2話(脚本)
〇女の子の一人部屋
弟「おはよう」
私「・・・・・・・・・・・・」
弟「お・は・よ・う!!」
私「・・・・・・」
弟「あれ? 起きてるよね。姉ちゃん!」
弟「・・・・・・どうして泣いてるの?」
私「・・・・・・あれ、私泣いてる・・・」
弟「うん、怖い夢でも見たの?」
私「・・・・・・うん。ごめんね」
弟「なんだか姉ちゃんらしくないね」
弟「今日はさ。遂にあの日だよ。あ・の・日」
私「あの日・・・・・・」
弟「いいから、外に出ようよ」
弟「もうみんな準備してるよ」
私「──ちょっと待って!」
弟「急にどうしたの?」
私「どうしても外に出ないと・・・ダメ?」
私「私ちょっと気持ち悪くて・・・上手く起きれないかも。だから・・・」
弟「そうなんだ・・・それならしょうがないね」
弟「僕一人で行くよ」
私「え?」
弟「外に出るついでにさ。お薬買ってきてあげるから待っててよ」
私「それは・・・・・・すぐに帰ってくるよね?」
弟「うーんどうだろう。わかんないけど」
私「ならダメ・・・一人はダメだよ絶対に。。。姉ちゃん。一緒に行くから」
弟「え? でもさっき」
私「──いいの! 今日は車通りも多いんだからあんたは余計な事気にしないで」
弟「わかった。けど・・・・・・なんか怒ってる?」
私「ううん、怒ってないよただ・・・何だか不安なの」
弟「そっか・・・さっき姉ちゃん泣いてたもんね」
弟「僕が一緒に居てあげるよ」
私「うん・・・・・・ありがとう」
〇田んぼ
弟「わぁ! すごいすごいよっ」
私「・・・・・・」
弟「毎年見てるけどさ、今年が一番すごいんじゃない?」
私「・・・・・・・・・」
弟「ねぇ聞いてる・・・姉ちゃん?」
弟「花火、やっぱりすごいよね」
私「・・・・・・私の手を離さないで」
弟「花火ちゃんと見てる姉ちゃん?・・・ほらまたすごいのが来るよ」
弟「やっべー。やっぱり今年は一番すごいや」
弟「ってあれ姉ちゃんどうした?」
弟「なんか、震えてるけど風邪?」
私「私・・・・・・少しずつ思い出してきてる」
弟「・・・・・・えっ?」
私「どうしよう・・・・・・怖い。怖いよぉ」
弟「どうしたの? やっぱり具合悪いんじゃ」
私「──違う。違うんだけど・・・怖いの・・・」
弟「よく見てよ姉ちゃん」
弟「今日はこんなに楽しい、一年に一度の花火大会なんだよ」
弟「僕はまたこうやって姉ちゃんと一緒に来れて嬉しいよ」
私「・・・・・・・・・」
私「(鳥肌がずっと治まらない・・・声も、出せない)」
弟「姉ちゃんあそこ見てっ! なんか流れてるっ!」
弟「行ってみよう姉ちゃん。あんまり人もいないよあそこ」
私「あ・・・頭が・・・・・・」
私「・・・・・・・・・・・・」
私「あんた勝手に一人で行っちゃだめよ。ちゃんと私に付いてきて」
弟「はーい。ホント姉ちゃんってさ、僕には気が強いよね」
私「な・ん・か言った?」
弟「何でもないでーす」
私「もう・・・さぁ行くよ」
誰だ・・・・・・・・・
どうして・・・・・・・・・何も出来ないの
この私は一体・・・・・・誰なの?
