〇〇してはいけませんっ!

澤井 軽野(公式)

第一話 声を出してはいけませんっ!(脚本)

〇〇してはいけませんっ!

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〇体育館の裏
林示 伴(はやし ばん)「2年A組、林示 伴(はやし ばん)です!」
林示 伴(はやし ばん)「科生 万理(しないき まり)先輩・・・」
林示 伴(はやし ばん)「好きです! 俺と付き合ってくださいっ!」
  夕日の差す校舎裏、俺の愛の叫びがこだまする
科生 万理(しないき まり)「ふうん、私のどこが好きなの?」
林示 伴(はやし ばん)「倒れる生徒が続出しても長話をやめない校長を」
林示 伴(はやし ばん)「一喝して黙らせた、侠気に惚れました!」
科生 万理(しないき まり)「女子高生に侠気って」
科生 万理(しないき まり)「だいたい、初めて話した相手と」
科生 万理(しないき まり)「いきなり付き合えるわけないでしょ」
林示 伴(はやし ばん)「で、ですよね・・・」
科生 万理(しないき まり)「でも、連絡先の交換ぐらいならしてあげてもいいわよ」
林示 伴(はやし ばん)「本当ですか!?」
科生 万理(しないき まり)「ただし、今から私が課す」
科生 万理(しないき まり)「NG行動を守れたら、ね」
林示 伴(はやし ばん)(きた! 噂は本当だった・・・!)

〇市松模様
  容姿端麗、才色兼備
  学校中の男子の憧れの存在である科生万理先輩には
  ある奇妙な噂があった
  そう、彼女は言い寄る無数の男達に『NG行動』を課して
  守れなかった者を次々に撃退しているという噂が──

〇体育館の裏
科生 万理(しないき まり)「私がしてってお願いした事をしてくれる男の人は、今までたくさんいたわ」
科生 万理(しないき まり)「でも、しないでって言った事を守ってくれる男の人は、今まで一人もいなかった」
科生 万理(しないき まり)「だから私はそういう男の人を探してるの」
科生 万理(しないき まり)「あなたにNG行動を課します」
科生 万理(しないき まり)「私がスタートと言ってから24時間、声を出してはいけません!」
林示 伴(はやし ばん)「!」
林示 伴(はやし ばん)(声を出すな・・・!? 何だそれ!?)
科生 万理(しないき まり)「私の言う事わかったの? 返事は!?」
林示 伴(はやし ばん)(・・・あれ、『スタートと言ってから』?)
林示 伴(はやし ばん)(それってもうスタートって言った事になる?)
林示 伴(はやし ばん)(返事をしたらヤバい気がする!)
  黙って首をブンブンと縦に振る俺を見て、万理先輩はニヤリと笑う
科生 万理(しないき まり)「ふうん、早めにスタートの判断をするなんていい心がけじゃない」
科生 万理(しないき まり)「期待できそうね」
科生 万理(しないき まり)「この後はこれでジャッジするから、腕につけて」
科生 万理(しないき まり)「今後はそのデバイスを通じて監視されてると思って」
科生 万理(しないき まり)「全部聴いてるからね」
科生 万理(しないき まり)「一言でも発したら即アウトよ」
科生 万理(しないき まり)「わかった?」
  返事ができないので、敬礼で応える俺
科生 万理(しないき まり)「ふふっ、なによそれ」
科生 万理(しないき まり)「じゃあ明日の16時45分、またここで」
科生 万理(しないき まり)「せいぜい頑張ってね」
林示 伴(はやし ばん)(これは根回ししとかないとヤバそうだな・・・)
林示 伴(はやし ばん)(とりあえず家族と友達にはメールで先に説明を──)
科生 万理(しないき まり)「あ、挑戦中はNG行動の事を人に教えちゃダメよ」
科生 万理(しないき まり)「自分の恋愛で他人に助けを求めるような」
科生 万理(しないき まり)「情けない男に興味ないから」
林示 伴(はやし ばん)(ダメかー!)
  最敬礼で見送る俺を残し、万理先輩は優雅な足取りで去っていった

