第25章 見果てぬ夢(脚本)
〇謎の施設の中枢
堕天使アクロマート「<魔法>ですよ」
堕天使アクロマート「きみたちの使う魔法が 世界を衰退に導いたのです」
堕天使アクロマート「人間は体内で魔力を生成できない」
堕天使アクロマート「そこでわたしはかつて 人間でも魔法を使える術を考え・・・」
ヴィオラ・コーディエ「ちょっと待てよ」
ヴィオラ・コーディエ「人間は体内で魔力を生成できない?」
ヴィオラ・コーディエ「だったらあれは・・・」
〇暗い洞窟
ヴィオラ・コーディエ「魔力切れだー・・・」
〇中世の街並み
ミモザ・クラリティ「だいじょうぶです 魔力を使いすぎただけですから」
〇謎の施設の中枢
ヴィオラ・コーディエ「あたしらが魔法を使う魔力は あたしらのものじゃなくて」
ヴィオラ・コーディエ「精霊の力を借りてるってこと?」
堕天使アクロマート「精霊など、どこにもいない」
堕天使アクロマート「地上に満ちる神の力──」
堕天使アクロマート「それを一時的に体内へ取り入れ 魔力に変換し、発動する」
堕天使アクロマート「その術を魔法と名付け、人間に授けた」
〇黒背景
堕天使アクロマート「世界を構成する七つの要素 火、風、光、土、氷、雷、闇」
堕天使アクロマート「固有の名を付け、それを精霊と呼んだ」
堕天使アクロマート「人間が魔法を身近に感じるようにね」
〇謎の施設の中枢
ミモザ・クラリティ「そんな・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「オレたちの魔法は、神の力を使ったもの」
ノエル・エンジェライト「では・・・魔法を使った分だけ 神の力を消費するということですか」
堕天使アクロマート「ご明察」
ミモザ・クラリティ「では、なぜ魔力に個人差があるのですか?」
ヴィオラ・コーディエ「そうだ!」
ヴィオラ・コーディエ「精霊から魔力を授かった7人の人間が それぞれ国を興したのが、今の7ヶ国」
ヴィオラ・コーディエ「だから王族は魔力が多いんだろ?」
堕天使アクロマート「王家の直系血族ほど魔力が多い」
堕天使アクロマート「それは本当です」
シグバート・フォン・ブラッドショット「鉱物・・・?」
堕天使アクロマート「マニカラン魔晶―― 魔力が結晶化したものです」
ヴィオラ・コーディエ「・・・まさか!」
〇可愛らしいホテルの一室
女神イリデッセンス「わたくしは2つの天使石を少し砕き」
女神イリデッセンス「マトリエルに命じて その破片を人間の女性に飲ませた」
〇謎の施設の中枢
堕天使アクロマート「そのとおり」
堕天使アクロマート「神器の力を解放するには 膨大な魔力が必要ですが」
堕天使アクロマート「神の力を取り入れさせるだけでは 到底、魔力は足りなかった」
〇ステンドグラス
「魔法の技術を編み出した魔道士が 一国の王たるわたしに何用か」
大魔道士ビフロスト「魔力が欲しくありませんか?」
大魔道士ビフロスト「砕いて飲めば、強大な魔力が得られますよ」
「しかし、そんな得体の知れぬものを」
大魔道士ビフロスト「それは残念」
大魔道士ビフロスト「では他の王を当たることにしましょう」
「ま、待て!」
「・・・やはりいただこう」
大魔道士ビフロスト「魔法はもともと、神と天使の御業」
大魔道士ビフロスト「使いこなせば、国の統治──」
大魔道士ビフロスト「いえ、大陸の覇権すらたやすいでしょう」
〇謎の施設の中枢
ミモザ・クラリティ「各国の王に石を飲ませたのですね・・・」
ノエル・エンジェライト「・・・ぼくの母と同じように」
シグバート・フォン・ブラッドショット「強い魔力を持つ人間を得る ただそれだけのために!」
堕天使アクロマート「おかげで、きみたち王族は 多大な恩恵を受けたでしょう」
堕天使アクロマート「強大な魔力を得た王家は その力を以て国を統治した」
堕天使アクロマート「ブラッドショット、カーネリア、プレーン スペサルト、ディアマンテ、グランメル」
堕天使アクロマート「六王家の援助を得たわたしは ビフロストの名で学園を設立した」
堕天使アクロマート「強い魔力の持ち主を得て いつか<虹>を架けるために」
ヴィオラ・コーディエ「エレスティアは?」
ヴィオラ・コーディエ「エレスティアの王は・・・ マニカラン魔晶を飲まなかったのか?」
堕天使アクロマート「よいところに気がつきましたね」
〇黒背景
堕天使アクロマート「雷はもともと、神―― イリデッセンスの御業」
堕天使アクロマート「ゆえに、人間には扱いが難しい」
堕天使アクロマート「当時のエレスティア王は 雷の魔力に適性がなく──」
堕天使アクロマート「エレスティア王は魔力を得たものの 雷の力を得ることはできなかった」
