〇ファンタジーの教室
？？？(幼少期)（（お。あった））
？？？(幼少期)（（隣のクラスのギン・ユルシャ‥‥‥））
？？？(幼少期)（（日直日誌すら、面白いじゃないか‥‥‥））
？？？(幼少期)（（体育倉庫の中のクモについて、何でこんな 　延々と語っているんだコイツ‥‥‥））
　　私は、あのケンカ腰のイカれた読書感想文を見て以来‥‥‥
　　どうもアイツの文章がツボになって
　　しまったらしかった。
　　文の巧拙の具合は実はわからない。
　　他にもっと上手い人が身近にいたかも
　　しれない。
？？？(幼少期)（（しかし、俺にはコイツの珍文が 　じわじわ来るんだ））

〇古書店
幼少ギン「返却しまぁす」
図書室の先生「はぁい」
？？？(幼少期)「今、返された本を借りたいです」
図書室の先生「‥‥‥？　あぁ、いいわよぉ」
？？？(幼少期)（（ふーん。あいつ、 　こういう本を読んでるのな））
？？？(幼少期)（（エルム・ナキュの『セイリング・ベルズ』ねぇ‥‥‥））
　　元々は読書好きでもなかったが、
　　奴の借りた本だけは興味を持って読んでみた。

〇華やかな裏庭
？？？(幼少期)（（卒業文集での、奴の作品‥‥‥））
　　「僕の夢は、皆さんご存知の通り
　　　"小説家"になる事です」
　　「“なる”為の努力と邁進は勿論しますが、
　　　誰かに『お前、入賞したね。今日から
　　　小説家ね』と
　　言われて初めて"なる"ものでもないと
　　思っています』
　　『現実的にはともかく、実は精神面では
　　　自分は既にとっくに“小説家”になっている
　　のであります』
　　脳と目と右腕が安泰な限り、僕は生涯"小説家"です」
？？？(幼少期)「なんだって？（笑）」
？？？(幼少期)（（‥‥‥へぇ、アググなんたら小説賞に 　チャレンジするんだ））
？？？(幼少期)（（まぁ、頑張れ））
？？？(幼少期)（（お前なら、やれるだろう））

〇木の上

〇森の中
ギン「お、お前‥‥‥どうしてそこまで‥‥‥」
ギン「何かもう、怖い域だぞ‥‥‥？」
？？？「黙秘」
ギン「‥‥‥ !?」
？？？「‥‥‥とにかく」
？？？「さっき、回復魔法をかけたから 体の疲れは取れたでしょう？」
ギン「あ、あぁ‥‥‥」
？？？「じゃあ、少しは執筆を進められるだろう ‥‥‥書け！」
ギン（（よくわからんし怪しいけど、とにかく 　俺の執筆を応援してくれてるのは 　確かなんだな‥‥‥））
ギン「わ、わかった！ 朝まで小説を進め‥‥‥」
？？？「寝ないのも体に悪いから、キリのいい所まで 書いたらちゃんと寝ろ!!!!!!」
　　この後、１時間作業した後に強制的に寝かせられた。

〇海沿いの街

〇田舎の教会
？？？「‥‥‥はぁ？」
？？？「今月の町内会報誌‥‥の、この新連載の小説‥‥ なんなんですかね」
？？？「近所の花の話や家事のコツやらな地域情報を 載せている中で、何だこのダーク小説‥‥‥」
町人「おっ。それ、とんでもねぇよな！」
？？？「主人公が顔の皮を剥がされたり泥水 すすってるの、とんでもないですね‥‥‥」
町人「まぁ、町長に言えば誰でも連載できるし‥‥ 『グロはダメ』なんて注意も確か、 なかったはずだしな」
？？？「‥‥‥どうも、懐かしいな‥‥‥？」
？？？「あ」
町人「そうそう！　キンさんとこの息子さんが ソレ書いたんだってな！」
町人「うめぇし、偉いよなぁ。 俺なんか、頭で「こんな話を思いついた！」 っつぅだけで形にはしないからなぁ」
？？？「へぇ‥‥‥ あいつの文章がこれから読めるのか‥‥」
？？？（（‥‥‥アンケート送ろう））
　　※わからない人に説明しよう！
　　大抵の雑誌には『今回、面白かった・
　　つまらなかった記事はどれでしたか』的な
　　アンケートが毎号付いているのだ！
　　その結果によっては連載が続いたり
　　終了したり、路線変更されたりと‥‥‥
　　一般人が思っている以上に割と影響があるぞ！
　　‥‥‥まぁ、ぶっちゃけ町内会報誌は
　　そんな別にアンケート結果を
　　重要視していないけどね！

