第24章 誰がために(脚本)
〇城の回廊
オペラ・フォン・ブラッドショット「シグバート・・・」
ミスルト・ブレイジャー「こんにちは、陛下」
オペラ・フォン・ブラッドショット「あら、ごきげんよう」
ミスルト・ブレイジャー「このたびはありがとうございます」
ミスルト・ブレイジャー「母の様態もずいぶん落ち着きました」
ミスルト・ブレイジャー「ご慈悲をいただき、感謝いたします」
オペラ・フォン・ブラッドショット「気にしないでちょうだい」
オペラ・フォン・ブラッドショット「息子の学友を助けるのは 母として当然ですもの」
オペラ・フォン・ブラッドショット「ところでミスルトさん お聞きしたいのですけど」
ミスルト・ブレイジャー「なんでしょう?」
オペラ・フォン・ブラッドショット「シグバートはミモザと うまくやれていなかったのかしら」
オペラ・フォン・ブラッドショット「あの子ったら 婚約を解消したいって」
オペラ・フォン・ブラッドショット「ナギットの娘なんかと 結婚したくないって言うのよ」
ミスルト・ブレイジャー「シグバートくんがそんなことを?」
オペラ・フォン・ブラッドショット「ナギットの卑劣さは ミモザのせいではないわ」
オペラ・フォン・ブラッドショット「ナギットの浅ましい行いのせいで ミモザは人生を縛られているのに」
オペラ・フォン・ブラッドショット「なぜこんな言い方をするのかしら」
ミスルト・ブレイジャー(シグバートくん あのふたりのために身を引くのか)
ミスルト・ブレイジャー(それにしたって やり方が下手すぎないか?)
オペラ・フォン・ブラッドショット「それとも、他に好きな子ができたのかしら」
オペラ・フォン・ブラッドショット「もしかしてヴィオラさん?」
ミスルト・ブレイジャー「いや、それはないでしょう」
ミスルト・ブレイジャー「好きな人ができたのは ミモザくんのほうですし」
オペラ・フォン・ブラッドショット「え?」
ミスルト・ブレイジャー「あっ」
〇謎の施設の中枢
堕天使アクロマート「さあ―― 最後の授業といきましょう」
堕天使アクロマート「・・・と言っても どこから話したものでしょう」
ヴィオラ・コーディエ「女神を救うってどういうことだよ!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「魔法学園の設立とどう関係しているんだ!」
ノエル・エンジェライト「ミモザさんの記憶を封じたのはなぜですか」
ヴィオラ・コーディエ「あと父さんのも!」
堕天使アクロマート「質問は順番になさい」
堕天使アクロマート「やはり順を追って説明しますよ」
堕天使アクロマート「わかりやすい授業をするのは 教師のつとめですからね」
〇黒背景
堕天使アクロマート「イリデッセンスは天と大地を造った」
堕天使アクロマート「しかし、天地は闇に覆われていた」
堕天使アクロマート「光をもたらすために イリデッセンスは天使を生み出した」
女神イリデッセンス「わたくしの右腕となるおまえを アクロマートと名付けます」
女神イリデッセンス「さあ、世界に光を」
〇美しい草原
堕天使アクロマート「世界には時が流れ 光と闇が交互に訪れるようになり」
堕天使アクロマート「わたしたちはそれを昼夜と名付けた」
〇美しい草原
堕天使アクロマート「海、植物、星 わたしたちの美しい世界」
堕天使アクロマート「ですが、それを乱す者が現れた」
〇森の中
スペサルト兵「申し上げます!」
スペサルト兵「ナギット様率いる軍勢は エピドートの北を通過!」
デアネイ・フォン・スペサルト「・・・そう」
デアネイ・フォン・スペサルト「プレーンでは、内乱の影響で ポータルを停止してるはず」
デアネイ・フォン・スペサルト「父上がプレナイトへ到着するのは 早くて今日の夕方か」
デアネイ・フォン・スペサルト「父上がヘンリー王に接触する前に 急いで追いつきましょう」
〇謎の施設の中枢
ミモザ・クラリティ「人間・・・ですか?」
堕天使アクロマート「そのとおり」
堕天使アクロマート「人間は争いを繰り返し 大地を固め、森を切り、水を汚す」
堕天使アクロマート「その果てにはなにがあると思いますか?」
ヴィオラ・コーディエ「・・・世界が滅びる?」
堕天使アクロマート「ええ」
堕天使アクロマート「人間の歴史は戦いの歴史」
堕天使アクロマート「わたしたちはずっと見てきました」
シグバート・フォン・ブラッドショット「オレたちは争いたくて争うわけではない」
シグバート・フォン・ブラッドショット「だが・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「守るべきもののために 戦わなければならないときもある」
ノエル・エンジェライト「・・・そうですね」
