保湿ノZ

山本律磨

その2(脚本)

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山本律磨

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〇ボウリング場
  『さあ今宵も我がサークルの女王いつき様に一言頂きましょう!どうぞー!』
いつき「よーし!盛り上げちゃうぞーーーーー!」
  なんでだろ?
  私、みんなの為にあんなに叫んでたのに。
  あんなに馬鹿みたいに騒いでたのに。
  私の声は、私の言葉は、
  誰にも届いてなんていなかった。
  私だけ一人ねじくれて・・・
  いや、違う。
  私だけは一人、真っ当だと思って。
  あんた達と一緒にするな。
  そう思って。

〇壁
  自分一人じゃなんにもできない・・・
  そのくせ自分の事しか考えてない・・・
  そんな、あんた達と私は違う。
  そう思って。
  そう思って!

〇モヤモヤ

〇露天風呂
「・・・」
女子「す、すみません。騒いじゃって」
女子「出よっか・・・」
  だから私は、

〇中庭
  あえて、この仕事を選んだんだ。
いつき「お早うございまーす。今日は5月12日の金曜日でーす」
いつき「ではみなさーん。朝の体操を始めましょう」
いつき「1、2、3、4、5、6、7、8」
  『1、2、3、4、5、6、7、8』

〇中庭
  そこそこの大学出てこの仕事についた時
  『偉いよ~』とか『意識高~い』とか
  そんな、呆れてんだか茶化してんだか分からないリアクションをされたっけ。
男「それでは今日も盛り上げて頂きましょう!」
いつき「よーし!盛り上げちゃうぞー!」
  『何よアンタ!私を裸にしてどうするの!この人でなし!』
  『いやあああ!警察!警察を呼んで!』

〇白いバスルーム
いつき「はーい。そろそろ上がらないとのぼせちゃいますよ~」
  『お風呂くらいゆっくり入らせなさいよ。この人でなし~』
  これは誰かがやらなきゃいけない仕事。
女「さすがでーす!いつきせんぱーい!」
  楽しい事ばっか求めていたあんた達には、絶対真似できない仕事なのよ。
利用者「きもちよかったわ~ありがとね~」
いつき「は~い。次の人~」
利用者「風呂はいいだろ!儂は入らん!」
  何言われたってへっちゃらだ。
健也「俺達、付き合ってみるか?」
  アンタ達とは違うんだ。
利用者「触るな!服くらい一人で脱げる!」
  何言われても私は人のために生きるんだ。
菜々子「お疲れ様でーす。わかんないけどー」
  私はアンタ達とは違う。
  アンタ達とは・・・
  どうせ・・・
  どうせアンタ達とは違う!
Z「アー」
Z「アー」
  そっか。私、ゾンビになったんだ。
Z「アー」
  傷ついて、ふて腐れて、
  本当に腐っちゃった。
Z「アー」
  良かった。
Z「アー」
  これでもう、痛くないや。
  『ご夕食をお持ちしました』

〇旅館の和室
Z「アー」
  私はもう、飾りもない。
Z「アー」
  衒いもない。
Z「アー」
  醜くて、腐ってて、干からびてる。
  ゾンビだ。
女将「失礼します。お茶をお持ちしました」
Z「アー」
女将「武藤様にはこの五年間ご贔屓にして頂き、有難うございます」
Z「アー」
女将「はい。こうして皆様に最後のご挨拶をさせて頂いております」
Z「・・・ア?」
  ・・・最後?
  最後って・・・なに?
女将「まあこんな小さな旅館ですし」
女将「主人が亡くなって私一人で頑張って参りましたが、子供もおりませんし、他の誰かに継がせる程の由緒もありませんしね」
女将「ですので今月いっぱいで店じまいと・・・」
Z「アアアアアアアアーーーーーーッ!」
  つづく

次のエピソード:その3

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