ゲームでおっさんを助けたら美少女だった件

夏目心 KOKORONATSUME

5 一匹狼の経緯(脚本)

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夏目心 KOKORONATSUME

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〇荒廃した街
  後日、俺はまた心オープンワールドにログインしていた。今日の目的は素材集め。前にアズがゲットした武器一式セットを
  完成させる事だった。あれさえ使える様に成れば他の上級者にも引けを取らないプレイが出来る様に成るからだ。
  一応俺は既に持ってるが、このゲームは大体素手でも行けるので余程の事が無ければ使わない。
  何処で素材集めをしようか考えてる中、アズが新しいアバターでログインして来た。
霧島梓「コウ君!お待たせ!」
神代昂輝「あぁ、待ってたって・・・」
  リアルでもそうだったが、彼女は本当に女の子なんだと実感した。あの時助けたおっさんがこの娘と同一人物。その事に実感が
  湧かなかった。
霧島梓「どうしたの?何処か変かな?」
神代昂輝「そ、そんな事無いよ!可愛く出来てるじゃん」
霧島梓「そう言ってくれると嬉しいよ!じゃあ行こうか!」
  俺達は合流して、素材集めに行こうとしたその時だった。
住谷和也「あれ〜?コウじゃ無いか。デブのおっさんリストラして可愛い女の子なんて連れちゃってやるねぇ」
  どんなタイミングか知らないがカズが俺達に声を掛けて来た。俺達の気分はこいつの所為で台無しだ。
住谷和也「お嬢さん、名前は?」
霧島梓「アズです」
住谷和也「アズ!?コウが連れてたおっさんと同じ名前か!あのおっさんリアルでは女の子だったのか!あの時は失礼な態度取ったね!」
神代昂輝「相手が女の子だと分かってこの手の平返し、関心しないぜ?」
住谷和也「お固いねぇ。まぁその話は水に流して。アズちゃん、良かったら僕のチームに入らないかい?キャリアが浅いってなら」
住谷和也「この僕が手取り足取り教えて上げるよ。ついでにコウを僕のチームに入らないか説得出来ないかな?」
  このタイミングで勧誘するとは、こいつ一体どう言う神経してるのかと疑いたく成った。だけど、アズはカズに言い返す。
霧島梓「私が貴方に教えて貰う事も貴方のチームに入る事も有りません。人を見かけで判断したり、自分の事棚に上げる人って、」
霧島梓「リーダーとして成って無いと思います。貴方がコウ君を引き入れたい理由は知りませんが、私とコウ君はチームなんです」
霧島梓「この話は聞かなかった事にさせて頂きます。コウ君、こんな人と話しても時間の無駄だから行こう」
  アズは俺の手を取ってこの場を去ろうとした。アズに反論されてカズはムキに成ったのか、再び口を開く。
住谷和也「この僕がコウに拘る理由!?決まってるだろ!?僕達は高校時代、学校の先生に一目置かれる程のエリートだからだよ!」
神代昂輝「・・・・・・!?」
住谷和也「僕達は成績優秀で運動神経も良い!だから先生達は僕達の道を作ってくれた!僕とコウは友達なんだ!だけど突然、コウが先生の」
住谷和也「言う事無視して自分の行きたい大学行って、先生達をガッカリさせたんだよ!僕はこいつに教えてやりたいんだ!」
住谷和也「先生達に一目置かれた僕達は勝ち組なんだって!」
霧島梓「先生?勝ち組?何言ってるんですか?」
神代昂輝「思い出したく無い事をズケズケと、アズ、もう行こう!」
  俺はアズの手を取りその場を走り去った。残ったのは不満気な表情をしたカズだけだった。
住谷和也「何であいつは先生の言う事聞くの止めたんだろう。間違い無く出世出来たのに」
カズ組「リーダー!向こうで仲間が足速の大群に襲われてます!直ぐに援護を!」
住谷和也「あ〜はいはい分かった、直ぐ行くから」
  カズは仲間に呼ばれると渋々援護に向かった。

