〇〇してはいけませんっ!

澤井 軽野(公式)

第三話 立ち止まってはいけませんっ!(脚本)

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〇駅のホーム
林示 伴(はやし ばん)「万理先輩ーー!」
  駅の人混みの向こうに、男に絡まれている万理先輩がチラリと見える
  今すぐ駆けつけたいが、人に触れずにたどり着くのは無理だ
林示 伴(はやし ばん)「誰も避けてくれない!」
林示 伴(はやし ばん)「でも、NG行動を破るわけには・・・」
  ふと、通路の片隅に目が吸い寄せられる
  そこには掃除に使った水だろうか、悪臭がする濁水を溜めたバケツが置かれていた
林示 伴(はやし ばん)(これしかない!)
  俺は走っていってバケツを掴むと──
  頭から思いきり濁水をかぶった
林示 伴(はやし ばん)「すみません、通してください!」
「キャーッ、汚い! 近寄らないで!」
「うわっ、臭っ! こっち来んな!」
林示 伴(はやし ばん)「人が散って道ができた!」
林示 伴(はやし ばん)「万理先輩ー!」
チンピラ「いいだろぉ? ちょっとそこまで付き合えよ~」
科生 万理(しないき まり)「ちょっと、痛っ・・・! 離しなさい!」
「うおぉぉおー! そこの男、離れろ!」
チンピラ「ん?」
チンピラ「・・・うおっ、泥人間!?」
チンピラ「く、来るなっ! 助けてくれーっ!」
林示 伴(はやし ばん)「ハァハァ、逃げたか・・・」
林示 伴(はやし ばん)「先輩、大丈夫ですか!?」
科生 万理(しないき まり)「林示くん・・・」
林示 伴(はやし ばん)「うっ・・・我ながらひどい臭い・・・」
林示 伴(はやし ばん)「すみません、こんな汚い格好で現れて」
  万理先輩は黙って首を横に振ると、駅の時計を指さした
林示 伴(はやし ばん)「・・・?」
林示 伴(はやし ばん)「あっ、タイムアップの時間!」
  ふと、俺の頭に柔らかいものが触れた
  驚いて見ると、先輩が自分のハンカチで汚れた俺の頭を拭いてくれていた
科生 万理(しないき まり)「もう、無茶ばっかりするんだから・・・」
科生 万理(しないき まり)「でも、あ、ありがと・・・」
林示 伴(はやし ばん)「ん? 先輩、なんか顔が赤くないですか?」
科生 万理(しないき まり)「う、うるさい!」
科生 万理(しないき まり)「触ってよくなったし、つねってあげようか!?」
林示 伴(はやし ばん)「うわっ! な、何怒ってるんですか!?」
林示 伴(はやし ばん)「痛てて、ごめんなさい~!」

〇中央図書館
林示 伴(はやし ばん)「ハァ・・・晴れて先輩と毎日勉強できるようになったけど」
林示 伴(はやし ばん)「今日も全然話せなかった・・・」
科生 万理(しないき まり)「当たり前でしょ?」
科生 万理(しないき まり)「勉強しに来てるんだし、図書館では私語厳禁なんだから」
林示 伴(はやし ばん)「ハハ・・・で、ですよね」
林示 伴(はやし ばん)(くそぅ、お願いの選択ミスった・・・)
林示 伴(はやし ばん)(それにテスト期間終わったら、この勉強会すら無くなっちまう・・・)
林示 伴(はやし ばん)(何とかしないと!)
林示 伴(はやし ばん)「せ、先輩! 先輩の模試が終わったら、どこか遊びに行きませんか?」
科生 万理(しないき まり)「いいわよ」
林示 伴(はやし ばん)「マジですか!」
科生 万理(しないき まり)「ただし、またNG行動を守れたらね」
林示 伴(はやし ばん)「うえぇ、やっぱりか・・・」
科生 万理(しないき まり)「なによ、不満なの!?」
林示 伴(はやし ばん)「い、いえ! 嬉しいなぁ、ぜひやらせてください!」
科生 万理(しないき まり)「では、あなたにNG行動を課します」
科生 万理(しないき まり)「24時間の間、立ち止まってはいけません!」
林示 伴(はやし ばん)「立ち止まってはいけない・・・!?」
科生 万理(しないき まり)「今回もいつものデバイスを判定に使うから」
科生 万理(しないき まり)「1秒以内に10センチ以上移動しないとアウトね」
林示 伴(はやし ばん)「相変わらずハイテクっすね、その腕時計・・・」
科生 万理(しないき まり)「ではスタート! また明日、この時間に会いましょ」

〇線路沿いの道
「フフッ、あの子さっきからずっと同じ所グルグル回ってない?」
「クスクス・・・トイレでも我慢してるんでしょ」
林示 伴(はやし ばん)(うぅ・・・踏切や信号待ちのたびに通行人の視線が痛い!)
林示 伴(はやし ばん)(しかも予想以上に疲れるぞ・・・早くも足がだるくなってきた)
林示 伴(はやし ばん)(・・・そうだ、あれを買っておこう!)

