ロザミィさんから聞きました」
赤木隼人「そうですが・・・それがどうか為さいましたか?」
久我誠一「ちょっと聞きたい事が有りました。俺等、今日雇われた掃除担当の者ですが、此処ってロナルドさんのお屋敷ですよね?」
久我誠一「ロナルドさんは今どちらに」
赤木隼人「ロナルド様?ロナルド様なら、朝早くから出掛けました。僕に声を掛けた時は街の風潮を改善するとか言ってましたが、」
赤木隼人「大方そう言う定義の女遊びでもしてると思います。まぁ何時もの事見たいですが」
小泉彩花「え?市長秘書さんですよね?止めなくて良いんですか?」
赤木隼人「安心して下さい。業務は全て僕が代理で熟してますし、何か有れば僕が対応致します」
小泉彩花「う〜ん・・・何か納得行かないな・・・市長さんなら、遊んで無いでもっと街の人達の事考えて上げなきゃ」
赤木隼人「言いたい事は分かります。別に僕はあのままでも良いと思ってますけどね」
小泉彩花「どうしてです?」
赤木隼人「それはそうと、近い内にロナルド様が市民の皆さんに対して大きな催し物をやる予定を立ててます。内容はまだ秘密ですが、」
赤木隼人「それさえやれば、市民も市長を見直すでしょう」
久我誠一「具体的に何を?」
赤木隼人「申し訳有りませんが、市長命令で誰にも公言出来ないのです・・・っと、そろそろ行かなくては・・・先程は失礼しました」
赤木隼人「お仕事、頑張って下さいね」
小泉彩花「誠一、今此処であいつを倒せば・・・」
久我誠一「無理だ。あいつが悪い奴だって証拠が無いと俺達が危ない」
小泉彩花「でもあたし、凄く嫌な予感がするよ!」
久我誠一「気持ちは分かる・・・でも今は駄目だ・・・」
小泉彩花「・・・分かった・・・」
偶然赤木隼人と接触した俺達。だけど此処で騒ぎを起こしたら俺達が危ないので手を出せなかった。隼人は市長が催し物をすると
言っていたが、それが何なのか俺達は知る由も無かった。その後、丁度区切りが付いたのでログアウトして家の掃除をするのだった。
〇豪華なベッドルーム
久我誠一「ふぅ〜・・・やっと終わった・・・」
小泉彩花「あぁ・・・何で現実ってこんなに不便なのかな・・・」
久我誠一「そう言うなよ。掃除したら力付くし」
小泉彩花「すみません、そのやる気幾ら出せば売ってくれます?」
久我誠一「努力は買ってでもしようとするなら進歩したんじゃ無いか?」
小泉彩花「かもね・・・」
久我誠一「お!クエストが更新された!」
小泉彩花「マジ!?レベル大丈夫そう?」
久我誠一「見た所大丈夫そうだ。忘れ物とか大丈夫?」
小泉彩花「こっちはバッチリだよ!」
久我誠一「良し、それなら行こうか!」
小泉彩花「あれ?何の騒ぎだろう・・・」
久我誠一「外で何か有った見たいだな。行こう!」
クエストを開始した途端に外が騒がしく成ったので、俺達は様子を見に行く事にした。
〇立派な洋館
ロナルド・テイラー「ま、待ちたまえ君達!話せば分かる!!」
モブ男「ふざけるな!!何が話せば分かるだ!!俺達への税金が払えないったぁどう言う事だ!?」
モブ男2「俺達だって生活が有るんだ!!市長のクセに遊び呆けてたって何様だぁ!!」
モブ女「私達の努力を踏み躙ってたって事でしょ!?馬鹿にしないで!!」
ロナルド・テイラー「ち、違うんだ・・・私は・・・私は何も知らない!!」
小泉彩花「な、何これ!?デモ!?」
久我誠一「そう見たいだけど、何が有ったんだ?」
ロナルド・テイラー「あぁもう誰か!誰か何とかしてくれ!!」
赤木隼人「お早う御座いますロナルド様。随分と賑やかですね」
ロナルド・テイラー「お早う御座います、じゃ無いよ!!隼人!何とかしろ!こいつ等を黙らせてくれ!!」
赤木隼人「ロナルド様、その前に質問ですが、彼等の税金をどうしてました?」
ロナルド・テイラー「税金!?そんな事は後回しだ!頼むから何とかしてくれ!!」
赤木隼人「殆ど女遊びや酒に使ってましたよね?一応僕は警告しましたよ?税金が払えて無いと苦情が来てると」
ロナルド・テイラー「いや、それもこれもお前に任せただろ!!」