〇荒れた倉庫
サツ「う~・・・」
学者「う~・・・」
サツ「う~!!」
霧島梓「良し!倒した!」
  俺達は素材集めの為に倉庫を訪れて居た。街中では中々お目に掛かれない学者やサツのゾンビも見受けられ、薬や銃、
  銃の弾も集まって居た。
神代昂輝「サツは拳銃関連の物を落とし易いし、学者は回復アイテムを落としてくれるからって、前に説明したよな」
神代昂輝「こうして見ると本当腕を上げたよ」
霧島梓「それもこれもコウ君のお陰だよ!あの時私を助けてくれて本当に有難う!」
  こうしてお礼を言われるのは悪く無いと思った。だけど、何処か俺の気分は晴れなかった。
霧島梓「あの、コウ君。大丈夫?」
神代昂輝「え!?どうしたの急に」
霧島梓「どうしたのはこっちの台詞だよ。さっきのカズって人から言われた事は気にしなくて良いと思うよ。それより、何か思う事が」
霧島梓「有るなら話して見てよ。一人で溜め込んでたら、コウ君がパンクしちゃうよ」
  アズには俺が思う所が有る事を見抜かれていた。だけど、折角チームとしてやってるなら、少し位相談しても良いと思った。
神代昂輝「御免、考え事してたのは本当。アズ、君は俺をどう思う?」
霧島梓「どうって、優しくて、ゲーム好きで、無意味な差別と曲がった事が嫌いで」
神代昂輝「そっか。君からはそんな風に見られてたのか」
霧島梓「あの、勿体振って無いで教えてよ。カズって人と何が有ったの?」
神代昂輝「御免御免、あいつが俺等をエリートって言ってたのは本当の話だ。それ故に、ちょっと嫌な思い出が有ってさ」
  俺は昔の話をアズに打ち明ける事にした。約1年前に力を持ったが故に、俺に起きた出来事だった。

〇学校の校舎
  まだ俺が高校3年生の頃だった。俺とカズは昔から一緒の学校で、何をするにも競い合ってた。
住谷和也「くぅぅぅ!後ちょっとだったのに!」
神代昂輝「今回のテスト、俺の勝ちだな」
住谷和也「畜生見てろよ!次は絶対僕が勝つからな!」
神代昂輝「あぁ、次も絶対俺が勝つ」
  幼い頃からのライバルと言う事も有り、お互い負けたく無いと言う理由で勉強や運動を頑張って居た。そのお陰で成績も上がり、
  周りからも尊敬されていた。生徒だけで無く先生からもだ。

〇散らかった職員室
  ある日の事だった。
神代昂輝「冷徹企業に、ですか?」
男性教員「そうだ。今年で3年生に成り進路も決めねば成らぬだろう。神代は成績上位の一人で手際も良い。冷徹企業は君に向いてると思い」
男性教員「我々の方から推薦させて貰い、再来週から実習に行って貰う事にした」
神代昂輝「待って下さい!確かにあそこは一流企業ですが、俺はあの職場に向いて無いってハッキリ言いましたよね!?」
神代昂輝「しかも、何で俺なんですか!?成績上位者なんて他にも!」
男性教員「教員会議で真剣に議論した結果、神代以外に向いてる者が居ないと結論付いたのだよ!私としても是非受けて欲しいんだ!」
男性教員「頼むよ!君には是非、冷徹企業に行って欲しい」
  この時の俺は他人の為に何かをする事はとても大事だと思っていた。3年生に成ったあの頃、俺は自分のこれからをどうしようか
  迷っていた。担任からの熱烈な申し出に押され、この時の俺は断る事が出来なかった。
神代昂輝「分かりました。冷徹企業への実習、受けます」
男性教員「そうだそれで良い!頑張って来るんだぞ!」
  それから数日して、俺は一流企業で在る冷徹企業へ実習を開始する事と成った。2週間はやってたと思うが、正直自分で
  やって見て、またやりたい、またしたいと言った気持ちはこれっぽっちも湧かなかった。実習には真剣に取り組んだつもりでは
  有った物の、これが毎日続くと考えたら溜息しか出なかった。実習最終日を終えた次の日、冷徹企業は俺の仕事振りを見て、
  やる気が全く感じられなかったと言われて不採用と成り、俺の実習は終わり、担任の先生はガッカリして帰って行った。
  実習が終わって学校に戻ったある日、俺は悲しい事実を知らされた。
神代昂輝「神代です。日直日誌持って来ました」
女性教員「そうですか。神代君、冷徹企業に落ちたんですね」
男性教員「あぁ、彼ならやってくれると思ってたんですがねぇ」
神代昂輝「・・・・・・?」
  先生方が何かを話していた。俺は声を掛けずに物陰に隠れる。
女性教員「私も神代君ならやってくれると思ってたんですよ。彼が冷徹企業に受かれば私達の事も教育委員会が評価してくれると思ったのに」
女性教員「それなのに神代君、やる気を感じられないとか」
男性教員「そこなんですよ。彼に書かせた御礼状も、冷徹企業に対する思い入れを全く感じられなかった。我々は彼を買い被り過ぎてたのかも」
男性教員「知れません。他に冷徹企業に行かせられそうな生徒は居ない。折角我々が出世出来るチャンスだったのに、神代の奴、それを」
男性教員「棒に振った。何の為に今日まで頑張ったのか」
神代昂輝「な・・・何だよそれ・・・どう言う事だよ・・・俺・・・自分達の評価上げる為だけに行きたくも無い所に放り込まれたのかよ」
神代昂輝「何を・・・俺は今まで何をして居たんだ・・・・・・こんな奴等なんかの為に・・・俺は・・・!!」
  怒りと憎しみと言うより、只々悲しかった。今まで信じて頑張って来た事が、こんな形で裏切られた事。頭の中が真っ白に成った俺は
  職員室を出て一人で走り去った。

