第二話「ワースト・コンタクト」(脚本)
〇魔法陣
前回の
「ヴァジュラ異世界怪獣大決戦」は!!
修学旅行の道中バス事故に巻き込まれた武川竜也は、案の定異世界に転生!
古代の龍・エルダードラゴンの子供に転生を果たした!
右も左も分からぬ中、彼はゴブリンのゴブローに出会い、共に行動する事になる!
そこに、恐るべき肉食モンスターデスカリスが出現し、二人は大ピンチに陥る!
しかし、竜也の内に滾る大怪獣スピリッツにより逆転!竜也は、見事デスカリスを退けた!
ゴブローの仲間達、そして彼らを指導するスライムロード・リヴと合流し、
竜也は・・・
・・・否!!
大怪獣ヴァジュラは、異世界での新たな生をスタートさせたのであった!!
・・・・・・
・・・前世より続く因縁が、新たな戦いを呼ぶ事も知らずに
〇黒
第二話
ワースト・コンタクト
勇者尖兵ラジタンク(ポーン)
登場
〇けもの道
子供のゴブリン「やっ、やめて・・・やめてください」
冒険者「逃げんじゃねえよ雑魚モンスターが!」
子供のゴブリン「ぼっ、僕何も悪いことしてません!群れの皆もです!」
子供のゴブリン「なんで・・・なんでこんな酷いことするんですか!」
冒険者「ハッ!モンスターの話なんざ聞く耳持たねー、それが冒険者!」
冒険者「てめえも、俺の経験値になりやがれ!」
子供のゴブリン「いやだああ!助けてええ!」
冒険者「な、なんだァ!?あのデカブツは・・・!!」
冒険者「どっ、どど、ドラゴンだぁああ!!!!」
〇草原
───────────時を少し戻そう。
マスター・リヴ「・・・・・・準備はええかえ?」
ヴァジュラ「・・・いつでも!!」
マスター・リヴ「よし、なら・・・」
マスター・リヴ「・・・・・・むううんっ!!」
〇空
───────────分身スライム。
大元スライムから分裂した”子機”とも言うべき存在。意識を元のスライムと共有し、主に偵察などに使われる。
実はこの森一帯にいるスライムはマスター・リヴの分身体であり、その大きさも強さもリヴの意思一つで自由に変えられる。
ちなみにこれは、今回の”特訓”のための30m大に巨大化させたものだ!!
〇草原
ヴァジュラ「よし、落ち着いて・・・」
ヴァジュラ「・・・・・・・・・・・・!!!!」
ヴァジュラ(神経を集中・・・全身に魔力が行き渡るイメージを・・・!!)
ヴァジュラ(・・・今だ!!)
〇空
戦闘進化(バトルモード)!!
それは、一部の特別なモンスターにのみ与えられる特殊能力であり、通常形態とは別の戦う為の姿に変化する事ができるのだ!
概念的には某携帯獣ではなく、電子の方のアレみたいなものだ!
そして戦闘進化を行ったヴァジュラは、身長40mの文字通りの大怪獣の姿へと変貌するのだ!
〇草原
マスター・リヴ「ちなみに、ウチみたいな上位モンスターは威厳を保つために常時バトルモードな事があるどす♪ ウチは疲れるからやらんけど」
マスター・リヴ「さあ、戦闘訓練の開始どすよ、ヴァジュラくん!」
〇空
ヴァジュラ「・・・うおおおっ!!!!」
ヴァジュラ「・・・そこだっ!! 火炎放射(ファイヤーブレス)ッ!!」
ヴァジュラ「ぜえっ・・・ぜえっ・・・」
〇草原
マスター・リヴ「うーむ、ヴァジュラくんの戦闘進化は、当たり前だけど短時間が限界・・・」
マスター・リヴ「まあ、この辺は訓練を重ねて伸ばしていくしか無いやろなぁ」
マスター・リヴ「お疲れーヴァジュラくん、戻ってええよぉ」
〇空
ヴァジュラ「ぜえっ・・・ぜえっ・・・ は、はいっ、リヴ先生・・・!!」
遠くから聞こえる声「どっ、どど、ドラゴンだぁああ!!!!」
ヴァジュラ「んっ今のは・・・まあいいか」
〇草原
ヴァジュラ「ふう・・・やっぱキツイですね、 この魔法・・・」
マスター・リヴ「そら戦闘形態、高位モンスターが同格の相手とバチボコやり合うための魔法やからなぁ」
マスター・リヴ「疲れるのは当然やけど、覚えていかんと困りますえ、だって・・・」