赤木隼人「はい。そうですね」
ロナルド・テイラー「あぁもう!隼人、何とかしろ!!」
モブ男「昨日新聞屋から送られた新聞と写真を見たぞ!何時も何してるかと思えば、日頃から俺達の金で遊び呆けてるってな!!」
モブ男2「街にはあんたを信用してる人だって居るんた!!どう責任取るつもりだよ!!」
モブ女「街を良くする為に外を出歩いてると思いましたが、見損ないました!!」
ロナルド・テイラー「だから違うんだ!!新聞?写真?一体何を言って!?」
赤木隼人「あぁ、ロナルド様、その事は僕から説明させて頂きます。この前僕がロナルド様の目の届かない所でパパラッチに仕事を依頼」
赤木隼人「したんですよ」
ロナルド・テイラー「な!まさか!?」
赤木隼人「何時も市民の金で遊び呆けてるロナルド様を見たら市民はどう成るか、パパラッチは喜んで受けてくれました」
ロナルド・テイラー「何故だ・・・何故こんな・・・!?」
赤木隼人「これが貴方の本当の姿なのですよ。金や権力に溺れ、自分以外の大切な物すら見えなく成る。自分の利益の為なら平気で」
赤木隼人「他人を蹴落とす。自分だけ得して他人の事はどうでも良い。貴方はこれまで一人で楽しい思いをして来た。他人の努力で、」
赤木隼人「自分は何もしない。何時までも同じ事が出来ると思ったら大間違いです。貴方は楽をし過ぎた。楽をし過ぎればこう成るのは」
赤木隼人「当たり前。今の貴方は税金を満足に払えない。それがどう言う事か分かりますか?」
ロナルド・テイラー「税金が・・・払えない・・・」
赤木隼人「貴方はもう、元の生活には戻れないって事です。僕は今日限りでロナルド様の下で働く事を辞めます。最後に良い見世物が」
赤木隼人「出来ました。有難う御座います」
ロナルド・テイラー「な・・・何故だ・・・私の人生は・・・約束されたも同然・・・」
小泉彩花「誠一!どうしよう!今隼人に逃げられたら!」
久我誠一「あぁ、この騒動も何とかしたいが、先ずは隼人だな!」
ブーイングの嵐を何とかする事も出来ないロナルドを置いて、俺達は隼人を追い掛けた。
〇原っぱ
赤木隼人「市長が税金を払えなく成れば街は崩壊する。ロナルドの人生は崩壊したも同然。さて、これからどうするべきか・・・」
小泉彩花「見つけた!赤木隼人!!」
赤木隼人「おや?貴方方は荘司を倒した勇者達。探す手間が省けましたね!丁度退屈してたんですよ!」
小泉彩花「街をあんな風にしたのは貴方?何でこんな事を!?」
赤木隼人「何でって・・・それが人の本心だからですよ」
小泉彩花「一体どう言う事?」
赤木隼人「誰にでも経験が有る物です。人は産まれたての頃は凄く我儘じゃ無いですか?その我儘過ぎる自分を押し殺して確りした」
赤木隼人「大人に成って行く。でも実際の大人はどうでしょう。デカく成った自分を正当化して、気に入らない事が有れば直ぐ否定する」
赤木隼人「それって、本当に大人に成ったと言い切れるんですかね?」
久我誠一「・・・・・・!?」
赤木隼人「例えばロナルド。彼は先代の市長に甘やかされて育った。市長に成った途端強気に成って酒や女に明け暮れて、自分の思い通りに」
赤木隼人「成らなかったら平気で全てを否定する。僕から見ても人の上に立つ資格が有るとは思えなかった。只欲に溺れただけのタコでした」
赤木隼人「そんなタコだからこそ、利用し甲斐が有ったんですけどね」
小泉彩花「その欲に溺れたタコを使って、どうするつもりだったの?」
赤木隼人「あの街を自滅に追い込む為です。たった一人の権力に溺れた人間を利用し、欲を満たさせて自滅に追い込む。誰でも彼でも、」
赤木隼人「自分の欲に忠実で在りたいですからね」
小泉彩花「そんな事させない!街は誰か一人だけの物じゃ無い!皆の物だよ!」
赤木隼人「ほう?ならば僕をどうします?」
小泉彩花「貴方は、あたし達が止める!!」
赤木隼人「雷魔法・・・これは確かに厄介ですね!まぁそんな事は良いとして、荘司の仇は打たせて貰いますよ!!」
赤木隼人「・・・・・・!?」
久我誠一「あ!外した!」
