デス・パレードは祈りと共に

はじめアキラ

エピソード13・意の中(脚本)

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はじめアキラ

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〇組織のアジト
峯岸輪廻「・・・・・・!」
須藤蒼「・・・・・・」
芦田ルミカ「・・・だいたい、こんなかんじね。私が此処に来た流れは」
赤井鳳輔「そうか、やっぱ、あんたも俺と似たようなもんか・・・」
赤井鳳輔「いいアルバイトがあるって紹介されてさあ。ちょっと合コンやりすぎて金もなくなってたし、暇だしいいかなって」
赤井鳳輔「そりゃ、ちょっと話がうますぎるとは思ったけど?短期バイトなんてそんなもんかなーつーか」
赤井鳳輔「ああうん、マジ危機感足りてなかった、って・・・来てから後悔したよ。もう遅かったんだけど」
芦田ルミカ「そうよね。仕事をちゃんとこなさないと生きて帰さないって言われちゃ、どうしようもなかったわ」
芦田ルミカ「しかも、成功すれば予定通りの報酬を支払うっていうのよ?まさに飴と鞭じゃない」
芦田ルミカ「他にもアルバイトって名目で集められた人が何人もいて。きっとわたし達と似たり寄ったりの状況だったんでしょうね」
芦田ルミカ「他の参加者に紛れているのか、裏方で手伝っているのか。それは、わたしにはわからないわ」
芦田ルミカ「ただわたしは、そこにいる赤井さんと一緒にこの部屋で待機していて・・・」
芦田ルミカ「貴方達が来たら、何も知らないふりをしてゲームに参加するようにと言われただけ」
芦田ルミカ「わたし達が命じられた内容に関しては、貴方が気付いた通りよ、輪廻くん」
芦田ルミカ「わたし達が、偽の参加者だとバレないようにすること。そしてカードをミスリードさせて、そのボードに書かせること」
芦田ルミカ「それができたら成功報酬がもらえて、無事に家に帰して貰えることになっていたの」
峯岸輪廻「・・・貴方たちも騙されてきたというわけですか」
峯岸輪廻「しかし、その話を俺達にしてしまったら・・・」
芦田ルミカ「任務失敗、扱いでしょうね。命の保証はされないと思うわ」
芦田ルミカ「だけど・・・これ以上、嘘をつくことはできなかった。だって、わたし達の仕事が成功してしまったら・・・」
芦田ルミカ「輪廻くんに蒼くん。貴方たちが、殺されたかもしれないでしょう?」
峯岸輪廻「芦田さん・・・」
赤井鳳輔「はは・・・あんたいい根性してるぜ。自分の命が危ないって時に」
赤井鳳輔「・・・悪かったな、嘘ついて、騙そうとして」
赤井鳳輔「俺、自分で言ってて空しくなるけど・・・自分勝手なロクデナシつーかさ。マジで、自分が生きて帰れたらそれでいいと思ってたんだ」
赤井鳳輔「そしたら、まさか来たのが俺らよりずっと年下の子供二人じゃん?」
赤井鳳輔「相手が誰であれ、赤の他人だし・・・生き残るのが最優先だって思ってたんだよ、最初は」
赤井鳳輔「でも、そこの芦田さんが正直に話すって決めた時さ。どっか、ほっとしたんだよな」
赤井鳳輔「ああもう、これで俺も嘘つかなくていいんだなって」
峯岸輪廻「赤井さん・・・」
赤井鳳輔「なんつーかさ、やっぱ、人間として捨てちゃいけないもんってあると思うわけよ」
赤井鳳輔「昔ジイちゃんが言ってたんだ。兄貴が、妹や弟を守るのはどうしてか?先輩が後輩を庇うのはどうしてなのか?」
赤井鳳輔「年上ってのは、その重ねた年の分強いからだって。強いから、弱い者を守るのは当たり前なんだって」
赤井鳳輔「自分が、かつて兄貴や先輩にそうやって守られてきたようにな。そういうのをどんどん年下に返していくことに意味があるんだって」
赤井鳳輔「だから、世界は優しいところもあって、捨てたもんじゃないんだって」
赤井鳳輔「・・・裏を返せばさ。子供とか、弱いやつに優しくできないってのは。自分が優しくしてもらったのに、恩をアダで返すようなもんだ」
赤井鳳輔「危うく忘れるところだった。・・・そういうのを捨てちまったらもう、俺はマジのロクデナシになっちまうってことをな」
赤井鳳輔「だから感謝してるぜ、芦田サン。あんたが止めてくれたから俺、誇れる自分を失わずに済んだんだから」
芦田ルミカ「どういたしまして。・・・ふふふ、貴方もいいこと言うじゃない」
芦田ルミカ「騙してしまって、ごめんなさいね。・・・そして、大した情報をあげられなくて申し訳ないわ」
芦田ルミカ「わたし達もこの場所や企業について、詳しく知っているわけじゃないの」
芦田ルミカ「株式会社“メサイヤ”と名乗っていたと思うけれど、その会社名も嘘かもしれない」
芦田ルミカ「社長さんの名前は、矢倉亮子さんと言っていたと思うけれど、それも本名であるのかどうか」
峯岸輪廻「いえ・・・俺は記憶もないし、本当に此処に来た経緯に何もわからないんです。十分すぎるほどの進展ですよ」
峯岸輪廻「此処は遊園地で、新しいアトラクションの中だと、そう説明されていたんですね?」
芦田ルミカ「そうね。田無駅に集合して、そこからバスに乗ったわ。山の中を、かなり長い距離走ったように思う」
芦田ルミカ「だから、此処の正確な場所はわからないの。・・・この建物の外に逃げることはできるのかもしれないけど、遭難するかもしれないわ」
芦田ルミカ「救世主を育てるための施設、と言っていた。でもその救世主がどこの誰で、何の目的でそんなことをするのか・・・」
芦田ルミカ「わたし達はそういうことを、一切知らされていないの。本当にごめんなさい」
峯岸輪廻「とんでもない。その話が本当なら、貴方達も被害者ですから」
峯岸輪廻「しかし、だとするとこのまま俺がボードに答えを書けば・・・」
赤井鳳輔「・・・ま、ろくなことにならねーんだろうなあ」
赤井鳳輔「でも、いいさ。もう俺もハラは括ったよ。それに、死ぬと決まったわけじゃない」
赤井鳳輔「生きることを諦めるわけじゃねえんだ。それより俺は、お前のその冷静な判断力に痺れたんだぜ?」
赤井鳳輔「きっと、ゲームをクリアしたら主催者ってやつとご対面できるだろ。そうしたら、問い詰めるなりぶん殴るなり手が打てる」
赤井鳳輔「辿り着いてくれよ、真実ってやつに!お前ならきっとできる!それが俺の望みだ!」
芦田ルミカ「わたしからもお願いするわ。・・・このまま、騙されて好き勝手にされるなんて悔しいじゃない」
芦田ルミカ「お願い。遠慮しないで、答えを書いて。貴方は何も間違ったことはしていないのだから」
峯岸輪廻「・・・わかりました」
須藤蒼「輪廻さん・・・」

