ぼくらの就職活動日記

大杉たま

エピソード45(脚本)

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〇おしゃれなリビングダイニング
真田雅美「大丈夫かしら」
真田博史「大丈夫、息子を信じよう」
真田博史「どんな結果になっても暖かく迎え入れてやろう」
真田雅美「そうよね、エリートピアの最終選考まで残っていれば、もう十分箔が付いてるわよね」

〇たこ焼き屋の店内
  テーブルに置かれたたこ焼きには、『瑚白』『ファイト!』と書かれた旗が刺されている。
  一茶はその旗の隣に『ついでに紅音も』の旗を刺した。

〇田舎の役場
若山柿之介「おお、紅音さだ!」
若山柿之介「いっぺー荷物持ってんなー」

〇個人の仕事部屋
真田紅音「真田紅音です。よろしくお願いします」
大富春樹「私は、大富春樹だ」
大富春樹「作家の村下春樹は私の十個上だから、別に親が彼のファンだったとかそういうことではない」
大富春樹「私は私として春樹と名付けられた」
真田紅音「ああ、なるほど・・・」
大富春樹「どうぞ、座りたまえ」
真田紅音「はい、失礼します」
大富春樹「・・・・・・」
真田紅音「・・・・・・」
大富春樹「プレゼンしないのか」
真田紅音「え、ああ、はい、します。 ちょっとまってください」
  紅音は慌てて買い物袋の中をあさりだす。

〇豪華な社長室
  瑚白と他の受験生たちはモニターで紅音のプレゼンを見ていた。
受験生「なんかトロそうだな」
受験生「なんで残ってるの」
中園瑚白「・・・・・・」

〇個人の仕事部屋
  紅音は買い物袋の中身を床に並べている。
大富春樹「残り3分だが、大丈夫か?」
真田紅音「はい、大丈夫です」
  すべて並べ終えると、紅音は大富の方へ向き直った。
真田紅音「僕は一億円で、自分の欲しいものを買って、やりたいことをやりました」
真田紅音「そうしたら、9974万6840円余りました。 なので、お返しします」
大富春樹「・・・ほう」

〇たこ焼き屋の店内
  一茶はにやにやしながら選考の様子を見ている。
男性「こんちわー、三人いける?」
藤原一茶「もう店じまいっすわ」
男性「えー・・・」

〇豪華な社長室
受験生「は、え、こいつなんて言った?」
受験生「何考えてるの?」
中園瑚白「・・・・・・」
  瑚白はじっとモニターを見つめている。

〇個人の仕事部屋
大富春樹「プレゼンは以上か?」
真田紅音「・・・他の受験生たちは、どんなお金の使い方をしたんでしょうね」
大富春樹「それは言えんよ」
真田紅音「ええ」
真田紅音「投資、寄付・・・他にはなんだろう、全然想像がつかないんです」
真田紅音「僕は本当に、平凡だから」
大富春樹「ふむ」
真田紅音「一億円なんて渡されたら、それだけでビビってしまって」
真田紅音「ましてそれを有効に使うなんて、とてもできないと思いました」
大富春樹「有効にではなく、自由に使えだよ」
真田紅音「はい、だから自由に使いました」
真田紅音「コツコツ書き溜めてた、欲しいものリストとやりたいことリストにあることを、一億使ってパーッとやってやろうと思いました」
大富春樹「・・・・・・」
真田紅音「アディドスのスニーカー、ミンテンドーのゲーム機、ポーラースミスのポロシャツ」
真田紅音「バーベリーのアウターは五万円以上したので買えませんでした」
真田紅音「僕、五万円以上するものは欲しいと思ってから、一週間寝かせるんです」
真田紅音「本当に欲しいかどうか冷静に判断するために」
大富春樹「やりたいことは?」
真田紅音「田舎の友達に会いに行きました」
真田紅音「ファーストクラスとかで行こうかとも思いましたが、もったいなくてできませんでした」
真田紅音「エコノミーで行きました」
真田紅音「温泉につかって、そいつのおばあちゃんの梅干しを食べました」

〇田舎の役場
若山柿之介「あ、おらのことだべ」
村人「おおお、柿之介のこと話してるべ」
村人「なんだ、柿之介。 芸能人にでもなっだみてーだな」

〇個人の仕事部屋
真田紅音「部屋の掃除する、もやりたいことリストにあったのですが、部屋が狭すぎて30分で終わってしまいました」

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