赤木隼人「小癪な・・・なら次は僕の番です!」
久我誠一「うわぁ!!」
赤木隼人「先ずは貴方から仕留めて差し上げましょう」
久我誠一「くう!!」
赤木隼人「貴方、良く見たら迷ってますね」
久我誠一「え!?」
赤木隼人「顔を見れば分かります。本当に僕を倒して良いのかと、僕を倒す事がどう言う事かと。戦場に置いて一瞬の迷いは自分の命を」
赤木隼人「落とす事。詰めが甘かったですね」
久我誠一「・・・・・・」
赤木隼人「さて、そろそろお別れの時間です。さようなら・・・」
赤木隼人「な!?」
小泉彩花「詰めが甘いのはあんたも一緒だったわね。お陰であっさり凍らせられたわ」
赤木隼人「き、貴様ぁ!!」
小泉彩花「誠一!もうこんな奴の戯言聞かなくて良い!世の中はロナルド見たいな奴だけじゃ無いよ!あたし達だって手を取り合える!」
久我誠一「・・・!?彩花・・・分かった!!」
赤木隼人「ははは・・・どうやら此処までの様ですね・・・ならば最後の警告です。人は誰でも自分が大事です。だから他人を」
赤木隼人「否定する。だから覚えて置きなさい。例えそれが正義で有っても、それが誰かを傷付けると!!」
久我誠一「分かった。警告、有難う」
赤木隼人「申し訳有りませんハデス様・・・ハーキン・・・レナ・・・荘司・・・・・・向こうで会ったら、綺麗な森を見せてくれ・・・」
久我誠一「・・・これで・・・良かったんだよな・・・」
小泉彩花「うん・・・良かった筈だよ・・・」
久我誠一「そうか・・・そうだよな・・・」
セナ「おめでとう御座います!ステージ2のクリアを確認しました!」
久我誠一「セナ・・・」
セナ「イベントムービーに新規が追加されました!ご覧に成りますか?」
小泉彩花「あ!勿論見るよ!」
セナ「畏まりました!それではご覧下さい!」
〇魔王城の部屋
ハーキン「報告は以上と成ります。隼人の策略に寄り、街は税金を払えなく成り、崩壊するのも時間の問題でしょう」
ハデス「そうか・・・良くやったぞ隼人。人の欲は利用する価値が此処まで有ると良く証明してくれた・・・!」
レナ・グレイシア「本当、どうして此処まで自分勝手な生き物なのかしらね?」
ハーキン「それが人と言う物さ。欲しい物が有ればどんな事をしてでも手に入れる。それが人と言う物さ。それ故、自分の愚かさに」
ハーキン「気が付かないのだよ」
レナ・グレイシア「そう聞くと本当救いようが無いわね。ハーキン、貴方これからどうするつもり?」
ハーキン「まぁ見ていろ。そんな欲深い愚か者共に、最高のプレゼントをくれてやるのさ!ハデス様、宜しいですね?」
ハデス「あぁ、行くが良いハーキン。だが忘れるな。くれぐれも、核やウイルスは使うなよ?」
レナ・グレイシア「そうよ。荘司も隼人もそれは望まない」
ハーキン「分かっているさレナ。ハデス様、我々は同じ志を持ってハデス様の下に来ました。ハデス様の言伝、決して忘れません!」
ハーキン「それでは、私は現地へ参ります」
レナ・グレイシア「本当、人間ってのは救いようが無いわ・・・頼むわよハーキン・・・貴方の力で奴等を一人でも多く!」
ハデス「そうだな・・・一刻も早くこの世界を・・・」
小泉彩花「次の相手はハーキンか。気を引き締めて掛かろうか」
久我誠一「・・・・・・」
小泉彩花「誠一?大丈夫?」
久我誠一「え!?な、何!?」
小泉彩花「ちょっと大丈夫?誠一上の空だよ?」
久我誠一「あぁ、御免・・・大丈夫・・・だよ・・・」
小泉彩花「本当かなぁ・・・今日は休んだ方が良いわね。セナちゃん、セーブしたらあたし達ゲーム止めるね」
セナ「分かりました!またのプレイを、お待ちしております!」
何だか気分が良くないのを彩花に見抜かれ、俺達は此処で切り上げる事に成った。
正義と正義のぶつかり合いの感じがしてきましたね。欲は恐ろしいものですからね・・・
魔王軍はそれを知らしめようとしているに対してプレイヤー側はそれが全員ではなく無関係な人も巻き込ませないとぶつかり合っているようですね
魔王軍の支配というものがどういうものか気になって来ますね・・・