第一話「転生したら怪獣だった件」(脚本)
〇黒
────今、この瞬間。
この俺”武川竜也(ムカワ・タツヤ)”の生涯は呆気なく終わりを告げた。
〇観光バスの中
死因は交通事故。中学最後の思い出として強制連行された修学旅行にて、乗っていたバスが追突事故を起こした。
原因は運転手の過労による判断ミス。世間はや他の連中は許してはくれんだろうが、個人的に俺は彼を許そうと思う。
・・・どの道、俺はいつ死んでもいいと思っていたし。
〇教室
・・・この俺の卑屈な顔を見てもらえば解ると思うが、学校に俺の居場所はない。
そう、いじめだ。
暴力は勿論の事、ここでは書かれないような事も何度もやられた。それこそ、本来なら警察沙汰になるような事をだ。
通報は・・・しようとはした。けれど、それを止めてきたやつがいる。
誰だと思う?
〇おしゃれなリビングダイニング
驚くなよ?俺の家族。
つまりは両親だ。
普通庇ってくれるもんだって?ははは、そうだったらよかったんだがね。
世の中には、自分の子供の苦しみよりも”自分のがいじめられっ子の親になるのが嫌”って感情が勝つ親もいるのさ。
要はあいつらは”明るい家族”という名のママゴトがしたいだけだったって事。巻き込まれる側からしたらたまったもんじゃないが。
〇水の中
・・・まあそんなこんなで、俺は自分がいつ死んでもいいと思っていた。
中学卒業まで待てば広い世界を知れたんだろうが、まあ、運が悪かったよ。
まあ、仮に生き延びたとしても、とっくに折れてしまっていて味方もいない状況。どの道俺は近いうちに死んでいた。
”その時”が思ったより早く来た。これは、それだけの話。
──────────あー、次に生まれ変わるなら人間以外がいいなァ。
人間や社会の愚かさクソさは十分味わったから、出来たら一人で生きていける種を・・・
・・・・・・そうだ、UMAだ。UMAがいい。ウマじゃなくて未確認生物。
誰にも見つからない海の底で静かに暮らすんだ、ずっと一人で、ずっと・・・
よしんば見つかったときも戦えたら・・・うん、そんぐらいはいるな
戦えるか逃げれるかしたら最高なんだよ。そう、例えるなら・・・・・・
〇映画館の座席
あの頃、銀幕で見たヒーロー・・・
・・・・・・・『怪獣』みたいに!
〇黒
〇血しぶき
(・・・・・・ん?)
(なんだ?ここ・・・・・・)
(たしか俺、どうな・・・っ・・・)
(──────んがっ!?)
(く・・・苦しい!?息苦しいなんてもんじゃない!!肺に酸素がない!?)
(てか、ここ水の中か!?早く上がらないと・・・!!)
(て、天井!?出られない!?というか、ここ狭い!?)
(く、苦しい!苦しい苦しい苦しい苦しい!)
(いつ死んでもいいとは言ったけど、苦しいのは嫌だッ!死にたくない!こんな死に方は嫌だ!!)
(出せぇ!!出せ出せ出せ出せ出せっ!! ここから出してくれぇえっ!!!!)
(割れた・・・?意外と脆いぞこれ!)
(早く、早く外へ・・・!!)
(外へぇええっ!!!!)
〇岩山
「ゲホッ・・・ゲホッゲホッ・・・!!」
(・・・・あぁ・・・苦しかった)
(というか、ここは何処だ・・・?)
(たしか、修学旅行のバスが事故って、 そこで・・・・・・)
(・・・・にしても、喉が乾いた)
(・・・・・・水の音だ)
〇滝つぼ
・・・しばらく歩き、俺は洞窟とおもしき場所に、地下水の川を見つけた。
辺りは光源が無いにも関わらず妙に明るく、違和感を感じさせた。
が、この時の俺はそんな事はどうでもよかった。
(水だ・・・水・・・!!)