マスター・リヴ「・・・最近は色々ときな臭いかんなぁ」
ヴァジュラ「・・・・・・っ」
〇古い本
・・・・異世界での生活が始まって、
早二月の時間が流れた。
そしてこの世界の事や、今の俺やゴブローさんを取り巻く状況についても、はっきりわかってきた。
少し前まで、モンスター達を束ねていたのは”魔王”と呼ばれる一人の高位モンスターだった
魔王が具体的に何のモンスターだったかは今も解らない。ともかく、リヴさんのような高位モンスターよりも強かったのは確かだ。
そしてある時、人間と魔王の間に戦争が勃発した。
具体的な開戦理由は解っていない。ただ魔王軍は戦力的にも数的にも人間側を大きく上回っており、勝敗は見るに明らかだった。
・・・が、人間達の勢力の中心”バースティ帝国”が、圧倒的な戦力差を覆す手段を編み出した。
それが、こことは別の世界線から、この世界により適した人材を・・・
つまるところの”勇者”とも言える存在を連れてくるというシステムだ。
つまり、この世界における異世界転生のシステムは、女神でも上位存在でもなく、人間の手で作られたという事だ。
・・・まあもっとも、こちら側に連れて来られた魂が全員勇者になったわけではないらしいが
ヴァジュラ「俺とかね」
・・・転生してきた勇者達は、帝国の思惑通りどれも彼も一騎当千の戦闘力を発揮し、瞬く間に魔王を討ち取った。
魔王亡き後、モンスター達の統治はリヴさんを始めとする”マスター”と呼ばれる上位モンスター達が、それぞれ配下をまとめ───
それらが連合するという形に落ち着いた。魔王の支配する帝国政治から、各集団の連合による共和政治へと変わったのだ。
そして彼等と、人間側の代表であるバースティ帝国の間に終戦協定が結ばれ、魔王対勇者の戦争は幕を閉じた。
マスター・リヴ「ちなみに、人間と魔王軍との終戦協定にサインしたのはウチなんやよ♪」
・・・所が近年になって、冒険者による不必要なレベルでの一部モンスターの討伐が多発。
また異世界から来た勇者達もその力をもて余し、標的を探しているという噂も流れてきている。
・・・そんな、まるで戦争前夜のようなきな臭い空気が、今の異世界に漂っていた。
〇草原
────まあそんなこんなで、俺も力をつけようと今必死に特訓している。みたいな感じだ。
マスター・リヴ「ああそうやそうや、ヴァジュラくんに渡すモンがあるんどすよ」
ヴァジュラ「渡すモン・・・?」
マスター・リヴ「うんうん、これからの生活の為に必ず必要になるもんやよ」
マスター・リヴ「ほれ」
マスター・リヴ「これは”ガンマカプセル”言うて・・・まあなんや、よくある偽装アイテムどす」
マスター・リヴ「これを使うと自動で変身魔法が発動し、自身を人間の姿にしてくれる、今の御時世では超絶お役立ちアイテムなんよ」
マスター・リヴ「ウチの・・・・・・」
リヴ人間態「この姿もこのガンマカプセルによるものなんよ〜知っとった?」
ヴァジュラ「・・・・・・・・・」
リヴ人間態「何や、人の事変態でも見るような目で見よって」
ヴァジュラ「・・・ゴブローさんから聞いたんですが」
ヴァジュラ「そもそもスライムは単細胞生物の集合体だから性別なんて無いって話じゃないですか」
リヴ人間態「そうやで?」
ヴァジュラ「・・・じゃあ、もしかして」
ヴァジュラ「つ い と る ん で す か ?」
リヴ人間態「う ん ☆」
ヴァジュラ「・・・・・・・・・一応確認取りますけど」
ヴァジュラ「それ使ったら俺のジョニー(意味深)がおしまいになるとかないですよね!?!?!?!?」
リヴ人間態「大丈夫大丈夫、性別までは変わらんのはゴブロー達で確認済みやから!」
リヴ人間態「ささっ!グイッといきやグイッ!と!」
ヴァジュラ「んな大学の新人歓迎みたいに・・・」
ヴァジュラ「んーと・・・」
リヴ人間態「はい!そこで決め台詞!」
ヴァジュラ「ええ・・・決め台詞ぅ?」
