8、緋蓮と和人(脚本)
〇地下室
緋蓮「花蓮?どこだい?」
花蓮「ここだよ、お兄ちゃん」
緋蓮「ああ、良かった」
緋蓮「今日は咳もしてないな」
花蓮「うん。大丈夫・・・ごめんね、お兄ちゃん」
緋蓮「何で謝るんだい?」
花蓮「私にも、異能があったら良かったのに・・・」
緋蓮「気にしなくていいよ。花蓮は私が守るからね」
花蓮「・・・うん、ありがとう。お兄ちゃん」
緋蓮「・・・・・・・・・もっと、力があれば」
仁見「先生、お父様が呼んでこいと」
緋蓮「・・・分かりました」
緋蓮「いつか、ここから連れ出してやるからね」
〇古民家の蔵
和人「・・・・・・・・・」
遥香「もう、そんな顔しないの。折角なんだから、可愛い我が子を抱いていってよ」
和人「すまない、俺のせいで・・・」
遥香「仕方無いのよ。非異能に立場なんてないわ・・・それなのに、貴方と結ばれてしまった」
遥香「ここに隔離されたのは自業自得・・・・・・この子を授かれただけ、幸せよ」
和人「・・・・・・・・・」
和人「いつか、必ず3人で歩ける場所を作るから」
遥香「・・・ええ、楽しみにしているわ」
〇城門の下
聖「すごい・・・」
和人「聖か」
聖「和人の異能はすごいな。和人の異能があれば、非異能の集まりの番犬なんて目じゃない」
和人「・・・・・・・・・」
和人「非、異能か」
聖「?非異能は俺達異能者の敵なんだろ?」
和人((俺も昔はそう思ってた・・・遥香と出会うまで))
和人「お前の異能もすごいじゃないか」
聖「ありがとう、和人。必ず義皇さん達の役に立つんだ」
和人「ああ・・・頑張りな」
和人((純粋にこの子の応援が出来ない・・・そういや、遠くで異能も非異能も関係なく受け入れる所があるって聞いたな))
和人「(いっそ、そこに・・・)」
〇女性の部屋
仁見「・・・成る程。ありがとうございます、先生」
緋蓮「・・・いえ」
緋蓮((あの子が押し込まれている部屋と全然違う。非異能で病持ちとリーダーの娘で異能者))
緋蓮((ここまで差が出てしまうなんて・・・))
仁見「先生、もし時間がよろしければ次の授業もお願いします」
緋蓮「そんなに急ぐのかい?」
仁見「はい。少しでも早く父の役に立ち、異能者の皆さんを安心させないと」
緋蓮「・・・・・・・・・」
緋蓮((彼女を否定出来ない。私だって、妹が生まれるまで同じ考えなのだから))
緋蓮((そして、母のように妹を連れ出そうとすらしない・・・))
仁見「先生?」
緋蓮「何でもないよ」
緋蓮((ここから出ても、行く宛なんて・・・))
〇部屋の前
「あ・・・」
和人「・・・先生もこれから地下に?」
緋蓮「・・・ええ」
緋蓮((・・・非異能はみんな地下に押し込められる。外の世界もろくに知らずに))
和人「・・・俺、いつかここを出ようって思ってて」
緋蓮「え?」
和人「遠くに、異能も非異能も受け入れる逃げ場があるって」
緋蓮「そんな・・・所が・・・」
和人「そこなら、彼女と息子も受け入れてくれるじゃないかって」
緋蓮「・・・・・・・・・妹も、受け入れてくれるかな」
和人「!」
和人「・・・きっと」
〇古民家の蔵
遥香「そんないい所が・・・」
遥香「行きたいわ、貴方と一緒に」
和人「!」
遥香「先生の妹さんも一緒に・・・ね?」
和人「ああ・・・!」
緋蓮「聞こえていたかい、花蓮」
花蓮「うん・・・!」
緋蓮「熱が引いたら、みんなで一緒に外に行こう」
〇女性の部屋
「!?」
緋蓮「この音は・・・侵入者!?」
緋蓮「外に出るよ!」
仁見「は、はい!」
〇暗い廊下
緋蓮((この子をリーダーに預けたら、早く花蓮の元に行かないと・・・!))