あまりにも、まるで砂漠を彷徨った後のように喉が乾いていたのだ。
故に”自然の真水は飲むと危険”というのも忘れて・・・
(水ぅうう・・・っ!!)
・・・水脈に向けて走り出していた。
〇黒
・・・・・・・・・
思えば、両足に加えて妙な感覚が尻の上辺りから伸びていたし、嫌に鼻が高くなったような感覚も覚えた。
が、その時の俺は兎に角喉が乾いていたので、迷わず水に頭を突っ込んでがぶがぶと飲んだ。
そして喉が潤い、
気持ちが落ち着いた頃・・・
〇水たまり
???「・・・ぷはぁっ!!あー生き返る!!」
・・・その”現実”は、
ようやく俺の前に”出現”した。
???「・・・・・・・・・・・・」
???「・・・・・・・・・えっ?」
〇滝つぼ
・・・・・・この、透き通るような水面に映る、どう見ても”怪獣”としか言い様のない未確認二足歩行生物、推定165cm弱。
水中に潜んでいたのではない、そいつは水面に映っていて、俺の視線と目を合わせていた。
武川竜也「・・・・・・・・・」
武川竜也「・・・えっ!?」
武川竜也「これ、俺なの・・・!?」
そして数秒の沈黙の後・・・・これまでの出来事を総括し、俺の中にある仮説が生まれた。
武川竜也「・・・・・・・・・・・・」
武川竜也「・・・・・・転生したら・・・・・・」
武川竜也「・・・怪獣だった件ッッッ!!!!!!」
〇黒
第一話
転生したら怪獣だった件
強足魔蟲デスカリス
登場
〇岩の洞窟
武川竜也「・・・よし、この身体にも大分慣れてきた」
武川竜也「にしてもさっきはビビったな。これが自分の身体じゃないと自覚した途端、さっきまでどう歩いてたかも忘れてしまうなんて・・・」
武川竜也「・・・・・・」
武川竜也(・・・色々、気にしなきゃいけないのは解る。もう人間に戻れないのかとか、元の世界に帰れないのかとか)
武川竜也(だが・・・今一番気になるのは、ここが何処かって話だ)
武川竜也(典型的な転生モンのラノベアノベに乗っ取るなら、ここは剣と魔法のファンタジー・・・なんだろうが)
武川竜也(・・・でも現実とフィクションは違う。それぐらい俺も解る)
武川竜也(ここがファンタジー物の世界って保証はない。だって・・・)
武川竜也(この通り、俺の姿は特撮怪獣のそれだしな)
武川竜也(ドラゴンと取れなくもないが・・・その割には翼も無いし、体型も着ぐるみっぽいし)
武川竜也(何より、ここに空が無い可能性もある・・・)
武川竜也(・・・俺は転生なんてしてなくて、生前の罪から地獄に落ちてて、これは亡者としての姿だとか)
武川竜也(まあ天国に行けるような人間じゃない自覚はあるからなぁ・・・どうなんだろなぁ)
武川竜也(・・・でも、まあ)
ゴブロー「あかん、完全に迷った・・・ ここどこや・・・」
武川竜也「ゴブリンでも出たら話は別・・・」
武川竜也「・・・ん?」
ゴブロー「・・・ん?」
武川竜也「・・・・・・」
武川竜也「・・・あ、どうも」
ゴブロー「ああ、はい、こちらこそ・・・」
武川竜也「ゴブリンだぁあああああああ!!!!!!!!!!」
ゴブロー「ドラゴンだぁああああぁああ!!!!!!!!!!!!!!!!」
武川竜也「やめろぉー!!この話全年齢向けだからそういう展開はまずいんだァァァ!!!!」