〇おしゃれなリビングダイニング
林示 伴(はやし ばん)「買い物、スタスタ歩きながら商品をつかんだりレジ待ちしたりするの」
林示 伴(はやし ばん)「不審者以外の何者でもなかったな・・・」
伴の母「あ、お帰り! 晩ご飯何がいい?」
林示 伴(はやし ばん)「うっ、それがあったか・・・」
林示 伴(はやし ばん)「今日は晩飯いいや」
伴の母「えっ!? 伴が食べないなんて・・・」
伴の母「熱でもある? 食欲ないの?」
林示 伴(はやし ばん)「い、いや、歩き通しでむしろいつもより腹へってるけど・・・」
林示 伴(はやし ばん)(食べておかないと逆に体力的にキツいか)
林示 伴(はやし ばん)(でも動き回りながら食べても不自然じゃないものなんて・・・)
林示 伴(はやし ばん)(あっ)
林示 伴(はやし ばん)「じゃあ、流しそうめんを頼む!」
伴の母「え!? 今から準備できるかしら・・・」
伴の母「って、さっきから何グルグル回ってるの?」
林示 伴(はやし ばん)(食べ物自体が移動している流しそうめんなら)
林示 伴(はやし ばん)(食べる側も移動していてもさほど不自然ではない!)
林示 伴(はやし ばん)(冴えてるぞ俺!)

〇一戸建ての庭先
伴の父「流しそうめんとは風流だねぇ」
伴の父「でもまだ一本も流れて来ないけど・・・」
伴の母「え? さっきから流してるわよ?」
伴の妹「・・・どうやらその原因は、あの人にあるようだね!」
林示 伴(はやし ばん)「ん?(モグモグ)」
伴の妹「そうめんが流れてくる前に自分から取りに行くとは浅ましい、浅ましいよお兄!」
伴の父「ハッハッハ、行儀悪いぞ伴~?」
伴の妹「と言いつつお父さんも、そうめんが流れた瞬間ロケットダッシュ決めない!」
伴の父「と言いつつ私を追い抜くなっ!」
林示 伴(はやし ばん)「や、やめろ! 俺は可能な限り食べて体力をつけなくてはならないんだ!」
伴の母「あらあら、楽しそうねぇ~」
伴の妹「と言いつつ自分で流したそうめんをダッシュで追いかけない!」
  立ち止まらずに済んだものの
  林示家史上最悪に混乱を極める夕食となった・・・

〇男の子の一人部屋
林示 伴(はやし ばん)「体力をつけるつもりが、無駄に疲れた・・・」
林示 伴(はやし ばん)「さて、疲れたところでこいつの出番だな」
林示 伴(はやし ばん)「帰りに買ってきた足つぼマッサージ用プレート!」
林示 伴(はやし ばん)「今回最大の難関は、朝まで寝ずに歩き続ける事とみた」
林示 伴(はやし ばん)「そこでこいつを敷きつめて踏み続ければ、眠気と疲労が同時に解消!」
林示 伴(はやし ばん)「早速試してみるか」
林示 伴(はやし ばん)「うおっ、痛え!」
林示 伴(はやし ばん)「けど気持ちいい!」
林示 伴(はやし ばん)「これなら朝まで寝ずに移動を続けられそうだ」
林示 伴(はやし ばん)「冴えてるぞ俺!」

〇教室
林示 伴(はやし ばん)「──と思ったが、踏みすぎて足の裏が痛え!」
林示 伴(はやし ばん)「1秒に10センチ、規定ギリギリの移動が精一杯になってしまった・・・」
教師「おい林示、授業始まってるぞ! 席につけ」
林示 伴(はやし ばん)(きた、至極当然のツッコミ!)
林示 伴(はやし ばん)(朝まで考えて唯一思い付いた言い訳で迎え撃つしかない・・・!)

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コメント

  • 泥水をかぶる!いいですねー、知能を使った戦いの様で毎回ハッとさせられます😳
    今回は動き続けることかー、また無理難題を😅
    学校とトイレさえなければなんとかなりそうですが、さてさてどうなるのか楽しみー😊

  • カバディに座禅とは…この学校は時代の先を行き過ぎている🤣
    やっぱり林示一家がみんなクセが強くて🤣

  • 泥水を被るかー全く予想できませんでした。恋の力はすごいですね。しかし分かる。好きな子にはやれちゃうんですよねー。そして一睡もしてない状態であのピンチ。果たして伴は五体満足で済むのか。
    ていうかそろそろ膝枕くらいしてあげて!伴が不憫!次回くらいプチご褒美もらえるといいな。楽しみです。

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