〇〇してはいけませんっ!

澤井 軽野(公式)

第四話 「すき」と言ってはいけませんっ!【前編】(脚本)

〇〇してはいけませんっ!

澤井 軽野(公式)

今すぐ読む

〇〇してはいけませんっ!
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇学校脇の道
  先輩、危ない! 車がーっ!
  先輩の死角から猛スピードで車が迫る

〇学校の校舎
林示 伴(はやし ばん)「うおぉぉおっ! 動け、俺の足!」
林示 伴(はやし ばん)「これで折れようと千切れようとかまうかぁ!」
  もう痛み以外の感覚が無い足で、強引に地面を蹴りつける
  俺は全てを捨てる覚悟で、残りの力を振り絞って走り出した
林示 伴(はやし ばん)「う、動いた・・・!」

〇学校脇の道
林示 伴(はやし ばん)「間に合え、先輩ー!」
科生 万理(しないき まり)「・・・!?」
科生 万理(しないき まり)「は、林示くん!?」
林示 伴(はやし ばん)「うおぉぉーっ! 危ないーっ!」
  ドンッ!
科生 万理(しないき まり)「キャッ!?」
  俺は全力で先輩にタックルし、そのまま抱え上げて走った
  車は俺達のすぐ横をかすめ、猛スピードで走り去っていった
科生 万理(しないき まり)「ちょ、ちょっと! 降ろして!」
  突然お姫様抱っこされ、先輩は顔を真っ赤にして俺の腕の中でジタバタしている
林示 伴(はやし ばん)「と、止まりませんっ! 止まったらNG課題がっ!」
科生 万理(しないき まり)「もういいの! 時間よ! 合格よーっ!」
林示 伴(はやし ばん)「ご、合格? ホントに・・・?」
科生 万理(しないき まり)「さっきまでフラフラだったのに、なんで私を抱えて走れるのよ!」
科生 万理(しないき まり)「足が壊れたらどうするのっ!?」
林示 伴(はやし ばん)「へへ・・・だ、だって先輩の安全と自分の足だったら」
林示 伴(はやし ばん)「どっちを取るかなんて迷う余地ないですから・・・」
科生 万理(しないき まり)「もうっ! ホントに、いつも無茶ばっかりしてっ!」
科生 万理(しないき まり)「・・・でも、また助けてもらっちゃったわね」
科生 万理(しないき まり)「そ、その・・・」
林示 伴(はやし ばん)「・・・?」
科生 万理(しないき まり)「い、今のはちょっとカッコよかったわよ・・・」
科生 万理(しないき まり)「ありがとっ」
林示 伴(はやし ばん)「ホ、ホントですか!」
林示 伴(はやし ばん)「先輩にそんな風に言ってもらえる日が来るなんて!」
林示 伴(はやし ばん)「俺の人生はここで完結で・・・す・・・」
科生 万理(しないき まり)「ちょ、ちょっと!」
科生 万理(しないき まり)「気を確かに持ってよ! 私と遊びに行くんでしょーっ!」