ゴブロー「頼むぅうう!!食わんといてくれエエ!! ウチには食わしてかなならへん嫁と子供がアア!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
武川竜也「・・・・・・もしかして」
ゴブロー「・・・・・・意思疎通できるん?」
武川竜也「・・・・・・・・・」
ゴブロー「・・・・・・・・・」
武川竜也「・・・脅かしてすんませんでした」
ゴブロー「こ、こちらこそ・・・すんません」
〇霧の立ち込める森
〇岩の洞窟
ゴブロー「すると・・・君も転生者言うワケやな?」
武川竜也「はい、そういう事になりますね・・・」
ゴブロー「はははっ!しかも同じ日本から転生してきたなんて、親近感湧くわぁ〜!」
この人・・・ゴブリンの”ゴブロー”さんの話を聞く限り、やはりこの世界はいわゆる”剣と魔法のファンタジー”らしい。
所謂”なろう系”というやつなんだけど、ゴブローさんの世代では”ドラゴン”とか”指輪”の方がピンとくるようだ。
ゴブロー「・・・ちょい待ち、今ウチの事結構おっさんやとか思うたやろ?」
武川竜也「いっ、いえ!!そんな事は・・・」
ゴブロー「いや竜也君、君意外と顔に出るタイプやろ?ウチ、結構感がええ方やからわかるで?」
武川竜也「・・・・・・すんません」
ゴブロー「なぁに気にせんでええ、死んだ年数含んで計算したらおっさん通り越して立派なジジイやしな」
ゴブロー「そして今年齢基準で言うと、竜也くんは赤ちゃんやしな!はははっ」
そしてゴブローさんも俺と同じ、魂の由来を地球の日本とする転生者だった。
・・・で、このゴブローさんがこの洞窟にいた理由であるけれど、それは・・・
ゴブロー「・・・それでやけど、ほんまに目覚ました場所に何も無かったん?」
武川竜也「ええ、俺が入っていた卵が一つ置いてあるだけで・・・」
ゴブロー「ううむ・・・おかしいなぁ、伝承と合ってへんぞ?」
・・・それは、今の俺の種族に由来する。
〇古い本
・・・なんでも俺の種族は”エルダードラゴン”と呼ばれるドラゴンで、この世界のドラゴンの始祖に近い種とされている。
そのエルダードラゴンであるが、卵を産む際に宝石や金といった財宝で巣を作り、孵化するまで卵を温めるんだそうだ。
〇岩の洞窟
所が、俺が目を覚ました場所・・・つまりエルダードラゴンとして新たな生を受けた場所には、巣となる財宝は無かった。
それ所か親となるエルダードラゴンすら居なかった。何もかもがイレギュラーだ。
ゴブロー「お宝が無い言うんわ困るなぁ・・・ウチがここに来たんはそれが目当てなのに」
武川竜也「・・・あの、一応巣の主ですからね?俺」
武川竜也「巣の主の眼の前で堂々と巣を荒す宣言してますからね?アナタ」
ゴブロー「・・・あ、そういやそうか」
武川竜也「いや忘れてたんかい!」
ゴブロー「はははっ、細かい事気にしなさんな!」
ゴブロー「それに、愛する妻へのプレゼントやねん!ちょっとぐらいええやろ?な?な?」
武川竜也「・・・・・・うん、まあドラゴンが貴金属持っててもしょうがないですし」
ゴブローさんの目的は、その金銀財宝を結婚記念日のプレゼントとして奥さんに渡す事だそうだ。
いやはや、ゴブリンだからと某スレイヤーに出てくるようなゲスだと一瞬でも思ってしまった自分が恥ずかしい。
〇岩山
武川竜也「・・・ここだよ」
ゴブロー「うーむ・・・確かに財宝は見当たらん」