〇教室
林示 伴(はやし ばん)(声を出してはいけないか・・・)
林示 伴(はやし ばん)(覚悟はしてたが、いざ命じられると戸惑うな・・・)
林示 伴(はやし ばん)(だが、24時間なら何とかなるかも・・・)
林示 伴(はやし ばん)(とにかく、なるべく人と関わらないようにしよう)
伴の友達「お、告白どうだった!?」
林示 伴(はやし ばん)(しまった、いきなり関わってしまった・・・)
林示 伴(はやし ばん)(スマン、今返事できないんだ)
  首を横に振る俺
伴の友達「だよなぁ~」
伴の友達「ま、気ィ落とすなよ!」
伴の友達「そうだ! 公園でエロ本漁りでもして失恋の傷を癒そうぜ!」
伴の友達「お前エロ本大好き人間だもんな!」
林示 伴(はやし ばん)(オイ! いきなり何言ってんだ! このデバイスで先輩も聞いてんだぞ!)
林示 伴(はやし ばん)(そもそも、フラれたわけじゃありませんから!)
  今度は親指を立ててグッと前に出す
伴の友達「は!? まさかOKだったのか!?」
林示 伴(はやし ばん)(違う! あーもうどう伝えればいいんだ)
伴の友達「オイ! どっちなんだ! 何とか言えよ!」
林示 伴(はやし ばん)(・・・スマン!)
  鞄をつかんで教室から走り去る俺
伴の友達「そうか、フラれたショックでおかしくなっちまったか、哀れな・・・」

〇おしゃれなリビングダイニング
林示 伴(はやし ばん)(・・・自分の家でも黙って上がると泥棒みたいな気分だな)
伴の母「わ、ビックリした!」
伴の母「帰ったなら何か言いなさいよ」
林示 伴(はやし ばん)「・・・・・・」
伴の妹「・・・?」
伴の妹「あのやかましいお兄が黙ってる?」
林示 伴(はやし ばん)「・・・・・・」
伴の妹「怪しい・・・」
伴の妹「ハッ! さてはお兄のニセモノ!?」
林示 伴(はやし ばん)(!?)
伴の母「ニセモノ・・・!?」
伴の母「でも目と鼻と口・・・だいたいこんな感じだった気がするけど・・・」
林示 伴(はやし ばん)(息子の顔うろ覚えすぎ!?)
伴の妹「これは新しいタイプのオレオレ詐欺だよ!」
林示 伴(はやし ばん)(何を言い出すんだコイツは!?)
伴の妹「今までの顔を見せずに声でだますタイプから進化した」
伴の妹「声を聞かせず顔でだますタイプの詐欺だよ!」
林示 伴(はやし ばん)(成り立つかそんなもん!)
伴の母「言われてみれば・・・いかにも好んで弱者をだましそうな顔だわ!」
林示 伴(はやし ばん)(息子の顔イメージ悪すぎ!?)
伴の母「返して! 私の伴を返して!」
伴の母「あんたの薄汚い目つきなんか、伴の天使の眼差しとは比べものにならないわよ!」
林示 伴(はやし ばん)(最大級の上げと下げを同時にこなすな!)
林示 伴(はやし ばん)(この二人、普段からアホだとは思ってたが、ここまでだったか・・・)
林示 伴(はやし ばん)(クソッ、このままではツッコミ・・・もとい、弁解もできないまま警察を呼ばれかねない!)
林示 伴(はやし ばん)(そうだ、本物だと言葉で伝えられないのなら、行動で伝えるんだ・・・!)
  ガシィッ!
  俺は全身全霊『ただいま』の想いを込めて、母と妹をハグした
伴の妹「こ、この暑苦しさは・・・!」
伴の母「間違いなく伴・・・!」
林示 伴(はやし ばん)(分かってくれたか・・・!)
伴の妹「あとこの汗臭さも・・・!」
林示 伴(はやし ばん)(すみませんね!)

〇男の子の一人部屋
林示 伴(はやし ばん)(ようやく一人になれた・・・)
林示 伴(はやし ばん)(朝まで部屋にこもってれば声を出す必要もない)
万理の声「なかなかユニークなご家族ね」
林示 伴(はやし ばん)(!? 万里先輩の声!?)
林示 伴(はやし ばん)(この腕のデバイスから聞こえるのか!)
科生 万理(しないき まり)「頑張ってるみたいじゃない、見直したわ」
科生 万理(しないき まり)「やっぱり付き合ってあげよっか」
林示 伴(はやし ばん)(マジですか!)
林示 伴(はやし ばん)(・・・って、危なっ! 絶対ワナだよ! 返事するとこだった!)
科生 万理(しないき まり)「とりあえず、今度どこか遊びに行かない?」
林示 伴(はやし ばん)(マジですか!)
林示 伴(はやし ばん)(って、落ち着け俺! 明らかな挑発だろ!?)
科生 万理(しないき まり)「・・・ダメかな?」
科生 万理(しないき まり)「君、けっこうカッコよかったから、勇気出して誘ってるんだけどな・・・」
林示 伴(はやし ばん)(うおぉお! 行く! 行きます!)
林示 伴(はやし ばん)(ってダメだ! 誘惑が強すぎる!)
林示 伴(はやし ばん)(精神を統一しろ、煩悩を振り払うんだ・・・)

