第二話 人に触れてはいけませんっ!(脚本)
〇教室
男子生徒A「どうだっ! 早く笑って楽になっちまえっ!」
林示 伴(はやし ばん)(うおぉぉお! くすぐってえぇ!)
大勢の男子に押さえ込まれ、くすぐられている俺
唯一動かせる頭をブンブン振ってもビクともしない
林示 伴(はやし ばん)(もし声を出せばNG課題は失敗・・・)
林示 伴(はやし ばん)(二度と万理先輩に相手にしてもらえない!)
林示 伴(はやし ばん)(だがもう限界だ・・・!)
必死で見回すと、すぐ側の柱が目に入る
林示 伴(はやし ばん)(・・・もうこれしかない!)
俺は頭を大きくのけぞらせると──
ガンッ!
思いきり柱に打ちつけ、気を失った
〇保健室
「・・・ょっと、ちょっと!」
澄んだ声に呼ばれ目を開けると
綺麗な顔が心配そうに俺を覗き込んでいた
林示 伴(はやし ばん)(うおっ、万理先輩!? なんで!?)
林示 伴(はやし ばん)(・・・ってあぶねっ!)
林示 伴(はやし ばん)(思わず声に出すところだった!)
先輩は俺の疑問を察したのか
俺が腕につけた時計型デバイスを指さした
科生 万理(しないき まり)「それで聞いてたのよ」
科生 万理(しないき まり)「もう・・・いくら何でも無茶しすぎよ」
林示 伴(はやし ばん)(・・・そうだ、NG課題は!?)
時計を見ると16時50分
すでにタイムアップの時間になっていた
林示 伴(はやし ばん)(俺は声を出さずに済んだのか!?)
林示 伴(はやし ばん)(それとも・・・)
不安で息が詰まりそうな俺に、先輩は折り畳んだ紙を手渡した
林示 伴(はやし ばん)(こ、これは・・・!)
科生 万理(しないき まり)「はい、約束は約束だからね」
そこには、先輩の連絡先が記されていた
林示 伴(はやし ばん)「いやったあぁーー!!」
こうして俺はついにNG課題をクリアし
万理先輩とお近づきになれたのだった
〇学校の廊下
林示 伴(はやし ばん)「──と思ったのに、先輩」
林示 伴(はやし ばん)「何送っても全然返事くれないじゃないですかっ!」
科生 万理(しないき まり)「あぁ、私基本的にSNSとかメールとか使わないから」
林示 伴(はやし ばん)「そんな、ほぼ詐欺じゃないっすか・・・」
林示 伴(はやし ばん)「あんなに苦労したのに」
科生 万理(しないき まり)「返事するとは言ってないでしょ」
科生 万理(しないき まり)「特に今はテスト期間前で忙しいのよ」
林示 伴(はやし ばん)「じ、じゃあせめてテストが終わったら──」
科生 万理(しないき まり)「そしたら次は模試の準備」
林示 伴(はやし ばん)(さすが学力テスト学年1位、これじゃいつまで経ってもお近づきになれないぞ!)
林示 伴(はやし ばん)「じ、じゃあ、一緒に勉強しませんか!」
科生 万理(しないき まり)「フフッ、学年違うのに?」
科生 万理(しないき まり)「まあいいわ」
科生 万理(しないき まり)「ただし、またNG行動を守れたらね」
林示 伴(はやし ばん)「!?」
科生 万理(しないき まり)「あれ~? もしかして怖じ気づいた?」
林示 伴(はやし ばん)「や、やります! やらせてください!」
科生 万理(しないき まり)「では、あなたにNG行動を課します」
科生 万理(しないき まり)「今から24時間、人に触れてはいけません!」
林示 伴(はやし ばん)「ひ、人に触れてはいけない・・・!?」
科生 万理(しないき まり)「今回もこのデバイスで判定するわ」
科生 万理(しないき まり)「赤外線・熱・振動、その他」
科生 万理(しないき まり)「各種センサーで総合的に測定してるから、ごまかせないわよ」
林示 伴(はやし ばん)「どんだけハイテクなんすか、それ・・・」
科生 万理(しないき まり)「明日のこの時間までNG行動を守って」
科生 万理(しないき まり)「一駅先の図書館に来なさい」
科生 万理(しないき まり)「そしたらそこで一緒に勉強してあげる」
デバイスを腕に装着すると、いきなり先輩が両手を広げてグッと近づいてきた
科生 万理(しないき まり)「ハイっ、今ならハグし放題よ!」
林示 伴(はやし ばん)「うっ・・・」
林示 伴(はやし ばん)「い、いやいや、さすがに開始5秒で陥落しませんって」
科生 万理(しないき まり)「じゃあこれは?」
目を閉じた先輩の顔が、俺の顔スレスレまで迫ってきた
ちょっとでも動いたら、唇と唇が触れ合いそうな距離
林示 伴(はやし ばん)(こ、これはさすがに自制心が・・・!)