ゴブロー「それに親ドラゴンがおった形跡もあらへんし・・・どういう事なんや?これ」
武川竜也「・・・・・・」
〇モヤモヤ
武川竜也(・・・・・・エルダードラゴンの親は 子供が孵化するまでつきっきりで卵を温める続ける)
武川竜也(だけど、俺の側にはいなかった それはつまり・・・・・・)
武川竜也(・・・・・・・・・)
武川竜也(・・・・・・ははっ、異世界転生しても また親ガチャ失敗すんのかよ、俺は)
〇岩山
ゴブロー「・・・んっ?」
武川竜也「・・・どうしたんですか?」
ゴブロー「ちょい、ちょっち待っとれ」
小型ナイフ
武川竜也「どうしたんです?壁を削ったりして・・・」
ゴブロー「いや、ウチの予想が正しければ・・・」
ゴブロー「・・・出た!」
武川竜也「これは・・・!!」
ゴブロー「・・・金や、溶けた金が重なり合って壁になっとったんや」
武川竜也「つまり、この場所そのものが・・・」
ゴブロー「ああ、エルダードラゴンの巣。金銀財宝いうこっちゃ、そして・・・」
武川竜也「・・・・・・」
武川竜也「────!!!!」
・・・天井を見上げ、俺は目を見開いた。
ただの岩肌だと思っていたそれは、何らかの生物の肋骨だった。
まるで覆いかぶさるように、溶けた金と一体化した骨のドームに、俺の卵は覆われていたのだ。
ゴブロー「・・・なるほど、読めたで」
武川竜也「えっ・・・?」
ゴブロー「・・・ウチも又聞きやけど、爺さんの世代ん時に大規模な地震があったって話や」
ゴブロー「なんでも、地下のマグマが急に吹き出したとかでな。地下を住処にしとるモンスターは大打撃を受けたんや」
ゴブロー「そんで、このエルダードラゴン・・・君のお母さんは、マグマから生まれたばかりの子供を守るために────」
ゴブロー「────集めた金銀財宝と、自らの身体と命を使い、この緊急シェルターを作り上げた」
武川竜也「あっ・・・あ・・・」
ゴブロー「・・・君は一人ぼっちで産まれてきたんとちゃう」
ゴブロー「お母さんはずっと、君を見守ってくれとったんや」
武川竜也「・・・・・・わあああん!!!!!」
俺は気がつけば壁に─────この世界線における自らの母親に抱きつき、わんわんと声を挙げて泣いていた。
前世を含め、初めて触れた”無償の愛”に、我慢できなくなったからだ。
武川竜也「ぐすっ・・・ひぐっ・・・」
武川竜也「・・・おかあさん・・・おかあさん・・・ひぐっ・・・」
ゴブロー「・・・・・・」
〇暗い洞窟
〇岩の洞窟
武川竜也「・・・・・・・・・」
武川竜也「・・・・・あんな感動的なシーンの後に、結構削って持っていくんですねアナタ」
・・・この中身、削った金。
約2kg。
ゴブロー「まあまあええやないの!ウチかって家族のためにやってる事やし!」
武川竜也「あのねぇ・・・」
ゴブロー「いや、そ〜んなことよりっ!!」
武川竜也「誤魔化したっ!?」
ゴブロー「・・・今現在ウチらそろって遭難中いう事の方が重要やとは思わんか?」
武川竜也「・・・・・・・・・・・・・・・あっ」
・・・・・・言われて、ようやく俺は思い出した。
ゴブローさんは、財宝、ようは俺の巣を探しに来て洞窟の出口が解らなくなった。
そして俺は、ついさっきこの世界に生まれ落ちたばかり。この洞窟の構造など知るわけがない。
つまり・・・
両者──────絶賛遭難中ッッッ!!!!!!!!!