堕天使アクロマート「そこで、ある旅人に雷魔晶を飲ませた」
堕天使アクロマート「彼女の名はソニア・コーディエ」
〇謎の施設の中枢
ヴィオラ・コーディエ「コーディエ・・・」
堕天使アクロマート「そう、きみの祖先です」
堕天使アクロマート「プルウィスストーンは雷雨の石」
堕天使アクロマート「力を解放するには 雷の魔力の持つ者が必要だった」
堕天使アクロマート「まさかソニアの子孫が 自ら学園の門を叩き──」
堕天使アクロマート「こうして、わたしの夢を妨害するとは」
堕天使アクロマート「運命とは奇妙なものですね」
シグバート・フォン・ブラッドショット「運命だと!? きさまが仕組んだことだろう!」
堕天使アクロマート「わたしは選択肢を提示しただけ」
堕天使アクロマート「力を得ることを選んだのは彼らです」
堕天使アクロマート「得体の知れない魔道士ではなく 精霊から魔力を得たとしたのは──」
堕天使アクロマート「長い年月で歴史が風化したのか」
堕天使アクロマート「あるいは王家の権威と神聖性を高めるため あえて真実を歪めたのでしょうか」
堕天使アクロマート「底なしの欲望に目がくらみ 己のために他者を蹴落とす」
堕天使アクロマート「その先に待つものが滅亡とも知らずに」
堕天使アクロマート「人間は実に愚かですね」
堕天使アクロマート「ミモザくん」
堕天使アクロマート「きみのお父上は、まさにその筆頭」
〇華やかな広場
オペラ・フォン・ブラッドショット「そんなことがあったのね」
オペラ・フォン・ブラッドショット「シグバートったら なにも教えてくれないんだもの」
オペラ・フォン・ブラッドショット「教えてくださってありがとう」
ミスルト・ブレイジャー「恐れ入ります」
ダナ・ブレイジャー「ミスルト まだ隠していることがあるのではなくて?」
ミスルト・ブレイジャー「ないって」
ダナ・ブレイジャー「知っていることはすべて話しなさい」
ミスルト・ブレイジャー「だから、もうないって!」
ダナ・ブレイジャー「陛下、聞いてください!」
ダナ・ブレイジャー「ブレイジャー家では、隠しごとは御法度」
ダナ・ブレイジャー「この子、学園に入学してから嘘を覚えて」
ダナ・ブレイジャー「昔は素直な子だったのに」
ミスルト・ブレイジャー「嘘と隠しごとは違うだろ」
ダナ・ブレイジャー「なにか言ったかしら」
ミスルト・ブレイジャー「いえ、なにも」
オペラ・フォン・ブラッドショット「お気持ち、よくわかります!」
オペラ・フォン・ブラッドショット「シグバートも昔は優しい子だったのに 今では反抗的になってしまって」
オペラ・フォン・ブラッドショット「今回のことも相談してくれれば すぐ婚約解消してあげましたのに」
ミスルト・ブレイジャー(王族同士の婚姻で、そう簡単にいくのか?)
ダナ・ブレイジャー「きっと、お母上である陛下に 心配をかけたくなかったのですよ」
ダナ・ブレイジャー「思慮深いご子息でうらやましいですわ」
ダナ・ブレイジャー「ミスルトなんて、以前──」
ミスルト・ブレイジャー「あー、お母さん?」
ミスルト・ブレイジャー「そろそろおいとましましょうか」
ダナ・ブレイジャー「おまえは黙ってなさい」
ミスルト・ブレイジャー「はい」
オペラ・フォン・ブラッドショット「あら?」
〇空
オペラ・フォン・ブラッドショット「北西に雨雲が・・・」
〇華やかな広場
ミスルト・ブレイジャー「プレナイトの方向ですね」
ミスルト・ブレイジャー「プレーンの内乱はどうなったでしょうか」
オペラ・フォン・ブラッドショット「今のところ、大きな動きはなさそうだけど」
オペラ・フォン・ブラッドショット「今後の状況によっては 挙兵も考えなければ」
ブラッドショット兵「申し上げます!」
ブラッドショット兵「国王ナギット率いるスペサルト軍が プレナイトへ向けて進軍した模様!」
〇原っぱ
レオナ・フォン・プレーン(雨が強くなってきたわね)
レオナ・フォン・プレーン(わたしたちを消耗させるため 風精術で雨雲を呼んだのかしら)
レオナ・フォン・プレーン「父上・・・」
プレーン兵「殿下、スペサルト軍が接近中です!」
プレーン兵「指揮官は国王ナギットとのこと!」
レオナ・フォン・プレーン「父上と手を組んで わたしたちを排除するつもりね」
レオナ・フォン・プレーン「なぜもっと早く知らせなかったのです!」
プレーン兵「申し訳ありません 雨で視界が・・・」
レオナ・フォン・プレーン「・・・・・・」
レオナ・フォン・プレーン「プレナイト城へ進軍します」
レオナ・フォン・プレーン「追いつかれる前に城の中へ入るのよ!」
ナギット・フォン・スペサルト「追うぞ!」
ナギット・フォン・スペサルト「まずはレオナ軍を撃破!」