ノエル・エンジェライト「戦わなければ守れないものも ・・・たくさんありますから」
堕天使アクロマート「守るためと思っているのは きみたちだけではないですか?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「どういう意味だ」
堕天使アクロマート「名声、富、地位、安寧、愛」
堕天使アクロマート「望みのために他者を踏みつけ 争いは永遠に繰り返される」
堕天使アクロマート「きみたちも信念の下に 人を殺めたことがあるでしょう」
堕天使アクロマート「ねえ、ヴィオラくん」
ヴィオラ・コーディエ「・・・っ!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「大勢を犠牲にしたきさまが 今さら人道を説くのか!」
堕天使アクロマート「・・・授業を続けましょうか」
堕天使アクロマート「わたしは人間どもを管理下に置くよう イリデッセンスに進言しました」
堕天使アクロマート「しかし──」
〇幻想
女神イリデッセンス「人間の可能性を信じているからよ」
女神イリデッセンス「世界の行く末が心配な気持ちはわかります」
女神イリデッセンス「ですが、しばし見守りましょう」
〇モヤモヤ
天使アクロマート「許せなかったのですよ」
天使アクロマート「わたしたちの造った世界を穢す人間が!」
天使アクロマート「それを容認するイリデッセンスが!」
天使アクロマート「ならば──」
堕天使アクロマート「イリデッセンスに代わる神となり」
堕天使アクロマート「世界を穢す下等生物を排除するのみ」
堕天使アクロマート「イリデッセンスもいずれ目が覚めるだろう」
〇草原
宰相グレゴリー・シーン「殿下の軍勢が接近しているそうだ」
宰相グレゴリー・シーン「殿下が援軍を派遣したと 陛下にはお伝えしてある」
宰相グレゴリー・シーン「陛下には決して真相を悟られるな」
スペサルト兵「はい・・・」
宰相グレゴリー・シーン「・・・この戦い 勝利するのは殿下だ」
宰相グレゴリー・シーン「王になった殿下を 支えて差し上げてほしい」
宰相グレゴリー・シーン「投降すれば命までは取られまい」
スペサルト兵「宰相閣下はどうされるのですか?」
宰相グレゴリー・シーン「わたしは・・・ 陛下と運命をともにしよう」
スペサルト兵「しかしそれでは閣下が・・・」
「グレゴリー!」
ナギット・フォン・スペサルト「戦況は?」
宰相グレゴリー・シーン「ヘンリー王はプレナイト城に籠城し 守備を固めているとのこと」
宰相グレゴリー・シーン「レオナ王女の軍勢は人数に劣り 城を包囲できませんから」
ナギット・フォン・スペサルト「レオナ軍の背後を取れば 挟撃できるというわけか」
ナギット・フォン・スペサルト「ブラッドショットとカーネリアは?」
宰相グレゴリー・シーン「いずれも静観しているようです」
ナギット・フォン・スペサルト「では我々が背後を取られる恐れはないな」
ナギット・フォン・スペサルト「出陣するぞ! 大陸の覇権はすぐそこだ!」
宰相グレゴリー・シーン「・・・御意」
〇荒野
???「くっ・・・」
???「・・・いや まだ終わっていない」
???「半身さえ取り戻せば神界へ戻れる」
???「人間どもよ 滅びのときを待つがいい」
〇謎の施設の中枢
堕天使アクロマート「だが、ここまで到達するのに 1000年もかかってしまった」
堕天使アクロマート「なぜかわかりますか?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「おまえが<虹>を破壊したからだろう」
ヴィオラ・コーディエ「・・・違う」
ヴィオラ・コーディエ「<虹>を壊したのはアクロマートじゃない」
ヴィオラ・コーディエ「イリデッセンス・・・ 神が<虹>を壊したんだ」
〇城の回廊
オペラ・フォン・ブラッドショット「ミモザに好きな人!?」
ミスルト・ブレイジャー(しまった・・・)
オペラ・フォン・ブラッドショット「ミスルトさん その方のことはご存じ?」
ミスルト・ブレイジャー「ええ、まあ」
オペラ・フォン・ブラッドショット「どんな方なのかしら」
オペラ・フォン・ブラッドショット「優しくて穏やかな方だといいのだけど」
ミスルト・ブレイジャー「いや、そうでもないですよ」
ミスルト・ブレイジャー「ミモザくんに対しては 優しいのかもしれませんが」
ミスルト・ブレイジャー「ああ見えてノエルくんは 強情でむちゃくちゃな・・・」
オペラ・フォン・ブラッドショット「ノエルさん?」
ミスルト・ブレイジャー「あ」
オペラ・フォン・ブラッドショット「ミモザはノエルさんのことを好きなの?」
ミスルト・ブレイジャー「そのようですよ」
ミスルト・ブレイジャー(でなければクレーブス島からの帰り いくらヴィオラくんの発言だとしても)