林示 伴(はやし ばん)「す、すみません、今日は失礼しますっ!」
逃げ去る俺の背後から、先輩の「意気地がないのね」という嘲笑が聞こえた・・・
〇おしゃれなリビングダイニング
林示 伴(はやし ばん)「くそぅ、先輩とハグしたかった・・・」
伴の母「伴おかえり! ただいまのハグは?」
林示 伴(はやし ばん)(こっちのハグは全然したくないんですけど・・・)
前回のNG課題で本物の俺だと示すためハグして以来
母はすっかりハグづいてしまい、帰宅の度に要求してくるのだ
林示 伴(はやし ばん)「いや、今日はちょっと・・・」
林示 伴(はやし ばん)「ていうか、いい機会だからやめない? これ」
伴の母「え・・・なんで急にそんな冷たくするの?」
伴の母「今まで一度だって欠かした事なかったじゃない!」
林示 伴(はやし ばん)「いや、一週間前に始めた事を」
林示 伴(はやし ばん)「そんな伝統行事みたいに言われても・・・」
伴の妹「あ~、ついにきちゃったよこの時が・・・」
伴の妹「お兄の反抗期デビューだよ!」
林示 伴(はやし ばん)「お前はまた話をややこしくするな!」
伴の妹「その態度、普通じゃないよ・・・」
伴の妹「親に挨拶のひとつもできないってのかい!?」
林示 伴(はやし ばん)「帰宅の度に母親と抱き合う男子高校生の方が普通じゃねえよ!」
伴の妹「大丈夫、怖くない、怖くないよ・・・」
伴の妹「お母さん、実力行使だよ!」
伴の母「了解! 3時方向から回り込んで!」
林示 伴(はやし ばん)「オイ、マジやめろ! 来るなっ!」
素早く挟撃する母と妹。こいつらガチだ・・・!
すかさずこちらもソファやテーブルをバリケードにして立てこもる
「無駄な抵抗はやめて出てきなさい!」
林示 伴(はやし ばん)「イヤだ! こっちは人生かかってんだ!」
「お母さん、右翼側に展開して!」
さすが母娘、恐ろしく息の合った連携で俺を追い詰めてくる
このままでは陥落してハグされるのも時間の問題・・・!
林示 伴(はやし ばん)「ク、クソッ、なんでこんな事に・・・!」
林示 伴(はやし ばん)「俺とハグして何の得があるってんだよっ!」
伴の母「言われてみると・・・」
伴の母「何もないわね?」
伴の妹「てかお兄とハグとかキモっ!」
伴の妹「むしろ損しかないよ!」
林示 伴(はやし ばん)「・・・助かったけど、君たちひどいね!?」
〇学校脇の道
林示 伴(はやし ばん)(もうすぐ学校だ。ここまでは何とか人に接触せずに来られたが・・・)
林示 伴(はやし ばん)(ハッ、殺気!)
伴の友達「よっ、おはよ!」
林示 伴(はやし ばん)「うお、あぶねっ! 触るんじゃねえっ!」
伴の友達「な、何いきなりキレてんだ?」
伴の友達「ちょっと肩ポンと叩こうとしただけだろ」
林示 伴(はやし ばん)「あ、ああ、すまん。ちょっと訳があって」
伴の友達「ははぁ~、さてはまた科生先輩にNG行動やらされてるとか?」
林示 伴(はやし ばん)「・・・俺の口からは何も言えない」
伴の友達「ハイハイ」
伴の友達「しかし、先輩はなんで」
伴の友達「NG行動なんて変な事させるんだろうな?」
林示 伴(はやし ばん)「そういえば・・・何でだろう?」
伴の友達「ま、シンプルにドSなんだろな!」
伴の友達「しかも縛りプレイが性癖の上級者!」
林示 伴(はやし ばん)「お前みたいな変態と一緒にすんな!」
伴の友達「じゃなきゃ、まあ男絡みだろな~」
伴の友達「前の彼氏になんか嫌な事されたとか?」
林示 伴(はやし ばん)「確かに、深刻な理由の可能性もあるか・・・」
林示 伴(はやし ばん)「だとしたら俺は、なおさらNG行動を破るわけにはいかない!」
伴の友達「お、言うねえ! それでこそ男だ!」
林示 伴(はやし ばん)「あぶねっ! だから背中押さなくていいから触んな!」
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面白くて読むのあっという間でした😆
伴君の機転と優しさ、とても頼もしいですね!
道のりは長そうだけど、幸せになってほしいなぁ☺️💕
唐突なカバディ鬼畜すぎる🤣
先輩にどんな理由があるのか気になりますね😳
くすぐりから逃れる為に気を失ったり、カバディでアンチェーンを即席で考えたりと、起点が効く伴くんは凄いですね✨
万理先輩の為ならどんな課題も乗り越えるんだという強い意志を感じます☺️
駅のホームで先輩が悪そうな人に絡まれている!?😱
人に触れず、先輩を助ける事が出来るのか…続きが気になります!😆