ヴァジュラ「んーと・・・・・・」
ヴァジュラ「・・・・・・・・・」
ヴァジュラ「ヴァジュラ・カイジュウパワー・メイクアーップ・・・!?」
〇水の中
ヴァジュラ「おおっ・・・なんか本格的だな」
ヴァジュラ「でぇ人間の姿になるって事は・・・」
武川竜也「・・・こうなると考えるのが普通だよな」
ヴァジュラ「おっ、そろそろ初回特有の長ったらしい変身バンクが終わるぞ・・・」
ヴァジュラ「何が出るかな?何が出るかな〜?」
〇草原
ヴァジュラ人間態「な・・・なんじゃこりゃああ〜〜〜〜っ!?」
リヴ人間態「・・・まあ、前世の顔と全然違うのは当然やよ。種族レベルで別人に生まれ変わったんやし」
リヴ人間態「ショックやろうけど受け入れていくしか・・・」
ヴァジュラ人間態「めっちゃ美少年になってますやないか〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?」
ヴァジュラ人間態「うわっ!!最高っ!!この髪!!この顔!!主人公!!まさに主人公って感じ!!たまらんっ!!」
ヴァジュラ人間態「うっし!!外見ガチャSSRでしょこれは!!」
リヴ人間態「・・・・・・以外と嬉しそうやん?」
ヴァジュラ人間態「・・・先生」
ヴァジュラ人間態「リヴ先生ぐらい長生きなら解ると思いますけど、人間のルッキズムってマジ半端ないですから」
リヴ人間態「・・・それは知ってる、現にウチの分身ちゃん達もバリバリ殺されるのに」
リヴ人間態「それよりガチ有害のホワイトインフェルノケルベロスは”カワイイ〜♪”って放置されてますえ」
・ホワイトインフェルノケルベロス
意図して伝染病を媒介するやばいモンスター。外見がかわいいのは人間を欺くため。
ヴァジュラ人間態「なら、こういう姿の方が人間を欺くには丁度いいでしょう?」
リヴ人間態「まあそれはそうやけど・・・」
リヴ人間態「・・・自分で言ってて虚しくならへん? ”元人間”として」
ヴァジュラ人間態「・・・我ながらなんて愚かな種族だろうとは思います、元人間として」
リヴ人間態「・・・まあ、ヴァジュラくんの言う通り、コレは人間を欺くために作ったアイテムやから間違った意見ではないわ」
リヴ人間態「たとえば、人間の街に買い物に行かなあかん時とか・・・」
リヴ人間態「・・・想像したくあらへんけど、人間に隠れて生活せなあかんくなった時とか、な」
ヴァジュラ人間態「・・・・・・」
リヴ人間態「・・・まあ、持ってるに越した事はないどすえ。大事にしてくりゃれよ?」
ヴァジュラ人間態「・・・はい!!」
ヴァジュラ人間態「あと、これもとに戻るにはどうやったらいいんです?」
リヴ人間態「ああ、そこのスイッチ押したら戻れるえ」
ヴァジュラ人間態「そうですか、なら・・・」
ヴァジュラ「普段はこっちで過ごします」
リヴ人間態「えー?なんでよぉ、可愛いかったのにぃ」
ヴァジュラ「いや・・・」
ヴァジュラ「”なんで擬人化なんかするんだ!戻せ!”って一部の特殊な人達から怒られそうじゃないですか・・・」
リヴ人間態「あーそれかぁー・・・・・・」
リヴ人間態「だったらウチも・・・」
マスター・リヴ「こっちの姿に戻るとするわ」
マスター・リヴ「ああ、それと言い忘れとったけど・・・」
ヴァジュラ「何を?」
マスター・リヴ「実は決めセリフはとくにいらないんどす☆」
ヴァジュラ「おいっ!!!!!!」
〇空
・・・そんなこんなで、一日の特訓を終えた頃にはすっかり日は傾いていた。
〇寂れた村
・・・暮らす中で気づいたが、ゴブリン達の文明レベルは、思っているより高い。
ゴブリン「うっし、今年もええ小麦が育ちそうや」
ゴブリン「人間の街でもタコは高騰しとるなぁ・・・適当な触手モンスターで代用できるかなぁ」
ゴブリン「こないだ見た歌劇ほんま泣けたで・・・」
ゴブリン「ぐすっ・・・ガンマカプセル使ってでも見に行ってよかったわ・・・」