ナギット・フォン・スペサルト「その勢いに乗じてプレナイトへ侵攻!」
ナギット・フォン・スペサルト「いよいよだ・・・」
ナギット・フォン・スペサルト「目障りなプレーンを滅ぼし わが悲願が達成されるのだ!」
宰相グレゴリー・シーン「・・・・・・」
〇謎の施設の中枢
ミモザ・クラリティ「まさか・・・!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「きさまがナギットをそそのかしたのか!」
堕天使アクロマート「人聞きが悪いですね」
堕天使アクロマート「もともと持っていた欲望を ほんの少し刺激しただけです」
堕天使アクロマート「無欲であれば、ああはならなかった」
堕天使アクロマート「欲深いとは罪ですね」
堕天使アクロマート「死にたくないとか 大勢を殺してまで生き延びたいとか」
堕天使アクロマート「立場を捨てて愛する者の手を取りたいとか」
堕天使アクロマート「実にくだらないと思いませんか?」
ヴィオラ・コーディエ「・・・おまえだって!」
ヴィオラ・コーディエ「欲望があったから、ここまで来たんだろ」
ヴィオラ・コーディエ「世界から人間をすべて消して イリデッセンスの代わりに神になりたい」
ヴィオラ・コーディエ「それは欲望じゃないのかよ!」
堕天使アクロマート「・・・黙りなさい」
ヴィオラ・コーディエ「あたしが入学したのは 父さんに会いたかったから」
ヴィオラ・コーディエ「けど、それだけじゃない」
ヴィオラ・コーディエ「知らないことを学びたいとか おいしいものを食べたいとか」
ヴィオラ・コーディエ「欲望なんて、誰だって持ってる!」
ノエル・エンジェライト「・・・そうですね」
ノエル・エンジェライト「抑えようとしても抑えきれない、この感情」
ノエル・エンジェライト「苦しくて、どうにもできなくて ・・・それでも捨てられなかった」
ノエル・エンジェライト「でも、だからこそ ・・・ぼくは人間であると」
ミモザ・クラリティ「自分を捨てて他者に奉仕し 求められた役割だけをこなす」
ミモザ・クラリティ「そうすることが正しいと わたし、ずっと信じてました」
ミモザ・クラリティ「でも、それじゃいけないんだって みんなが教えてくれました」
ミモザ・クラリティ「わたし、もう立ち止まりません!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「誰もが夢を見て 叶えるために生きている」
シグバート・フォン・ブラッドショット「光を掴むために手を伸ばす」
シグバート・フォン・ブラッドショット「それが悪いこととは、オレは思わない」
シグバート・フォン・ブラッドショット「だが・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「他者を犠牲にして叶える夢は、悪夢だ」
ヴィオラ・コーディエ「そうだ!」
ヴィオラ・コーディエ「もし、おまえの夢が叶ったら みんなが悪夢を見ることになっちゃう」
ヴィオラ・コーディエ「だから、絶対におまえを止める!」
堕天使アクロマート「黙れッ!」
堕天使アクロマート「わたしの夢が悪夢?」
堕天使アクロマート「1000年ものあいだ、願い続けた この夢が・・・悪夢だと?」
堕天使アクロマート「――いいでしょう」
〇謎の施設の中枢
ヴィオラ・コーディエ「プルウィルストーンが光ってる!?」
堕天使アクロマート「太陽と雨と光の下、虹は生まれる」
堕天使アクロマート「さあ、わが手に集いなさい!」
ヴィオラ・コーディエ「うわっ!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「神器が共鳴しているのか!?」
ミモザ・クラリティ「アポロオーラとプルウィルストーンが ひとつになろうとして・・・!?」
ノエル・エンジェライト「いえ、ひとつに戻ろうとしています!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ヴィオラ! 絶対に手を離すな!」
ヴィオラ・コーディエ「わかってるっての!」
堕天使アクロマート「アイオ!」
アイオ・コーディエ「・・・邪魔はさせない」
ヴィオラ・コーディエ「・・・っ!」
ヴィオラ・コーディエ「あっ!」
〇黒背景
ミモザ・クラリティ「あれが・・・」
ヴィオラ・コーディエ「アイリスアゲート・・・!?」
アクロマートの魂胆と人間の欲にまみれた歴史。けれど、それを受け入れ立ち向かう4人がとても心強いですね!
旅を通じて手に入れた様々な感情が彼らを強くしたのかな、と思うととても感慨深いです……
続きも楽しみです!(読了が遅くなり申し訳ないです🙏)