〇海沿いの街

〇田舎の教会
？？？（（休載が増えたな‥‥‥））
？？？（（風邪でもひいたか‥‥‥？））

〇西洋の市場
？？？「あ」
？？？「お久しぶりです」
？？？「あなたの息子さんの読書感想文が 好きなガキです」
キン(父上)「‥‥‥久しぶりだな!!!!!　坊主!!!!!!」
？？？「はい」
？？？「‥‥‥‥」
？？？「息子さん、町内会報誌で小説を 連載しているじゃないですか」
キン(父上)「おぉ、やっぱ読んでくれてるんだな！ 息子に代わって礼を言うよ！」
？？？「‥‥‥‥」
？？？（（「何で休載してるんだ」と、 　いちいち訊くのは‥‥‥））
？？？（（何だかまるで私が、奴の小説を超絶 楽しみにしているみたいじゃないか））
　　※現に紛れもなく、そうである
？？？「‥‥‥‥‥‥‥あのぉ」
？？？「差し入れです」
キン(父上)「え？」
キン(父上)「こんなにたくさん、りんご‥‥‥？」
？？？「『１日１個のりんごを食べていれば 　医者いらず』なので」
？？？「ぜひ」
キン(父上)「おお、ありがとう‥‥‥！」
キン(父上)「‥‥‥いっそ、ウチの息子に直接差し入れ してあげたり応援してくれたりしないか？」
キン(父上)「「グロいからやめろ」って声も少なからず あって、アイツちょっと凹んでたりするしさ」
？？？「‥‥‥その程度で執筆をやめるようなら、 その程度の奴──という事です」
キン(父上)（（き、厳しい‥‥‥））
？？？「差し入れは適当にごまかして渡して下さい」
キン(父上)「あ、あぁ‥‥‥」

〇黒
キン(父上)「おぉい、ギン！ 魔物を倒してくれた礼としてリンゴ貰ったぞぉ」
ギン「あぁ、親父‥‥‥ リンゴな、はいはい‥‥‥」
町人「大変だよぉ！ 町にモンスターが‥‥‥！」

〇空

〇ヨーロッパの街並み
　　※ギンの家の前
？？？（（‥‥‥））
？？？（（やはり‥‥‥不定期連載の原因は 　知りたいし、その文句も言いたい‥‥‥））
「あ」
キン(父上)「あ〜、息子の文に惚れてる子‥‥‥！」
？？？（（間違っていないが、言い方‥‥‥））
？？？「‥‥‥‥」
？？？「すみません。 何で、町内会報誌の小説の連載が だいぶ不定期なんですかね？」
キン(父上)「え？　あぁ‥‥‥」
キン(父上)「今アイツ、ちょっと北に遠出しててな」
？？？「えっ‥‥‥」
？？？「旅行に行ってるんすか？」
キン(父上)「えっ‥‥‥いやいや、旅行じゃなくて‥‥‥」
？？？「そうか‥‥‥最近、暑いから北に旅行にか‥‥‥」
？？？「あいつ、興味ない授業とか結構 サボリ癖あったからな‥‥‥」
キン(父上)「ギンはな、魔物が多いから原因を探りに‥‥‥」
？？？「にしたって、プロを目指しているのなら、 旅行に行く前に作品のストックを ためておく気概がなきゃ駄目では？」
キン(父上)（（話を聞かないな、この子?!））
？？？「大体、最近は魔物も多く出没していると いうのに‥‥‥何かあったらどうするんだ、 あのアホは！」
？？？「ちゃんと作品終わらせてから死ねっ！」
キン(父上)（（ギン（の作品）が好きすぎて 　混乱してる‥‥‥！））
？？？「‥‥‥北ですね、わかりました」
？？？「北の本屋でも巡ってりゃあ、見つかるだろ」
？？？「では」
キン(父上)「‥‥‥」
キン(父上)「（コミュ症の身勝手な解釈、怖ぁ‥‥‥）」
　　※キンは、後を追って改めて説明をしよう
　　とも思ったが、腰が痛いのであきらめた！

〇黒
？？？（（どうせ会うのなら‥‥‥））
？？？（（もういっそ、サインがほしいな!!!!!））
　　と、プリプリしながらギンを追って
　　ついにギンに会えたわけだったが
　　よくよく話を聞いたら旅行してたわけでも
　　なく、小説をサボりたくてサボっていた
　　わけでもなくで。
　　『小説に集中したいから魔物どうにか
　　してくる』って利己的な旅で。
　　奴は、私の好きな“本好きな馬鹿”のままで。

〇木の上

〇山中の坂道
ギン「森の中で火ぃ出すなっつーに!!!!」
ギン「うぎゃ?!」
ギン「おゎー‥‥‥。 液がかかった右腕と右足、 じゅくじゅくしてきたぁ‥‥‥」
ギン「おぉ〜、サンキュ‥‥‥」
ギン「‥‥‥‥」
ギン「右腕だけ治療して、足の方は‥‥‥？」
？？？「小説書くのに手は大事だが、 足はなくても困らんだろ」
　　と、まぁコイツはとんでもない奴だったが‥‥‥
　　今までお試しで行動を共にしてしてみた
　　奴らと違って、一緒にいてだいぶ楽な奴だった。

〇新緑
　　沈黙が続いても気にならないし
　　申し訳なく思わない。
　　‥‥‥逆に、下手に喋ろうもんなら
？？？「無駄口たたかないで頭の中でネタ考えてろ」
　　いや、それでいいんならこっちは
　　それで全然ありかたい限りなのだが。
　　ちなみに、名前を訊いても
？？？「知ったところでお前の作品にいい影響でもあるのか？」
？？？「黙秘する」
　　‥‥‥‥じゃあ、別にいいけど。

〇原っぱ
　　食べるものも用意してくれるし‥‥‥
　　なんだかんだで、読書の事で話が合った。
　　思えば、同世代と本の事で盛り上がった事が
　　なかったので‥‥‥
　　『仲間』としても『友人』としても
　　こいつは俺に合う奴なのかもしれない‥‥‥。

〇外国の田舎町
？？？「あぁ‥‥‥」
？？？「また‥‥‥畑が荒らされている‥‥‥」
？？？「つっ──‥‥‥！」