〇河川敷
弟「あれ、たくさん流れて来てる」
弟「『とうろうながし』って言うんだっけ」
私「とうろじゃなくてとうろう・・・・・・」
私「えっ?」
弟「姉ちゃん・・・・・・ちょっといい?」
私「・・・・・・・・・」
弟「どうしてさ、そんなに苦しそうなの?」
弟「僕も姉ちゃんもずっと楽しみにしてた夏祭りだよ」
弟「なのにどうして? なんだかずっと楽しそうじゃない」
私「何言ってるの? 私は別に変じゃないよ」
私「ずっと私は・・・・・・」
私「この時を・・・・・・たの・・・しみに」
弟「ほら・・・・・・また震えてる」
弟「姉ちゃんなんかおかしいよ。今日はずっとおかしい」
私「──おかしくなんかないよ」
弟「いや、おかしい。ねぇ何かあったの?」
私「何も・・・・・・何もないから」
私「ほら・・・話の続きを「とうろうながし」って言うのはね」
弟「みんな大事な人を幽霊の世界に送るんでしょ・・・・・・それが『とうろうながし』だって」
私「あんた・・・どうしてそれを?」
弟「わかんない。僕もわかんないけどさ」
弟「覚えてるんだ・・・・・・とっても大切な事だった気がするから」
弟「だから、間違えないよ」
私「・・・・・・・・・・・・」
弟「姉ちゃん・・・ねぇ本当の事を教えてよ」
弟「姉ちゃんに何があったの?」
弟「姉ちゃんは・・・・・・何を隠してるの?」
私「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
私「いやだ」
弟「え?」
弟「姉ちゃん・・・どうして、泣いてるの?」
弟「こんなに楽しい日なのに、僕は姉ちゃんが楽しければ嬉しいんだよ」
弟「なのにどうして?」
私「何か言ったら終わってしまう気がするから・・・・・・」
弟「終わる・・・?」
私「私からは言えない。どうしても・・・言えないの」
弟「・・・大丈夫だよ姉ちゃん」
弟「僕はそんなに身体も弱くないし、病気だってしてない」
弟「だからきっと・・・大丈夫だって」
弟「ほら見て。お祭りももう終わるよ」
弟「『とうろう』もみんな流れたのかな」
私「『とうろう』が・・・流れた?」
私「(なんだろう・・・・・・この違和感)」
弟「僕たちも帰る?」
私「・・・・・・・・・」
私「(まただ・・・・・・声が、出ない)」
弟「あれ? あの『とうろう』だけ引っかかってる」
私「(どうして?)」
弟「ちょっと見てくるよ。姉ちゃんはここで待ってて」
弟「!?」
私「(どうして、何も出来ないの)」
私「待って・・・お願いだから待って・・・」
私「待ってよ!!!!」
私の意識はその何かによって、なくなっていった
終わりたくないと願っても届かなかった
〇白
私「・・・」
私「・・・・・・」
私「(そうだ)」
私「(思い出した)」
私「(弟は、死んだんだ)」
私「(私が付いていたのに)」
私「(私は弟を助けられなかった)」
私「(あの時『とうろう』が川辺の水草に引っかかっていた)」
私「(だからあの子はそれを取ってあげようとしただけなんだ)」
私「(でも・・・私が気づいた時にはもう近くにあの子はいなくて)」
私「(大声で呼んでも返事がなくて)」
私「(その時、川から私を呼ぶ弟の声がかすかにした)」
私「(私の身体は何も考えずに動いてた)」
私「(真っ暗な川の中に身体が吸い込まれていく感覚を今でも覚えてる)」
私「(私は必死に弟を探した)」
私「(でも結局見つからなくて・・・どうしようもなくて)」
私「(暗闇の中に沈んでいったんだ)」
私「(悔しかった。辛かった。だから願った)」
私「(お願いだから弟を奪わないでって)」
私「(弟を返してって)」
私「(それからだ)」
私「(私は・・・・・・長い夢を見ている)」
私「(あの悪夢が繰り返される・・・・・・長い夢を)」
私「(だから、終わらせるんだ)」
私「(・・・・・・私がこの夢を)」
過去の記憶に”現在”の意識が介入、と不思議さを感じながら読み進めてみたら……繰り返される悪夢!?
主人公の居る白の世界と、主人公の現在の状態が改めて気になってしまいました!