志櫻「緋蓮」
緋蓮「リーダー!」
仁見「お父様!」
志櫻「仁見を連れて外に避難しろ。次の拠点に移れ」
緋蓮「え、しかし・・・」
志櫻「此は命令だ。非異能の事は他に任せてある」
緋蓮「・・・・・・分かりました」
志櫻「二華か。お前には非異能を逃がす様に命じた筈だが」
二華「ええ、すでに完了しています」
志櫻「・・・そうか。襲撃者は影と名乗っていた。この拠点にいる者では敵わない。直ぐに脱出する」
二華「はい」
二華「・・・完了しましたよ。非異能にも役立って頂かないと」
〇城門の下
緋蓮「雪・・・こんな時に・・・」
「離せ!!」
緋蓮「!?」
和人「離せ!!俺は戻る!!」
緋蓮「和人?そんな大怪我でどこに・・・」
和人「非異能がまだ取り残されてるんだよ!」
緋蓮「・・・・・・・・・え」
志櫻「全員脱出したか」
緋蓮「どういう事ですか!?非異能も逃がすと・・・!!まさか、見捨てたのですか!?」
志櫻「・・・なに?」
志櫻「非異能がどうしたと?」
緋蓮「くそっ!!」
聖「和人!?」
志櫻「・・・完了したのではなかったのか」
二華「ええ。逃げるように言いましたし、道も残しました」
二華「それでも逃げられなかったのは、本人達の能力不足かと」
志櫻「・・・・・・・・・」
二華「そう睨まないで下さい。これで残ったのは異能者だけ。貴方のお父様の理想通りではありませんか」
志櫻「・・・・・・・・・」
〇地下室
緋蓮「花蓮・・・!!」
和人「遥香!!奏・・・汰・・・」
緋蓮「あ・・・ぁあ・・・あああ!!」
和人「そんな・・・うわぁあああ・・・!!」
〇城の廊下
詩音「じゃあ、レン先生またね」
緋蓮「はい、また」
緋蓮「今度こそ、守るから」
緋蓮「ん?」
咲哉「つまり、リーダーは二華という女に非異能の脱出命令を出していたんだな?」
聖「ああ。あの女、その後直ぐに消えちまって・・・」
咲哉「・・・・・・・・・」
聖「何か知ってんのか?」
咲哉「・・・“人形”」
聖「どーるず?」
咲哉「ここからは内緒の話だ」
聖「お、おう・・・」
咲哉「とある異能者が作り出した、人の形をして喋る人形」
咲哉「本来の持ち主の命令に充実で、その人形自体に意思はない」
聖「そんなものが・・・」
咲哉「恐らく、その人形は影に主人が居たんだろう」
聖「それは・・・」
咲哉「・・・義皇から、影が人形を探してるとあった」
聖「はぁ!?影が使ってんだろ!?」
咲哉「声でかい」
聖「あ、悪い・・・」
咲哉「人形には二種類ある。作り手が違う二種類が」
聖「つまり、影は自分達のとは違うのを探してるのか?」
咲哉「恐らく」
聖「何でそんなに詳しいんだよ」
咲哉「この屋敷には幾つか隠された部屋がある。その内の一つに詳しく書かれていた」
聖「そう、なのか・・・」
咲哉「成る程・・・カズとレンの家族の仇は人形か」
聖「・・・何で俺に話してくれた?」
咲哉「セイはもう俺の家族だからね」
咲哉「それに・・・何人かは知っておいた方がいい」
咲哉「いざと言う時の為に」
聖「?」
咲哉「ま、信頼してるって事さ」
聖「お、おう・・・」
咲哉「で、他に何かあるのか?」
聖「あ、ああ・・・手が空いた時でもいいから、手合わせしてくれねぇか?」
