エピソード14・望の中(脚本)
〇黒背景
〇組織のアジト
赤井鳳輔「・・・・・・」
芦田ルミカ「・・・行ったわね」
赤井鳳輔「行ったな。つか、マジで二人が通った途端扉閉まっちまったし」
赤井鳳輔「引っ張ってもあかねーし。・・・マジで俺らは落伍者ってか」
芦田ルミカ「そんな言い方するもんじゃないわ」
芦田ルミカ「無理に通ろうとしてたら、挟まれてきっと酷い目に遭ってたわよ、わたし達」
芦田ルミカ「さあ、他の出口探しましょ。わたし達がこの部屋に入ってきたドアも、他の場所も、まだまだ探してない所がいっぱいよ」
赤井鳳輔「あんた、前向きだな。・・・俺ら殺されるかもしれないのに」
芦田ルミカ「わたし、そんな立派な人間じゃないわ。本当のところ、貴方の話を聞いてやっと腹をくくったってかんじだし」
芦田ルミカ「貴方も、なかなか立派じゃない。正直見直したわ」
芦田ルミカ「そうよね。・・・どんなに死ぬのが怖くても、何が起きるかわからなくて不安でも」
芦田ルミカ「大人として、一人の人間として、捨ててはいけないものもある」
芦田ルミカ「自分よりずっと年下の子供達を見捨てて生き残ったら。きっとわたしは、生き残っても一生それを後悔し続ける」
芦田ルミカ「自分で自分が許せなくなる。それは、果たして本当に“生きている”と呼べるのかしら」
赤井鳳輔「いやはや、哲学だねえ」
赤井鳳輔「でも、生きるってきっと、そういうことなんだろうなって俺も思うわ」
赤井鳳輔「確かにプライドじゃ腹は膨れねえけど、心を満たすためには大事なことなんだよな」
赤井鳳輔「むかーしどっかの本で、読んだことがあったんだわ。 暴力の定義ってなんなのかっつーな」
芦田ルミカ「暴力の定義?」
赤井鳳輔「そ。戦士の戦いと、ただの暴力の違いはなんなのかって」
赤井鳳輔「その違いは、“誇りと理由”があるのかどうか。 つまり、誰かに胸を張れる信念があるかどうか」
赤井鳳輔「誇りも理由もなく、信念に嘘をつく戦いはあっという間に暴力になりさがる。だから兵士はいつも、大義名分を求める」
赤井鳳輔「これってさ。戦争とか喧嘩とか、そういう話だけじゃないと思うんだよ」
赤井鳳輔「どんなことにも当てはまる。人が人として生きていくために、一番大事なことだって思うんだ」
赤井鳳輔「・・・俺はもう少しで、それを忘れるところだった」
赤井鳳輔「ありがとな、芦田さん。あんたが相棒で本当に良かった。あんたのお陰で俺はまだ、ちゃんとニンゲンでいられる」
芦田ルミカ「・・・それは、わたしの台詞よ。頭が足りないとかなんとか、色々言ってごめんなさいね」
芦田ルミカ「さあ、出口を探しましょう。わたしの一番好きな言葉、教えてあげる。どこかの本で、ヒーローが言ってたの」
芦田ルミカ「“諦めるな。 諦めるのは死んでからでも遅くはない”」
赤井鳳輔「いいねえ!かっこいいじゃん!」
赤井鳳輔「よし。じゃあまずソファーの下あたりから探してみるか。力仕事頑張っちゃうぞー!」
芦田ルミカ「え、何?何この音?」
赤井鳳輔「な、なんか地面が揺れてね?これ一体・・・」
〇研究施設の廊下
峯岸輪廻「ここ、さっきと同じ廊下、か? いや、微妙に違うような・・・」
須藤蒼「・・・ドア、しまっちゃった。僕達だけ、出てきて良かったのかな」
須藤蒼「赤井さんと、芦田さんは・・・」
峯岸輪廻「・・・・・・っ」
峯岸輪廻(くそっ・・・わからないことだらけだ)
峯岸輪廻(このデスゲームの目的は、救世主を育てること、だと?救世主ってなんだ、誰のことだ?)
峯岸輪廻(そもそも、どうして俺は記憶がない?・・・赤井さん、芦田さんの話からも確定している。彼女達は記憶を失っていない)
峯岸輪廻(それは、隣にいる蒼も同じだ)
峯岸輪廻(・・・まさか、救世主というのは・・・俺のこと、なのか? もしそうなら、隣にいる蒼は・・・)
峯岸輪廻「・・・・・・」
峯岸輪廻「蒼。正直に、教えてくれないか」
須藤蒼「え?」
峯岸輪廻「君は一体、何を知っている?・・・救世主とは、俺のことなのか?」
峯岸輪廻「君も、運営側の人間なのか?・・・そうでないなら、そうでないと言ってくれ」
峯岸輪廻「ただ、最初のゲームの時から、君は“何も知らない参加者”にしてはおかしな発言をいくつもしている」
峯岸輪廻「君が脅されて従わされている可能性を考慮して、ずっと黙っていたけれど・・・そろそろ知りたい。本当のことを」
峯岸輪廻「何故なら、さっきの二人のように他にも脅されて従わされている人達がいるかもしれないからだ」
峯岸輪廻「俺達が第二のゲームで見た女性二人も、同じように雇われたバイトで、実はまだ生きているのかもしれない」
峯岸輪廻「このまま先に進んで、主催者と対決するのが本当に正しいのかどうか。そうすればみんな助かるのかどうか」
峯岸輪廻「そろそろ俺も、判断材料が欲しい。一人でも多くの命を救うために」
須藤蒼「り、輪廻、さん・・・」
須藤蒼「僕は・・・」
須藤蒼「僕は、僕は・・・っ」
峯岸輪廻「!」
須藤蒼「あ、ああ・・・っ!」
峯岸輪廻「い、今の声、まさか・・・芦田さん!?」
須藤蒼「そ、そんな・・・っ」
〇黒背景
「があああっ!」
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!」
「げふっ」
「いやあああああああああ!痛い痛い痛い痛い!」
「誰か、誰か助け、誰か、あ、あ、ああああああああああああああああああああああああああああ!!」
〇研究施設の廊下
峯岸輪廻「芦田さん!赤井さん!」
峯岸輪廻「くそっ・・・くそっ!何で開かないんだ!向こうで何が起きてるんだ!?」
須藤蒼「あ、あああ、あああ・・・」
須藤蒼「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・!」
須藤蒼「僕が・・・僕が、全部いけないんだ、本当は、僕がっ・・・」
峯岸輪廻「え?」
須藤蒼「ああ、ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
須藤蒼「僕が、望んではいけないことを望んだから・・・!」
須藤蒼「救われたいなんてそう、願ったから・・・!」
芦田さん……赤井さん……
キャラクターの人となりを十全に知れた後の悲劇的なシーンは殊更心にキますね……
(第二のゲームの女子高生A・Bのときよりも……)
そして、蒼くんの口から語られる内容が、物語の核となる気配ですね、次回が待ち遠しいです!