3むらむら『推しと好きは違う』(脚本)
〇図書館
仲村 柊「失礼します」
水縹 慧「おや、いらっしゃい」
仲村 柊「壱邑に、昼休みの貸出当番 代わってくれって言われて来ました」
水縹 慧「あー・・・」
仲村 柊「何かあったんですか?」
水縹 慧「準備室に行けば分かるよ」
〇役所のオフィス
仲村 柊「どうしたん──」
仲村 柊「だ・・・」
仲村 柊「・・・・・・」
〇図書館
仲村 柊「準備室に規格外野菜が 廃棄されてるんですけど」
水縹 慧「どうやって呪いを解くか 相談してたみたいなんだけど」
水縹 慧「元に戻れなくなっちゃったらしいんだ」
仲村 柊「えっ!?」
水縹 慧「多分"むらむら"しっぱなしで 変身が持続してるんじゃないかなぁ」
仲村 柊「えぇ〜・・・」
〇役所のオフィス
壱邑 一貴「フフフ・・・戻ってきたか」
壱邑 一貴「さすがのお前もこの状況は スルーできなかったようだな」
壱邑 一貴「何だそれ」
壱邑 一貴「わっ、何すん──」
壱邑 一貴「だーっ!?」
壱邑 一貴「バケツに放り込むとか新手のいじめ──」
壱邑 一貴「うおっ!?」
「おお〜! 戻った〜!」
仲村 柊「次の方ドーゾ」
天邑 遥斗「お願いしまーす」
天邑 遥斗「ふぅ・・・助かった」
仲村 柊「ゆうり」
中邑 ゆうり「自分で入る!」
中邑 ゆうり「おりゃぁああ!!」
中邑 ゆうり「よし、戻った!!」
仲村 柊「おい、水かかっただろ」
中邑 ゆうり「あっ、ごめん」
仲村 柊「──ったく」
仲村 柊「いつまでも"むらむら"してるから 戻れなくなるんだ」
仲村 柊「このむっつりどもめ」
中邑 ゆうり「ひどっ!!」
壱邑 一貴「お前は呪われてないから そんなことが言えるんだ!!」
中邑 ゆうり「そーだそーだ!」
壱邑 一貴「村八分にすんぞ!!」
中邑 ゆうり「仲村だけに!」
仲村 柊「うるせー」
仲村 柊「誰のおかげで元に戻れたと思ってる」
「うぅっ」
仲村 柊「宇多邑先輩を倣って さっさと解呪すればいいだろ」
天邑 遥斗「それが、できないんです」
仲村 柊「できない?」
天邑 遥斗「僕はそもそも 好きな芸能人がいませんし・・・」
壱邑 一貴「俺も興味あんのは サッカー選手くらいだな」
仲村 柊「キスしてみれば?」
壱邑 一貴「男だぞ!?」
仲村 柊「性別は言及されてないし、大丈夫だろ」
仲村 柊「ゆうりは?」
中邑 ゆうり「私!?」
仲村 柊「お前、たしか大衆演劇の 長内朔耶が好きだったよな」
中邑 ゆうり「う、うん・・・」
中邑 ゆうり「でも一番じゃないっていうか、 好きのジャンルが違うっていうか」
仲村 柊「宇多邑先輩は成功したじゃないか」
中邑 ゆうり「あれは特殊事例!」
中邑 ゆうり「わっ、私が好きなのは──」
仲村 柊「ほら」
仲村 柊「長内朔耶の画像」
中邑 ゆうり「・・・・・・」
中邑 ゆうり「〜〜〜〜ッ!!」
中邑 ゆうり「柊のバカ!! ナメクジ!!」
天邑 遥斗「あーあ・・・ 仲村先輩、謝った方がいいですよ」
仲村 柊「何でだ」
天邑 遥斗「推しと好きな人は別物なんです」
仲村 柊「よく分からん」
中邑 ゆうり「こうなったら、柊のスマホ ベロッベロに舐め回してやるっ!!」
仲村 柊「は? バカやめろ!!」
