インソムニア

komarinet

第03話 火災(脚本)

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〇中規模マンション
住人「助けてくれ!」
住人「こら、年寄りに譲らんか!」
住人「僕のゲームがー!」
住人「死んだらゲームもできないのよ!」
消防士「落ち着いて避難して下さい!」
消防士「怪我された方はいらっしゃいませんか?」

〇マンションの共用廊下

〇玄関内
永瀬 纏(ながせ まとい)「ごほっ!」
白宵 覚(しらよい さとる)(火がだんだん強くなってる)

〇アパートの台所
白宵 覚(しらよい さとる)(外に繋がるキッチンの炎はかなり酷い)

〇玄関内
白宵 覚(しらよい さとる)(玄関は封鎖されている)
白宵 覚(しらよい さとる)(どうすればいい?)
永瀬 纏(ながせ まとい)「・・・お兄さん」
白宵 覚(しらよい さとる)「大丈夫だ、必ず助けは来るからな」
永瀬 纏(ながせ まとい)「私はもう、いいから」
永瀬 纏(ながせ まとい)「お兄さんだけなら逃げられるよね」
白宵 覚(しらよい さとる)「馬鹿なことを言うな」
永瀬 纏(ながせ まとい)「だって。纏は”差し押さえ”だから」
永瀬 纏(ながせ まとい)「死んだ方がいいんでしょ?」
白宵 覚(しらよい さとる)「誰がそんなことを!?」
永瀬 纏(ながせ まとい)「纏、聞いちゃったの」

〇黒
???「ですから」
永瀬 纏(ながせ まとい)(話し声?)

〇ダイニング(食事なし)
纏の母「纏を”差し押さえ”る、ですか」
ロンダリング社員「保険屋」「養子縁組みたいなものですよ」
ロンダリング社員「保険屋」「もしそれが嫌なら──」
ロンダリング社員「保険屋」「生命保険なんてどうです?」

〇黒
永瀬 纏(ながせ まとい)(纏を差し押さえ? 駄目なら保険金?)
永瀬 纏(ながせ まとい)(何の話をしているの?)

〇図書館
  纏はね、図書館で調べたの
永瀬 纏(ながせ まとい)(えーと、差し押さえ・・・)
永瀬 纏(ながせ まとい)(借金の代わりに換金可能なものを──)
永瀬 纏(ながせ まとい)「換金可能な”もの”?」

〇黒背景
永瀬 纏(ながせ まとい)「纏は”もの”なの?」
永瀬 纏(ながせ まとい)「お母さん」

〇玄関内
永瀬 纏(ながせ まとい)「纏が居なくなれば、借金がなくなる」
永瀬 纏(ながせ まとい)「お母さん、幸せになるよね」
白宵 覚(しらよい さとる)「──」

〇シックなリビング
白宵 覚(しらよい さとる)「嘘だろ!?」
白宵 覚(しらよい さとる)「父さんや母さんが俺を置いていくわけが」

〇玄関内
白宵 覚(しらよい さとる)「──わけ、ない」
永瀬 纏(ながせ まとい)「えっ?」
白宵 覚(しらよい さとる)「君と、君の母親のことはよく知らない」
白宵 覚(しらよい さとる)「だけどな」
白宵 覚(しらよい さとる)「子供を借金代わりに差し出す親なんて」
白宵 覚(しらよい さとる)「居るわけがない。絶対にだ!」
猫「覚・・・」
白宵 覚(しらよい さとる)「お嬢さん、布団とかタオルはあるか?」
永瀬 纏(ながせ まとい)「うん、寝室にあるよ」
白宵 覚(しらよい さとる)「よし。ならそれを濡らして使おう」

〇アパートの台所
白宵 覚(しらよい さとる)「キッチンからベランダに道を作るんだ!」

〇玄関内
白宵 覚(しらよい さとる)「纏ちゃんと言ったね」
永瀬 纏(ながせ まとい)「うん」
白宵 覚(しらよい さとる)「君は生きなきゃならない」
白宵 覚(しらよい さとる)「生きて聞くんだ、君の母親に」
白宵 覚(しらよい さとる)「本当に君を捨てようとしたのかを」
永瀬 纏(ながせ まとい)「でも、もし『そうだ』って言われたら」
白宵 覚(しらよい さとる)「大丈夫だよ。俺を信じろ」

〇黒背景
白宵 覚(しらよい さとる)(違うな、これは)
白宵 覚(しらよい さとる)(俺が信じたいんだ)
白宵 覚(しらよい さとる)(子供を捨てる親などいないと)
白宵 覚(しらよい さとる)(過去が変わるわけでもないのにな)

