〇骸骨
　　『見よ』
　　『これが我らだ』
　　『屍の上にのみ存在を許される一族だ』
草の者ども「ぎ・・・義仙様、申し訳ありませぬ」
草の者ども「あの者は・・・人ではありませぬ」
草の者ども「まさに修羅・・・」
草の者ども「ぐがっ！」
十兵衛「修羅か」
十兵衛「手前らから襲いかかってきておきながら、随分好き勝手抜かしてくれるな」
十兵衛「さあ、残るはお前一人だ。義仙」
義仙「愚か者め。それ程の力を持ちながら流浪に身をやつすとは」
十兵衛「幕府の転覆なんざ興味ねえんだよ」
十兵衛「来い。決着をつけるぞ」
義仙「よく見ておけ、又十郎よ」
又十郎「・・・」
義仙「これが・・・」
義仙「これがシンカゲだ！」
十兵衛「うおおおおおおおッ！」

〇雷
義仙「・・・！」

〇古びた神社
義仙「・・・うぐっ」
義仙「ぐがああああああッ！貴様あああッ！」
十兵衛「腕を斬った。これで二度と刀は握れねえ」
十兵衛「何処なりとも消え失せろ」
十兵衛「さあ、帰ろう。又十郎」
義仙「待て・・・」
義仙「又十郎・・・我らが兄、偉大なる新陰宗冬の子よ」
義仙「本懐を遂げよ。その手で我が首を刎ねよ」
又十郎「・・・」
義仙「そしてゆくゆくは、俺と共に宗冬を討ったその男」
義仙「新陰十兵衛も討ち果たすのだ」
義仙「我と十兵衛こそお前の父の仇ぞ」
又十郎「十兵衛は違う！正々堂々と父と戦った！」
又十郎「仇は手負いの父を嬲り殺しにし新陰を乗っ取った義仙、おめえ一人だ！」
義仙「ふふふ・・・なるほど」
義仙「よく手なづけたものだな十兵衛」
義仙「これで新陰はお前のものだ」
十兵衛「俺はそんな歪んだ思いで宗冬兄と太刀合ったわけじゃねえ」
義仙「ならばこの光景はなんだ！」

〇骸骨
義仙「人を殺めるに歪みも真っ当もあるものか」
義仙「そうだ。我らは血に飢えた獣」
義仙「そしてこの死屍累々こそが人として生きるを許されぬ新陰の象徴」
義仙「獣めが！訳知り顔で活人剣の真似事など、片腹痛いわ！」

〇古びた神社
十兵衛「だから、まだ人である又十郎が次の当主になるべきなのさ」
十兵衛「俺は再び流浪の身」
十兵衛「お前もとっとと坊主に戻れ。列堂和尚」
十兵衛「あばよ！」
又十郎「・・・」
義仙「後悔するぞ、小僧」
義仙「我を、そして十兵衛を生かしておく事を」
義仙「我らは・・・」
義仙「我らは阿修羅だ！」
　　続劇