ぼくらの就職活動日記

大杉たま

エピソード34(脚本)

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〇コンサートの控室
  競技場の控室では、紅音を含めた受験生たちが待機していた。
中園瑚白「紅音」
真田紅音「ああ」
中園瑚白「さっきはごめんなさい、柄にもなく緊張してたの」
真田紅音「うん、わかるよ」
真田紅音「瑚白は乗馬なんだね、リッチな感じだ。 流石は創業者の──」
中園瑚白「しっ、人前で言わないで」
真田紅音「ごめん。瑚白は会場ここ?」
中園瑚白「ええ、グラウンドを乗馬ができるようにセッティングするらしい」
中園瑚白「ホントに、派手なことするのには労力を惜しまない」
真田紅音「僕は近くの撮影スタジオらしい。 完全防音の個室で、社員の人と二人きり」
中園瑚白「ババ抜き、たしかに人の嘘がわかったらまず負けないでしょうね」
真田紅音「二番目の兄が、これだけは僕に勝てなかったって言ってたよ」
中園瑚白「・・・一茶、来てるみたい。 メッセージがきてた」
真田紅音「・・・そうなんだ」
中園瑚白「私、あの後連絡とってみたの。 恨まれているのはわかってたから、キチンと罵倒されようって」
中園瑚白「でも、すごくあっさりしてて、自分もあの状況だったら同じように嘘をついてたとか、むしろ応援されたりして」
中園瑚白「なんだか、ホッとして、嬉しかった」
真田紅音「・・・そう」
中園瑚白「今日も応援に来てくれたみたいで。 なんていうか、落ちた人の分まで頑張らなきゃいけないと思った」
真田紅音「・・・そっか」
中園瑚白「うん」
  控え室のテレビでは、果し状選考に出演予定のエリートピア社員たちの紹介をしていた。
  ちょうど紅音の対戦相手の落合俊介が奥さんと子供二人と映っている。
  落合は家族とともに「がんばるぞー!」とカメラに向かって声をあげた。
真田紅音「・・・・・・」

〇施設の男子トイレ
  紅音がお腹をさすりながらトイレに向かうと個室はすべて埋まっていた。
  個室が開くのを待っていると、ある個室から吐くような声が聞こえた。
  しばらくするとその個室から男が出てきた。
真田紅音「・・・・・・」
  紅音はその男──対戦相手の落合と目が合うが、彼は黙って手を洗い出ていった。
  紅音は落合の入っていた個室に入る。
  個室に入ると棚に忘れ物があった。
  紅音はそれを手に取り中を確認する。
真田紅音「・・・?」

〇車内
  紅音と落合は対戦を行うための会場へと向かっていた。
  車内のモニターには、他の会場の様子が映しだされている。
真田紅音「・・・・・・」
落合俊介「何か?」
真田紅音「あ、あの、これトイレに忘れませんでしたか」
落合俊介「ありがとう、息子からもらった大事なものなのに、忘れるなんて」
  落合はポーチを受け取ると、すぐにカバンにしまった。
真田紅音「・・・コンタクトなんですか?」
  紅音の質問に一瞬動きが止まり、眼鏡を片手で上げながら答える。
落合俊介「・・・コンタクトを付ける時もあるよ」
真田紅音「僕、コンタクトなんですよ」
落合俊介「そうなのか」

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