〇玄関内
白宵 覚(しらよい さとる)「俺は避難路を作ってくる」
白宵 覚(しらよい さとる)「お前たちはここで待ってろ」
猫「覚・・・」

〇空

〇テラス席
ロンダリング社員「保険屋」「奥さん、これは?」
纏の母「書類です」
纏の母「娘の生命保険は解約させて頂きます」
ロンダリング社員「保険屋」「いいんですか?」
ロンダリング社員「保険屋」「親子セット割なら一人で入るより安い」
ロンダリング社員「保険屋」「わずかな保険料で二人分の保証ですよ」
纏の母「そうね、保険会社は大手企業だし」
纏の母「纏の加入は割引のためのもの」
纏の母「最初はそれでもいいかと思ったわ」
纏の母「でもごめんなさい」
纏の母「私はあなた方を信用できない」
ロンダリング社員「保険屋」「大丈夫ですよ、奥さん」
ロンダリング社員「保険屋」「流石に保険会社が絡んでいますから」
ロンダリング社員「保険屋」「不正なんて出来ませんって」
纏の母「そうじゃありません」
纏の母「娘を差し出せなんて言う人達ですもの」
纏の母「保険を悪用されるかもしれないでしょ」
ロンダリング社員「保険屋」「はあ、そうですか」
纏の母「あの子は命より大切なの」
纏の母「あの子の生命保険なんて欲しくないし」
纏の母「絶対に手放すことなんてない」
纏の母「この先もずっと」
ロンダリング社員「保険屋」「了解しました!」
ロンダリング社員「保険屋」「手続きは2、3日で済みます」
ロンダリング社員「保険屋」「ただ・・・」
ロンダリング社員「保険屋」「少し遅かったかもしれませんけどね」
纏の母「何を・・・」
纏の母「まさかっ!」
纏の母「纏っ!」
ロンダリング社員「保険屋」「解約のキャンセルはいつでもどうぞ!」
ロンダリング社員「保険屋」「って聞いてないか」
ロンダリング社員「保険屋」「すみませーん! お会計お願いします」

〇中規模マンション
消防士「梯子車はまだなんですか!」
消防士「どうやら渋滞に捕まってるらしい」
消防士「幸い窓から助けを呼んでいる人は居ない」
消防士「俺たちは今出来ることをやっていこう」
消防士「了解です!」

〇アパートの台所
白宵 覚(しらよい さとる)「少し収まったか」
白宵 覚(しらよい さとる)「おーい、二人とも」
永瀬 纏(ながせ まとい)「お兄さん、ありがとう」
猫「これなら歩けそうだね」
白宵 覚(しらよい さとる)「ベランダへ出よう」
白宵 覚(しらよい さとる)「避難はしごがあるはずだ」

〇アパートの台所
白宵 覚(しらよい さとる)「また火炎瓶が!」
白宵 覚(しらよい さとる)「キッチンの水道を使えば──」
猫「駄目だよ、覚!」
猫「この匂い。ガソリンだ!」
猫「ガソリンは水じゃ消えないよ!」
白宵 覚(しらよい さとる)「だったら、一旦玄関に」
猫「いや、駄目だ!」

〇玄関内
猫「廊下から火が来てる!」
猫「戻れないよ!」

〇団地のベランダ
白宵 覚(しらよい さとる)「火炎瓶の影響でベランダは火の海」

〇アパートの台所
白宵 覚(しらよい さとる)「万事休すか」
永瀬 纏(ながせ まとい)「お兄さん、ありがとう」
永瀬 纏(ながせ まとい)「ごめんね、纏のせいで」
白宵 覚(しらよい さとる)「おい、しっかりしろ!」
永瀬 纏(ながせ まとい)「お母さん・・・今までありがとう」
永瀬 纏(ながせ まとい)「幸せに・・・」
猫「纏ちゃん!」

〇中規模マンション
纏の母「通して下さい! 娘が!」
纏の母「まだ中にいるかもしれないんです!」
消防士「下がってください、危険です!」
纏の母「たった一人の娘なんです!」
消防士「部屋は何階ですか?」
纏の母「最上階の、六号室です!」
消防士「今、梯子車がここへ向かっています」
消防士「それが到着すれば──」
消防隊員「隊長!」
消防士「どうした!」

〇マンションの共用廊下
消防士「最上階の廊下に荷物が積んであって」
消防士「今、それが爆発しました!」
消防士「退避の許可を!」

〇中規模マンション
消防士「くっ・・・」
消防士「ああ、許可する・・・」
纏の母「娘は大丈夫なんですよね?」
消防士「今、全力で救出作業中です」

〇アパートの台所
猫「覚!」
白宵 覚(しらよい さとる)「猫。俺もそろそろ駄目みたいだ」
白宵 覚(しらよい さとる)「一つ・・・言っていいか?」
白宵 覚(しらよい さとる)「実は俺、時々未来が見えるんだ」
白宵 覚(しらよい さとる)「なのにこんな目に逢うなんて」
白宵 覚(しらよい さとる)「笑っちまう・・・よな」
猫「覚!」