〇電車の座席
  先輩の模試も終わり、俺と先輩はついにデートする事になった
  行き先は数駅先のショッピングモールだ
林示 伴(はやし ばん)「ヤ、ヤバい、先輩の私服かわいすぎる・・・!」
林示 伴(はやし ばん)「顔がニヤけて浮かれてるのがバレないようにしないと・・・!」
科生 万理(しないき まり)「顔もニヤけてるし、心の声も全部もれてるけど」
林示 伴(はやし ばん)「え!? い、いや、今のナシで!」
林示 伴(はやし ばん)「今日は雰囲気をガラッと変えてクールに攻める予定なのでっ!」
科生 万理(しないき まり)「もうこの時点でクールさの欠片もないわね」
林示 伴(はやし ばん)「な、なんてこった・・・わずか5分で計画が破綻してしまった・・・!」
科生 万理(しないき まり)「フフッ、キミはクールじゃなくてもいいと思うけどな」
林示 伴(はやし ばん)「えっ?」
科生 万理(しないき まり)「その・・・い、色々考えたんだけどね?」
科生 万理(しないき まり)「キミと付き合うって話、考えてあげてもいいかな・・・なんて」
林示 伴(はやし ばん)「えぇぇええっ!? マ、マジですかっ!?」
科生 万理(しないき まり)「た・だ・し!」
科生 万理(しないき まり)「今日一日NG行動を守れたら、だけどね」
林示 伴(はやし ばん)「ですよねっ! チキショウ!」
科生 万理(しないき まり)「では、あなたにNG行動を課します」
科生 万理(しないき まり)「今日一日、『すき』と言ってはいけません!」
林示 伴(はやし ばん)「なっ・・・!?」
科生 万理(しないき まり)「『す』の後に続けて『き』と発音したらアウト」
科生 万理(しないき まり)「間に別の音を挟めばOK」
科生 万理(しないき まり)「『す』の直後に『き』は、どれだけ時間を置いてもダメよ」
林示 伴(はやし ばん)「うっ、俺の苦手な頭使う系じゃないか・・・」
林示 伴(はやし ばん)(でもこれをクリアすれば、晴れて先輩と付き合えるんだ!)
林示 伴(はやし ばん)(何が何でも絶対にやりとげてみせるぞ!)
科生 万理(しないき まり)「ではスタート!」
科生 万理(しないき まり)「ま、そんなに固くならないで、気楽にいきましょ」
科生 万理(しないき まり)「せっかく遊びに来たんだし」
林示 伴(はやし ばん)「は、はい、そうですね」
科生 万理(しないき まり)「ところで、林示君はあのショッピングモール行った事あるの?」
林示 伴(はやし ばん)「は、はい。今日で2回目です」
科生 万理(しないき まり)「私初めてなんだけど」
科生 万理(しないき まり)「駅のどっち口から出ればいいんだっけ」
林示 伴(はやし ばん)(北口・・・)
林示 伴(はやし ばん)(あっ!)
林示 伴(はやし ばん)「ノ、ノース口です!」
林示 伴(はやし ばん)(あ、危ねえっ!)
林示 伴(はやし ばん)(「2回目で『す』」と「『き』たぐち」が連続するところだった!)
科生 万理(しないき まり)「ノース口?」
科生 万理(しないき まり)「聞いたことないんだけど、どれの事よ」
科生 万理(しないき まり)「改札の前には何がある?」
林示 伴(はやし ばん)(切符売り場・・・)
林示 伴(はやし ばん)(あっ!)
林示 伴(はやし ばん)「チ、チケット売り場です!」
林示 伴(はやし ばん)(危ねっ!)
林示 伴(はやし ばん)(また「ノース口で『す』」と「『き』っぷ売り場」が連続しそうに・・・!)
科生 万理(しないき まり)「チケット売り場って。フフッ、しゃれた言い方するじゃない」
林示 伴(はやし ばん)(クッ、先輩めっちゃニヤニヤしてる・・・)
林示 伴(はやし ばん)(やっぱりさっきのは誘導尋問だな!?)
林示 伴(はやし ばん)(これは思った以上に危険だぞ・・・!)
科生 万理(しないき まり)「さ、着いたわよ。降りましょ?」
科生 万理(しないき まり)「ノース口から、ね」

〇奇妙な屋台
科生 万理(しないき まり)「あ、スイーツ屋台!」
科生 万理(しないき まり)「メニュー見える?」
林示 伴(はやし ばん)「クレープ、ソフトクリーム、アイスk・・・」
林示 伴(はやし ばん)(って、危ねぇ!)
林示 伴(はやし ばん)(アイ『スキ』ャンディーじゃねえか!)
林示 伴(はやし ばん)「え、え~、棒状のアイス・・・」
科生 万理(しないき まり)「フフッ、何それ」