咲哉「ああ、構わないよ」
緋蓮「・・・・・・・・・」
緋蓮((サク兄さんが私の気配に気付かない筈がない・・・))
緋蓮「人形・・・それが、花蓮の・・・」
〇田舎の空き地
聖「やっぱ、普通に強いよな」
咲哉「そうかな。やっぱり色々と経験してるからかもな」
聖「納得」
咲哉「納得なんだ」
聖「何かおかしいか?」
咲哉「いや・・・他は聞きたそうにするから」
咲哉「っと、仕事の時間だ。これで失礼させてもらうな」
聖「ああ、気を付けて」
咲哉「ありがとう」
聖「別に気にならないって訳じゃねぇけど・・・」
葵「随分と仲良しさんみたいね」
聖「わっ・・・と、葵・・・」
聖「みんな気配薄くてマジでビビるわ」
葵「あら失礼」
葵「セイちゃん、時間あるかしら?」
聖「え?大丈夫だけど」
湊斗「・・・・・・・・・」
聖「何か不満そうな奴いるけど」
葵「気にしないで。ミトちゃんは焼き餅焼きだから」
聖「はぁ?」
湊斗「別に焼き餅なんて焼いてませんよ」
葵「・・・貴方達って、根本的な所が似てるわよね」
「はあ!?」
葵「あら、息ピッタリ」
葵「お兄ちゃん気質の子を慕って、弟気質の子にはお兄ちゃんぶる感じ。似てるわよ?」
「・・・・・・・・・」
湊斗「って、そんな話をしに来たんじゃないでしょ!」
葵「そうだったわね」
葵「単刀直入に聞くわ。サクちゃんと何を話してたの?」
聖「え?」
葵「貴方達が話しながらここまで来た、というのは知ってるわ。その内容を聞きたいの」
聖「光輝みたいな事言うんだな」
葵「アタシと彼は気が合うのよ」
葵「・・・それで、話してくれる?」
聖「・・・・・・・・・」
聖「悪い、俺の口からは言えねぇ」
葵「・・・・・・・・・」
聖「何でか分からねぇけど、咲哉は俺を信用して話してくれた」
聖「・・・俺はそれに応えたい」
葵「・・・そう」
葵((人タラシね、サクちゃんもコウちゃんも))
葵「気が向いたら話して頂戴」
湊斗「・・・いいんすか?」
葵「ええ。こうなったセイちゃんは動かないもの」
葵「時間を取らせて悪かったわね。じゃあ、また」
湊斗「・・・・・・・・・」
湊斗「絶対お前には負けねぇ!」
聖「はぁ?」
聖「・・・セイ、か」
聖「あの頃は考えられなかったな・・・もっと、ここで勉強させてもらいたいな」
〇英国風の部屋
咲哉「おや、揃ってどうしたんだ?」
緋蓮「・・・廊下での話、立ち聞きしてしまって」
和人「俺はその内容を教えてもらって・・・」
咲哉「・・・・・・・・・」
緋蓮「あの話、本当なのかい?」
咲哉「ほぼ正確だと思っていい」
和人「じゃあ、その人形・・・二華が!」
咲哉「落ち着け、カズ。それとレン先生も」
咲哉「とはいえ、二華を含めた人形の行き先は分かっていない」
「・・・・・・・・・」
咲哉「だけど、完全な手掛かりが無い訳じゃないんだ」
「!」
咲哉「ちょっと俺にも借りがあってな。前々から探してはいたんだ」
緋蓮「だから、そんなに・・・?」
咲哉「まぁ、な」
咲哉「見付けたら、二人にも必ず伝える」
咲哉「だから、任せてくれ」
〇中東の街
咲哉「・・・任せてくれ、か」
咲哉「どの口が言うのやら・・・まぁ、いい」
咲哉「これで・・・いざと言う時は・・・・・・」
〇黒
終