ミスルト・ブレイジャー(あんなことはしなかったはずだ)
ミスルト・ブレイジャー(今思えば、シグバートくんも あのときには気づいていたんだな)
ミスルト・ブレイジャー(それなら、もっと早く 背中を押してやればよかったものを)
オペラ・フォン・ブラッドショット「ノエルさんはミモザを どう思っているのかしら」
ミスルト・ブレイジャー「さあ・・・」
ミスルト・ブレイジャー(下手なことを言えば 氷漬けにされかねない)
オペラ・フォン・ブラッドショット「あの子たちが帰って来たら 詳しく聞かせてもらいましょう」
ミスルト・ブレイジャー「それがよろしいかと」
ミスルト・ブレイジャー「では・・・」
オペラ・フォン・ブラッドショット「ミスルトさん!」
オペラ・フォン・ブラッドショット「あなたもなにかご存じなのよね?」
オペラ・フォン・ブラッドショット「ぜひ話を聞かせてちょうだい!」
ミスルト・ブレイジャー「いえ、わたしは・・・」
オペラ・フォン・ブラッドショット「白葡萄のお菓子と紅茶があるの いただきながらお話しましょう」
オペラ・フォン・ブラッドショット「よかったら、お母様もご一緒に」
ミスルト・ブレイジャー「・・・承知しました 母を呼んでまいります」
オペラ・フォン・ブラッドショット「中庭でお待ちしているわ」
ミスルト・ブレイジャー(まいったな・・・)
ミスルト・ブレイジャー(でも、お母さんにとっては いい気分転換になるかも)
ミスルト・ブレイジャー(当たり障りのない部分だけ話して なんとかやり過ごそう)
〇謎の施設の中枢
ヴィオラ・コーディエ「<虹>がないと堕天使は神界に戻れない」
ヴィオラ・コーディエ「イリデッセンスは力を取り戻すまで 天使に神器を守らせようとしたんだ」
堕天使アクロマート「正解です」
堕天使アクロマート「きみにそんな推論力があるとは意外でした」
ヴィオラ・コーディエ「イリデッセンスに聞いたんだ」
堕天使アクロマート「ああ、なるほど」
堕天使アクロマート「アイオの娘であるきみには 神の声を聴く力があったのですね」
堕天使アクロマート「地上と神界を繋ぐ<虹>は 虹の石アイリスアゲートから生まれる」
堕天使アクロマート「イリデッセンスは光の剣で 虹の石を斬り──」
ノエル・エンジェライト「雨の石と太陽の石に分かれた・・・」
堕天使アクロマート「アポロオーラ、プルウィルストーン そしてプリズムソード」
堕天使アクロマート「真の力を解放するには 膨大な魔力が必要です」
堕天使アクロマート「強い魔力を持つ魔道士を求め、旅へ出た」
堕天使アクロマート「しかし、誤算がありました」
〇荒野
???「人間は体内で魔力を生成できないのか」
???「<虹>を架けさせる計画が・・・」
???「・・・ん?」
???「花・・・」
〇謎の施設の中枢
堕天使アクロマート「なぜ<虹>があるのか、わかりますか?」
ミモザ・クラリティ「地上と神界を繋ぐため・・・ですよね」
堕天使アクロマート「なぜ繋ぐ必要があるのですか?」
ヴィオラ・コーディエ「えーっと」
ノエル・エンジェライト「・・・授業では 神の恩恵を地上に与えるためだと」
シグバート・フォン・ブラッドショット「<虹のきざはし>を失ったから 世界は衰退し続けていた」
シグバート・フォン・ブラッドショット「だから魔道士は神の遺物を求めてきた」
シグバート・フォン・ブラッドショット「あれはおまえの嘘だったのか」
堕天使アクロマート「神の恩恵を失えば 風はよどみ、大地は腐り、水は濁る」
堕天使アクロマート「それは事実です」
ヴィオラ・コーディエ「・・・そうだ」
〇寂れた村
ヴィオラ・コーディエ「薬草が育ちにくくなって みんなの病気が治らなくなった」
ヴィオラ・コーディエ「だから父さんはあの日 <虹>を探しに行くって・・・」
〇謎の施設の中枢
堕天使アクロマート「<虹>を失い イリデッセンスは長い眠りについた」
堕天使アクロマート「それでもこの世界には 神の力が満ちていたから」
堕天使アクロマート「こんなに早く衰退するはずではなかった」
堕天使アクロマート「少なくとも彼女が再び目覚めるまでは」
堕天使アクロマート「世界は安寧を保っていたでしょうね」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ではなぜ・・・」
堕天使アクロマート「<魔法>ですよ」
堕天使アクロマート「きみたちの使う魔法が 世界を衰退に導いたのです」
学園長、とんでもない堕天使ですね。結局自己欲のために人間を排除しようとしている。もちろん、人間が悪いのかもしれませんが…それにしても利己的だなぁ、と(個人の感覚です💦)
そして方や戦争が起こりそうで、方や口の軽いミルストはお茶に誘われ…。どんな結末を迎えるのか、とてもワクワクしています!
続きも楽しみにしています☺️