エピソード6・腹の中(脚本)
〇警察署の食堂
須藤蒼「・・・・・・」
峯岸輪廻「・・・・・・」
峯岸輪廻「・・・ただいまの状況を解説しましょう」
峯岸輪廻「突然誘拐されて拉致されてデスゲームに参加させられて変な青い通路に出たと思ったら」
峯岸輪廻「ドアの先が何やらフツーの休憩所っぽいところに繋がっていた。 以上」
須藤蒼「以上・・・」
峯岸輪廻「奥のドアはトイレっぽいし、テーブルはあるし、なんならベンチもある。 つか、トイレの横、仮眠室って書いてあるな」
須藤蒼「シャワールーム、って書いてあるドアもあるよね・・・」
須藤蒼「また同じ服の着替えが置いてありそう」
峯岸輪廻「俺達を誘拐した組織は何がやりたいんだ? もてなしたいのか殺したいのかはっきりしろよと」
須藤蒼「相変わらず人の気配はないけど・・・あ、なんかテーブルに紙が置いてあるような」
『第二の試練をクリアされた皆さん、お疲れ様でした』
『本日の試練はこれで終了となります。
次は明日の午前中からの開始となります』
『明日の八時にアナウンスを流しますので、それまでお休みください。食料や水、設備はご自由にお使いください』
峯岸輪廻「ご自由に、ねえ」
須藤蒼「実際、疲れてはいるけど・・・こんなところで寛げと言われても」
峯岸輪廻「ん?」
須藤蒼「あ・・・」
峯岸輪廻「なんだ、腹減ってるんじゃないか。正直にそう言えばいいのに」
須藤蒼「で、ででででも、こんな状況なのにお腹すいたとか言ってられないし・・・」
峯岸輪廻「腹が減っては戦はできぬって言うだろ?遠慮するな。腹ごしらえは必要だ」
峯岸輪廻「お互い、誘拐されてきてから何も食べてないしな。時計見たところ結構時間も過ぎてる」
峯岸輪廻「明日の朝まで何も起こらないって言ってるんだ。ここは信じて一息つこうぜ」
須藤蒼「だ、大丈夫なのかなあ?」
峯岸輪廻「割り切ることも大切な、こういう場所ならな。 奥にキッチンがあるな。何か食べ物入ってるかなー?」
〇おしゃれなキッチン
峯岸輪廻「えーっと、冷蔵庫の中は・・・」
峯岸輪廻「卵に・・・」
峯岸輪廻「お、チンできるご飯がある。使えるな」
峯岸輪廻「調味料も充実してるし・・・」
峯岸輪廻「ふんふん」
峯岸輪廻「ほうほうほう・・・」
「あのー、輪廻さーん? 僕も何か・・・」
峯岸輪廻「いや、大丈夫だ。すぐ終わるから」
「???」
〇警察署の食堂
須藤蒼「・・・・・・」
峯岸輪廻「できたぞー。ご飯はチンしたやつだし、超時短だけどな」
須藤蒼「お、おむらいす・・・・・・?」
峯岸輪廻「おう、オムライスだ。嫌いだったらすまんな。卵やケチャップがあったもんだから」
須藤蒼「う、ううん!大好き! でもすごいや、こんな短時間で・・・。あれ?輪廻さんって記憶喪失なんじゃ」
峯岸輪廻「それなー。自分に関しては何も思い出せないのに、それ以外のことは覚えてるんだ。 料理のやり方とかな」
峯岸輪廻「多分俺は元々こういうことが得意だったんだろうな。でもって、人に作るのも好きだったんだろう」
峯岸輪廻「不思議だな、人間の記憶ってやつは」
峯岸輪廻「とりあえず、冷めるから食え。俺も食べる」
須藤蒼「は、はい!いただきます!」
須藤蒼「おいしー!」
峯岸輪廻「それは良かった!」
須藤蒼「すごいなあ。高校生くらいの男の人って、あんまり料理得意なイメージないのに」
峯岸輪廻「ひょっとしたら自炊してたのかもなー。遠くの高校に通うために一人暮らしとか」
須藤蒼「輪廻さんならできそう。あと部屋の中綺麗そう。脱ぎ散らかした服とか落ちてなさそう」
峯岸輪廻「そ、そうか?」