〇幻想2
林示 伴(はやし ばん)(・・・しかし先輩、いい声だなぁ)
林示 伴(はやし ばん)(自分の部屋で先輩の声を聞いてられるなんて、最高の贅沢だな・・・)
林示 伴(はやし ばん)(これならいくらでも・・・)
「・・・ょっと!」
「・・・ちょっと聞いてるの!?」

〇男の子の一人部屋
林示 伴(はやし ばん)(ハッ! 自分の世界に浸ってた!)
科生 万理(しないき まり)「私の全力の誘惑を完全に無視するなんて、やるじゃない・・・」
科生 万理(しないき まり)「今のセリフをスルーできた奴なんて、今まで一人もいなかったのに」
林示 伴(はやし ばん)(え、全力の誘惑!? 何を言ってたの!?)
科生 万理(しないき まり)「明日もせいぜい頑張るのね!」
  ブツッと音を立てて通信が切れる
林示 伴(はやし ばん)(先輩の全力の誘惑、聞き損ねた!)
林示 伴(はやし ばん)(乗り切ったけどすごい敗北感!)

〇教室
  翌日
林示 伴(はやし ばん)(ふぅ・・・ようやく昼休みか)
林示 伴(はやし ばん)(今日は朝から大変だった・・・)

〇学校脇の道
  お婆さんに道を聞かれたけど説明できないから、おぶって連れて行ったら遅刻するし

〇学校の廊下
  遅刻の理由を聞かれても説明できないから立たされるし

〇教室
  授業でも今日に限って指されまくるけど答えられないし

〇教室
林示 伴(はやし ばん)(だがあと少し、あと少しで先輩の連絡先ゲットだ・・・!)
林示 伴(はやし ばん)(ん? なんか男子の半分くらいがこっち見てヒソヒソ話してるような・・・)
男子生徒A「おい伴、お前昨日、科生先輩に告白したんだって?」
林示 伴(はやし ばん)(ゲッ、なぜそれを!)
男子生徒A「お前の告白する叫びを聞いたって奴が何人もいるぞ」
林示 伴(はやし ばん)(しまった、気合い入れすぎたか・・・!)
男子生徒B「何とか言えよ」
  気付くと周りを十人ほどの男子に囲まれている
男子生徒C「・・・お前、昨日の告白から一言も喋ってないんじゃないか?」
林示 伴(はやし ばん)(!)
男子生徒D「やっぱりお前、科生先輩にNG行動を命じられたな!?」
男子生徒D「内容はズバリ『声を出すな』だろ!」
林示 伴(はやし ばん)(クッ、バレた!?)
男子生徒E「俺達も同じ課題を出されて失敗したんだよ!」
男子生徒E「お前に科生先輩は渡さん! やっちまえ!」
  大勢の男子が一斉に俺に飛びかかり、あっという間に押さえ込まれる
林示 伴(はやし ばん)(クソッ、だがどんなに殴られようと、絶対に声は出さない!)
林示 伴(はやし ばん)(どんな痛みだって耐えてみせる!)
  だが男子達は殴るどころか、俺の体にそっと優しく手を添えると・・・
  猛烈にくすぐりだした!
林示 伴(はやし ばん)(うおぉぉお! 俺はくすぐりには弱いんだよおぉぉ!)
  男子達は悶絶する俺をしっかりと押さえ込み、黙々とくすぐり続ける。
  抑えがたい笑いの発作が体の内から突き上げる
林示 伴(はやし ばん)(ヤバい! もう限界だ・・・!)
林示 伴(はやし ばん)(どうすればいいんだぁぁっ!)

次のエピソード:第二話 人に触れてはいけませんっ!

コメント

  • 凄く面白かった!!

  • おもしろく読みせていただきました!

  • 面白かったです😂
    家族の会話のシーンで吹き出しちゃいましたよ🤣
    私はNG行動失格に終わりました~😅

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