エピソード12・罠の中(脚本)
〇SNSの画面
芦田ルミカ「『ちょっと愚痴聞いてください』」
芦田ルミカ「『旦那と離婚してから、仕事探しで本当に苦労してます。わたし、昔から手先も不器用だし、パソコンも全然得意じゃなくて』」
芦田ルミカ「『おっとりしていて、せかせか動くのも苦手だし。複数のことを同時進行できないから接客とかもできる気がしなくて・・・』」
芦田ルミカ「『学生時代は運動部だったから、体力は多少ある方だと思っています。でも女性だから、土木工事とかはちょっと・・・』」
芦田ルミカ「『とりあえず、正社員の仕事が見つかるまでのアルバイトでいいんです。良い仕事が見つかるサイトとか、ご存知の方いませんか?』」
ナッカリン「『ミルミルさんこんばんはー。やっぱり、離婚してから大変なんだね』」
芦田ルミカ「『こんばんは、ナッカリンちゃん。ごめんね、最近暗いツイートが多くて』」
芦田ルミカ「『うち、子供いないからまだマシだってわかってるんだけど。もっと結婚する前に、いろんな資格取っておけばよかったわ』」
ナッカリン「『あたしだって、そんないろんな資格持ってるわけじゃないよ。でも、パソコンはある程度使えるようになっておくべきかもね』」
ナッカリン「『あ、アルバイトなんだけどさ。友達にやらないかーって誘われたけど、断ったやつがあるんだよね』」
ナッカリン「『短期間アルバイトなんだけど、残念ながらあたしその日は予定入っちゃってて無理だったというか。ミルミルさんやってみる?』」
ナッカリン「『一週間限定で、なんと日給二万円だって!希望すれば、もっと延ばして貰えるかもって!美味しいでしょ?』」
芦田ルミカ「『それはかなり魅力的だけど・・・女性であってもできるものかしら?どういう内容なの?』」
ナッカリン「『遊園地の装飾作業だってさ。今度新しいアトラクションを作るんだけど、その内部装飾を手伝う仕事だって』」
ナッカリン「『あ、内装工事とか、そういうのじゃないよ?内部のポップ描いたり、飾り作ったり、あと簡単な清掃作業とか』」
ナッカリン「『動き回るから体力は多少必要だけど、力仕事は全然ないから女性でもできるよって。人手足らなくて急募なんだって』」
芦田ルミカ「『へえ、ちょっと面白そうね。詳細、DMで送って貰ってもいいかしら?』」
ナッカリン「『いいですよー!じゃあ、今からメッセしますね!ちょっと待っててね!』」
〇黒背景
裕福な家庭の、箱入り娘だったわたし。
学生時代は、ろくなアルバイトもしたことがなかった。
大学を卒業してわりとすぐ結婚したため、職業の経験も乏しく、ろくな資格も持っていなかった。
・・・夫は優しい人だった。ただ、あまり器用な人ではなかった。
不妊治療を経ても子供ができず、彼の仕事が忙しくなったことを契機に心の距離も遠ざかり、最終的に離婚。
わたしは否が応でも、一人で生きていかなければならなくなり、焦っていたのだ。
〇面接会場
矢倉亮子「・・・なるほど、それでうちの会社の面接を受けにきてくださったんですねえ」
矢倉亮子「貴女のように若くて綺麗な女性の方に来て貰えてうれしいわ。 笑顔もとっても素敵よ」
芦田ルミカ「あらやだ・・・ありがとうございます」
芦田ルミカ(この方が社長さんなのかしら? 結構お年を召されてはいるようだけど、オシャレな方ね・・・)
芦田ルミカ(女性スタッフも多いみたいだし、安心して働けそう・・・)
矢倉亮子「当社としては是非、すぐにでも貴女を採用したいのだけど・・・」
矢倉亮子「もし貴女さえよかったら、もう一つお仕事をお願いできないかしら?」
芦田ルミカ「もう一つ、というと?」
矢倉亮子「先ほど説明した通り。開業予定の“ネクロポリスアドベンチャー”は、我が社の命運を賭けたプロジェクトでもあるの」
矢倉亮子「まさに、“救世主”と呼んでも過言ではないほどのね」
芦田ルミカ「救世主、ですか・・・」
矢倉亮子「ええ、だから絶対事故など起こしてはいけないし・・・念入りな点検や、予行演習が必要なの」
矢倉亮子「ゆえに、正式オープン前に、アルバイトの人に実際に遊んで貰って、問題なく稼働するかチェックしたいのよ」
矢倉亮子「ようは、ゲームのデバックみたいなものね」
芦田ルミカ「ひょっとして、それをわたしも手伝う、と?」
矢倉亮子「察しが良くて助かるわ。貴女は他のアルバイトさんに混じってアトラクションの実演をしてほしいのよ」
矢倉亮子「そんなに難しいことじゃないわ。何も知らないつもりになって、真剣にゲームを楽しんでくれればそれでいいから」
矢倉亮子「接客とか接待とか、そういうのじゃないから貴女も気楽にできると思うの」
芦田ルミカ「確かに、そういうことなら・・・」
矢倉亮子「ほんと!?引き受けてくれるなら、アルバイトの期間も伸ばすし給料も日給五万円まで出すわよ!」
芦田ルミカ「ご、ごまん・・・!一日で・・・!」
芦田ルミカ「やります!わたし、頑張ります!やらせてください!」
矢倉亮子「ありがとう、芦田さん!じゃあ、この場で書類書いてもらっていいかしら?」
矢倉亮子「お仕事の開始は一週間後よ。詳しい仕事内容は現地で説明します」
矢倉亮子「大丈夫、先輩スタッフが丁寧に指導しますからね」
芦田ルミカ「はい、ありがとうございます!」
〇黒背景
よくよく考えればわかったはずだ。あまりにも、都合の良すぎる話だと。
でも、お金に困っていて、かつ“自分が社会に必要とされている実感”が欲しかったわたしは・・・
ただ“ラッキー!”だとしか考えず、その仕事に飛びついてしまったのだ。
・・・それこそが、罠であるとも気づかずに。
〇組織のアジト
男性職員「さて、今日集まって貰ったお前らに、ここでの本当の仕事内容を明かそう」
芦田ルミカ「ほ、本当の仕事内容?」
男性職員「そうだ。確かに此処は遊園地であり、ここはアトラクション施設だが・・・」
男性職員「このアトラクションは、一般客に解放するために作られたものじゃねえ」
男性職員「この世界を救う“救世主”ただ一人のために作られた施設なんだ」
赤井鳳輔「きゅ、救世主だぁ?」
男性職員「その通り。救世主の卵を育て、本物の救世主に育てることを目的とした施設」
男性職員「我らが教主様は、そのために命をも賭ける所存だ。そうそして貴様らにも同等のものを賭けるようにと御所望でもある」
芦田ルミカ「ど、どういうことですか?わたし達はただバイトで・・・」
男性職員「ああ、ちゃーんと仕事してくれたら、約束通りのバイト代も払うし、無事に家に帰してやるよ」
男性職員「お前らが・・・ちゃんと“何も知らない参加者”を演じて、ゲームに勝つことができたなら、な!」
芦田ルミカ「!?」
デスゲームの真相に迫る重要回! では、かつての女子高生A・Bもバイトとして集められた存在ということですね!(←ソコ!?
そんな中、ネクロポリスアドベンチャーのネーミングの強さと、ナッカリンさんの口調の可愛さに惹かれたのはナイショですww