マッチングビースト~野獣が美女とアプリで出会うまで~

YO-SUKE

第一話「マッチングアプリの使い方を教えるので命だけは助けてください!」(脚本)

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〇黒背景
  これは夢でも妄想でもない
  私の身に起こっている現実だ・・・!

〇空
  高い山脈の遥か上空を
  一匹の野獣が飛んでいる。
  その野獣にお姫様抱っこをされている
  江守桃香(えもりももか)。
江守桃香「そ、そ、空を飛んでるぅぅぅ!!!」
ダン「ガハハハッ! 落ちるなよ」

〇赤いバラ
  『マッチング・ビースト
  ~野獣が美女とアプリで出会うまで~』

〇林道
  ─三時間前─

〇オープンカー
袴田「いやぁ、良かったよ 桃香ちゃん、超かわいくてさ」
江守桃香「そんなことないですよぉ~♪」
袴田「ねえ、桃香ちゃんはマッチングアプリを よく使うの?」
江守桃香「始めたばかりですっ!」
江守桃香(実際は30個以上のマッチングアプリを ダウンロード済みで)
江守桃香(総マッチ数は1,000を優に超えている)
江守桃香(おまけに、友達にプロフィールの添削指導までしているプロ中のプロなんだけどね)
袴田「俺さ、こういうアプリ初めてだったんだ」
袴田「女の子はだいたいサクラだと思ってたから」
袴田「ギャハハ」
江守桃香(笑い方が下品なのはマイナス5点)
江守桃香(だけど身長180㎝以上で 外車に乗っているのはプラス20点)
江守桃香(総合的には悪い男じゃない)
袴田「それよりさ この狼葉山の伝説って知ってる?」
袴田「古くから山に住み着く野獣がいてね」
袴田「たまに迷い込んだ人間のことを 食べるんだって」
江守桃香「や、やだなー」
江守桃香「今どき、そんな迷信みたいなの 誰も信じませんよ」
袴田「でも五年前も野獣を見たって 騒いでた女の子がいたらしいよ」
袴田「まあ誰にも相手にされなかったらしいけど」
江守桃香「へえ・・・そうなんですね」
袴田「よし、着いた この辺でいいかな」
江守桃香「え? ここですか?」
江守桃香「レストランなんて何もないですけど・・・」
袴田「あはは。森のレストランなんて あるわけないじゃない」
袴田「あんなの嘘だよ」
江守桃香「! 騙したんですか!?」
袴田「僕、前から一度 車の中でしてみたかったんだよねぇ・・・」
江守桃香「やめて! 離して・・・!」
袴田「うるさい! お前もその気があったから──」
袴田「ぐわぁぁ!!」
江守桃香「クソ男!」
江守桃香「こっちだってこれくらいの 準備はしてるわよ・・・!」
  袴田が気絶してハンドルに顔をぶつける。
江守桃香「って、もう・・・! やりすぎちゃった!」

〇けもの道
  ~狼葉山~
  スマホの灯りを頼りに
  フラフラと歩く。
江守桃香(最悪・・・! ここはいったいどこなの? どうやったら街に帰れるの・・・?)
江守桃香(はぁ・・・)
江守桃香(今朝の乙女座の恋占いは最強だったのに こんなことになるなんて)
江守桃香「あー! お腹空いたし、喉乾いたし 疲れたぁ~! もう歩けない!」
江守桃香「こんなときに王子様が現れて 助けてくれる人生が良かった・・・」
江守桃香「え! 何今の・・・?」
江守桃香「!!!」