〇アパートの台所
白宵 覚(しらよい さとる)「消火器!?」
猫「ベランダの火が弱くなったよ!」
猫「あれを見て!」

〇空

〇ヘリコプターの中
プロデューサー「一番火が出てるベランダは消火できたね」
プロデューサー「どう? 行けそう?」
アイドル「みいぴょ」「行けません~~!」
アイドル「みいぴょ」「どーして火事現場のロケなんですか~~!」
プロデューサー「そこをなんとか頼むよ」
プロデューサー「”アイドルの人命救助”」
プロデューサー「絶対数字とれるぞ!」
アイドル「みいぴょ」「そういう問題じゃないです~~」
プロデューサー「まあまあ、消火は僕らでやるから」
プロデューサー「危ないことないって。ね!」
ヘリパイロット「危ないですよ!」
ヘリパイロット「こちとら撮影飛行しかやってないんすよ」
ヘリパイロット「火事の中に近づくなんて自殺行為だ」
アイドル「みいぴょ」「で、ですよね」
プロデューサー「そういうこと言っちゃう?」
プロデューサー「明日から来なくてもいいんだよ?」
ヘリパイロット「・・・」
ヘリパイロット「ヤラセテイタダキマス」
プロデューサー「よし、決まりだ。じゃあ行こうか」
アイドル「みいぴょ」「みいぴょ、怖いかも~~」
プロデューサー「いいね、雰囲気出てるよ!」
アイドル「みいぴょ」「いや雰囲気じゃなくて──」
カメラマン「カメラ、いつでも行けます!」
プロデューサー「よし、じゃあ消火器持って」
アイドル「みいぴょ」「何これ、重っ・・・」
アイドル「みいぴょ」「キャッ!」
アイドル「みいぴょ」「キャアーーーー!」

〇団地のベランダ
アイドル「みいぴょ」「いやああああ」
アイドル「みいぴょ」「いたた・・・きゃっ!」

〇ヘリコプターの中
プロデューサー「大丈夫?」
アイドル「みい」「全然平気です~~~~」
プロデューサー「そ、そっか。良かった!」
プロデューサー(怪我なんかさせたら、なんて言われるか)
カメラマン「しかし煙で全然見えないですねー」
プロデューサー「まあいいよ、とりあえず回しといて」
プロデューサー「最悪スタジオで撮り直す」
カメラマン「了解しました」

〇アパートの台所
白宵 覚(しらよい さとる)「うわ、なんだ!?」
猫「何にも見えないよー!」
???「全く。『緊急SOS』だから何かと思えば」
アイドル「みいぴょ」「まさか火事に巻き込まれてるなんて」
猫「うわーん、ひよりー」
猫「怖かったよー」
アイドル「みいぴょ」「よしよし、もう大丈夫だぞ」
白宵 覚(しらよい さとる)「誰だ?」
白宵 覚(しらよい さとる)(ヘリから飛び降りて傷一つない?)
アイドル「みいぴょ」「まあ。小さい頃から運動してるから」
白宵 覚(しらよい さとる)「・・・!?」
白宵 覚(しらよい さとる)(俺、いま声に出してたか!?)
アイドル「みいぴょ」「あなたこそ、誰よ」
アイドル「みいぴょ」「──ああ、あなたが『覚』ね」
猫「覚、紹介するよ」
猫「彼女は三井陽和(みつい ひより)」
猫「『インソムニア』のメンバーだよ!」
三井 陽和(みつい ひより)「初めまして、覚」
白宵 覚(しらよい さとる)「それより、君いまどうして──」
三井 陽和(みつい ひより)「しっ。もうすぐ煙が晴れる」
三井 陽和(みつい ひより)「外に撮影スタッフがいるから話は後で」
三井 陽和(みつい ひより)「それに撮れ高もまだ少ないし」
白宵 覚(しらよい さとる)「撮れ高?」
三井 陽和(みつい ひより)「いいから。こっちきて」
三井 陽和(みつい ひより)「アルテミスは自分で避難できるわね?」
猫(アルテミス)「うん、大丈夫だよ!」
三井 陽和(みつい ひより)「よし、じゃあ覚。女の子抱えてくれる?」
三井 陽和(みつい ひより)「ベランダ出るよ!」
白宵 覚(しらよい さとる)「お、おい!」