〇学校の廊下
住谷和也「あれ?コウじゃん!先生達から評価貰えた?」
神代昂輝「・・・・・・」
住谷和也「あれ?どうした?もしかして怒られたりしたのぉ?」
  その時の俺には、誰の言葉も耳に入らなかった。
住谷和也「おぉい何処行くんだよ!?一流企業受からなかったって聞いたが、そんなにショックだったのか?」

〇荒れた倉庫
神代昂輝「てな感じで、俺は先生の紹介した進路を全部無視して、夏目大学の受験を受けて合格した訳。俺はあいつ等に取っての出世の」
神代昂輝「為の道具でしか無かったって話だ」
霧島梓「そんな!出世欲の為に生徒をそんな風に扱うだなんて!」
神代昂輝「それで、大学に入った直後にこのゲームに出会って、今日に至った訳よ。あの教員共の顔は二度と見たく無いって今でも思ってる」
  俺はこれまで自分に起きた事をアズに話した。俺は誰かが勝手に決めた道を歩くのが嫌で一人を選び、俺が誰かを決め付けるのが
  怖くて一人を選んだ。その上で、俺は一人で在る事の嬉しさ、楽しさ、寂しさ、虚しさと言った数多の感情を知る事と成った。
神代昂輝「まぁこの事は誰にも話さなかったからカズもあんな感じなんだよね」
霧島梓「こんな酷い話無いよ!自分の未来は自分で決めなきゃいけないのに、何で学校の先生が勝手に決める訳!?」
霧島梓「生徒を守る先生が聞いて呆れたわ!私がトップだったらそいつ等クビにしてたよ!」
  今まで誰にも話した事が無かったが、まさか此処まで怒ってくれる人が居るとは思わなかった。
霧島梓「カズさんもカズさんだよ!友達だと思うなら相手の事理解しなくちゃ!それなのに自分の都合ばっかで、一発打ん殴って」
霧島梓「やらないと気が済まないよ!」
神代昂輝「分かった!気持ちだけで充分だから」
  俺は俺の代わりに怒ってくれたアズを落ち着かせた。アズは何だか腑に落ちない感じだったが、今此処で考えても仕方の無い
  事だった。
霧島梓「コウ君!何か困った事が有れば私に相談してよね!私はコウ君の味方だから!」
神代昂輝「有難う、でも大丈夫だから」
霧島梓「でも無理しないでね!もう昔の事は忘れて、私達でこれからを変えて行こう!自分のやりたい事、自分が行きたい場所、」
霧島梓「どれもこれも自分で決めて良い物だから!」
  何だか年下の女の子に救われた様な気がしてしまった。彼女の言う通り、俺はこれからを変えれば良い。アズの言葉の中に
  何処か俺の事が好き見たいな発言が有った様に聞こえたが、今は気にしないで置いた。
  休憩を終わらせた俺達はその後、無事に武器一式セットを完成させた。

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