〇モールの休憩所
科生 万理(しないき まり)「あ、電子マネーで買える自販機だ」
科生 万理(しないき まり)「でも私、いつもうまくできないのよね」
科生 万理(しないき まり)「あのICカードかざして読み込む・・・」
林示 伴(はやし ばん)(『スキ』ャン・・・じゃねえ!)
林示 伴(はやし ばん)「え、え~、タッチ・・・ですかね?」
科生 万理(しないき まり)「そうとも言うわね」
科生 万理(しないき まり)「あっ、小銭落としちゃった・・・」
科生 万理(しないき まり)「この自販機と自販機の・・・え~とほら、ごく狭い・・・」
林示 伴(はやし ばん)(『すき』ま・・・って)
林示 伴(はやし ばん)(まさかそれを言わせたいためにワザと落としたんじゃないだろうな!?)
林示 伴(はやし ばん)(ガチだなこの人・・・)
林示 伴(はやし ばん)「は、はざまですね」
林示 伴(はやし ばん)「俺拾いますよ」
林示 伴(はやし ばん)「う~ん、狭い・・・よし、もうちょっと・・・」
科生 万理(しないき まり)「あっ、シベリア原産の狼みたいな犬が、足を交互に軽く跳ねるようにして・・・」
林示 伴(はやし ばん)(ハ『スキ』ー犬が『スキ』ップしてるって?)
林示 伴(はやし ばん)(仕掛け方が強引になってきたな・・・)
林示 伴(はやし ばん)(それより小銭があとちょっとで・・・)
ハスキー犬「ハッハッハッハッ・・・」
林示 伴(はやし ばん)「どわ~っ!?」
飼い主「ペロちゃん、汚い物嗅がないの」
科生 万理(しないき まり)「あはははっ! キミ、運が悪いねぇ」
科生 万理(しないき まり)「こんな時にハスキー犬が寄ってくるなんて」
科生 万理(しないき まり)「でも、小銭拾ってくれてありがと。キミは優しいね」

〇ショッピングモールの一階
科生 万理(しないき まり)「どうしたの? やけに静かじゃない」
林示 伴(はやし ばん)「そ、そんな事は・・・ハハ・・・」
林示 伴(はやし ばん)(先輩が会話にワナを仕込みまくるから、うかつに口をきけないんですよっ)
科生 万理(しないき まり)「私とお喋りするの楽しくない・・・?」
林示 伴(はやし ばん)「と、とんでもない! めちゃ楽しいです!」
林示 伴(はやし ばん)(そ、そんな潤んだ眼で言われたら、口ごもるわけにいかないじゃないか・・・)
科生 万理(しないき まり)「仕方ないよね・・・今日の私、髪もセットに失敗してバサバサで汚いし・・・」
林示 伴(はやし ばん)(汚くなんかないです・・・はダメだ!)
林示 伴(はやし ばん)(綺麗です・・・もダメ!)

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:第五話 「すき」と言ってはいけませんっ!【後編】

コメント

  • もう最終回ですか!先輩もかわいいし!こういうのすk・・・おっと、えと、えっと、(ど、どうしよう)すっごくいい感じですね!ハハハ(汗)

  • ですよね! チキショウ!
    に吹きました。
    今回は澤井さんの十八番。言葉遊びですね。漢字が入ると連続音なんて途端にわからなくなりますからいつもながら流石です。
    シベリア犬のダンスはコザックかと思ってしまいましたがその手前でしたね😅

    お父さん?もはや半ばプレイだと思ってる僕は元カレをお父さんと呼んで誤魔化す先輩の作戦だと誤認してしまいます。
    せめて母が離婚して別れたお父さんであってくれ!

  • もう絶対澤井さんの好k…… おっと、好みのやつですね😂😂 思わずず〜とセリフ追っちゃいました。笑

    次回最終回ですか。もっと見たい……ッ

コメントをもっと見る(4件)

成分キーワード

ページTOPへ