というか、この世界の人間とほとんど変わらない。ただ、大都市を作れるほどの生物的地位(ニッチ)ではないというだけだ。
どうやらゴブリン含む一部のモンスターはほとんどがそうらしい。異世界の道理は俺の知っている地球の都合とは大分異なるようだ。
おまけに、さっきも会話に出てきたタコや小麦など、俺のいた世界にいた生物もいるのだが・・・
・・・まあ、某光の巨人も最近は同じ怪獣が違う平行世界にわんさかいるし、そんなもんだろう。
ゴブロー「オオ!!帰ってきたかヴァジュラ!!」
ヴァジュラ「ただいま、ゴブローさん」
俺はゴブリン達の群れ(村?)の一員として迎え入れられ、今はゴブローさんの家に厄介になっている。
ゴブロー「・・・って、うおおっ!?」
ゴブロー「なんやこのクソデカスネーク・・・!?丸太みたいやん、どないしたん!?」
ヴァジュラ「特訓中に襲いかかってきたので〆ました♪」
ゴブロー「君どんどん現代っ子から野生に適応していくやん・・・」
ゴブロー「まあ、お肉なんていくらあってもええからな!今日はご馳走や!」
〇古民家の居間
リーヴ「・・・ほいじゃヴァジュラくん、お願いね」
ヴァジュラ「任せてください」
ヴァジュラ「・・・・・・」
ヴァジュラ「──────ッ!!!!」
リーヴ「よーし!!丁度ええ火力や!!ありがとなぁ」
・・・これはゴブローさんから聞いたのだが、リーヴさんは別に無愛想なのではない。
小さい頃に重い病気にかかり、表情筋が動かなくなってしまったのだそうだ。
それでも持ち前の明るさを保つ、芯の強い女性としてたくましく生きる姿は、僕も素直に尊敬の意を抱くものだ。
リッター「こんなでかいモンスターを一人で仕留めるなんて・・・!!」
リッター「偉大(パネェ)ッス、ヴァジュラさん!! マジ尊敬(リスペクト)ッス!!」
ヴァジュラ「えへへ・・・それほどでも」
そしてこの子が、そんな二人の間に生まれた一人息子のリッター。
低い確率で生まれる”ホブゴブリン”という突然変異個体で、その高い身体能力を活かして群れの戦士団に所属している。
リッター「マスター・リヴもドケチッス、ヴァジュラさんが戦士団にいてくれたら、 あの冒険者どもも・・・」
ゴブロー「こらリッター!!マスターを悪く言うとは何様のつもりや!!」
リッター「だっておとんも知っとるやろ!?ここいらで冒険者が現れよるって!!今日かて子供が襲われたんやで!?」
ヴァジュラ「子供が・・・・・・」
ヴァジュラ「・・・また出たんだね?」
リッター「はい、今月に入って5回目ッス・・・人間との条約ではここでの戦闘は禁止されてるハズなんスけどね」
リッター「しかも、何もしてない子供にいきなり襲いかかったとか・・・許せねえッス!!」
ゴブロー「・・・そういえば、街の方に言ったヤツが奇妙な噂を聞いたとか言いよったわ」
ゴブロー「なんでも人間が”鉄のでかい車”を動かしていたとか・・・」
ヴァジュラ「鉄のでかい車・・・?」
ヴァジュラ「・・・流石に、自動車ではないですよね」
ゴブロー「・・・そりゃあな、ここの文明レベル的にも自動車はないわ」
ゴブロー「群れの間では”装甲をつけてモンスターに引かせてる巨大な軍用馬車”じゃないか?とか言われとるけど・・・」
リッター(おとんとヴァジュラさん、時折変な会話すんねんな・・・なんのことやろ)
リーヴ「ほらー男子ども!!シリアスな話はそこまでにしときや!!飯が冷めるで!!」
「いただきまーす!!」
〇寂れた村
〇村の広場
ヴァジュラ「・・・・・・・・・」
ゴブロー「どないした?眠れんのか?」
ヴァジュラ「ゴブローさん・・・」
ヴァジュラ「それが・・・さっき話した”鉄のでかい車” が気になっちゃって・・・」
ヴァジュラ「たしかに、こちらの文明レベルで自動車を作るのは難しいですが・・・」
ヴァジュラ「・・・”勇者”なら話は別です」
ゴブロー「・・・前世から技術を持ち込んだ、 って事か?そんな都合のええ事可能なんか?」