天邑 遥斗「それはキスとは言いませんよ!?」
壱邑 一貴「腹壊すぞ!?」
中邑 ゆうり「いっちーパス!!」
壱邑 一貴「わっ」
仲村 柊「返せ!」
中邑 ゆうり「渡しちゃダメ!」
仲村 柊「しがみつくな!」
中邑 ゆうり「ごめん、つい──」
中邑 ゆうり「あっ」
仲村 柊「急に変身したら危な──」
「わーーーーッ!?」
壱邑 一貴「ぐえっ」
仲村 柊「痛た・・・」
壱邑 一貴「早く退け、重い・・・」
水縹 慧「すごい音がしたけど大丈──」
水縹 慧「・・・仲村×壱邑?」
水縹 慧「逆かと思ってた」
水縹 慧「宇多邑さんに報告しなきゃ」
壱邑 一貴「待てー!!」
壱邑 一貴「こいつのせいで転んだんだ!!」
中邑 ゆうり「もうやだこの呪い・・・」
水縹 慧「おやおや、まだ戻ってなかったの」
水縹 慧「いくら思春期とはいえ、 きみたち安易に変身しすぎじゃない?」
「誰のせいだ!!」
水縹 慧「合意じゃなくていいんだから、 さくっと好きな人にキスしてきなよ」
中邑 ゆうり「教育者らしからぬ発言・・・!」
水縹 慧「教育者と言っても司書だし」
水縹 慧「あ、オススメのロマンス小説 教えてあげようか?」
中邑 ゆうり「結構です!」
水縹 慧「まぁ、その呪いにかかってたら 読みづらいよねぇ」
中邑 ゆうり「煽られてる? 煽られてるよね?」
壱邑 一貴「顔がヤバいから落ち着け!」
中邑 ゆうり「もうっ!!」
中邑 ゆうり「こうなりゃダメ元で 長内朔耶にキスしてやる!!」
仲村 柊「やっぱ返して」
中邑 ゆうり「柊が言ったんじゃん」
仲村 柊「そうだけど・・・スマホが汚れる」
中邑 ゆうり「あんたねぇー!!」
天邑 遥斗「ふふっ」
天邑 遥斗「中邑先輩はすぐに 解呪できるはずなのになぁ」
水縹 慧「面白いから黙っておこう」
水縹 慧「天邑くんはどう? お相手はいるの?」
天邑 遥斗「僕は・・・」
天邑 遥斗「・・・・・・」
天邑 遥斗「好きな人の名前も知らないんです」
天邑 遥斗「なので、解呪はちょっと難しいですね」
水縹 慧「名前も知らない人かぁ・・・」
水縹 慧「チャンスだね」
天邑 遥斗「えっ?」
水縹 慧「理由があれば話しかけやすくない?」
天邑 遥斗「でも、一方的な都合ですよ」
水縹 慧「踏み切る勇気と動機になれば充分」
水縹 慧「後は野となれ山となれ〜」
天邑 遥斗「他人事だと思って」
天邑 遥斗「でも・・・そうですね」
天邑 遥斗「言い訳があると 気持ちも少し楽かもしれません」
〇大きな木のある校舎
〇学校脇の道
天邑 遥斗(勇気と動機かぁ・・・)
中邑 ゆうり「天邑くーん!」
中邑 ゆうり「よかったら、途中まで一緒に帰らない?」
天邑 遥斗「もしかして、心配してくれてます?」
中邑 ゆうり「えっ?」
中邑 ゆうり「いや、そんなことは──」
天邑 遥斗「ありがとうございます」
中邑 ゆうり「うぅ、ごめん」
中邑 ゆうり「朝のことがあったから気になって」
中邑 ゆうり「変身しまくってるお前が言うな って思うかもしれないけど・・・」
中邑 ゆうり「しょっちゅう "むらむら"してる訳じゃないからね!?」
中邑 ゆうり「ビックリした時とかも 変身しちゃうんだよ、ホント!!」
天邑 遥斗「分かります」