須藤蒼「うん。僕は片付けるの苦手だから、すぐ部屋の中が大変なことになっちゃって・・・」
須藤蒼「でも、僕の片付け下手なのは絶対お父さんの影響。お父さんも部屋がめっちゃ汚いんだ」
須藤蒼「お父さん、コレクターってやつでさ。よくわかんない本とか玩具とか集めるの大好きで、大好きすぎてよく土砂崩れ起こしてて」
峯岸輪廻「あー」
須藤蒼「ついにこの間、床が抜けてお母さんのカミナリが落ちて・・・」
峯岸輪廻「じゅ、住宅の床ってそう簡単に抜けるものなのか・・・!?」
須藤蒼「僕だって信じられないけど実際にこの目で見ちゃったからどうしようもない」
須藤蒼「お母さん、鬼婆の顔になってたよね・・・」
峯岸輪廻「そ、そりゃそうなるよな、うん・・・」
須藤蒼「ふう、ごちそうさまでした」
峯岸輪廻「はい、お粗末様でした」
峯岸輪廻「・・・家族のこと、思い出しちゃったか?」
須藤蒼「・・・うん。きっと、僕が帰ってこなくて心配してるだろうなって」
須藤蒼「いつも通りの帰り道だったんだ。遅く帰る予定もなかった。きっとお母さん、晩御飯作って待っててくれたと思う」
須藤蒼「警察に、届け出出してるかも。探し回って、危ないことしてないといいけど・・・」
須藤蒼「あっ!ごめんなさい、輪廻さん。輪廻さん家族のこと、何も思い出せないのに・・・」
峯岸輪廻「気にしなくていい。確かに記憶はないが、不思議と寂しくないんだ」
峯岸輪廻「きっとお前が一緒だからだろうな。なんか、家族が傍にいるみたいな気がしてるんだ」
峯岸輪廻「俺はきっと、お前くらいの弟がいたんじゃないかって思う。だから無意識に重ねてるんだろうな」
峯岸輪廻「このゲーム、一人じゃなくて本当に良かったと思ってる。 一人だったらとっくに心が折れていたかもしれない」
須藤蒼「そ、それは僕の台詞!僕の方が、全然役に立ててないし・・・!」
須藤蒼「料理まで作ってもらっちゃって・・・本当に感謝してもしきれない、です。 本当にありがとう・・・!」
峯岸輪廻「ふふっ」
峯岸輪廻「・・・いいな。一人じゃないってのは。心強いだけじゃない」
峯岸輪廻「人の世界は、一人じゃないからこそ回る。広がる。繋がる。変わる。進化する」
峯岸輪廻「二人揃って進化していく。このゲームの運営もそれを狙って、俺達二人を組ませたのかもなぁ・・・」
須藤蒼「そういうこと、なのかな。よくわからないけど」
峯岸輪廻「・・・疲れただろ。今日は早めに寝ようぜ」
峯岸輪廻「大丈夫だ。二人なら、きっと次の試練も乗り越えられる。 必ずここから脱出できる。信じる限り、必ず」
須藤蒼「・・・はい!僕も、信じます!」
須藤蒼「あ、あの、輪廻さん、その・・・」
峯岸輪廻「ん?なんだ?」
須藤蒼「僕、実は・・・」
須藤蒼「・・・・・・」
須藤蒼「・・・・・・」
須藤蒼「・・・ごめんなさい、なんでもない、です」
須藤蒼「おやすみなさい・・・」
峯岸輪廻「・・・?おやすみ」
峯岸輪廻(・・・なんだ?何を言いかけたんだ?)
峯岸輪廻(この子はやっぱり、何か知っているのか?)
論理的思考力が問われる第二の試練から、とっても穏やかな一時の休息😊
蒼くんも気が緩んだのか、色々と話してくれるように……でも蒼くんを疑う輪廻くん😱 試練に加え、蒼くんの正体やデスゲームの目的など、謎が重層的に構築されていて興味が尽きないです✨
これまでの緊張感が多少和らぐ、ハートウォーミングな回ですね!輪廻くんの調理スキルが!?男子高校生がキレイなオムライスって……
という回でも、キッチリと謎や違和感を最後に置いていかれるので、次回への興味がww