ヴァジュラ「・・・俺の状況が状況だけに、そういった事が起きてもおかしくはないです」
ゴブロー「あー・・・・ヴァジュラの言う”ナロウ”?ってやつか・・・」
ゴブロー「おっちゃん、世代が違うからよう分からんのやけど、仮にその”ナロウ”とやらで自動車が出てくるならどんな話なん?」
ヴァジュラ「現代技術を持ち込んだ主人公が産業革命を起こして、その産物として・・・とかですかね」
ゴブロー「・・・まあ創作物として見るならロマンはあるけどなあ」
ゴブロー「・・・それを”暴力”として浴びせられる側からしたらたまったもんやないで」
ヴァジュラ「・・・・・・」
ヴァジュラ「・・・・・・・ほんと、何もなければいいんですが」
「敵襲ーーッ!!!!敵襲だァッ!!!!みんな起きろ!!!!」
ゴブロー「な、なんやて!?」
ヴァジュラ「・・・・・・俺、行ってきます!!」
ゴブロー「お、おいっ!?ヴァジュラくん!?」
〇寂れた村
ゴブリン「おんどれェ!!こんな夜遅くに何しにきよった!!」
冒険者「決まってんだろォ?昼間恥をかかせてくれたお前らゴブリンへの御礼返しだよ!!」
ゴブリン「恥・・・お前噂の冒険者か!?」
冒険者「そうだよ!!俺に恥かかせたガキ連れてこい!!ぶちのめしてやる!!」
ゴブリン「んな事言われて差し出すワケないやろアホンダラ!!」
ゴブリン「こっから先は俺ら戦士団が通さへんぞ!! 帰れッ!!」
冒険者「ハッハァ!! そんな脅しが通じるわけねーだろォ!?」
冒険者「魔王を倒した勇者の一人が来てるんだからなぁ〜〜〜!!!!」
ゴブリン「ゆ、勇者!?」
ゴブリン「あの男が・・・!?」
睦月豪「けけ、薄汚ぇゴブリンどもが・・・」
睦月豪「この”旋風の覇者”睦月豪(ムツキ・ゴオ)様の前にひれ伏しなぁ!!」
睦月豪「破斬風刃撃(ガストスラッシャー)!!!!」
ゴブリン「ぐっ・・・!!」
ゴブリン「がはぁっ・・・!?」
睦月豪「けけ、これが俺様の転生特典(リンカースキル)・・・”旋風の覇者”!!」
睦月豪「風を自由自在に操る事ができるのさ!! てめえら飛べないゴブリンにはぴったりの処刑方法だろ!?ハハハハハ!!」
冒険者「さっすが勇者サマ!! そこに痺れる!!憧れるゥ〜!!」
睦月豪「この調子で村のゴブリンどもを皆殺しにして・・・」
睦月豪「・・・?なんの音だ?」
冒険者「あっ・・・あいつだぁ!!」
〇空
〇寂れた村
ゴブリン「おお!!ヴァジュラ!!」
ゴブリン「来てくれたのか!!」
睦月豪「・・・へっ、あれが件のドラゴンか」
睦月豪(どどどどどどうしよッ!?思ったよりでかいよあいつゥゥゥゥゥゥゥ!?!?!?)
冒険者「あわわ、で、出たぁ・・・!!」
冒険者「勇者サマ!!早く、早くアレを!!」
睦月豪「おっ、おお!!そうだ!! 俺達にはアレがある!!」
分身スライム(・・・・・・”アレ”? 心配だから見に来てみたが・・・)
分身スライム(近づくまでウチが感知できないこいつらといい、なんなんどすか・・・?)
〇空
ヴァジュラ(リヴ先生の言った通りだ!!こいつら、巨大化した俺を前に戦意を失ってる!!)
ヴァジュラ(少し脅かして、そのまま追い出して・・・)
ヴァジュラ「──────────────!?」
〇寂れた村
分身スライム(今の爆発・・・・・・方向はあっちか!?)
────マスター・リヴは、その衝撃の飛来元を見た!!
〇空
ヴァジュラ(・・・な、なんだ今の・・・!?)
ヴァジュラもまた、自身に不意打ちを仕掛けた存在の飛来先を、遅れて見た!!
首を向ける数秒の間、ヴァジュラの脳裏に過ぎった予想は、魔法使いや弓矢士(アーチャー)等の遠距離専門職。
しかし、その瞳が暗闇の中に捉えた現実は、”なろう的”には陳腐であるが、衝撃的な答えであったッ!!
ヴァジュラ「────────────ッッ!?!?」
〇山並み
〇谷
──────────────戦車!!!!!
