エピソード9・嘘の中(脚本)
〇組織のアジト
芦田ルミカ「残されてる余りカードが炎なら・・・それ以外のカードは誰かが持っているということよね」
赤井鳳輔「えっと、えっとつまり?」
須藤蒼「死神、太陽、月、処刑台。それを四人で持ってることになるよね」
須藤蒼「でも、本当に余りカードが炎だって決めつけて話進めていいのかな?」
須藤蒼「運営が、僕達が引くカードを本当に把握してるかどうかもわからないし・・・」
芦田ルミカ「把握してる可能性は高いんじゃなくて?・・・いえ、把握してないとゲームが成立しないわね」
赤井鳳輔「え、何でそう思うんだよ?」
芦田ルミカ「だから!貴方はもう少し頭を働かせなさいと言ってるでしょ!」
芦田ルミカ「最終的に、わたし達は仲間のカード全てを当てないといけないのよ?」
芦田ルミカ「答えを書いても、運営が把握してないんじゃ正解か不正解かわからないじゃないの」
赤井鳳輔「おー、言われてみりゃその通りだ!なら、運営が面白いようにカード操作してるっつーのも一理あるな!」
須藤蒼「だから、能力が無い“炎”を余らせた方が面白いって?で、でも・・・」
赤井鳳輔「いいじゃんいいじゃん!とりあえず適当な決め打ちからスタートさせればいいんだよ。間違ってたら後で修正すりゃいいの!」
芦田ルミカ「そういうこと言うならもう少し実のある発言をしなさいよ! まったく、貴方って人は・・・!」
須藤蒼「・・・」
峯岸輪廻「ストップ、そこまで」
峯岸輪廻「・・・なるほど。大体読めてきました。これがどういうゲームなのか」
芦田ルミカ「え、どういうこと?」
赤井鳳輔「まだ、雑談程度の話しかしてないのに、何かわかったってのか?」
峯岸輪廻「ええ。これの本質は、汝は人狼なりやと同じですから」
峯岸輪廻「ただし、これは“村人の中から人狼を当てて処刑する”ゲームとは本質的に異なる面があります」
峯岸輪廻「それは、“ルールの上では全員が味方”のはずなのに、実は“参加者の中に人狼が混じっている”ということ」
芦田ルミカ「ええ!?」
赤井鳳輔「おいおいおいおいおい、そりゃどういうことだよ!?」
峯岸輪廻「冷静になって考えればすぐわかります。紙に記載されている通りならば、このゲーム全員が味方のはずなんです」
峯岸輪廻「そして、自分のカードの名前が直接言えなくても、間接的にその種類を伝える方法はいくらでもある」
峯岸輪廻「特に月のカードと太陽のカードは互いの持ち主がわかる・・・いわば共有者のようなものです。片方の嘘はもう片方が証明できる」
峯岸輪廻「何が言いたいかわかりますか?・・・ただ全員のカードを明らかにするだけならば、あまりにも簡単すぎる」
峯岸輪廻「そして、今みたいなグダグダした会話を繰り広げる必要さえないと言えます」
赤井鳳輔「ぐだぐだて、随分な言い方だなオイ」
峯岸輪廻「事実を言ったまで。・・・ようは、この中に勝利条件が異なる人間が紛れている可能性が高いということです」
峯岸輪廻「人狼ゲームにおける、狂人のような動き方。議論をミスリードさせる人間、あるいはミスリードに乗っかる人間」
峯岸輪廻「今の会話だけで、それは明らかでした」
峯岸輪廻「芦田さんがミスリードを言い出し、赤井さんが乗っかった形です。俺の視点からはそれが明らかなんです」
須藤蒼「! それって、もしかして・・・」
峯岸輪廻「俺は余りのカードを判別できる立場にいる。そう考えてもらって構わない」
芦田ルミカ「ま、待って!それを言っちゃったら・・・!」
峯岸輪廻「・・・・・・」
須藤蒼「・・・よ、良かった。何も起きないみたいだ」
