エピソード7・心の中(脚本)
〇黒背景
少し、妙だと思っていたことがある。一番最初の試練の時のことだ。
〇殺風景な部屋
須藤蒼「この部屋、僕達以外誰もいないみたいなんです。 ドアらしいものもなくて」
蒼は俺が目覚めた直後にこう言った。ドアらしいものはない、と。
明らかにドアに見える窪みがあったにも関わらず。
そして暫くの後にこうも言っている。
須藤蒼「で、でもこのままじゃ、あのドアみたいなところが水に浸かって開かなくなるんじゃ!」
彼は、俺があの部屋を調べる前に目覚めていた。そして知っていた。
あのドアに見える窪みが出口ではないこと。
目覚めた直後に理解していたのに、後でそれを覆している。あそこがドアだと思い込んでいた、そのように発言を修正した。
彼は、あの窪みが出口ではないことを知らない。そういう設定だったのではないか。起床時はうっかりそれを失念していたのでは?
蒼が何かを隠している、そう感じる根拠はもう一つある。
最初の部屋で俺は確かこう発言した。
峯岸輪廻「出入口がないなら、どうやって犯人は俺たちをこの部屋に突っ込んだ? 人間は壁を通り抜けたりできないんだぜ?」
犯人。単数形。
理由はこの時点でまだ、単独犯の可能性を完全に切れてはいなかったから。
しかし俺のこの発言より前に、蒼は流れるようにこう話している。
須藤蒼「み、峯岸さん。本当に、誘拐犯たちは僕達を殺すつもり、なのかな?」
誘拐犯“たち”。
彼が誘拐されきた時、遭遇したのは一人の男だったはず。それなのに彼は複数形を語った。
蒼はこの誘拐が、組織的犯行だと予め知っていたのではないか?
あるいは、誘拐犯側の人間である可能性もあるのでは?
そもそも最初の水のトラップ。俺と蒼、どちらかがカナヅチだったらクリアできていない。
何もかも都合が良すぎる。・・・彼は敵か、味方か?俺はきちんと確かめなければいけない。
そして、敵だったとしても・・・やることは同じだ。
〇黒背景
絶対に、助ける。
こんな子供を犯罪に加担させるような連中を、許すことなんてできないんだから。
〇警察署の食堂
峯岸輪廻「悪いな、朝ごはんおにぎりだけで」
峯岸輪廻「少しは眠れたか?」
須藤蒼「は、はい!意外とベッドが快適だったから!」
須藤蒼「ていうか、昨日の晩御飯にくわえて今日の朝ごはんまで作ってもらっちゃってごめんなさい・・・。僕なんもしてないや」
峯岸輪廻「気にしなくていい。こういうのは得意な人間に任せておけばいいんだ」
峯岸輪廻「ま、お前も帰ったら料理は積極的に手伝うといいぞ。他の家事以上に、人生の役に立つからな」
峯岸輪廻「何より達成感がある!作ったものを自分で食べられるってのはいいもんだろ」
須藤蒼「それは、確かにそうかも。お腹膨れるし」
峯岸輪廻「自分の料理を食べて誰かが喜んでくれるっていうのも、嬉しいもんだしな」
峯岸輪廻「・・・なあ、蒼」
須藤蒼「? なんですか?」
峯岸輪廻「・・・俺は、頼りになる人間じゃないかもしれないが。それでもだ」
峯岸輪廻「悩んでることや、困っていることがあったら言えよ。人間、一人で背負える量には限りがあるんだから」
須藤蒼「・・・はい。肝に銘じておきます」
峯岸輪廻(敬語はいらんと言ったんだけどなあ・・・)
峯岸輪廻「来たな、次の指示だ」
須藤蒼「だ、第三の試練がついに・・・」
『皆さん、皆さん。おはようございます。よく眠れましたでしょうか?』
『現在皆さんがいるエリアは、あと十五分で閉鎖いたします。お食事、お手洗いなどはその間に済ませてください』
『第三の試練へ続く扉を開けてあります。廊下に出られましたら、まっすぐ真正面に進んでください』
『昨夜は開かなかった“NEXT”の扉が開いているはずです。リタイアされるおつもりでなければ、そちらにお進みください』
『今回も、閉鎖エリアに残られました場合は、毒ガスを流させていただきますのでそのおつもりで・・・』
峯岸輪廻「いつものパターンってことらしい。蒼、トイレは済ませたか?」
須藤蒼「だ、大丈夫」
峯岸輪廻「食べ終わってさくっと片づけたら次に進むぞ。気が進まないが仕方ない」
峯岸輪廻「・・・さて、今度は何を試されるやら、だ」
須藤蒼「うん・・・」
〇研究施設の廊下
〇牢屋の扉(鍵無し)
峯岸輪廻「ここだな、行くぞ」
須藤蒼「はい・・・」
〇組織のアジト
須藤蒼「え!?」
峯岸輪廻「これは・・・!」
芦田ルミカ「あら、まさかの・・・」
赤井鳳輔「ガキ二人かよ、マジか」
峯岸輪廻「・・・驚いた。まさか、他の“参加者”か?」
峯岸輪廻「今まで声は聴いたことがあっても姿は見たことがなかったから、ひょっとしたらと思っていたが・・・」
須藤蒼「ほ、本当にいたんだ、他に人・・・」
芦田ルミカ「驚いたのはこっちも同じよ。あ、わたしは芦田ルミカ。そっちの男の人は赤井鳳輔さんっていうんですって」
芦田ルミカ「どうやら次のゲームは、この四人でやるらしいの。 まず、そのテーブルに置いてある紙を読んでくれないかしら」
峯岸輪廻「紙?」
須藤蒼「あ、多分これだね・・・」
『今度のゲームは、四人で行う。』
『四人が揃ったら、この紙の横にある箱の鍵が開く。中のカードを、一人一枚取ること』
『自分以外のカードを、他の人間に見せてはいけない。教えてもいけない。これは、それを当てるゲームである』
輪廻くん、我が家に欲しいです!オムライスに加えて朝食まで……
蒼くんの違和感を言語化してくれてスッキリです。ただ、それに関して蒼くんを問い詰めないのも輪廻くんらしさですかね!
登場人物も増え、多彩なボイス表現は素晴らしいですね!