ゴブロー「だがこれは非情にまずい状況やで、もし”デスカリス”にでも出くわしたりしたら・・・」
武川竜也「デスカリス?」
ゴブロー「獰猛な肉食のモンスターよ、ここいらの生態系における頂点捕食者や」
ゴブロー「虫のモンスターなんやけどな、ハトみたいなホッホー、ホッホー、って声で鳴くんよ」
ゴブロー「タンパク質で出来とるモンならなんでもバリバリ食うてまうようなやつで、 ウチの群れでも襲われて殺されたやつが何人も・・・」
武川竜也「うわ・・・俺等エンカウントしたらおしまいじゃないですか」
ゴブロー「ウチは雑魚モン筆頭やし、竜也くんはいくらドラゴンでも赤ちゃんやし・・・ ま、勝ち目は無いな」
武川竜也「なんか、そいつの見た目の特徴とかわかります?」
ゴブロー「えっと確か、大きさは人間大サイズ。バッタかカマドウマが立ち上がったような見た目で・・・・・・」
武川竜也「・・・・・・・・・」
ゴブロー「・・・・・・・・・」
ゴブロー「・・・・・・ああ、丁度こんなやつや」
武川竜也「・・・・・・逃げるんだよおおおおっ!!!!」
デスカリス「────ホッホー」
〇洞窟の深部
武川竜也「ま、まずい!!行き止まりだ・・・!!」
ゴブロー「あいつ、追い詰めよったか・・・!!」
ゴブロー「き、来よった・・・!!」
ゴブロー「がふっ!!」
武川竜也「ゴブローさん!!!!!!」
武川竜也(組み付かれた・・・ッ!! やっぱ可食部の多いこっちを狙ってきたか・・・!!)
武川竜也(それにゴブローさんの言う通り、今の俺は赤ちゃんだ!!食べる相手としてはこれ以上適した物はない!!)
武川竜也「ひい・・・・・・・・・っ」
〇観光バスの中
・・・・・・まあ、こういう結末だろうな
ネットでも言われてるもんな”なろう系読むような奴は異世界転生しても底辺のまま、現実見ろ”って
所詮、いくら別の世界に転生したって、俺みたいなゴミ、人間だろうがモンスターだろうが食い物にされるのがお似合いって事だな。
そう、これが現実。俺には最初から、幸せになる資格なんてなかったんだよ。
あーあ、折角願った通りの怪獣みたいな姿になれたのに・・・・・・・・・
〇映画館の座席
・・・・・・ん?
・・・・・・怪獣?
・・・そうだ!今の俺は、この姿は怪獣そのものじゃないか!?
俺の知ってる怪獣は、これしきの事で生きる事を諦めたか!?
王も、巨神も、守護神も、古代怪獣も!
これしきの事で自らの命を諦めたか!?
俺が憧れた、心を支えてくれた”虚構”は、これしきの”現実”に屈するようなヤワな存在だったか!?
武川竜也「そうだ・・・俺は・・・ッ」
武川竜也「俺は人間でも、モンスターでもない!!」
武川竜也「俺はッ!!!!」
武川竜也「俺は『怪獣』だああああっ!!!!!!!!!!」
〇洞窟の深部
デスカリス「──────────!?」
武川竜也「・・・考えてみたら段々腹が立ってきたぞ」
武川竜也「よく見たらお前、俺より身体はひょろっちいし、俺に簡単に押し返されるぐらいにはパワー無いな・・・」
武川竜也「なんでそんな奴に、俺が怯えなきゃならないんだ!?」
武川竜也「”所詮俺はこの程度、幸せになろうとしてすいません”なんてガタガタ震えて怯えなきゃならないんだ!?」
ゴブロー(す、すごい・・・目に見えてわかるぞ!?)
ゴブロー(竜也くんの、エルダードラゴンの身体がものすごい勢いで作り替えられている!?)
ゴブロー(まるで、乳児〜園児までの成長を早回しで見ているような・・・ ・・・・・・すごい、まるで進化だ!)
デスカリス「────────────!!!!!!」
武川竜也「不意打ちが二度も通じると思うな!!」
武川竜也「ふんっ!!!!!!!!!!」
「尻尾打撃(テールスマッシュ)!!!!!!」
「それは、肉食恐竜型怪獣の基本的必殺技!!!」
「その身体のバランスを取る舵とでもいうべき尻尾により放たれる一撃は、通常技にも関わらず必殺級の威力を誇るッ!!!!」
ゴブロー「結構効いたな!かなりのダメージが入ってるように見える!!」
ゴブロー「今ならトドメを刺せるで!竜也くん!!」
武川竜也(トドメ・・・?)
