1話(脚本)
〇田んぼ
私「今日はね。こーんな大きな虫がいたの!」
私「私ね・・・・・・びっくりしちゃってね。逃げちゃった! あはははっ」
(私は笑っている。そう・・・無邪気に笑っていた)
記憶の影1「虫って怖いの?」
記憶の影1「大きな虫に食べられちゃうの?」
記憶の影1「食べられるから逃げちゃったの?」
私「そうじゃないよ。そうじゃないけど・・・・・・私、虫はやだ!!」
私「絶対に触ったりしたらダメなんだからね!」
(私に怖い物なんてないと思ってたけど、あの時初めて虫が苦手なんだって気づいた)
(・・・・・・・・・・・・)
(駄目だ。また意識が遠のいていく)
〇田んぼ
私「私ねっ、将来たまのこしに乗りたいの!」
私「暗いニュースばっかだし、この先どうなるかわからないじゃん」
私「それならさ。たまのこしに乗っちゃえば安定でしょ?」
記憶の影1「たまのこし・・・たまのこしって何?」
私「たまのこしはね、お金をたくさん手に入れて生きていくことなの」
記憶の影1「ふーん」
記憶の影1「お金かぁ・・・お金ってそんなに必要なのかな」
記憶の影1「お金が無くても楽しい事っていっぱいあるよ?」
私「それって何よ」
記憶の影1「例えば・・・・・・コレっ!」
私「いたっ!? ちょっと何するの?」
記憶の影1「ドッジボールだよ。ドッジボール!」
記憶の影1「面白いでしょ!」
(私は生傷ばかり作って、少しの怪我なんて気にもしなかった)
私「やったなーコラ待てー!!」
(私が遠ざかっていく・・・・・・また意識が薄れていく)
(・・・・・・・・・)
〇女の子の一人部屋
記憶の影1「おはよー」
私「・・・・・・・・・・・・」
記憶の影1「お・は・よ・う!!」
私「・・・・・・わっ・・・何!? 何よ急にっ!」
記憶の影1「今日は遂にあの日だよ、あ・の・日」
私「あの日?・・・・・・あの日ってなんだっけ?」
記憶の影1「いいから、外に出ようよ!」
記憶の影1「もうみんな準備してるよ」
あの日・・・か・・・
あの日私は・・・何をしていたんだろう・・・・・・
〇田んぼ
私「まぶしっ・・・ってか暑っつ」
記憶の影1「あはは! 何言ってるの? 夏なんだから当たり前じゃん」
記憶の影1「僕は夏、大好きだから」
記憶の影1「今年も楽しみでワクワクしてる」
僕・・・・・・
私「あんたはいつもそうやって・・・はしゃぎ過ぎないでよ」
私「前はそれで迷子になったんだから」
どうしてだろう・・・・・・胸が、苦しい
このままでいい・・・・・・これ以上はもういい
でも・・・・・・だめだ。意識が持たない
・・・・・・・・・・・・
〇田んぼ
記憶の影1「わぁ! すごいすごいよっ!!」
私「・・・・・・」
記憶の影1「毎年見てるけどさ、今年が一番すごいんじゃない?」
私「・・・・・・・・・・・・」
記憶の影1「ねぇ聞いてる・・・・・・姉ちゃん?」
記憶の影1「花火、やっぱりすごいよね」
私「・・・・・・あ、あっうん。なんの話だっけ?」
弟「やっぱり聞いてなかったじゃん」
弟「ほらまたすごいのが来るよ」
弟「やっべー。やっぱり今年は一番すごいや」
弟「・・・・・・ってあれ姉ちゃんどうした?」
弟「どうして姉ちゃん・・・・・・泣いてるの」
私「・・・・・・えっ?」
弟「こんなに楽しいのにさ、今日は一年に一度の花火大会なのにさ」
弟「泣くほどうれしいの姉ちゃん・・・・・・僕・・・さすがにそこまでじゃないや」
私「・・・・・・なんでだろう。なんで姉ちゃん泣いてんだろうね」
弟「ホントだよ!」
弟「あっ・・・・・・あそこ見てっ! なんか流れてるっ!」
弟「行ってみようよ姉ちゃん。あんまり人もいないよあそこ」
私「・・・うん。でもあんた勝手に一人で行っちゃだめよ。私に付いてきて」