〇小さな小屋
江守桃香「! あれ・・・なにここ!?」
???「目覚めたか・・・俺を見るなり 突然気絶するなんて失礼な奴め」
江守桃香「誰!? こんなところで 私をどうするつもりなの?」
江守桃香「まさか変なこと──」
???「ガハハハッ! 起きてすぐなのによく喋る人間だ」
江守桃香「人間・・・?」
  目をこらすと、灯りを背に受けて
  フードを被った野獣が近づいてくる。
江守桃香「バ、バケモノ・・・!」
ダン「俺の名前はダン 何年もこの山で暮らしている」
江守桃香「に、に、人間じゃないの・・・?」
  ダンは獣のように鼻を近づけて
  クンクンと桃香を嗅ぐ。
ダン「ふん。人間のメスの匂いは久しぶりだ」
江守桃香「ひぃぃ!!!」
  桃香は起き上がろうとするが
  足に痛みを感じて動くことができない。
江守桃香「こ、これ・・・」
ダン「ふんっ・・・!」
ダン「俺を見て慌てて逃げようとしたときに 挫いたんだ。俺が処置してやった」
江守桃香「・・・あ、ありがとう」
江守桃香(なに、どういうこと? もしかしていい奴なの?)
江守桃香(よく見れば・・・ 顔は悪くないかも・・・)
江守桃香(むしろ私好みの ワイルドなイケメン・・・?)
江守桃香(だ、だったら──)
江守桃香「ね、ねえ! 私を助けてどうするつもりだったの?」
ダン「今夜のご飯にしようと思っていた」
江守桃香「ひぇっ・・・!!!」
ダン「俺は寝てる間にこっそり食うなんて 姑息な真似はしねぇ」
ダン「しっかり目を見て ガブリといただくのさ!」
江守桃香「結局食うんじゃん!」
ダン「ガハハハッ! 人間の女を食べるのは 久しぶりだ! ありがたく頂く!」
江守桃香「わ、わ、私なんて食べても おいしくないから!」
ダン「確かに・・・お前は俺が探し求めていた 女とは少し違う・・・」
江守桃香「あれはアイドルの写真・・・?」
ダン「人間が落としたものだ」
ダン「俺はいつか、あんな女を食うのが夢だ」
江守桃香「な、ならああいう女を 探せばいいじゃない!」
江守桃香「私とは全然タイプが違うし!」
江守桃香「あんなの街に出ればいっぱいいるわよ!」
ダン「ダメだ。街に出るのは危険が多いって 親父が言っていた」
ダン「はるか昔、親父は人間に殺された」
江守桃香「きゅ、急に暗い過去ぶち込まないでよ」
ダン「親父は、世界は果てしなく 広いとも言っていた」
ダン「好みの獲物に出会える確率は少ない」
ダン「少々好みとは異なるが・・・ 俺はお前を食うぞ」
江守桃香(ああっ! もう! どうすればいいの?)
江守桃香(このままじゃ私、こいつに殺され・・・)
江守桃香(いや、そうか! もしかして──)
江守桃香「こ、好みの獲物に出会うのなんて簡単よ!」
ダン「バカな」
ダン「どうやって・・・」
江守桃香「よし・・・! ここ電波ある!」
ダン「なんだ、その小さい箱は?」
江守桃香「ね、ねえ! この壁に飾ってあるアイドル みたいな子に出会ってみたいと思わない?」
ダン「なんだと?」
江守桃香「私が会わせてあげる」
ダン「無理だ」
江守桃香「どうして?」
ダン「この写真の女のように、程よい肉付きを した理想的な獲物なんてそうはいない」
ダン「俺はこう見えて美食家なんだ」
江守桃香「ちょっと待って! えーと」
江守桃香「この子なら多分、胸はDカップくらいで 体重は50㎏くらいで髪は・・・」
江守桃香「うん、たとえばこんなのはどう?」

〇カラフル
ダン「おおっ・・・! なんだこれは!」

〇小さな小屋
江守桃香「マッチングアプリよ」
江守桃香「条件を入力すれば、いくらでも簡単に 理想の相手を見つけられる」
ダン「なっ・・・!」
江守桃香「もし私を食べないで 街まで戻してくれるって約束するなら」
江守桃香「私がマッチングアプリを使って あなたの理想の相手を探してあげる」
ダン「くっ・・・だが街に出るのはダメだ」
ダン「やはりお前を食って我慢するしか──」
江守桃香「ま、待って・・・! 大丈夫よ! 私が一緒にいれば危険はない」
江守桃香「それにお父さんが言ってたのは はるか昔のことでしょ?」
ダン「・・・よし」
ダン「わかった じゃあお前を街に戻す」
江守桃香(よ、良かった~! これでなんとか)
ダン「よし、行くぞ」
江守桃香「へ? 今から? 私は足を挫いて―ー」
ダン「問題ない」
  ダンは軽々と桃香をお姫様抱っこする。
江守桃香「ひぃ・・・!!!」

〇空
  高い山脈の遥か上空を
  一匹の野獣が飛んでいる。
  その野獣にお姫様抱っこをされている
  江守桃香。
江守桃香「そ、そ、空を飛んでるぅぅぅ!!!」
ダン「ガハハハッ! 落ちるなよ」
江守桃香「助けて~!!!」
  吊り橋効果も相手が野獣だと
  関係がないらしい
  私はこの日から、マッチングアプリの
  使い方を教えることになった
  野獣が美女とアプリで出会うまで

次のエピソード:第二話「マッチングアプリのサクラには気を付けてください!」

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