武川竜也「──────────!?!?」
「────瞬間、竜也のエルダードラゴンの肉体に、強烈な生命力とイメージが走る!!!!!!」
武川竜也(熱い・・・でも、不快じゃない!)
武川竜也(身体の奥からエネルギーが漲ってくるのを感じる・・・強い、生命力が!)
武川竜也(・・・だよなぁ、怪獣なら)
武川竜也(”こいつ”で決着をつけないとなぁ!!!!!!)
武川竜也「受けろ・・・デスカリス!!」
「火炎放射!!エルダードラゴンが、体内に流れる魔力を火炎に変えて放つ、必殺の炎!!」
「そして・・・それは口から吐く火炎放射 つまり、怪獣伝統のフィニッシュホールドであるッッ!!!!!!」
武川竜也「フーッ・・・・・・フーッ・・・・・・」
ゴブロー「や、やった!!すごいやんか竜也くん!!」
ゴブロー「・・・てか大丈夫か?大分上がってるみたいやけど・・・」
武川竜也「はぁ・・・はぁ・・・い、いえ、少し疲れちゃって・・・」
ゴブロー(・・・まあ、無理もないわな 生まれて直後の戦闘な上に、身体の急成長のためにかなりエネルギーを使ったんやから)
ゴブロー(今は切り抜けたけど、もし今別のモンスターに襲われたりしたら・・・)
武川竜也「・・・・・・!!」
武川竜也「あ、あれは・・・!?」
武川竜也「こいつら、何処から・・・」
ゴブロー「やっぱり、群れがおったか・・・!!」
ゴブロー「このままじゃ二人共・・・」
???「・・・・・そこを動いたらあきまへんよ!!」
武川竜也「な、なんだありゃあ!?水がモンスターを食っていやがるぞ!?」
ゴブロー「いや、水とちゃう・・・あれは!!」
武川竜也「わあっ!?水がこっちに来た!!」
ゴブロー「大丈夫や!!」
武川竜也「何故さ!?」
ゴブロー「この水は・・・水とちゃう!!」
〇水中
武川竜也「うわああーーーーっ!?」
武川竜也「お、俺はどこに連れてかれるんだーーー!?」
〇アマゾンの森
〇森の中
武川竜也「う・・・そ、外だ・・・明るい・・・」
ゴブロー「ど、どうやらウチら助かったみたいやな」
武川竜也「・・・あっ!」
ゴブリン「ゴブロー!無事だったんか!」
ゴブロー「おお!!グルドにレグ!!」
ゴブリン「心配したんやでー?2日も帰ってこんから、てっきり冒険者にでもやられてもたんかと・・・」
武川竜也(ゴブリン・・・!!というとこいつらが、ゴブローさんの言ってた群れか)
「・・・ちょ、ちょい退いてや!!」
ゴブロー「・・・あ」
リーヴ「ゴブロー!!あんた・・・!!」
ゴブロー「り、リーヴ・・・!!」
武川竜也「・・・あの、ゴブローさん? まさかあの人が・・・」
ゴブロー「うん、ウチの女房」
武川竜也「若ッッ!?!?」
リーヴ「あんた、2日も家開けて・・・!!」
ゴブロー「あ、あわわ!!ちゃうねん!!これはちゃうねんて!!」
ゴブロー「そ、そうや!!これ!!これ!!」
ゴブロー「ほら、もうすぐ結婚記念日やろ?やからこの宝物を・・・」
ゴブロー「・・・って半分流れ出てもとるやないか!?」
ゴブロー「どないしよ!?折角の結婚記念日なのに・・・」
リーヴ「・・・こんアホぉ!!!!」
ゴブロー「ひいっ!?」
リーヴ「んなお宝なんかどうでもええねん!! ウチは・・・ウチは・・・!!」
リーヴ「ゴブローに何かあったらと思うと、ウチは・・・!!」
ゴブロー「・・・・・・・・・」
ゴブロー「・・・すまんかった、リーヴ 心配かけたな・・・・」