〇黒背景
  俺の選択によって、人が死ぬかもしれない。
  赤井さんと芦田さんを、犠牲にしてしまうかもしれない。
  でも俺に、答えを書く以外の選択肢は、なかった。
  俺が書かなければ、俺だけじゃない・・・蒼も死ぬことになる以上は。

〇組織のアジト
峯岸輪廻「!」
芦田ルミカ「ホワイトボードの裏の壁が、動いた!?ま、まさかこんなところに出口があったなんて・・・」
須藤蒼「す、すご。これ、どういう仕組みになってるんだろ・・・」
  『皆様、おめでとうございます。カード当てゲーム、見事正解でございます!』
  『輪廻様と蒼様は、そのまま次へお進みください。繰り返します、そのまま次へお進みください』
峯岸輪廻「俺達だけかよ・・・」
須藤蒼「や、やっぱりお二人は・・・」
芦田ルミカ「・・・構わないわ。先に進んで」
芦田ルミカ「わたしも、諦めたわけじゃない。他の出口がないか探してみる」
赤井鳳輔「かっこいいじゃねえか、アンタ!」
赤井鳳輔「そうだな、諦めたら試合終了だって安西センセも言ってたしな!ははは!」
峯岸輪廻「赤井さん、芦田さん・・・ありがとうございます」
峯岸輪廻「俺達は、先に進みます。・・・このゲームの、真実を突き止めるために!」
赤井鳳輔「おう!」
芦田ルミカ「頑張って、二人とも。応援してるわ!」

次のエピソード:エピソード14・望の中

コメント

  • 芦田さん……😭
    芦田さんの回想により、デスゲームの目的と主体について見えてきましたが……彼女のキャラクターと生々しい現実感を示すことで、このデスゲームが日常のすぐ隣で行われていることを思い知らされ恐ろしさを感じます😱
    第三の試練、何とも苦々しいクリアとなりましたね……😢

  • 前回は野暮な指摘を失礼いたしました
    今回は、赤井サンの改心の長口上が光りますね!当然ボイスも含めてステキです!
    芦田さん、どうにか生き延びてほしいですねー(←赤井サンは!?

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