〇ヘリコプターの中
カメラマン「──!」
プロデューサー「おっ、煙が晴れてきた!」
プロデューサー「見えた!」
プロデューサー「いいぞ! カメラ寄って!」

〇団地のベランダ
三井 陽和(みつい ひより)「助けてください~~!」
三井 陽和(みつい ひより)「部屋の中に倒れてる人がいて」
三井 陽和(みつい ひより)「連れてきちゃったんです~~!」
プロデューサー「音声さん、効果音いれて」
  ええーー!
  みいぴょが足を滑らせて落ちたのは
  なんと火災中のマンションだった!
三井 陽和(みつい ひより)「みいぴょ、びっくり~~!」

〇空

〇中規模マンション
消防士「ふう、やっと収まってきたな」
消防士「隊長、あれは!」
アイドル「みいぴょ」「はい、降りていいよ~~」
永瀬 纏(ながせ まとい)「ありがとう、お姉ちゃん」
消防士「ちょっと! 何やってるんです!」
プロデューサー「梯子車が渋滞で来れなかったらしいね」
プロデューサー「我々が居なければ彼女は死んでいた」
プロデューサー「多少は目を瞑ってもらいたいね」
消防士「ええっと」
消防士「責任者です。この度はご協力感謝します」
消防士「ですが、あの子は一度病院に運ばせても?」
プロデューサー「もちろん、構いませんよ」
プロデューサー「でも一分だけ、いいですか」
プロデューサー「彼女も安心するだろうし」
プロデューサー「映像としても欲しいですからね」
纏の母「纒!」
永瀬 纏(ながせ まとい)「お、お母さん」
纏の母「纒ーーーー!」
纏の母「良かった・・・本当に」
永瀬 纏(ながせ まとい)「お母さん」
永瀬 纏(ながせ まとい)「纒、助かってうれしい?」
永瀬 纏(ながせ まとい)「それとも・・・ひくっ、保険金のほうが」
永瀬 纏(ながせ まとい)「うわーん」
纏の母「ごめんなさい」
纏の母「話、聞いてしまったのね」
纏の母「保険はやめたわ」
纏の母「お金は一生かけて返していくつもり」
永瀬 纏(ながせ まとい)「纒、生きてていいの?」
永瀬 纏(ながせ まとい)「お母さんの子供でいいの?」
纏の母「纒、よく聞きなさい」
纏の母「お母さんはね」
纏の母「あなたが一番大切よ」
纏の母「これからも、この先も」
纏の母「ずっと私の大切な娘よ」
永瀬 纏(ながせ まとい)「うわーん」
永瀬 纒(ながせ まとい)「お母さーん!」
アイドル「みいぴょ」「ふええん、良かったよぉ~~」
プロデューサー「くう~~」
プロデューサー「高視聴率間違いなしだぁ」
アルテミス「纒ちゃん。良かったー」
白宵 覚(しらよい さとる)「・・・」
アルテミス「覚? どうしたの?」
白宵 覚(しらよい さとる)「時々だ」
アルテミス「えっ」
白宵 覚(しらよい さとる)「時々なら、手伝ってもいい」
アルテミス「えっ、それじゃあ!」
白宵 覚(しらよい さとる)「『インソムニア』の活動、手伝ってやるよ」
アルテミス「やったー!」
白宵 覚(しらよい さとる)「さて、じゃあちょっと付き合ってくれ」
アルテミス「えっ? 何するの?」
白宵 覚(しらよい さとる)「だから手伝いだよ」
白宵 覚(しらよい さとる)「人助けの、な」

次のエピソード:第04話 よく見える

コメント

  • 2話、3話続けて読ませていただきました。やっぱり読みやすいし面白さが格段ですね、すごく好き。
    覚の心の葛藤がすんなりと私の中に入ってきて、多分彼は優しくて愛の人なんだろうな、と伝わってくる描写が素敵でした。みいぴょの裏の顔も格好良かったです!インソムニアがどんな組織なのか、わくわくしながら続きも楽しませて頂きますね☺️

  • プロデューサーが視聴率(すうじ)の鬼過ぎて好きです🤣
    人が大怪我しても視聴率の事しか気にしなさそうなレベルの業界人。…昭和かな?🤣
    みいぴょはテレパシー的な能力ですかね。上手いこと芸能界で立ち回ったりしてそうで、アイドルらしく逞しい精神持ってそうですね。表裏の激しい猫かぶりキャラが自分かなりツボなので、応援していきたいです👏👏

  • 絶対窮地からの脱出劇良いですね😆
    覚の過去と纏の現状とがクロスして、覚悟を決めていくところが物語の醍醐味さを感じます。インソムニアとしてここからが始動ですね。どんな展開が待っているか楽しみです。

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