武川竜也「・・・よし、あっちは大丈夫そうだな」
???「そ、これであの夫婦は大丈夫や。いうワケで・・・」
マスター・リヴ「次はボクくんの問題といこうかいなぁ」
武川竜也「わっ・・・!?す、スライム・・・!?」
マスター・リヴ「ああ、緊張せんでええどすよぉ ウチはリヴ、悪いスライムとはちゃいますえぇ?」
マスター・リヴ「・・・まあ、ただのスライムともちゃうねんけどなあ」
ゴブロー「リヴさんは所謂スライムロード・・・上位のスライムなんやで」
ゴブロー「ウチらの群れに色々な教えをくれる・・・ようは、指導者(マスター)や」
マスター・リヴ「もう、褒めても何も出ぇへんよぉ〜?」
ゴブロー「いえいえ!!こうして助かったのもリヴ様のお陰やし、とことん太鼓を持たせてもらいますわ!!」
ゴブロー「いよっ!!スライムロード!!マスター・リヴ!!」
武川竜也(・・・すると、あの時の水みたいなのはこのリヴって人の身体の一部って事かな?)
武川竜也(なら、包まれたデスカリスが溶けて無くなったのは文字通り”食われたから”と。 俺の予想も当たってたか・・・)
マスター・リヴ「うむ・・・見たところボクくんも転生者、ゴブローと同じく元人間ってクチやな?」
マスター・リヴ「・・・・解っとると思うけど、ボクくんはもう死んだ」
マスター・リヴ「どれだけ願おうと、どんな手段を用いようと、もう人間だった頃のボクくんには戻れへん」
マスター・リヴ「無論、理の違う『あちら側』に帰るなんて無理な話や。辛いやろうけど受け入れてな」
武川竜也「・・・はい」
武川竜也「不本意な死ではありましたが・・・前々から覚悟はしていました」
マスター・リヴ「へえ、えらい含みのある言い方どすなぁ・・・まあええけど」
マスター・リヴ「とにかく、ボクくんにはウチの元でこの世界のルールや常識、生き方を学んでもらうで」
マスター・リヴ「いきなり野ッ原に放り出されるのはカワイソやからなぁ?優しいお姉さんに感謝するんやでぇ?」
武川竜也「よ・・・よろしくお願いします!!」
武川竜也(というか女の人だったのか・・・ そしてスライムにも性別はあるんだ・・・)
マスター・リヴ「あ、そうだボクくんお名前は?」
武川竜也「名前・・・?」
マスター・リヴ「しばらく面倒見るねんから、名前知らんと不便やろ?」
武川竜也「ああ、俺は武川・・・・・・」
〇学生の一人部屋
幼少の武川竜也「・・・よし、できた!」
幼少の武川竜也「ボクのオリジナル怪獣、 ボクだけの怪獣・・・」
幼少の武川竜也「その名も────────」
〇森の中
・・・・・・・・・・・・
ヴァジュラ「・・・・・・俺の名は、ヴァジュラ」
ヴァジュラ「怪獣、ヴァジュラ!!」
・・・・・・かくして、一人の少年の人生が終わり、また新たな生が幕を開けた
だが・・・少年はまだ知らない
〇謁見の間
前世の因縁は未だ、この世界で続いていることも
〇岩山
”怪獣”は自分だけではない事を
〇ファンタジー世界
この物語は、剣と魔法の世界にモンスターとして転生した一人の少年の物語・・・
・・・・・・・・・否!
異世界に上陸した、一頭の『大怪獣』の
物語であるッッッ!!!!
怪人ではなくて怪獣というところが、何とも言えずノスタルジックな温かみのある独特な味わいですね。どんな読者も、見れば見るほど愛らしい怪獣ヴァジュラのファンになること間違い無しです。ゴブローさんやリーヴ、マスターまでもがなぜか関西弁なのも和みます。