天邑 遥斗「感情が昂ぶると 呪いが発動する感じですよね」
中邑 ゆうり「そう! そうなの!!」
中邑 ゆうり「よかった〜、分かってくれて」
中邑 ゆうり「柊ってば人のこと痴女扱いするんだもん」
天邑 遥斗「心配してるんですよ、きっと」
天邑 遥斗「冷静に見れば、先輩が変身するのは仲村先輩が関わってる時ばっかりって分かりますもん」
中邑 ゆうり「うっ・・・」
中邑 ゆうり「私、そんなに分かりやすい?」
天邑 遥斗「はい、とっても」
中邑 ゆうり「そっかぁ〜」
天邑 遥斗「応援してます」
中邑 ゆうり「ふふ、ありがと!」
中邑 ゆうり「ねぇ、天邑くんの好きな人って──」
天邑 遥斗「あっ・・・」
中邑 ゆうり「朝の・・・」
他校の男子生徒「きみは、ごぼうの少女」
中邑 ゆうり「ごぼうの少女!?」
中邑 ゆうり「やばっ、変なあだ名つけられてる」
他校の男子生徒「すまない。じゃがいもだったか?」
中邑 ゆうり「え、どっち?」
天邑 遥斗「知りませんよ!」
中邑 ゆうり「その制服、宮瀬高校ですよね?」
他校の男子生徒「ああ。宮瀬高校3年──」
枝村 誠「枝村誠だ」
「"むら"っ!?」
中邑 ゆうり「どの"むら"ですか!?」
枝村 誠「市区町村の"村"だが・・・?」
「セーフ!!」
天邑 遥斗「すみません、僕たち "邑"アレルギーなんです」
枝村 誠「そ、そうか」
天邑 遥斗「花ノ森高校1年の天邑遥斗と言います」
中邑 ゆうり「2年の中邑ゆうりです。 今朝はありがとうございました」
枝村 誠「きみ、前にどこかで・・・」
枝村 誠「思い出した。去年、 演劇部の地区大会で見かけたんだ」
中邑 ゆうり「枝村先輩も演劇部なんですか?」
枝村 誠「いや、俺は生徒会に所属していてね」
枝村 誠「我が校の応援に行った時に、 花ノ森高校の演目も観させてもらったんだ」
中邑 ゆうり「おお〜。何という偶然・・・」
枝村 誠「──っと、そろそろ行かないと」
枝村 誠「引き止めてしまって悪かった」
中邑 ゆうり「いえいえ。 よかったらまたお話しさせてください」
枝村 誠「そうだな。 他校の生徒との交流も勉強になる」
枝村 誠「では、また──」
中邑 ゆうり「真面目な人だね~」
天邑 遥斗「・・・・・・」
中邑 ゆうり「ね、天邑くん?」
天邑 遥斗「・・・・・・」
中邑 ゆうり「おーい、どしたー?」
天邑 遥斗「わっ!?」
天邑 遥斗「すみません、 ちょっとぼーっとしちゃって」
中邑 ゆうり「枝村先輩、イケメンだったもんね」
中邑 ゆうり「なんちゃっ──」
中邑 ゆうり「・・・って」
天邑 遥斗「わーーーーーーっ!!」
天邑 遥斗「ここここれは違うんですっ!!」
天邑 遥斗「えっと、その、あのっ──」
中邑 ゆうり「天邑くんの好きな人って、 もしかして・・・!?」
あーっ、あの人は何か伏線あるのかなと思ってましたが!
そこでそうなりますか!!
イケメン×イケメンわっしょい!!(((o(*゚▽゚*)o)))
天邑くんが好きな人はこちらでしたか
2話からちゃんと伏線があったんですね
ゆうりと仲村君も気になりますね〜
でしょーね!でしょーね!
ご馳走さまです。
そしてこの野菜の狂った表情を見ると落ち着くようになってきました。