芦田ルミカ「あ、あら?反則に、ならない?」
峯岸輪廻「それもあんたのミスリードだな。そもそも、ルールにはこう書いてある」
『ただし、お互いが持っているカードの種類を言うことはできない。自分が持っているカードを直接明かした人間は反則となる』
峯岸輪廻「直接、なんてわざわざ書いてある。間接的に伝えるだけで反則になるはずがない。予想は当たっていたな」
峯岸輪廻「というわけで、全員自分のカードの能力をぼんやり伝えても問題はなさそうですが?何か言うことはありませんか?」
峯岸輪廻「全員が本当に“味方”ならば、この提案に逆らう意味はないはずです」
芦田ルミカ「そ、そうね・・・。ええっと・・・」
須藤蒼「あ、あの!僕、僕・・・! ごめんなさい、その、引いたカードなんですけど・・・」
須藤蒼「と、特に皆さんの役に立てそうになくて、そういうことができそうじゃなくて、というか、その・・・」
峯岸輪廻「ほう?」
芦田ルミカ「それって、もしかして・・・」
赤井鳳輔「おいおい、ちょっと待ってくれよ!」
須藤蒼「え?」
赤井鳳輔「そ、その・・・う、嘘はいけないんじゃねーかな、坊主!お前、運営の手先だったのか!?」
赤井鳳輔「その、なんというかえっと・・・」
赤井鳳輔「と、とにかく俺は!坊主が嘘を言っているということだけはわかる!同じカードは二枚ないんだからな!」
須藤蒼「えええ!?」
芦田ルミカ「は、はあ!?」
峯岸輪廻(・・・予想できた展開だな)
峯岸輪廻「つまり今。間接的に、二人の人間が“炎”のカードを持っていることをCOしたわけだ」
『四枚目は“炎”。
このカードのみ、特筆した能力が何もない』
峯岸輪廻(役に立たない能力のカードである。そう告げることで周囲に自分が“炎”持ちであると伝える。やり方は悪くない)
峯岸輪廻(このゲームは“汝は人狼なりや”とは違う。全員が味方のはず。対抗COなんて出るはずがなかった・・・本来ならば)
峯岸輪廻(それが出たということは、裏切者が方針を変えたということ。 つまり、情報の攪乱)
峯岸輪廻(蒼と赤井。どちらかは確実に嘘をついていて、裏切者であることが確定したわけだ)
峯岸輪廻(俺は自分のカードの能力で、あまりカードが“処刑台”であること、“炎”が俺以外の三人の手の内にあることは知っている)
峯岸輪廻(つまり、二人のどちらかは本当のことを言っている可能性が高い・・・いや、これはもう決めつけていいか)
峯岸輪廻「・・・芦田さん」
芦田ルミカ「は、はい」
峯岸輪廻「貴方は、“役に立つカード”を持っていますか?この二人が二人とも嘘吐きの可能性はありますか?」
芦田ルミカ「・・・」
芦田ルミカ「・・・いいえ。二人のうちどちらかは本当のことを言っていると思うわ」
峯岸輪廻(非“炎”持ちCOと見ていいな。ならば・・・)
峯岸輪廻「どちらが嘘をついているか、貴女にはわかりますか?」
峯岸輪廻「正直に、お答えください」
芦田ルミカ「そ、それは、その・・・えっと・・・」
芦田ルミカ「・・・」
芦田ルミカ「ご、ごめんなさい。混乱してて。 でも、わたしにはわからないわ・・・」
峯岸輪廻「・・・そうですか」
峯岸輪廻「・・・」
峯岸輪廻「確定だな、これで」
須藤蒼「え、何が?」
峯岸輪廻「こっちの話だ。大体予想はついたってことさ」
峯岸輪廻(あとは・・・最後の賭けに勝てるかどうか、だな)
ゲームの推理と、登場人物たちの思惑、これらが絡み合ってすっごく面白いです!
誰がどのような思惑で動いたのか、そしてその理由は、続きが楽しみで仕方ないです!