弟「はーい。ホント姉ちゃんってさ、僕には気が強いよね」
私「もう・・・余計な事言わないの。さぁ行くよ」
・・・・・・私は・・・そう、花火大会に来ていた
弟と二人で花火大会に来ていたんだ
どうして・・・・・・そんな大切な事を忘れてたんだろう
・・・・・・・・・・・・
〇河川敷
弟「あれ、たくさん流れて来てる」
弟「『とうろながし』って言うんだっけ」
私「とうろじゃなくてとうろうね」
弟「どういう意味なの?」
私「うーんはっきりとは覚えてないけど、最近おじいちゃんが帰って来たでしょ」
弟「あーお母さんが言ってた!」
弟「僕・・・おじいちゃんが本当に帰って来たのかと思ったのにさ・・・・・・」
私「幽霊になっても、ちゃんとお母さんはおじいちゃんを迎えたんだよ」
私「それでね。また幽霊の世界におじいちゃんを送るの・・・・・・それが『とうろうながし』だった気がする」
弟「ふーん・・・あんなにいっぱいみんな送る人がいるんだね」
私「そうだね・・・・・・あんた、おじいちゃんの事好きだったでしょ?」
弟「うん、今も大好き!」
私「私も・・・みんな大好きだからちゃんと送り迎えするんだと思う」
弟「そっか・・・・・・」
弟「あっ!」
私「また、どうしたのあんたは」
弟「あれっ引っかかってる! 行かないと」
私「えっ、ちょっと待って」
弟「ちょっとだけだから姉ちゃんは待ってて」
私「ダメ・・・私が行く」
弟「早くしないと可哀想だよっ!」
弟「・・・・・・あっ」
私「・・・・・・・・・・・・」
私「(なんでだろう・・・・・・目はしっかり見えてるのに・・・身体が動かない)」
私「(声も・・・・・・出ない。私、さっきまで普通に喋ってたのにどうして?)」
私「(ねぇ・・・・・・どうしてよ?)」
〇白
記憶の影2「残念ですが・・・・・・」
私「・・・・・・・・・・・・」
記憶の影2「誠に申し訳ございません」
私「・・・・・・・・・・・・・・・」
記憶の影2「手は尽くしたのですが・・・・・・力及ばず」
私「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
記憶の影2「ですがまだ良かったです。お姉さんの命に別状はありません」
私「(どこだ・・・・・・ここ)」
私「(白い・・・・・・白くて怖い)」
私「(声が・・・・・・聞こえる)」
記憶の影3「ごめんなさい・・・・・・私が・・・二人にしたのが悪かったのよね」
記憶の影2「いいや違う・・・・・・俺だ・・・俺が悪かったんだ」
私「(何を、言ってるんだろう・・・・・・)」
私「(私は・・・何をしてるんだろう)」
記憶の影3「あのね・・・とても言いにくいんだけど」
記憶の影3「私だって辛いの・・・・・・でもね。あなたには言わないといけない」
記憶の影2「お前のせいじゃない。それだけは確かだ・・・だから、落ち着いて聞いてくれ」
記憶の影3「あの子はね・・・・・・川で溺れたの」
記憶の影3「発見した時はあなたも倒れていてね。でも、あの子はいなかった・・・・・・」
私「あ・・・・・・あっ・・・・・・」
記憶の影3「ごめんね。ごめんなさい・・・・・・」
私「ああああああああああああああ!」
私「(頭が割れる)」
私「(心が壊れる)」
私「(私が・・・私でなくなる)」
記憶の影3「先生! あなた先生を早く!」
記憶の影2「ああわかった。すぐに行ってくる」
〇白
私「(白い・・・・・・何もかもが消えていく)」
私「(そうだ・・・私は、消えたかったんだ)」
私「(なのに、どうして?)」
私「(どうして・・・また、ここにいるの)」
断片的な記憶から迫る展開、そして悲しい記憶……この”私”はどのような状態で記憶を思い浮かべているのか、そしてプロローグのシーンとどう結びついていくのか、とても興味がそそられます!