タンク、パンツァー、様々な呼び名があるそれは、一筋の疑いようもなく戦車そのものである!!
そしてそれは、本来ならこの世界に存在しないハズのモノなのだ!!!!!!
〇空
ヴァジュラ(・・・・・・・・・えっ?)
ヴァジュラ(あ、あまりに予想外かつシュールな絵面だからか、 思考がフリーズしてしまったァ───ッ)
ヴァジュラ(この世界の技術・・・魔法を含めても、戦車はおろか、自動車の類は作れない・・・)
ヴァジュラ(作る必要がないんじゃあなかったのか!? じゃあ、アレは!?前世からそのまま持ってきたような、アレは一体────!?)
分身スライム「思考を止めるな!!ヴァジュラ!!」
ヴァジュラ「──────ッ!!!! リヴ先生!!」
〇寂れた村
分身スライム「まずはあの”銀の車”を破壊しろッ! ヤツの砲撃能力は脅威だ!!」
分身スライム「疑問を明かすのはそれからにすればいい!! まずは村を守れッ!!」
〇空
ヴァジュラ「・・・・・・・・・はっ、はい!!」
ヴァジュラ「・・・・火炎放射(ファイヤーブレス)!!!!」
〇谷
〇寂れた村
冒険者「ラジタンクが・・・勇者の力が、溶けた」
冒険者「あれは・・・ば、バケモノだぁぁ!!」
睦月豪「お、おい!!置いていくな!! 俺は勇者だぞーーっ!!」
ゴブリン「待てやゴラァっ!!」
ゴブリン「・・・くそっ!!逃げ足の早いやつやで」
〇西洋の城
同時刻───────バースティ帝国皇城
〇謁見の間
大河太吾「・・・あ?任務失敗?」
大河太吾「ざっけんじゃねえぞコラ、わざわざラジタンク一機貸しておいてなんでゴブリン村一つ潰せねーんだ、あ?」
大悟大河(ダイゴ・タイガ)。
野球部に所属しており、表向きは友情に厚い熱血ヤンキーピッチャーとして通っている。
燕山礼二「・・・まあそう言うなよ、想定の内だよそれぐらい」
燕山礼二(エンザン・レイジ)
3-Bクラスの中心人物で、男女共に信頼は厚い。サッカー部のキャプテンをしている。
河合美華「つーかアンタ、なんで異世界(こっち)でまで学ランなワケ?意味わかんないんだけど・・・」
大河太吾「ヒント”大人の事情”」
河合美華「よし!!!!この話やめよう!!!!!!」
河合美華(カワイ・ミカ)
3年女子の頂点に立つ「クインビー」。SNSのフォロワーが万を超えるインフルエンサーでもある。
燕山礼二「・・・で、こっちの話を続けていいか?」
大河太吾「・・・っと、そうだったな。続けてくれ、礼二」
燕山礼二「・・・さて」
燕山礼二「俺達3-Bクラスは修学旅行の最中に事故にあい、この世界に新たな生を受けた」
燕山礼二「それは、魔王を倒し世界を守るため。そのラジタンクもその過程で生み出された力の一つだ」
燕山礼二「それが破壊された、という事は・・・」
燕山礼二「・・・平和を乱す悪が現れたという事さ」
河合美華「・・・にゃるほどねぇ」
河合美華「んじゃ”一狩り”いっとく〜?」
大河太吾「ギャハハッ!!いくっきゃねーだろ男なら!!」
燕山礼二「3-Bのクラスメート一丸となって、世界に平和をもたらそうじゃないか・・・!!」
燕山礼二「ああそれと、そのラジタンクを破壊したモンスターだけれど・・・」
燕山礼二「・・・”怪獣のような姿”をしていたそうだ」
大河太吾「へえ・・・つーとまさかアイツだな! ギャハハッ!」
河合美華「・・・だから勇者の数が、クラス・マイナス・一人だったワケね」
河合美華「あいつ、勇者からもハブられてやんのw ウケルw」
燕山礼二「・・・身の程を忘れたバカにはちゃんと教えてやらんとな?」
燕山礼二「楽しみにしてろよ?”オタツヤ”w」
・・・今、幸せな生活は崩れ落ちた。
前世から因縁は、その
”ワースト・コンタクト”により再び噛み合い、物語の歯車を回しだした!!
そして・・・一つのクラスの歪みは、異世界を巻き込んだ巨大な戦いへと発展していくのである!
???(・・・・・・・・・)
???(・・・・・竜也くん・・・・・・!!)